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いいたい邦題

苦労して題名をつけている人に失礼とは知りつつ勝手なことを言ってます。

いかがなものか編

ナイスですね編


いかがなものか編


もちろん映画の内容のことではありませんので念のため
A River Runs Through It

手抜きと断言しましょう。やさしい英語なのかも知れないが、いきなりカタカナでこんなに長々と言われてピンとこないし。

大自然と兄弟愛とフライフィッシング……アカデミー撮影賞受賞の美しい映像のこの映画にはやっぱり邦題の王道を行くのが相応しい。つまりたとえば「愛と追憶の釣り竿」とかぴったり…でもないか。あるいは「川の流れのように」ではどうか?エンディングは天童よしみなんかで。

「ホワット・ライズ・ビニース」「エニー・ギブン・サンデー」ってのも困るかも。


Jerry Mcguire

これは「ジ・エージェント」が正しいんじゃ……といういちゃもんではない。それはOK。「ザ」って日本語化してるみたいだから。意味不明ではあるが。

トム・クルーズはこの邦題を知って「スパイものみたいだ」とちょっと嫌そうだったとか。むしろ邦題をつけた側は多分それが狙いだったのだろう。ちょうどミッション・インポッシブルの後でもあったし。

スポーツエージェントの話だが別に内幕ものという訳ではなく、ラブストーリー、友情、成功と挫折…といったエモーショナルな内容で、邦題はちょっと違和感がある。


Dead Poets Society

原題は「死せる詩人達の会」。これではピンと来ないから邦題を付けなおす気持ちはわかる。このままだとホラーかと思う人がいるかもしれないし。いないか。

いい子であることを期待され閉塞感の中でもがいている生徒を精神的に開放してあげようとする先生の話。内容にはぴったりなんだけど…。映画の中のセリフにもキーワードとして出てくるしね。「飛び出せ!青春」の「レッツ・ビギン」みたいに(古すぎ)。

で、なんで気に入らないのか。ちょっと硬すぎるように思う。文部省推薦だとこういう題にしなくちゃいけないのだろうか。この題名のせいで映画館に足が向かなかった人も多かったのでは?と思うとちょっともったいない。

「陽のあたる教室」なんかも同じパターンか。


Primary Colors

原題と全然関係無い英語の邦題がつけられることがある。これもそのひとつ。明らかにクリントン元大統領夫妻をモデルにした若い南部の州知事が手探りで大統領選を勝ち抜いて行く様をコミカルに描いた佳作で、原題の意味は「原色」。登場人物を原色に見立てて、絡み合いながら色々なエピソードに遭遇する様を例えたのか、「理想」が「原色」で、そこから出来る色の中には「幻滅」という濁った色もある、ということか…選挙運動のポスターに良く使われるのも赤と青の原色、その上「Primary」とは「大統領予備選」のことでもあり、なかなか凝ったタイトルになっている。

邦題は「仮面夫婦」とも揶揄されたクリントン夫妻を皮肉ったニュアンスを出そうとしたのだろうか。確かに主演にクレジットされているのは夫婦を演じたJ.トラボルタ(←クリントンの物まねが見事)とE.トンプソンだが、映画の内容はむしろ大統領候補を支える選挙スタッフの理想と幻滅を軸にしていたように思う。見た後の印象とタイトルがしっくりこない。

しかしよく見るとこの邦題、単語の頭文字を原題と合わせていたりして、ひょっとしたらかなりの力作なのかもしれない。


America's Sweethearts

原題を生かしたいならどうして微妙に変えてしまったのだろう。違いをやや大げさに表現すると「America's Sweethearts」ならアメリカの国民的アイドル、「American Sweethearts」ならアメリカ人で感じのいい人、という感じだろうか。邦題ではちょっと原題からニュアンスが離れる気がする。アメリカン〜の方が語呂がいいからなのか。「日本語として語呂がいい英語」という時点ですでにちょっと変ではある。主演のジュリア・ロバーツの直前作が「ザ・メキシカン」だったから合わせてみたのか。


Monster's Ball

原題は「死刑執行前夜の刑務官たちのひと騒ぎ」のことだとか。かなり特殊な状況だしアメリカ人でも知らない人が多いような気もするが、そう言われてみるとシリアスなイベントの前の胸騒ぎというか、心穏やかではない、何か込み上げてくるようなものを連想させる。そこに込められた意味を考え始めるといろいろ想像が膨らんでくるタイトルである。

一方邦題の「チョコレート」からはなかなか連想が湧いてこない。B.B.ソーントンが行きつけのダイナーで必ずチョコレートアイスを注文していたり、ハル・ベリーの息子はいつも板チョコを食べていたり、言われてみればあちこちに登場するのだが、それほど重要なモチーフだったのだろうか。チョコレートは黒人の比喩であり、人種差別主義者のソーントンがチョコ・アイスを食べるのは、その後の2人の関わりを暗示していたということかもしれない。とはいっても「チョコレート」という言葉の甘い語感と映画の内容とはしっくりこない気がする。あ、チョコレート自体は苦いのか。

