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私家版ベスト

平凡な繰り返しの日常。ある日どこからともなくよそ者が現れてひと騒動を巻き起こす。はじめは違和感があるもののやがて気がついた頃にはお互いに認め合い、成長し、以前とは違う自分たちに目覚める……。ちょっと強引だけれどよくあるパターン。勝手に「転校生もの」というジャンルにしている。

バグダット カフェも転校生もの。乾ききっていた人間関係(というか、ブレンダの心)がどんどん潤っていくのが見ていてとても心地よい。ラストのジャスミンの台詞、照れ隠しとブレンダへの友情がよく現れていて何度見ても思わず微笑んでしまう。僕にとって究極の「やさしくなれる映画」である。

第一印象で人を好きになり、次に内面を好きになって恋は愛に変わる。やがて相手の隠していた部分、自分と異質の属性も見えて来た時、そういう部分も含めて相手を受け入れ、愛することができるだろうか、と問いかけられているような気がする。嫌なところが見えたとたん「そんな人だとは思ってなかった」とあっさり冷めてしまうパターンを自分の廻りでもよく見かけるし、ネガティブな印象ってポジティブなやつの何倍も影響力があるんだなって感じることも多い。人を愛するとは自分へのチャレンジでもあると再認識させられる、そんな映画である。

最後は逃げ場が無くなって絶望的な終わり方になってしまうのに、充実感というか清々しさまで感じるのが不思議。というかそこがこの映画のいいところ。

決してハッピーエンドではないのに、あるいはこれはハッピーエンドなのではないかとも思ってしまう。最初はおろおろするばかりのテルマが、後半一転、緊張の糸が切れてしまったルイーズをどんどん引っ張っていく方に変わってしまうのが頼もしく面白い。暴力亭主の言うがままで一人では何もできないと思い込んでいた彼女が絶望的なシチュエーションの中、自立心に目覚めて少々やりすぎなほど主導権を握ってしまうのが痛快であり、勇気づけられる。

そのテルマが変わるきっかけが、行きずりの美青年(若いブラピが超キュート)との一夜のSEXってのがなんともはや。女ってSEXで変わるのね。 僕も自分を変えてしまうような夜を体験してみたい…と思う今日この頃。もう手遅れだって。

僕はどこにも行かない。それは弟に対する優しさの言葉でもあり、自分自身への言い訳でもあった。引きこもりの母がいるから、知恵遅れの弟がいるから、だからギルバートはずっとこの町に居続ける運命なんだ……自分自身も回りの皆もそれが当然だと疑っていなかった。トレーラーで街から街に旅するアニーと巡り合って自分のために生きることを初めて考えてみる。それは決して自分勝手なのではなく、自分らしく生きる第一歩のために殻を破ること。

ジュリエット・ルイスは演技なのか地なのか分からない相変わらずのだる〜いしゃべり方だけど、妙に映画全体のすがすがしさに合っている。自分に限界を感じる時、静かな元気と勇気をくれる、そんな映画である。

言葉には不思議な力があって、声に出して話していると頭の中で漠然としていたものがだんだん整理されてくることがあります。あ、自分ってこんなこと考えていたのかな、と人に話しているうちに発見することってないだろうか。

入国管理局での面接に臨んだ偽装夫婦が、一夜漬けで覚えた模範回答を棒読みしているうちに相手には自分に無いいいところがあることにお互い気づき始め、やがて実は愛情を抱いていたことを確信するようになる...このシーンがいい。あ、僕はこの人のことが好きなんだ、って改めて実感するのっていいもんです。

主婦のひとにとって冷蔵庫の中を見られるというのは裸体を見られるに等しいほど恥ずかしいのだという。そこには決して普段は他人には見せることのない、取り繕うところのない自分自身そのものの存在があり、また往々にしてある種のコンプレックスの元でもあるのが裸と冷蔵庫の共通点だろうか。矛盾するようだがそういう秘めたコンプレックスを暴かれた時、耐え難い恥辱は快感に昇華することもあるもので、恐いもの見たさに似た気持ちも出てくるのが複雑なところだ。

FBI研修生のクラリスは、幼い頃に受けた心の傷を他人に明かすのはおろか、自分自身で直面するのさえ避けて生きてきたのだろう。FBIという職業を選んだのは、そのトラウマをふっきるためなのか。鋭く何かを感じたレクター博士は、クラリスの過去に遠慮無く踏み込んでいく。切羽詰まっているクラリスは、戸惑いながらも封印した過去と対峙するのを受け入れていく。捜査の中核を異例の抜擢で任されたという責任感だけでは無く、耐え難い痛みと苦しみから抜け出せるのではないかという期待もあったのだろう。

二人の緊張感あふれる攻防が、最後まで一気に引っ張っていく。クラリスは過去を振り切ることができたのだろうか?「羊は泣き止んだのか」博士の最後の質問にクラリスは答えていない。

おもちゃが随所で効果的に使われている。一番好きなのはおもちゃ売り場の特大ピアノを社長と2人して足で連弾するシーン。最初は戸惑いながらもだんだん2人の息が合ってきて、次第に廻りの人たちまで引き込んでしまう。少年の心(少年だから当たり前か)のトム・ハンクスがその魅力で周囲の人を惹きつけるという映画全体を凝縮しているようだった。演奏のが終わったところでちょっと涙腺が緩んだ。

もうひとつ、出世のためなら誰とでも寝る?ちょっとすれたキャリアOLを部屋に泊めた時に、落ち込んでいる彼女を元気付けようとトランポリンに誘うところ(部屋にトランポリンがあるのもすごい。)彼女がピュアな心を次第に取り戻していくのが分かるいい感じのシーンだった。

本当の少年の頃より、大人になったときの方がなぜか数倍「子供っぽい」ような気がするのが何だが、気にしてはいけない。子供がこんなに純粋な訳ないじゃんっていうのも禁句。おそらくこの映画でいう「子供の心」は大人が勝手に持っているノスタルジックな幻想なのだから。

戦争、兄弟の確執、アメリカンドリーム、挫折、希望、再起、ひたむきさ……そして野球。いかにもありがちな題材が「これでもかっ」と、てんこ盛り状態でゲップが出そうなほど。さらに涙あり笑いありと、まるで松竹新喜劇の様で嬉しい限り。

自暴自棄で半アル中、やる気ゼロだったトム・ハンクスが、選手のひたむきさに刺激されて生きがいを見つけていくのが感動もの。皆が選手のことを「Girls」と呼んでいたのも優しさがあって印象的。

主役のG.デービスの回想という形をとっていているのですが、このジーナ婆さん、顔はやたら皺くちゃなのに、背は推定185cmあるわ、腰はピンと立ってるわで、こんな婆さんいたら恐いぞ、って感じで笑えます。それにしても、何故ラストのシーンにマンドナが老けメークで登場しなかったのだろう。 残念でなりません。

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