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CG−03

巴御前

2001/06/10
木曾より上京し、いち早く平氏を倒した名将、木曾(源)義仲。 しかし、義仲は同じ源氏である源頼朝に命を追われる事になります。
源氏もまた、権力争う醜い「人間」の内にあったのです。義仲は、なんとかそんな内情を打破しようとしますがその術もなく。 そして、行く先
を見据え、決意します。「捨てよう。権力も何もかも…」。その後、宇治川の戦いで義経に敗れ、なんとか生き残った 義仲の兵はわずか20名弱。
そのうちの一人、義仲と幼馴染で妻となった女武将、巴御前(ともえごぜん)。 ふと…、義仲は騎乗から巴の顔に触れて、優しく言います。
「…帰ろう。木曾へ帰ろう。」

義仲等は今の滋賀県で頼朝の命令を受けた義経の軍に囲まれます。最後まであなたの傍にいると言い張る巴。 義仲はそんな巴に
「男が最後の時、女と一緒とあらば笑われてしまう。どうか、我が男前を立ててはくれないか」 と、心にもない事を言います。
木曾で幼少を共に過ごし、成人して愛し合った二人。幾度も戦場を共にし、苦難を乗り越え、支え合って来た大切な人。
もう、言うまでも無い。義仲は、巴に生きて欲しかったのです。


旅立ちを引き止めて

2001/05/27
死は「生の証」「回帰」「罪の清算」。様々な宗教が、これをいろいろな意味で
定義しているけれど、私には何一つ理解できません。それさえも「感じた事が
本当のことだ」と思ってるからかな。ただ素直に、ここに居る私達は、旅立つあの
人達を抱き止めて、こう言いたいと思う事があるはずですよね。
その時、みんな口にはしないけれど。声に出すことは、許されないような気がしたけれど。
「行かないで」って。




2001/04/22
「うちの子の様子がおかしい。靴は泥だらけにしてくる。学校から帰ってくるのは
いつも日が暮れてから。いったいどこで何をしてくるんだろう?」
ある日、夜になっても少女は帰ってきませんでした。父親が傘をさして捜しに行きます。
・・・少女は雨の中、震えながら泣いてました。ポケットには給食のパンのかけらが入っていました。
「死んじゃったの・・・」
父親は全てを理解します。娘が守ろうとした小さな命。
「・・・お前は、よく頑張ったよ」


IF(種の狭間を越えてW)

2001/02/25
目の前にいるのに。手の届く所にいるのに。近くにあって一番遠いモノ。
ならいっそ、嫌いになってしまえば良かったのかも知れない。
だけど、彼女は最後まで直向きで、怖いほど無垢に自分の想いに忠実だった。
そして、それに矛盾して(それ故にかも知れない・・・)他人のために自らの命を絶ちます。
最後まで口に出せなかった言葉と共に。
「もし、私が人間だったら一緒にいてくれますか?」



海底のステージ


割とリクエストの多かった海をモチーフにした作品。
陽の元に現れし陸地に憧れた人魚のものがたり。


再会

妹の幸せのために命を落としてしまった兄。そして、その兄に祈りを捧げる妹。死んでしまったらもうお互い話ができないため
彼女はいろいろと考えてすぎてしまいます。「私のせいで…、私を恨んでいるはず…。」
苦しいのはそれが分からないこと。彼女は恋人とも一方的に別れ、生涯結婚せず、兄のために祈りを捧げる決意をします。
その夜、兄の墓前で彼女の見た奇跡。
「幸せになってほしい…」
彼女は耳元で、そう呟く兄の声を確かに聞いた。


オペラ座の怪人

2002/02/24
巨大なオペラ座に住み居る謎の支配者、オペラ座の怪人。彼は、文学、科学、医学、芸術全てを熟知した天才。
しかし、奇形であったがために人々から忌み嫌われていたのでした。崩れた顔を仮面で隠し、オペラ座の歌姫を育て上げてきた影の演出者。
彼に対する、オペラ座一同の恐怖と不安はいよいよ募り、とうとう皆は反旗を翻します。しかし、怪人はその天才的な頭脳で彼等を嘲笑う。
怪人は、その報復にオペラ座で惨劇を演じさせ、歌姫クリスティーヌを連れ去ってしまいます。
「お前を放しはしないぞ、クリスティーヌ!!お前は、私だけのために歌い続けるのだ!!」
決起の提案者で、クリスティーヌを救い出すためにオペラ座の地下室に乗り込んで行く紳士、ラウル。
怪人は、恋敵である彼をここぞとばかりに待ち構え、縄で彼の首を括り歌姫に問います。
「さぁ!どうする!お前は私とあいつ。どちらを選ぶんだ!!!」

「好きだったのに・・・」
怪人に口づけをするクリスティーヌ。彼女の本当の想いを知った怪人は、ラウルの首の縄を焼き切り二人に向かって叫びます。
「・・・ここから出て行け。早く出て行け!!早く・・・」
クリスティーヌは背を向ける怪人に一度だけ寄り添い、ラウルとオペラ座の地下を後にします。
怪人は一人、去り行く二人を見つめ、彼女への愛の歌を口にする。そして、彼は二度と人前に姿を表すことはありませんでした。

誰も愛せず、誰からも愛されて来なかった悲しい人。しかし、愛を知ったが故に、彼はその一生を「怪人」として過ごすことはなかった。
きっと、彼は愛し続ける。もう二度と、もどらないものを。


