導師の塔に住む者達
<成長編・2>





  【8】




 寝ているティーダの上にゆっくりと被さって来るように、メイヤもベッドに乗り上げてくる。
 真上にある彼の顔をみれば、暗い中で月の光を反射した瞳だけが光って見える。黒くて大きめな瞳を愛しげに細めて、彼の顔が下りてくる。ティーダは近づいてくるの肩に手をのばしながら目を閉じた。
 もう、こういう行為も何度かしていて、とっくに慣れている筈なのに、最初のキスは必ずメイヤの緊張が伝わってくる。小さく震える唇を感じると、らしくなく、ティーダまでもがなんだか緊張してしまうから始末に負えない。
 たどたどしい唇は、静かに、優しく触れるだけのキスをしてきて、軽くこすりあわせてから一度離れる。何度かそうして触れて離していれば、それはまるで唇の感触を確かめているようで、ティーダも彼の唇の柔らかさや暖かさを妙に実感してしまう。
 そうしてから、おそるおそる彼が唇を開いたのを感触で分かると、ティーダも口を開いて彼の口内の粘膜を受け入れてやる。
 それでもすぐに深い口づけにはならず、最初は浅く、だんだんと深くなっていくのだが。

 毎回毎回そんなだから、自然と長くなるキスが終わると、ティーダはつい彼に言ってしまうのだ。

「ったく、まだ慣れねぇのかよ。ンなにおっかなびっくりバカ丁寧なキスしてくんじゃねーよ」

 我ながら照れ隠しだとは思うのだが、ここで真面目な弟子の方は、実際のキス以上に恥ずかしい事をいってくれるのだから、やはりティーダは困るしかない。

「慣れませんよ。貴方に触れているこの時が大切で、大切すぎて、少しでも今を無駄にしないように貴方を感じたいといつでも俺は必死ですから」

 それを笑顔で、本気で言ってくれるのだから、この生真面目すぎる青年は、実はとんでもないたらしの素質があるんじゃないかとティーダは思う。

「どうかしましたか?」
「るせぇ」

 だから赤くなる顔を見せたくなくて俯けば、彼の方は天然なのかわざとなのか、顔をのぞきこんでこようとしてきて、ティーダは思わずその顔を押し返した。……それでも力の勝負では勝てないから、所詮無駄な足掻きという奴な事は分かってはいるのだが。

「往生際が悪いですよ」
「そーだよ、俺は往生際が悪いんだ」
「まったく」

 こちらは結構必死なのに、メイヤの方は余裕があるのか、押し合いの最中にも楽しそうにくすりと笑う。
 本気で小憎らしいガキだと悪態をつこうとしたティーダだが、いきなり腕を押し返す力がなくなって、彼の顔を押さえていた手が宙を空振りする。
 それに驚いている隙に、するりと抜けてきたメイヤの顔が腕の横から回り込んできて、耳元にそっと口づけてくる。

「大好きです、ティーダ」

 僅かに笑みを纏った声が、優しく囁く。

「ばっ……ひっきょうだぞ、フェイントかよっ」
「押してもだめなら引いてみるのは基本です」

 耳元を押さえて怒鳴った傍で、メイヤのくすくすという笑い声が聞こえた。

「けっ、さすが勉強家だぁなっ」

 悔しいが、ティーダとしてはその程度の嫌味しか返せない。

「そうですね、勉強で済むならいくらでも貴方の為に勉強します」

 そうして顔をティーダの肩に埋めたメイヤは、その体制のまま体の力を抜いた。つまり、完全にティーダの上に乗るというか被さった状態になる。

「ったく、余分な事ばっか勉強したろ、お前」
「俺にとっては大事な事です」

 その体勢のまま、やはり彼はまたくすくすと笑い出して、その彼の息が耳の近くにあたって、ティーダとしてはくすぐったい事この上ない。

「くっそ、どけっ、重いぞ、ったく図体ばっかでかくなりやがって」

 言えばメイヤはがばりと顔を上げる。それから、手と膝をちゃんとベッドについて体を浮かせ、ティーダの上から彼の体重を離してくれる。

「えぇ、どうせ貴方に勝てるのは図体ばかりですからね、数少ない優位性は最大限に使わせて頂きます」

 そんな事を笑顔でいいながら見下ろしてくるのだから、ティーダの顔は自然と引き攣る。この弟子がこういう笑顔をしている時はロクな事にならない、というのは今までから分かり切った事だった。

