ZARD What a Beautiful Memory Tour 大阪 レポート

ついにやってきてしまった、追悼の時。その意思を奏でるメロディは…。
[Memory 01・プロローグ…]
[Memory 02・Before the memory] [Memory 03・IN "Your" ARMS TONIGHT]
[Memory 04・OH MY LOVE...] [Memory 05・That's what I want to say to you...]

[坂井泉水さんを偲ぶ会]
What a beautiful memory Tour [東京・日本武道館] [第58回紅白歌合戦]
What a beautiful memory 2008 [神戸] [横浜] [仙台] [新潟] [福岡] [広島・松山] [大阪] [代々木]
Tips to enjoy ZARD・What a beautiful memory (2008)



[Memory 01・プロローグ…]


 ついにやってきた…"What a Beautiful Memory"、その時。
 今、往路の新幹線の中でこれを書いているが…自分の人生の節目というのは、
 どういう訳か、必ずこうして西に向かう新幹線に乗っているなぁ…と思う。

 しかし…会社を休んで、こうやって好きだった人の面影を追うべく旅立つのだから、
 自分のやっていることは、常識を逸脱している…ぐらいの自覚はある。
 でも。それほどに人を好きになれる自分の感性は、大切にしたいと思うのだ。


[Memory 02・Before the memory]


 当日朝は、見事、関東地方に台風直撃。午前中には過ぎ去るとの報道だったが…
 朝、起きて、ニュースを見ると…見事に新幹線はストップ中。…たどり着けるのか?
 迷っていても仕方ないので、9時、家を出る。雨は止んだ…あとは、新幹線だ。

 10時半、東京駅着。新幹線、運休+遅れ続出中。遅れがどれ位かの目処も見えず。
 …うーん…こりゃ、行く前からハードル高い…今日の大阪は…と、遠いっ…。でも。
「遠く離れても 心は止まらない 諦めたい 諦めない」
 そう、どんなに遠く離れても、心は止まらないし、諦めない!

 電車や発車番線が変更になりながら、40分弱遅れて出発。
 なに…ちゃんと出発してくれただけでも、良い…これで、普通通りに走れば、
 大丈夫…ちゃんと、開始には間に合う。道中は、前回のツアーの様子に耳を傾け、
 今日のことを色々想像してみたりする…。しかし、この歌声の主が居ないとは、
 想像しづらいし、想像するということはものすごく切ないことだなぁ…。

 転寝なんかもしつつ、新大阪にはなんと10分遅れで到着。凄い。
 どこでどんな風に遅れを取り戻したのか、全然分からなかった…。
 これで、ホテルにチェックインし会場入りすることが出来る。
 東京駅では、半ばPCなども持ったフル装備での会場入りを覚悟したが、
 それも回避できそうで、これで全神経を「ZARD&坂井泉水」に傾けられるっ!

 ホテルに一度チェックインし、淀屋橋・フェスティバルホールに戻ってくる。
 関東人の自分にとってあまりなじみの無いエリアかと思いきや、実はそうでもなく、
 なんとこの会場の2棟隣は、勤務先の本社だったところなのである。
 勝手知ったる感じで、地下を通り抜けて会場に入ると…そこらじゅうに、
 シックな紙袋を持った人たちが…ん!?まさか…と思ったら…そのまさか。
 白地に、シルバーで小さく「ZARD」と書かれている!ぐっ、もう、
 物販始まってしまったか…っ!急いで列の最後尾を探し、並ぶ。しかし…
 もう結構並んでる…くぅー、新幹線が遅れなければ、もうちょっと早く来れたのに。
 まぁ、ここまで来てしまえば、あとは坂井さんと向き合うだけ。
 列に並ぶのだって慣れてるし、届きそうで届かないもどかしささえ、愛しく思える!

