導師の塔に住む者達
<成長編・2>





  【9】




「あ――すっ――――っげぇ、疲れた」

 完全にベッドにつっぷしてティーダが呟けば、隣で荒い息を吐いている男もまた呟いた。

「俺もです」

 そのセリフには少しイラっとしたものの、終った事をぐちぐち言うのも馬鹿らしくなって、ティーダは大きく息を吐いた。

「すみません……その、大丈夫、ですか?」

 言いながら、背を向けてつっぷしているこちらの顔をわざわざ覗き込んでくるから、ティーダはメイヤと目が会った途端に、ぎろりと睨みつけてやる、それから。

「で、どっこでこんなクソ恥ずかしい格好でやるやり方を覚えてきた」

 メイヤが気まずそうに眉を寄せて困った顔をする。
 それでティーダは思う、あぁやっぱなと。

「この間レトさんのところへ行ったら……ですね」

 またあついかよあのヤロウもうジーさんのクセに何でそんな事を偉そうに教えてんだ――とティーダが顔を引き攣らせれば。

「俺が昔勉強した本だ、もってけってですね……その、それにいろいろな体位の解説が……」

 ティーダは身体的な疲れ以上に、一気に押し寄せてきた精神的疲労に押しつぶされて、そのままベッドに顔を押し付けた。ただでさえ酔いでぐったりしているのに、激しい運動(?)で疲れきって、トドメにこれはかなりきつい。もう本当に、指一本さえ動かしたくなくなる。

「特に先ほどの体位は大きく丸で囲ってあって、師匠はこれが一番喘ぐからオススメって……」
「わーーーーーーーーーーーー」

 疲れきったところで大声を出して、ティーダは息を切らせてその場で咳き込んだ。
 言われればとんでもなく古い嫌な事を思い出す。
 絶対に忘れていた方が幸せだった記憶が頭の中に蘇ってくる。

「もういいっ、俺は寝るっ、寝るからなっ」

 赤くなった顔を彼に見せないように上掛けを被って、そのまま背を向けて丸まってしまえば、その上から彼が抱き締めてくる。
 そうして、やたらと嬉しそうな声で、この図体だけは大きい――でもティーダにとってはまだ少年に見える彼は言ってくるのだ。

「はい、おやすみなさい。大好きです、ティーダ」








 最悪な気分で眠った次の日は、起きてみれば二日酔いで、やっぱり気分は最悪のままだった。しかも目の前には、更に頭を痛くしてくれる相手がいたりするのだ。

「何だ、昨夜ヤッたんなら、俺も混ぜてくれればいいのに」
「だーかーらー、てめぇとはヤらねぇっていっただろっ」

 使い魔を呼んで開口一番に言われた言葉に、ティーダは思い切り険悪に返した。

「ってか、何でヤったってすぐわかるんだお前」

 苛ついて頭をぐしゃぐしゃと掻けば、すました顔のサック・リーアはにこりと笑う。

「そりゃな。俺たちはそういうのに敏感なんだよ。事後は魔力の纏い方が変わるしな。それに何より色香が違う」
「色香……」

 自分の色香云々なんて考えたくもなくて、ティーダは唇まわりの筋肉をひくりとさせた。そもそも直後ならまだしも実際にコトをいたしたのは昨夜な訳で、今だって起きてから朝食を終わらせた後な為、それで未だに昨夜の気配を纏っていると言われるのは流石に胡散臭い。

 見てたんじゃねぇだろうな、こいつ――と思ってしまっても仕方ないだろう。

「で、呼んだからには仕事なんだろ? 今日は何処へ行ってくればいいのでしょうか、我が主よ」

 わざとらしいほど丁寧にお辞儀してくる使い魔の青年の、そのすまし顔が憎らしい。彼の外見を考えればあまりにも『らしく』て、更に心がささくれだつ。

「今日はお前にとっちゃ遠出って程じゃない。ちっと森抜けた湖までな」

 それでも、これ以上文句を言っても話が長引くだけで意味がないと思ったティーダは、苛立ちは声だけに留めて用件に入る事にした。

「この森のそばの湖っていったら……」

 サック・リーアは僅かに眉を曲げて考えた素振りを見せる。覚えてない方が楽だったんだがな、と思いながらも、ティーダは仕方なく彼に告げた。

「そーだよ。通称還らずの湖、レトんとこだ」




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成長編2……またの名をお仕事編、今回はこれで終了です。
次回はまた仕事しつつ、レトじーさんも出てくる予定。



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