「ったく、こっちの方が魔法しか勝てないっていいたいぜ……」

 そう呟いた言葉は、やはり綺麗にスルーされる。
 メイヤの表情から笑みが消えて、瞳が真剣に見下ろしてくれば、ティーダの方もつられて体が緊張してしまう。ゆっくりと顔を下してきたメイヤは、唇を合わせて、最初からこの先の行為を強請るように今度は深く口内を探ってくる。

「ン……」

 唇を合わせなおす隙間に声が漏れて、ティーダはメイヤの頭をゆるく抱きしめた。お互いに求め合って、唇を合わせる角度を交互に変えて、舌を絡ませ合い粘膜同士を擦り合わせる。
 それは次第にテンポを速くしていって、水音と鼻から漏れる吐息もが速くなる。そうすれば互いに相手を求めて体さえも服の上から擦り合わせ、急く心を抑えきれなくなっていく。
 静かに離した筈なのに、予想外に響いた水音が鳴った後、メイヤの唇がティーダの喉を伝っていく。ただでさえ少し開いた胸元を、いつも剣を持っているせいで固い皮膚の彼の手が、少し乱暴に大きく開かせていく。
 柔らかい筈のない無骨な感触の手が、胸で一番敏感な場所を擦る。

「はぁ……」

 びくんと震えたティーダは、彼の頭をゆるく抱いたまま甘い声を上げた。

「ティーダ……」

 呟くような彼のそんな声が肌を震わせて、それにまで感じてしまいそうになる。眉を寄せてそれに耐えようとすれば、触れた胸の頂きをあの固い感触の指で少し強く摘ままれて声が抑えられない。

「ぁあっ」

 それで思わず背を跳ねさせれば、今度はそこが柔らかく滑らかな舌でくすぐられる。そうしながら、放っておかれた方の胸は、やはり固い指が撫でてきて、掌で小さな尖りを押しつぶして擦り上げる。

「ン……ぁ、うん……」

 ティーダはただ、彼の頭を抱いて、感覚に身を任せる事しか出来なかった。
 敏感な胸の頂きを唾液で濡らして、指で弄って擦られれば、じんじんと痺れるような痛みと快感の中間のような奇妙な感じが競りあがって来る。しかも弄られ過ぎたせいか更に敏感になってきているようで、大して強く触られていなくても、そこは感覚を主張してくるようになってきていた。

「しつこいっ、ぞっ、お前っ、いい加減にしろって」

 だから抗議も兼ねて、抱いているその頭をティーダは軽く小突いた。
 けれど逆に、そういう事を自分が言えば、彼は更にそこを責めたててくるのだ……本当に、性格の悪い事に。
 唇で強く吸って、甘噛みをしてくる。先端を舌で擦る。ちゅぷっと明らかな水音まで立てられると、感覚以上に気分的にたまらない。
 ティーダが意識せず、思わずもぞもぞと下肢を動かしてしまえば、それを察したメイヤの手が、擦り合わせている腿の間の一番敏感な場所に触れてきた。

「やめっ」

 いつまでも胸を弄られるのが嫌で、上半身が逃げてしまおうとしていたところで、今度は下肢もが逃げ出したがって腰が引ける。とはいえベッドの上では逃げ場もなくて、ティーダの性器はあっさりメイヤの手に握られてしまった。