 とはいえ、今までに経験が無いほどの時間がかかって、ついに物販へ。
 なんでこんなに時間がかかるのかな…と思っていたが、その現場について分かった。
 ZARDの物販、ちょっと他のアーティストとは違う感じなのだ。
 なんせ、係員の感じから違う。まるで宝石店の店員みたいな格好をしている…。
 そして、それがフロックではなく、欲している品を伝えると敬虔にそれを取り出し、
 白い手袋を嵌めた手で箱から取り出した上で、「こちらでよろしいでしょうか?」と
 逐一確認しているではないか。ぐはー…こりゃ凄い。ホント、宝石店みたいだ。

 さて、自分の番。
 とりあえず、みなさんには物販の品物リストを見ていただきたい。
 …。自分、初めてこれを見たとき、いくら現金を用意しようか迷ったが、
 とりあえず財布には8万円入れてきた。ま、いくらなんでもそこまで使わないだろ、
 そんな風に思いつつ…3万円のシルバーネックレスは買おう、ぐらいな想いで。
 しかし、この場に来て、周りの人間を見ていると、も、ものすごい…!
 さすが、ファン層が俺以上の世代だけある…金の使い方が尋常ではない。
 こんなに万札が飛び交っている物販を始めてみた…!で…それを見ていた自分も、
 なんか…凄く色々欲しくなってきた(爆
「いらっしゃいませ。どちらの商品を?」
 最初は、ネックレスだけ…とか思っていたのに
「以上でよろしいですか?」
 と言われる度に、
「あ…じゃあ、あとこちらもください…」
 とか言って…〆てン万円(爆)ぐはー、ちょっと使いすぎた…!

 しかし、どの製品も、どのパッケージも、そして何より紙袋のセンスが抜群だ。
 これなら「どっかのコンサートの物販で、賤しいぐらいに物を買い込んだヲタ」
 という感じではなく、銀座あたりでブランド品を買ってきたんですよ、
 みたいな感じで町を闊歩できる。実際、銀座を歩いたりしたら、
「あれー…あの紙袋、どこのブランドかなー…ZARD…ふーん…って、ええ!?」
 みたいな感じになること間違いなしな感じである。さすが坂井さん。
 こういうところへの配慮が出来るのも、素敵な女性の証拠ですよねー…!

   購入物はこんな感じ。真ん中の透明のものは、「負けないで」オルゴール。

 無事…というか、財布的には大打撃を受けつつ、物販終了。
 それはそれとして。早速、ツアーパンフを開封、中身をチェック。
 うーん…写真は既存の使いまわし&献花&音楽葬の様子で、目新しいの無いな…
 なんてページを捲っていたら…!!ぐは、今日のセットリストが公開されてる!
 こ、こういうのも珍しいな…と思ったら、さらにとんでもないサプライズが!
 飛び込んできた
グロリアスマインド
 の文字。グ、グロリアスマインド!?な、なにぃっ!!??
 このグロリアスマインドという曲は…坂井さんが生前、最後にレコーディングに挑み
 サビの所だけが収録された旨が、その歌詞とともに追悼本で公開された、
 そんな未公開曲なのである。そ、それを…この場で公開するというのか!?
 …こ、言葉にならない…っ!!

 表現できないような感覚に陥りながら、パンフに目を通しつづける。
 今回のゲストは、自分の好きな「明日を夢見て」「瞳閉じて」の作曲家、
 大野さんを始めとする作曲・編曲者、Garnet Crowの方々なども参加されるようで、
 なんとも素敵な空間ができあがるのだろうな…なんて思いを馳せる。
 なにより、このような追悼企画に集ってくれた各位の心意気が嬉しい。
 ありがとう…。

 ただ…
VOCAL 坂井泉水
 その文字が、空しくて、そして…やっぱり、この上なく切なくて悲しい。

 18時15分、少し空いた頃を見計らって入場。
 自分の席は「2階席、目の前が通路のド真中」という、最高の席。
 ステージ全体を俯瞰できる席が、やっぱり自分は一番好きだ。
 ところで…このフェスティバルホール、立派な会場だねー…。
 いくら再建するからといっても、取り壊すのはもったいないなぁ…。
 個人的には、思い出の場所を消してほしくない、というのもあるし、ね。

 ステージセットは、前回のツアーを髣髴させる構成。
 中央には、マイクと譜面を置くスタンドが…坂井さんの定位置かな。
 そう、これからの時間は、彼女のための時間。

 19時。ステージ上にバンドメンバーが集まり。
 そして、19時5分。照明が落ちて…。流れ出るイントロ。
 インストルメンタルの『負けないで』と共に、「美しい記憶」は幕を開けた…。


[Memory 03・IN "Your" ARMS TONIGHT]


