前世紀。戦争で両親を殺され、その敵を討つためと、悪魔の囁きにのってしまった王の娘、コーネリア。
    しかし、復讐の地は既に争いのない平和な国となっていました。かつて、自分の両親が築き上げようとした楽園が眼前に広がっている。
そして、それを治めている仇。王もまた、善良な人間であったことを悟る。彼女は自分が悪魔に利用されている事に気がつきます。
これを破壊することこそが、悪魔の目的だったのです。悪魔との契約を悔い、日に日に醜い姿に変わっていくコーネリア。
その契約の力によって自害もできず、どうしようもなくなった彼女は、一人森の奥でその身が蝕まれていくのを待つより他ありませんでした。

コーネリアの前に、一人の青年が現れます。コーネリアの仇の息子、ネイ。
かつて、悪魔の誘惑を跳ね除けたこの王は、息子に銀のナイフを手渡して口重に言います。
「きっと亡家の姫君は、両親を殺された悲しみに付入られ、悪魔と契約を交わしてしまうだろう。・・・開放してあげなければ。」
しかし、懊悩しているコーネリアを目の前にネイは狼狽します。
殺せない・・・。家族を殺され、家を焼かれ、騙され続け、こんな森の奥に辿り着く迄ずっと一人で。
それでも正気を持って、復讐心を捨ててくれた少女。あまりにも、かわいそうな少女。
ネイは歩み出て、変わり果てたコーネリアの体を抱きしめました。
彼女はそのまま身を委ねてしばらく。
そして、銀のナイフを握っているネイの手を取り、その切先をそっと自分の胸に当て、小さく微笑みました。