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Nurse Betty

洋画には何故か「題名が主人公の姓名だけ」というのが少なくない。一方邦画では「宮本武蔵」など歴史上の人物名以外にはなかなか思いつかないのが対照的。「エリン・ブロコビッチ」のように実在の有名人(だったらしい)ならまだ分かるが「フォレスト・ガンプ(これは原作があったからだけど)」「バートン・フィンク」「ザ・エージェント(Jerry Mcguire)」「リトル・ダンサー(Billy Elliot)」「ノーマ・レイ」「黙秘(Dolores Claiborne)」など創作の人名でも平気でタイトルにしてしまうところが興味深い。知らない人の名前を言われてもイメージが湧きにくいと思うがなんでだろ。

邦題の中には「ギルバート・グレープ(What's Eating Gilbert Grape)」「ラリー・フリント(The People vs. Larry Flynt)」のように、原題を短くしたら結果的に姓名のみになってしまったというのもある。でも「ベティ・サイズモア」はわざわざ原題を変更してまで「姓名」のタイトルにした珍しい例。

この作品で初のゴールデン・グローブ賞を獲ったルネ・ゼルウィガー演じる主人公のベティは、殺人事件を目撃したショックでTVドラマと現実の区別がつかなくなり、自分を看護婦だと思い込むという設定になっている。原題の「ナース・ベティ」のままの方がまだイメージし易いと思うが何でこんなことしたんだろうか。洋画っぽくしたかったのかな。

As Good As It Gets

主人公は売れっ子ラブロマンス作家。でもその素顔は人間嫌いの偏屈者…という設定。てなわけで邦題が「恋愛小説家」。間違ってはいないのだが、映画のストーリーを語る上で、主人公が小説家である必要性はほとんどない。原題では印象が薄いので、アカデミー賞にノミネートされた段階であわてて邦題をつけてしまったらしいと聞いたが、結局ピントがぼけた題名になってしまった。

ところで原題はどんな意味だろう。教科書風に直訳すると「それが成し得る最善の状態で」…我ながら醜悪な訳で失礼。ちょっと意訳すると「欲を言ったらきりがない」ってところかも。(以下、ややねたばれ)映画のラスト近く、偏屈主人公に向かってヒロインが「なんで私にはまともな恋人ができないの!」と嘆くと、ヒロインの母親が「理想の恋人なんて存在しないのよ」と突っ込むシーンがある。ここが結構映画のツボかもしれない。妥協ということでは決してないが、幸せは心の持ちようで案外手に届くところにある、 というような。

同じくジャック・ニコルソン主演の中年愛映画「Something's Gotta Give」に「恋愛適齢期」という邦題がついた。おそらく「恋愛小説家」がモチーフになったのだろうから、外したなと思ったこのタイトルもある意味日の目を見たとも言えるか。

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ナイスですね編


Stealing Home

原題は「ホームスチール」、つまり野球の「本盗」。確かに映画の冒頭と最後のシーンで出てくるけど、それがテーマの話じゃないし、何でこんな題なんだろかと、当時お付き合いしていたT君に聞いてみた。「故郷に帰る、昔の自分を取り戻す、とか言う意味と引っ掛けてるんじゃない?」とのお答え。なるほどね。

しかしそんなニュアンスまでを含めた邦題はちょっと大変。で、どこかで聞いたことのあるような感じのこの邦題となるわけだが、これが結構ぴったりはまっている。全体的にくどい程にノスタルジーに溢れていて回想シーンだらけの映画のなかで結局主人公が自分を取り戻すのは、従姉のお姉ちゃん(←J.フォスターが好演)と過ごした高校卒業の年の夏休みの思い出……となるわけで、ほわわわわーんとした映画にぴったりのタイトルになっている。

主人公の多感な青年期を演じた子がカワユイ。


Como Agua Para Chocolate

原題は「チョコレートソースに注ぐ水の如く」。アメリカ公開時のタイトルも直訳の「Like Water for Chocolate」だったそうな。

煮えたぎったチョコレートに水を入れたときのぐつぐつ泡立つ様で、ヒロインの内に秘めた情熱を表現したのかな?と思うが、さすがにこのままじゃ客が入らない?ということでこの邦題。

これはこれで訳がわからないが、ファンタジックでおとぎ話のような映画の内容と不思議に合ってる気がする。

ヒロインの叶わぬ恋の相手、姉婿の役の子がカワユイ(こればっか)。


Chungking Express

ストーリーがあるようでないような不思議な展開。でも人が人を好きになるっていう感覚がドライブとなって飽きさせない。香港の雑踏が無国籍な雰囲気を作っている。舞台は香港だけど、人を恋することは誰にでも起こる素敵なことさ、っていう気持ちが「惑星」という言葉を選んだ人のメッセージじゃないのかな。

金城武がかわいいです。(もういいってば)。


The Hours

3人の苦悩する女性の一日が、小説「ダロウェイ夫人」を軸に時空を超えて交錯する。原題をちゃんと生かしつつ、映画の内容をずばり言い表した直球勝負の見事な邦題と言えよう。ひょっとしたら映画化以前に小説の訳題として既に決まっていたのかもしれない。「時間たち」という語感にちょっと違和感が残るけれど、翻訳小説調の雰囲気が出てかえって味が出ているように思う。

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