■Introduction -「負けないで」インストゥルメンタル-

 メランコリックなメロディへとライブアレンジされた『負けないで』が、ホールに響く。
 ゆったりとしたサビの進行に、とてつもなく切ない気分になり…胸が詰まる。
 バンドのライブとは思えないほど、客席は静寂に包まれて。音は耳に響くも、
 視界は…悔しい事に、もう霞みに霞んで、何がなんだか分からない状態。
 ハンドタオルを用意してきてよかった…。本当に良かった…。

■揺れる想い・この愛に泳ぎ疲れても

 OPナンバーは『揺れる想い』。前回ツアーと脳内がシンクロさせる演出…か…な。
 でも…「揺れる想い 体じゅう感じて 君と歩き続けたい…」のボーカルとともに、
 前回はスポットライトを浴びながら中央から堂々と登場してきた彼女が…出てこない。

 …君がいない…。

 …その代わりにか、ステージ上のスクリーンに映し出される彼女の映像。
 でも、自分は…『揺れる想い』演奏時は、ずっとステージ上の「坂井泉水の定位置」を凝視、
 出てくるはずのない彼女を、視線で求め続けていたり…。理解はしているけど…けど…ね。

■IN MY ARMS TONIGHT・Just for you

 このあたりで、やっと映像のほうにも意識が行くようになってきた。

 てっきり自分は、トリビュート的に進んでいくものだと思っていたのだが、
 どうやら、未公開PVや、1993年に日本青年館で撮影した仮想ライブの映像を以って、
 進行していくという事らしい。セットリストを見て、どうにも初期の曲が多い気がしたが、
 これで納得である。最近の、大野さんの曲も好きな自分としては残念だが、高校時代、
 下宿にはTVの持込が禁止されていた為、MSの坂井さんを見れなかった自分としては、
 大スクリーンで見れる映像が嬉しい。しかし…美しい…この上なく可愛く、美人である。

 写真集などを見てもらうと分かるが、この1993年11月の坂井さんは、
 表情もすこぶる健康的で表情も比較的明るく、自分の好きなセッションの一つである。
 ラフな衣装は、若干、時代を感じざるを得ない感じだが、それ以外は言うことも無い、
 素敵な映像である。しかし…これがこんな形で活きることになるとはなぁ…。

■遠い日のNostalgia・Season・ひとりが好き

 明確な記憶が無く、あいまいで申し訳ないのだが、この前後で進行役の野田さん登場。
 ステージ下手の袖、ピンスポットを浴びつつ、自己紹介&坂井さんとの関係を述べた後、
 バンドのドラムとして、ZARD初期メンバーである黒瀬さんが参加されている旨を紹介。
 なんとなく、微妙な感じになる…。ちょっと今更感が過るも、ZARDという概念が、
 バンドとしてまだ存在していた「HOLD ME」時代が懐かしくも…。

 「遠い日のNostalgia」は、そんな想いを加速させて。
 秋の空気のように綺麗に乾いたイメージで歌い上げるラブソングは、自分が大好きな、
 坂井さんの持っていた世界観の一つ。…乾いたイメージなのに、頬は湿ってしまうけど…。
 「Season」も合わせて、Greeageな情景を見せてくれる楽曲だけに、余計染みてくる…。
 ここらへんは、個人的に好みの選曲で、うれしかったなぁ…。でも同時に、
 今回は盛り上がるライブではなく「追悼」の二文字を強く意識させられたような気も、ね。
 ZARD屈指の美しいメロディと、分かりやすい青春の歌詞…本当にお勧めな曲…!

■不思議ね…・I want you

 ここあたりになってくると、かなり心も落ち着いてきて、色々な事が見えるように。
 バンドのドラムワークが、見事なアイコンタクトで行われていたり、
 パーカッションの熱の入りようなどに目が奪われる。しかし、映像と坂井さんの歌声は、
 FIXされたものなのに、見事なまでにバンドがそれに合わせていく事に感動する。
 前日は、音が大きすぎたり、演奏と映像がズレていたりもしたみたいだけど、
 この日はそんな違和感、全然感じなかった…凄い!