契約

2002/01/07
    前世紀。戦争で両親を殺され、その敵を討つためと、悪魔の囁きにのってしまった王の娘、コーネリア。
    しかし、復讐の地は既に争いのない平和な国となっていました。かつて、自分の両親が築き上げようとした楽園が眼前に広がっている。
そして、それを治めている仇。王もまた、善良な人間であったことを悟る。彼女は自分が悪魔に利用されている事に気がつきます。
これを破壊することこそが、悪魔の目的だったのです。悪魔との契約を悔い、日に日に醜い姿に変わっていくコーネリア。
その契約の力によって自害もできず、どうしようもなくなった彼女は、一人森の奥でその身が蝕まれていくのを待つより他ありませんでした。

コーネリアの前に、一人の青年が現れます。コーネリアの仇の息子、ネイ。
かつて、悪魔の誘惑を跳ね除けたこの王は、息子に銀のナイフを手渡して口重に言います。
「きっと亡家の姫君は、両親を殺された悲しみに付入られ、悪魔と契約を交わしてしまうだろう。・・・開放してあげなければ。」
懊悩しているコーネリアを目の前にネイは狼狽します。殺せない・・・。家族を殺され、家を焼かれ、騙され続け、こんな森の奥に辿り着く迄ずっと一人で。
それでも正気を持って、復讐心を捨ててくれた少女。あまりにも、かわいそうな少女。ネイは歩み出て、変わり果てたコーネリアの体を抱きしめました。
彼女はそのまま身を委ねてしばらく。そして、銀のナイフを握っているネイの手を取り、その切先をそっと自分の胸に当て、小さく微笑みました。



おかあさんに花束を

2001/10/28
お兄ちゃんと妹が、お花を買いにやってきました。
「どんな花がいいのかな?」お花屋さんのお姉さんは、やさしく尋ねます。すると妹は元気よく答えました。
「おかあさんは赤いチューリップが好きだったから。赤いチューリップを下さい!」それを聞いて、お兄ちゃんは言います。
「…赤い花はダメだよ。赤いのはダメだってお父さん言ってたじゃないか。赤くない花じゃないといけないんだ…。」
「…そう。」お姉さんは笑顔を絶やさず、一言だけ返事をして、10円玉や100円玉の入り混じった500円分のお金を受け取ります。
そして、一つの花さしから、全てのチューリップを取り出し、束を作って兄弟に渡してあげました。
赤、白、黄。それは、鮮やかな三色のチューリップの花束。


カムイ

2001/08/26
    互助精神と非破壊主義の蝦夷、(北海道)先住民族、アイヌ。その昔、アイヌの人々は本州より来た倭人達を、客人として歓迎します。
しかし、アイヌとの交易権を独占した松前藩は、収奪に等しい交易、鮭の大量捕獲、砂金堀りで川を汚染し、更に「絶対服従」を申し入れます。
アイヌの酋長、シャクシャインはこれにやむなく蜂起を決意。松前藩の軍は、対し、わずか二千のアイヌ軍による、森の構造を駆使した
戦法に、次々と壊滅。当時、蝦夷地近辺では外国船が出没していたため、幕府は「アイヌは外国と結ぶ気か!?」と強い危機感を覚え、この
少数民族に対し万単位の援軍と鉄砲を送り込みます。これにアイヌ軍はやむ無く撤退。民族絶滅の危機感の中、松前藩の和議申し入れを受け入れた
シャクシャインは酒宴の席で毒殺されます。罠だったのです。和解どころか頭首を失い狼狽するアイヌの人々。有無を言わさず政府の開拓が始まり
伐採されていく神々の森。とうとうアイヌの聖地、二風谷にもその手がのびます。自然と互助精神にあるアイヌの人達は、これらを守ろうと各地で
わずかな抵抗を見せますが、幕府軍鉄砲部隊の銃弾に次々と倒れていきます。喧噪の中、家に等き二風谷の森に取り残された女や子供達・・・。

現在。北海道平取町二風谷は工業用水を貯水するダムに、水の流れを塞き止められています。八年の裁判で、その訴えはとうとう理解されず完成に至ったものです。
今尚。人と自然は供にあることを訴えつづけているアイヌ民族。彼等の言葉を借りれば、アイヌあってカムイあり、カムイあってアイヌが、ここにいられるのです。

〇カムイ=広義で自然の神 〇アイヌ=人間という意味


ごめんなさい

2001/07/16
AD1986インド南部・マドラス市。医師団は派遣されてきたものの、薬は全く足りていません。
毎日死んでいく子供たちを、眼のあたりにするしかない現状。しかし、悲しんでいる暇はないと気丈に立ち向かう医師団の看護婦達。
ある看護婦は、病院の端の粗末なベッドに寝ている子供に、せめてもの言葉を送ります続けます。「薬はきっと届く!諦めないで!」
その子供は、のどの奥で、看護婦に何かを言いました。筋肉が硬直し声帯や顎まで思うように動かない。
これは、破傷風特有の症状です。そのか細い声は…、その男の子の口に耳を精一杯近づけて、やっと聞き取ることのできるものでした。
「あなたのお幸せを、祈っています」

彼女は、たまらなくなって病室を飛び出し、廊下をさ迷っていた男の子にぶつかってしまいます。
「!!ごめんなさい…」と謝ると同時に、彼女はその男の子をきつく抱きしめ、その「ごめんなさい」を繰り返しながらとうとう泣き出してしまう。
突如泣付かれた、その盲目の男の子は、何も聞かず、黙ってその看護婦の鳴き声を聞いていました。まるで…、泣く子供を宥める父親のように。