「ん……」

 大きな手に包まれて、その体温を感じてしまうだけで、びくんとそれは大きく波打つ。こんなにもあっさり感じてしまう、その理由をティーダは知っていた。

 大きな手、剣を振り続けてマメを何度も潰した固い皮膚の感触。それらは全て、彼と似ていて――似すぎていて。大きな体が自分を抱きしめてその体温を伝えてくれるから、どうしても錯覚してしまうのだ。今自分は、『彼』に抱かれているのだと。

「は、あぁ、ぁぁん、はぁ」

 痺れるように感じてしまう胸の尖りを更に舌で擦られて、柔らかく、けれども速い動きで性器を扱かれて、ティーダは抵抗せずに快感に身を任せて声を上げ、そうしてそのまま素直に上り詰めた。

「ティーダ?」
「……っくそ」

 一度イクと力が抜け、動きたくないと言う体に我ながらむかついて、ティーダは思わず舌打ちした。
 ぐったりしたまま動かなくなったティーダの顔を覗き込んできたメイヤは、少し不安そうな顔をしていて、目が合った途端、その彼の子供っぽい表情には自然と笑みが湧いてしまった。

「あーったく、大丈夫だよ……いいぜ、ほら」

 言って手を伸ばしてやれば、彼はその手を肩で受け止めて、軽くこちらにキスをした後、恐る恐るこちらの足を開かせて尻の方に手を伸ばしてくる。そんな彼の慎重すぎる様子が楽しくて、メイヤは少し頭を浮かせて意地悪そうに彼の耳元でささやいた。

「お前我慢してんだろ、さっさと入れちまえ」

 そうすれば分かりやすく、彼は息を飲む。
 そうして濡れた指が、ぐっといきなり深く突き入れられる。

「いっ……」

 唐突に入ってくる指には思わず声が出てしまったのもの、中を擦られればすぐに別の熱になる。そんな自分の体の慣れたさまには我ながら呆れるものの、ティーダは体の中の異物への違和感より、意識してその熱の方の感覚を追う事にした。
 前に比べれば思い切って指を入れてくるようになったメイヤだが、こちらが顔を顰めたり苦しそうな声を上げると手が止まる。普段は生意気極まりない口を利くくせに、こういう時は自分を気遣い過ぎているのが分かってしまうから、嬉しいやら照れくさいやら……そうして、申し訳なくて、どうにも笑みが湧くのに気が重くなってしまうのだ。

「ばっか、ほら、さっさと入れてこいよ。でないと……寝るぞ」

 言いながら欠伸をすれば、流石にメイヤの顔に焦りの色が浮かんだ。そうして、急いで彼はティーダの足を下すとその体をひっくり返し……と、ベッドの上にうつ伏せにされた事で、ティーダは焦った。

「ってぇお前、後ろからやる気か?」

 言う間に腰を掴まれて持ち上げられて、ティーダは、べったりとベッドの上に突っ伏してるのに腰だけ上がっているという、とてつもなくみっともない恰好にさせられてしまっていた。

「おーい、酷くねぇかこれはっ」
「下半身に力が入らないなら、こちらの方が楽かと思いまして」
「いや、逆にこっちのがきつい気も……」

 そう返せばメイヤは黙る。
 代わりにぐっと腰を掴まれて、ついでに尻朶を持って広げられて、そこにメイヤの熱い雄が押し付けられる。彼も相当に余裕がないのは予想出来ていたが、そこから一気に入ってこられれば、あまりの勢いにさすがにティーダも息が詰まって、喘ぐよりもみっともなくぐぅっと唸ってしまう事になった。

「ぐ……ば……か、いきなり、すぎだっ」
「っ……すい、ません」

 いきなりすぎて不味い状態なのはメイヤの方もらしく、返す彼の声は相当にきつそうだった。それでティーダも怒る気はなくなってしまって、あぁもう、という言葉だけで諦めがついてしまうのだから呆れたものだ。