■突然・君がいたから

 野田さんにより、作詞家としての坂井泉水、そして、そんな彼女が他アーティストへ、
 詞を提供することについてのコメントなどの紹介があり、追って、そんな彼女の側面を、
 という流れで、Field Of Viewに提供された2曲へ。スクリーンの中で、海岸を歩き回る、
 そんな坂井さんが非常にまぶしい…。しかし、この2曲とも…素晴らしい楽曲だ。
 それもそのはず、「作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎・編曲:葉山たけし」の構成は、
 「負けないで」「マイ フレンド」を手掛けた鉄壁のフォーメーション。
 鳥肌が立たずに居られるか…っ。

■眠り・素直にいえなくて

 作詞家としての坂井さんを存分に味わった余韻を保ちつつ、今度は作曲家坂井泉水へ。
 そういえば、10周年記念本には「作曲の勉強をしている」旨の記載があったが、
 残念な事に、こちらは殆ど日の目を見る事が無かった…切ない。

■少女の頃に戻ったみたいに・もっと近くで君の横顔見ていたい・瞳閉じて
 (アコースティックコーナー with 大野愛果)

 ここで、ZARD後期の主力作曲家である、大野愛果さんが紹介とともに登場。
 前回ツアー時も好評だった、アコースティックコーナーを再現…との事で、
 ステージ上のグランドピアノで大野さんが演奏を開始。最初は、ファン待望の
 「少女の頃に戻ったみたいに」。実は今、このタイトル曲を書いただけなのに、
 鳥肌が立った…それほどにファンの心に染込んでいる、C/W中最高と誉れ高き曲。
 今回、大野さんの演奏で、この曲が聴けたのは…本当に良かった点の一つ。

 でも…「瞳閉じて」は、前半のゆったりから後半の盛り上りへの流れが好きなので、
 前回と同じなアコースティックではなく、別の側面を見せてほしかったなぁ…。
 大野さん縛りがあるならば、「明日を夢見て」「かけがえのないもの」あたりを、
 ぜひ、アコースティックで聴いてみたかったのだが…。贅沢かな?我侭かな?

 なお、この曲の終了後、大野さんは下手側最前列を定位置とし、コーラスで参加。
 彼女は歌唱力も抜群なので、コーラスにも参加してくれる事が、嬉しい。

 ところで、このコーナーの途中で、隣の人が、荷物をサガガサしながら、
 ビニール袋の中からチョコレートだの、ペットボトルを出したりして飲み食いしてて、
 なんかもー…酷かった。よりによって、このコーナーでやるかね。というかですね、
 このホール、飲食禁止でしょ…。クランキーとか食べてる場合じゃないでしょう…。
 もうちょっと、坂井さん追悼の意思を持ったらどうかね…情けない…。

■あなたに帰りたい・I still remember

 ここで、入場時に渡されたサイリュームを発光させる。
 発光を促すアナウンスや、発光させるための間があるのかと思いきや、それがなく、
 美しいイントロの途中に、客席中が慌ててガサガサと荷物をからそれを取り出し、
 バキバキという音を立てながら発光させることに。もちろん、自分もそうしたのだが、
 なんというか…曲に対して申し訳ない気分になった…。

 さらに…サイリュームの振り方などに統一感がまったく出ておらず、これまた寂しい感じ。
 こんな所は、自分の本拠地であるアッチ(どっち?)のほうに軍配が上がりますな。
 アッチでは、もう既にレアになっている「横振り」を久々に見たような気がする。

 ちなみに、サイリュームの色は、みんなバラバラ。統一感を出すのかと思ってたが、
 どうもそうでもない様子なものの、青色が突出して多い印象も受け…要するに中途半端。
 これには、ちょっと首を傾げてしまうな…武道館までには、方向性を定めて欲しいもの。
 で、自分はいうまでもなく、青色でした。そりゃそうでしょう、俺の愛の色だから(謎

■My Baby Grand

 ここで、ピアニスト羽田さんが登場。坂井さんの一番お気に入りだったという曲、
 「My Baby Grand〜ぬくもりが欲しくて〜」の演奏を開始。ご存じない人の為に…だが、
 「Baby Grand」とは、彼女お気に入りのトイピアノの事であり、レコーディング時には、
 常に彼女のそばに居た存在である。歌詞との関連性はいまいち不明なのだが…。

 で、こちらの曲は、坂井さんが歌い上げる形ではなく、歌詞を野田さんが「朗読」。
 なかなか斬新、かつ、良い雰囲気で、なかなかの志向だな!と思ったが…賛否両論か。
 ちなみに、オケの上で歌詞を「朗読」するのは、実はかなりのスキルが要求されるもので、
 野田さんは非常に上手くこなしていたと思う。自分、昨日カラオケで試してみたものの、
 全然にっちもさっちも行かない感じであった。想いが足りないのかもしれないな…。

