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私家版ベスト

センチメンタリズムに走らず、遺族の側の気持ちもきちんと入れて死刑制度の矛盾を描いているのがいい。

全く見ず知らずの凶悪殺人犯の死刑囚の精神アドバイザーを引きうけることになってしまったシスター(S.サランドン)。死刑執行までの僅かの間の心の支えになってあげるという、頭の下がる崇高なお仕事である。はじめは殻に閉じこもった死刑囚(S.ペン)も少しずつ心を開き、終には自分の犯した罪に正面から対峙し、安らかに刑を受け入れるようになる。2人の間に友情や信頼とは違った何か精神的な強い繋がりができていく過程にこころを打たれる。

視点が死刑囚側にあるので、どうしても気持ちが甘くなってしまうが、時々使われる殺人現場のフラッシュバックが安易な同情を打ち消してくれる。

死刑囚のアドバイザーをしているというだけで、遺族や死刑肯定派たちから敵視される矛盾。憎しみが憎しみを増幅させ、袋小路に入っていく悲しさ。答えが見つからない重苦しい気持ちのなか、S.ペンの安らかな最期の表情に少し救われた気がした。

死刑執行で死んだ娘が少しは救われるのではないかとすがるような思いの遺族。だが犯人が死んだからといって何かが変わったのだろうか。行き場のない遺族の気持ちは長い時間をかけて癒さなければならないことを暗示するような静かな静かなラストシーンだった。

S.サランドンは実に5回目のノミネートにして、初のアカデミー賞。恋人(T.ロビンス)監督作品での受賞で、嬉しさも百万倍だったでしょう。

実ははじめ「パックマン家の人々」かと思ってた。ビデオゲームみたいに追いつ追われつのパニックコメディーなのかと……。原題は「Parenthood」。親であること、子育て、という意味なのかな。

バックマン兄弟はそれぞれ家庭に問題ばかり。運動が苦手で引っ込み思案の息子に気を揉む父親(S.マーチン)、英才教育に熱心な余り妻に逃げられる夫(R.モラニス)、反抗期の娘と息子に手を焼きつつ女盛りを悶々と過ごす離婚妻(D.ウィースト)…。彼らの父親(故ジェイソン・ロバーズ)も、時々ふらっと現れては金を無心する放蕩息子(T.ハルス。アマデウスの人ね。)に頭が痛い。なんだかんだ苦労ばかり多いけれど、最後にはやっぱり親子っていいなと思わせる後味のいい映画。

頭悪そうで無謀だけど一本気のいいやつをK.リーブスが好演。娘の交際相手としては気に入らなかった母親(D.ウィースト)が最後に2人の危機を救う時に、その理由を言った台詞がまた良い。家族っていいなぁと感じる台詞だった。

妻に逃げられた夫が職場(小学校の教室)に押しかけてカーペンターズの「Close to You」を歌うシーンも好き。まぁうまくいったからいいんで、失敗してたらただの迷惑なストーカーなのではあるが…。

僕自身運動神経が鈍いので「自分のところに飛んできた外野フライ」というのはとっても共感できるサスペンス。みんなの視線が自分に集中しているのが分るし、もし捕り損ねたらどんな罵声を浴びるのかと余計な事ばかり考えて、自分の窮地を呪うとってもいやーな長い時間である。野球なんて嫌いだーって感じ。その分、うまく捕れた時はほっとするし、自分で自分を誉めてあげたい(by有森裕子)というか少し誇らしい気分になれる。運動神経のある人には分らないかも。息子のナイスキャッチを見届けたS.マーチンの大げさな喜び様が微笑ましい。

最後は強引にハッピーエンドに持って行かれるが気にならない。これからも苦労する事は多いだろうけれど、いつかきっと問題は解決する…と希望を持たせるいい終わり方。僕自身、家族への愛情が薄い方なので余計にこういうのに弱いのかもしれない。

D.ウィーストがアカデミー助演女優賞、ランディー・ニューマンがオリジナル主題歌賞にノミネートされてます。

不況に苦しむ北部イギリスの炭鉱の町、労働組合と当局の一触即発の緊張状態、親の望む姿と自分のやりたい事のギャップに悩む子供、子供を理解できずに戸惑う親、ひたむきに夢を追う姿……さしずめ「フルモンティ」「ブラス!」「僕のバラ色の人生」を一緒にして、「シックス・センス」「フラッシュ・ダンス」を混ぜたような感じ(←強引か)。主人公の男の子そのままに、あくまでもまっすぐなストーリー。見ている人が思った通りの展開になるので何も心配することはない^^

なによりビリーの目がいい。歯を食いしばって、眉間にしわを寄せて、独りでターンの練習をしている時の一点を見据えた真剣な目。眉間の皺もセクシー。頑張れ!と思わずにはいられない。ロンドンのバレエ学校のオーディションの結果の通知が届いた時、一緒にあのテーブルについた気持ちになってしまう。

組合のストライキのことで頭が一杯で、あまり息子のことに気が回らなかった父親。バレエは理解できないが、息子が本気なのが分ると一転その夢を叶えてあげようと奔走する姿に胸が熱くなる。しかもいい男なの*^^*。喧嘩ばかりしていた兄がバスを追いかけながら言った言葉。じんと来てしまった。

ビリーがバレエに出会うシーンはあっけないほどあっさりしている。少し拍子抜けしてしまったが、そもそも劇的なシーンを期待するような思い込み自体が偏見なのだろう。反省。親友がゲイ(というか服装倒錯)だと分っても変わらずに接しているビリーにとっては、ごくごく自然にバレエと出会ったにすぎないのだ。

ラストの「それから14年後…」ってのはご愛嬌。でもあの席に先生がいなかったのが残念。

スケベのことしか頭にない無邪気な少年2人と、恋人の浮気でヤケになっていた大人の女の3人が、光と影の国メキシコを行くロード・ムービー。「天国の口」とは主人公の少年たちが女の気を引くために口からでまかせで思いついた架空のビーチの名前。思いがけずナンパをOKされた彼らは、適当な場所にめぼしをつけて借りた車で無謀にも架空のビーチ目指して出発する。ともかくとりあえず少年たちには目的地があり、女はどこに向っているのか分かっていないはずだった。ところが実際は女はある覚悟を持って旅に参加していて、一方の少年たちはこの夏の経験が自分たちの人生の大きな転機になるとは思ってもいなかったという、逆の事実が最後に明かされる。なんとも皮肉で暗示的なオチである。貧富の差、少数民族、政治の腐敗など、現代メキシコが抱える根の深い社会問題もところどころに挿入されるが、無邪気な少年たちの視界にはそれらは全く入ってこないというのもまた暗示的。

映画の中で少年たちは常に股間を膨らませ、女は節操も無く股を広げる。日本人の考えがちな淫靡な秘め事としてのSEXはそこにはない。実にあっけらかんとしているのはラテンの感覚だからなのか、まだ理性より下半身の考えることが優先する年頃だからか。数年後、人生に対する疑いや不安など何もなかった最後の夏が過ぎ去ったことを自覚した元少年が、久しぶりの再会の後、「もう過去は振りかえらない」と少年期に別れを告げる決意を込めたようなラストのせりふが秀逸。いつまでも切ない余韻を残してしばらく映画館の席を立てなかった。

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