「動き……ますね」
「あぁ。っと、でも加減しろよ、こっちは力が入らねぇんだから……よ」

 まったくもって情けない事に、それは事実だから仕方ない。
 その所為で腰は持ち上げている相手の腕まかせなのだから更に情けない。
 そして、彼が動き出せば、自力で支えられない所為でハンパなく派手に体が揺れて、とんでもなく深くを突かれてしまうからどうにもならない。

「うぁっ……あ、ぐ、あっ、うっ」

 まさに為すがままという状態だからか、その衝撃はかなり辛い。メイヤは抑えてゆっくり動いているだろうに、なにせこちらに力が入らない状況でのこの格好では動きを受け止める事が出来ず、引く時は抜けそうになるほど引かれて、突くときはやたらと奥深くに叩きつけられる。突いて引いて一セットの動きが大きくて、内臓がごりっと抉られる感触が酷い。

「ま、て……メイヤっ、この体勢……きっつぃ、から」

 プライドをあっさり捨てて現状改善を訴えれば、何を思ったか今度はメイヤはティーダの片足を大きく持ち上げ、ついでにそのまま下肢を横に起き上がらせた。

「や、ぁ、ぁぁぁっ」

 深く入ったままそんな事をしてくれたのだから、当然中をぐるっとかき混ぜるように抉られて、その感触にティーダの口から悲鳴が上がった。
 そうしてそのままメイヤはティーダの片足を抱え上げ、ティーダの腰がベッドに対して横になっている状態で上から突き上げてくるような体勢になる。つまるところ、後ろから入れていたのを横から入れている体勢になった訳だが、確かに動きの幅は小さくなったものの、ひたすら奥付近を小刻みに突き上げられるのもまたきつい。
 さらにはこの体勢から、メイヤは体を倒してきて、ティーダの顔を持ち上げると唇を合わせてこようとした。

「や、ぁぁ、ぁ、ん……んく……んんっ……あ、だめ、やぁはぁ……ん」

 このヤロウなんて恰好させやがる、と頭の中では叫んでいても、声からは突き上げられて押し出された声しか出なくて、そのうちそれも彼の口の中に飲み込まれてしまう。
 力の入らない足は犬の用足しのように大きく持ち上げられて、動きの激しさのままゆらゆらとつま先が揺れる。
 大きく広げられた足の間に、メイヤの体は下肢をぶつけてくる勢いで動いている。おかげで、ぶつかる面積が大きいせいもあって、肉と肉がぶちあたる音と中から溢れる水音が派手にして、それが酷く卑猥に耳を刺激してくる。
 下肢が激しく動いているせいで、合わせた唇は頻繁にずれて、その度に唾液がどろりと口から溢れる。耳の後ろにまで生暖かい流れが伝っていく感触と、近くにいる彼の荒い息づかいの音に、体の中の熱が頭の中まで浸食してきているのが分かる。
 たまらなくて上半身を倒してしまえば、触られ過ぎて敏感になりすぎた胸がベッドに擦られて、まるで胸から電気が走ったような衝撃に体がびくんと軽く跳ねてしまった。

「ティー、ダぁっ……」

 強く感じる度に体に力が入って、中の彼を締め付けているのが感触で分かる。当然ながら、締め付けられているメイヤの方は相当に苦しそうで、辛そうに名を呼んだ後、彼の動きはそこから更に速く乱暴になっていく。

「あ、あんっ、や……お、前、深いっ……」

 抗議をしたところで、実際ここでメイヤがどうにか出来るとは思っていない。
 だからここまできたら、もう自分の恰好も忘れて、競りあがってくる熱に全てを委ねる事にして、ティーダもひたすら快感だけを追う事にした。




---------------------------------------------

メイヤ君はがんばってるようで、やっぱり最後は立場弱かったりします。




Back   Next


Menu   Top