 なお、中村さんは、後日、ZARD楽曲のピアノ独奏CDを発表予定との事。
 どんな曲が選ばれるか…楽しみですね。「pray」とか収録されてくれないかな…。

■止まっていた時計が今動き出した

 ここで、Garnet Crowの中村さんが登場。黒い衣装に身を包み、上手側最前列に立つ。
 凛とした立ち姿は非常に美しく…下手の大野さんと合わせ、凄いコーラスが揃った。
 しかし…こうして歌手でもある作曲家の二人が、坂井さんの追悼ライブに参加の上、
 自らコーラスを手掛けてくれるとは…。お二人にファンからも、感謝の念を届けたい…。

 演奏の前に、中村さんが提供した曲「止まっていた時計が今動き出した」の紹介と、
 泉水さんがラジオ番組に寄せたこの曲に対するコメントが、会場に流れる。
 「止まっていた時計が今動き出した」のフレーズは、彼女がどこかで使おうと思っていた、
 思い入れのあるフレーズとして有名だが、そんなことや日常の事をつらつらと。
 しかし…彼女のトークからは「緊張」が見えるね…ここも魅力なんだけど。
 日本を代表する女性アーティストなのに、そんな脆さが見える所もいいんだなぁ…。

 それはそれとして。
 曲は、ロンドンの風景をベースにした、新規作成と思われるPVをベースに演奏。
 ベースは「マイフレンド」のPVセッションと同じもので目新しくない上に、
 「マイフレンド」は曲のイメージが非常に強いため、脳内ミスマッチを起したり…。
 しかし、コーラスワークはやっぱり凄かった…。中村さんが、不動で凛と歌うのに対し、
 大野さんが手でリズムを取りながら歌う…そんな相違点も、ビジュアル的に良。
 そして…ライブ序盤以来出番が無かったハードな曲調に、しばし酔いしれる…。
 こういうZARDも、やっぱり魅力的…だなぁ…。多彩にして多色、素晴らしい。


[Memory 04・OH MY LOVE...]


■サヨナラは今もこの胸に居ます・もう少し あと少し…

 ずーっんっ…とみぞおちが重たくなるような、ハードな歌を堪能した後は、
 明るめのPVの「サヨナラは今もこの胸に居ます」へ。湘南のサブマリンドックも、
 いまはもう無くなってしまったなぁ…なんて思う。でも、明るい雰囲気は救いになる。

 そして「もう少し あと少し…」で、また暗めの雰囲気に巻き戻される。
 不倫ソングということで、KANの「悲しみの役割」とセットのセッションが見てみたい…
 などと思いながら聴く。この曲、歌詞の中で「追伸:」というフレーズが出てくるのが、
 作詞家坂井泉水の真骨頂だと思う。この追伸の後の歌詞が、言葉は軽く内容は重いので、
 「不倫相手からの手紙」に妙なリアリズムを持たせている…と感じ、ゾクリと来る。
 なお、この曲のPVは初見。食い入るように見入るが、やっぱり雰囲気は暗い。

 このあたりで、「あなたに帰りたい」から散発的に発生していた手拍子が、
 だんだんと会場全体に広がるようになってきたので、自分も参加する。すると、
 大体同じごろに、パーカッションの車谷さんが「このリズムで」というかのように、
 大きな仕草で手拍子をリードするように。うむ、いい仕事です!後ろにいた雪ちゃんも、
 これに続いたりして、段々ステージと客席の距離が近くなってきた。いい傾向。

 ちなみに、雪ちゃんとは、岡崎雪さんの事。前回のツアー時、「きっと忘れない」での
 コーラスワークで俺の心をトリコにしてしまったこのお方、今回もいい仕事をしています。
 あの時、湧き上がった歓声は、如何に彼女が凄いかを物語ってるよなぁ…。

■こんなにそばに居るのに

 中盤以降は、1曲ごとに曲調が急転する展開で忙しい。あの重めの歌の後…は、
 なんと「こんなにそばに居るのに」!これを持ってくるか…アップテンポへ急展開。
 前曲が前曲だけに、とてつもなく早い…早く感じる!手拍子する手が痛いっ。

