艶本集

春情妓談水揚帳作者は『偽紫田舎源氏』のベストセラー作家・柳亭種彦、絵師は名高い歌川国貞。本書は草双紙の傑作と呼ばれているものです。これは現代語訳もあるので(現在は絶版?)、こちらではなるべく原文に近い形で入れることにしました。場所は吉原の裏茶屋の一室。番頭新造と茶道具屋とのおいたの場面から物語は始まります。(97/12/07)。
春情花の朧夜作者は明治になっても活躍した吾妻雄兎子(梅亭金鵞)。300石の知行取りの侍が同僚の新造に横恋慕するところから話は始まります。この小説は江戸末期に書かれたようです。世は動乱の時代でも、下半身は時代にかかわらず、いつも動乱しているということなのでしょう(96/04/05)。
壇ノ浦
夜合戦記
頼山陽あるいは塙保己一の作とか。壇ノ浦の合戦に勝利した源義経と、助けられた建礼門院徳子の一夜を描くテーマは、三代奇書の「はこや」後編第四話と同じものです。数年前、「昔読んで感動した物語、全文じゃなく残念」というようなメールをいただき、ずっと気にしていましたが、「はこや」がOKならこちらも大丈夫でしょう。もっともかつて出版されたこともありますし(99/09/24)。
長枕褥合戦平賀源内のスラップスティック男根賛歌小説を現代語訳。原文は七五調で書かれ、言葉の遊びもあるため、ところどころ補足、削除、意訳しました。序と後序は一部、カタカナあるいは平仮名にしたほかは原文のままです。原文の雰囲気が少しは伝わってくるはずです(96/03/05)。
真情春雨衣
初編
二編
三編
『春情春の朧夜』の著者による人情本形式の艶本(えほん)の現代語訳。叙は原文のままにし、会話も原文の口調をかなり残しました。挿入されている画はまったくの人情本調なので、『梅暦』などの絵を想像していただければよろしいかと……。上梓は『二編叙』に「午の春」とあるところから、『二編』が安政5年(1858)、『初編』はその前年、『三編』は翌年と考えられています。中心となっている舞台は鎌倉ですが、これは江戸にすることをはばかったためで、当時としてはありがちな設定です(2000/10/21)。
春情指人形本書は浮世絵師として有名な渓斎英泉(けいさいえいせん)が絵を描いていますが、文章も本人だろうと推察されています。それがためか物語はつけ足しのようにあっさりしていて短いので、口絵にある大坂のたいこ持ちの話というのを入れました。本文の手孕村というのは一説に近江の国の話だそうですが、中国にも同様の話があるとか。本書の制作は天保年間(1830年〜44)のおそらく天保の改革以前のようです(2004/07/01)。
魂膽色遊懐男下の『二代男』やほかのところでも何度か題名だけ取り上げたこの『懐男』ですが、『二代男』をアップした当初からいつかやらなきゃいけないのかなと思って1年がかりで訳出しました(ただし、意訳や削除箇所があります。また何度か原本は目を通していたのですが、実際に始めてみると思った以上につまらなく時間がかかってしまいました)。作者は目録に「色三味線作者」とあるように江島其磧。宝永8年=宝徳元年(1711)の上梓とされています。(2003/10/06)。
栄花遊二代男秘本として紹介されることが多い「豆男もの」のひとつで、仙薬で大豆ほどの大きさになった男が他人のからだに入って乗っ取り、色事におよぶというSFがかった物語の現代語訳。序に「八文字屋がまめ男の前後の秀文妙作」とあるように、江島其磧の豆男もの『魂膽色遊懐男(こんたんいろあそびふところおとこ)』、続編『女男色遊(いんよういろあそび)』の趣向を借りていて、『二代男』はその二代目の豆男という意味です。出版は宝暦5年(1755)。作者は不明ですが、言葉遣いから上方出身者と思われ、宝暦の前半に江戸を(たぶん)遊山したことを踏まえてこれを書き上げたようです。なお、訳出文に不出来なところがあります。いつものことですが、どうもうまくできないんだよなあ(2001/09/23)。
 
美津のゆく末裏長屋は一応、江戸のアングラ長屋という位置付けなので、上方ものはどんなものかと思っていたのですが、そもそもこの小説はほとんど紹介されることがないようなので入れることにしました。この小説は「水のゆく末」「水の行寿衛」とも表記され、出版されたのは大坂。作者は不明で、上梓の時期は明和期(1764〜1772)ごろと推定されています。浪人と元遊女の娘、お雛の一生を描いたもので、よくあることですが、ときどき名前が変わるので、わかりにくいところがあるかもしれません(98/02/11)。

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