 で、今回は、この曲でバンドメンバーの紹介。
 交互にスクリーンに映し出されるバンドメンバーは、キチンとカメラ目線のナイスワーク!
 男性はよりカッコよく、女性はより美しく!ここでは、パーカッションの車谷さんと、
 コーラスの雪ちゃんが見所!雪ちゃんは、明るい曲の時は楽しそうに歌ってるの素敵なのさ。
 いつの日か、彼女が歌う「あの微笑みを忘れないで」を聴いてみたいっ。

 しかし、これはライブ映えする曲だなぁ…。90年代ビーイング黄金時代のサウンドだが、
 まさに、自分にとっての「J−POP」がそこに展開しているわけで、サビの所など、
 ゾクゾクしながらリズムを取っていた。「追悼」の雰囲気が消し飛んでしまうほど、
 攻撃的なリズムと歌詞なものの、逆にそれが背徳的で気持ちがいいといった感じか。

 後述の「愛がみえない」にも見える、このスピード・爽快感も、自分の好きなZARDだ。

■きっと忘れない

 前曲のスピードに酔いしれて、ふうっ…と大きく溜息をついていると……。!!
 待ちに待った、この曲…かわさき的ZARD最高曲が、いよいよやってきた。
 そう…「きっと忘れない」!あの日から、何度この曲を聴いた事だろう…そして、
 何度この言葉を唱えた事だろう…。手に持っていたサイリュームをポケットにしまい、
 変わりに…ハンドタオルを持つ。…恥ずかしながらも、号泣覚悟…。

 …と、思いきや。悪い意味ではなく、実にアッサリ、実に爽やかな感じで、
 さらりと歌い上げる坂井さんに、あっけに取られて終わってしまった…。あれ?
 いや…この、淡々とした感じもZARDの持ち味なのだが、この状況、
 この心境で、それが今の自分に通じるとは、全然思っていなかった…。凄いな…。
 期待…というか、心構えが強すぎたんだろうか?

 でも、思いっ切り号泣したかったと思う自分も居たりして。
 武道館では、思いっ切り心を開放してみるかな…なんて、今、思ったりしてる。

■君がいない・心を開いて

 そして…まさに今の状況を歌い上げる「君がいない」へ。しかし…これは…。
 むしろ、この曲は客席による合唱という演出が良かったんではないだろうか…。
 坂井さんに「君がいない」とかいわれても…切な過ぎる…。

 続いては「心を開いて」。そう…このままずっと忘れたくない…。
 でも、時間は段々と近づいてきた…現実が想い出に変わってしまう、その時が。

■Today is another day・愛が見えない

 ゆったりとした「Today is another day」を経て、スピーディーな「愛がみえない」で、
 BPM−MAXへ。客席からは、前回のライブ時と同様、イントロでどよめきが。
 うーん…このどよめきは良いよね〜如何にも「ライブ」という感じがするっ。
 待ってましたぁっ…!!という気持ちが色濃く出て、シンクロするのが気持ちいい。

 PVは、よく知られたモナコの風景のもの。この頃の坂井さんも、元気そうで良い。
 良い意味で、巡航状態に入った安定性みたいなのを感じるし、南欧の風は、
 ZARDの明るいサイドのイメージによく合ってる…。しかし、もうちょっと、
 アップの描写があってもいいんじゃないかなぁ…。

■マイ フレンド・Don't you see!

 そして…いよいよ「マイ フレンド」。ZARDシングル最後のミリオン作品。
 最高の勢いを持って駆け抜ける…「どんなに不安がいっぱいでも、まっすく自分の道を信じて」
 そんなメッセージが熱い!

 そして、最後の曲は、前回ツアーのトリを務めたこの曲「Don't you see!」。
 この曲の見所は…未公開PV。このシングルのジャケットは、NYの交差点で、
 信号機にぶら下がるオチャメな坂井さん…というのはよく知られた話だが、
 なんと今回のPVは、それに至る一部始終を収録しているのだ!くはー…これは凄い。
 躊躇いながらゴミ箱に登ったり、ケバケバしいメイクに身を包んだりと、
 画面も、画面の中の坂井さんもどんどんと変わっていくっ!め、目が離せない!
 最高だったのは、信号にぶら下がるべく、ポールを掴んだ時、手が汚れたーっ、
 見たいな感じでカメラに向けて手を広げて見せた時の、ちょっと困り笑いな表情。
 ぐは、激キャワやわぁっ…。もっと、こんな坂井さんを見ていたかったー…っ。

 最後は、現地のスタッフと思しき人と全員集合で記念撮影!みたいな感じで、
 このロケ、楽しかったんだろうなー、なんて微笑ましい状態に。

 今までは、比較的バンドのほうに目を向けている事が多かったんだけど、
 この曲はさすがに、ずっとPVに見入っていて、拍手もなんか中途半端に…。
 いやはや、凄いのが最後に出てくるものです。うれしすぎるサプライズでした。

 曲が終わると、ステージは暗転し…一旦、バンドメンバーは退場。それと前後して、
 早くもアンコール開始。もちろん、声を出すような形ではなく、ひたすら拍手を行って、
 再登場を促すバージョン。3分ほど叩いていただろうか…そろそろ手が痛くなってきた…
 という絶妙なタイミングで、メンバー再登場!

 …でも、やっぱり坂井さんは出てこない。それでも、視線は彼女を求めている自分が、
 なんともいえずもどかしい。分かっているつもりなんだけどなぁ…。

■Oh my love

 そして。アンコール一曲目は…。

 セットリストを見た時から、ドキドキが止まらなかった曲「Oh my love」。
 大ヒット曲が収録されているわけでもない「OH MY LOVE」をダブルミリオンまで牽引、
 坂井さんご本人からも「シングルカットしたかった」とコメントが残っており、
 さらに、アルバムオリジナル曲ながら「Golden Best」に見事収録されたという、
 おそらくコアなファンほど好きな人が多いと思われる、ZARDきっての超名曲が、
 どう、このステージで再現されるのか…考えただけで、クラクラしていた。

 と。

 曲が始まった途端、ぶっ飛んだ自分がいた。いや…会場全体がドヨめいた、が正しい。
 正面に映し出された映像は、どこかのTVスタジオで歌っている姿と思われるが、
 な、なな、なんと…坂井さんの衣装が、際どすぎるデニムのショートパンツ姿で、
 あ、あ、あっ…足、足が…!!ちょ、ちょっと、そ、そんなに露出してっ…!
 みたいな状態だったのである。なんか、見てはいけない物を見てしまった…
 そんな感じに陥ったのは、自分だけではあるまい…。いや、それほどに凄い…。
 美しいとかいう次元を超えて、悩ましいという領域…。もう、悲しいかな、
 全然曲に集中できず、パンで写しているシーンでも、視線がそこに行ってしまう始末。

 あー…坂井さんをそういう目で見たくはないのにー…にー…。

 罪悪感に駆られながらドキドキしていたが、最後のほうは落ち着いてきて、
 なんとか歌詞や演奏のほうにも、耳ぐらいは向くようになってきた。やはり、曲もいい。
 「あなたといる時の素直な自分が好き」「私の存在どれぐらい?」…くはー、甘い!
 坂井さんの「恋しているのって可愛いですよね」というコメントが染みる歌詞だ。
 今の自分でさえ、そんな風に思ってしまうのだから、高校生のときの自分は、
 もっとトンでもないことを考えていたに違いない。

 PVを含め、堪能させていただいた…。やはり、この曲は良い。PVも良い。
 この曲がきっかけになって、ZARDのアルバムオリジナル曲が見直されたら、嬉しいなぁ。


[Memory 05・That's what I want to say to you...]


■グロリアスマインド

 そして、いよいよ…未発表曲であり、彼女の最後の作品である、グロリアスマインド。
 …しかし、サビしか音源がない曲を、どのように公開するのだろう…というか、
 そもそも、サビ以外の部分などの編曲が、終わっていたのか?

 ナビゲーターの黒田さんが、言葉を紡ぐ。この曲が、最後のレコーディング曲であること。
 そして…サビ以外は、英語の仮詞による録音で演奏されるということ…そして、なんと…
 アニメの主題歌を歌う事を楽しみにしていた坂井さん故に、コナンとのタイアップにて、
 この曲が秋に発売されることが決定したということ…!!

 英語での仮詞についても驚いたが、もう発売決定している事にもおどろいたっ!
 (注:実は、ツアーパンフにはその旨の記載があり、事前に読んでいた人は気付いてた)
 客席からは、驚きの歓声。もっとも、困惑と若干混じっていたような気もするが…。

 「Give me the reason why you leave me alone...」
 ……。
 …………。
 That's what I want to say to you...だよ…。

 正直、曲の完成度が高いとは思えなかった。仮のボーカル…しかも闘病中のだけに、
 サビ以外の部分は不安定さだけが先行している感じがしたし…。

 でも。
 こうして彼女の声を聴けるのは、本当に尊い事だ…というのを、再認識。
 グロリアスマインド…彼女の荘厳なる心を…ZARD Familyとして、しかと受け取りました…。

■永遠

 客席全員が、心を新曲に飛ばし、余韻覚めやらぬ中。
 黒田さんの「永遠、pray、さわやかな君の気持ちの作曲を担当」との紹介と共に、
 ゲストの徳永さんが登場し、最前列下手中央寄りに陣取る。彼といえば、この曲。

 「永遠」の演奏が始まった。スクリーンに映るは、前回ツアーのOPも飾ったPV。
 残念ながら、坂井さんの姿はあまり確認できないPVだが…その分意識は演奏へ。
 …名曲だ…色々な経緯があったことから、妙にファンの間で話題に上る曲だが、
 歌詞、メロディともに完成度は非常に高いではないか…自分は、この曲が大好きだ…。

 この刻が永遠に…。そして、坂井さんとZARD Familyの間に永遠が見えるように…。

■負けないで

 いよいよ最後の曲!

 最後のゲストとして…「Don't You See!、マイ フレンド、そして…負けないでを担当された」
 そう、葉山たけしさんの登場!徳永さんと反対側、上手側最前列中央寄りに立ち位置を見つけ。

 演奏されるは…セットリストを覚えて無くても、分からないはずは無い…「負けないで」!

 野田さんの「みなさんも、一緒に歌ってください!」の言葉と共に始まったイントロ。
 客席からの拍手も一段と大きくなり…ふと、気配を感じて後ろを振り返ると、
 ちらほらとスタンディングを始めた人がいる。!!こ、これは俺も立たねば!!
 思い切って腰を上げる始めた瞬間、左右の人もほぼ同時に立ち上がり、みなスタンディングへ。
 イントロが終わる頃には、2階席はオールスタンディング。よしっ、これでこそ…だっ!!

 「ふとした瞬間に 視線がぶつかる」
 このライブで初めて声をあげる。こうして、みんなと空間を共有できるのがうれしい。
 そして…。
 「どんなに離れてても 心はそばにいるわ 感じてね見つめる瞳」
 サビの一番盛り上がるところ。もう…心は踊りつつも自然と涙が…という状態。
 お互いが、この気持ちで居られたら…いや、居続けなければ…!!

■ED

 大歓声の中、ライブは終了…。坂井さん一番のお気に入り楽曲「My Baby Grand」の中、
 バンドメンバーが全員集合、正面一列に並び、カテコ状態で客席に向かって挨拶。
 客席側も、精一杯のスタンディングオベーションでそれに応える!

 微妙な空しさも感じる一方で、やっぱり来て良かった…!と感無量になりながら、
 ホールを出る。時間を見ると21時23分。結構長かったかなー。後ろから、
 「凄く長いねっ!武道館、これだと家に帰れないかもー!」
 という声が聞こえた。確かに…これは、日帰りにしなくて良かった。

 帰り際、どうしても「グッズの袋」が欲しくなり、再度グッズの列に並び、
 殆ど金が無くなっていたから(苦笑)、メモリアルノートだけを購入する。
 袋を売ってくれたらいいのにぃ…なんて思いつつ。

 最後、「本日の催し物」の掲示を撮影し、コンビニに寄って「袋を入れる袋」を購入。
 この袋は宝物にしよう…なんか、ものすごく気に入ってしまった!(笑

 しかし…全体として、凄くスッキリとした、あまりサメザメとした方向に行かない、
 ZARDらしい爽やかさと凛とした雰囲気を持ったライブだったかな、と。
 もちろん、何度も言っているように、坂井さんが居ないという空しさは拭えない…、
 けど、それを補ってあまりある、気持ちの強さみたいなのが見えたかと。

 翌朝は、ホテルでmp3プレイヤーにライブの曲順にファイルを詰め込んでから、帰京。
 新大阪駅のプラットフォームで…「遠い日のNostalgia」を聴いて、思わず涙したりしたのは…、
 誰にもいえない秘密だったりします…(苦笑

 でも、それほどの…Memoryになったんですよね…。


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