迷う剣は心を知る

※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。





  【2】



 なんで、こんなことになっているのだろう、とウィアは思った。

 視界の中で、シーグルの白い肢体が揺れている。
 四つんばいにされた細い彼の腰を、毛深い大きな手が鷲掴みにしている。男臭いその手の持ち主は全身毛に覆われた熊のような大男で、まるで彼が獣にでも犯されているように見えた。

「う……ぐ、っうっ」

 彼の光を弾く銀色の髪も別の男の手が乱暴に掴み、あの綺麗な顔を自らの股間に押し付けている。こちらの男はそれなりに鍛えた体はしているものの、男にしては小柄でシーグル程ではないが細身だ。シーグルを狂気さえ含んだ目で見下ろすその男の声や気配にウィアは覚えがあった。前に襲撃してきたあのクーア神官だ。

「なんだ騎士様、あのセイネリアの相手をしてるわりにへたくそですね。ほらもっと舌を使ってください、そんなじゃ客はとれませんよ」

 シーグルの頭を掴んでいたクーア神官の男は大声で笑いながら腰を揺らし、彼の頭を、腰を突き出すタイミングに合わせて更に強く自分の股間へと押し付けた。

「う……が、あぐぁ」

 男のものを口一杯に含まされたまま、シーグルがえずく。慣れない者があんな強引に喉の奥に押し込まれれば、吐き気がして当然だろう。
 一心不乱にシーグルの後ろで腰を揺らしている男は、吼えながら更に乱暴に彼の体を揺さぶっている。その動きに合わせてシーグルの白い腹が波打ち、肉が叩きつけられる音が痛々しく響く。男は、戦士らしい筋肉に覆われたどこもかしこもシーグルの倍以上ありそうな太さの体を、細い彼の体に激しく叩きつけている。

 ウィアは耳を塞ぎたい衝動に駆られたが、腕はがっちりと縛られ、指で宙を掻く事しか出来なかった。

 獣のような雄叫びをあげて、熊のような男の動きが止まる。と思えば、またゆっくりと動き出して、今度はその度にぴちゃりぴちゃりと水音が上がった。
 毛深い手が腰を放し、シーグルの体をいやらしく撫でる。
 今まで掴んでいた場所が、赤い跡として白い肌にくっきりと残っていた。
 男の手は、シーグルの腹からゆっくりと持ち上げるように胸までを辿り、掌を広げて乳首辺りを中心に撫ぜだす。

「こっちの方はすごいいいぞ。たまんねぇな」

 熊のような男は満足気な溜め息を付きながら、腰を揺らして言う。
 シーグルの頭に腰を押し付けているクーア神官は、息を荒くしながらも、不満そうにそれに返した。

「なんだ、セイネリアの奴に使い込まれてるのはそっちですか。終わったんなら変わってください、こっちもそろそろ出す事にします」
「待てよ、もうちょっと、すぐに終わる」
「まぁ、いいでしょう」

 男達の笑い声と、必死なシーグルの唸り声が水音と交わる。
 熊のような男の方は、再び激しい抽送を始め、シーグルの体がまた大きく波打った。二人の男の間で、彼の体がまるで押しつぶされるかのように弱弱しく見えて、ウィアの瞳からは涙が溢れてきた。

『お前が彼の傍にいたら、お前が彼にとって足手纏いになることもある』

 兄に言われた言葉を思い出す。
 その通りだったと今更後悔したところで、現実は変わらない。
 今、シーグルがこんな目にあっているのは、確実にウィアの所為だった。
 少女に触れられて視界が歪んだ後、ウィアが立っていたのはこの何処か分からない薄暗い部屋の中だった。目の前には熊のように大きな戦士が立っていて、状況が分からなかったウィアはなす術もなく捕まるしかなかった。
 そこへ、このクーア神官に連れられて、少女と共にシーグルがやってきた。
 ウィアを人質にとられたシーグルは、抵抗する事なく、男達の命令を聞き入れる事しか出来なかった。

 それなのに彼は、ウィアを見て、すまない、と言ったのだ。

 シーグルに口で奉仕をさせていた男が、動きを止める。
 同時にシーグルが激しくえずいて、一際大きく呻き声を上げる。
 男はシーグルの頭を放さない。飲み込ませようとしているのだと思ったが、あまりにも激しくシーグルが咳込みながらえずく様子を見て、諦めたのか手を放した。
 自由になったシーグルの口から、白い液体が大量に吐き出される。
 床に白い液溜まりを作りながら、彼は只管吐いている。
 吐くのが終われば次は激しく咳き込む。
 そして更に、今度は後ろの男がまた吼えながらすさまじい勢いでシーグルに腰を叩きつけ出した。
 咳き込みながらもシーグルの頭が力なくがくがくと揺れ、体を支えられなくなった腕の所為でその頭も床に落ちる。
 自らが作った液溜まりの中に落ちた綺麗な顔が、胃液と精液に塗れ、床に擦り付けられるかのように揺れていた。

 叫びたくとも、声も出せない。
 ウィアの口には術が唱えられないように、布で猿轡がされている。
 おまけに、ウィアの横にはあの時の少女がいて、喉元には彼女が持つナイフがつきつけられていた。体中滅茶苦茶に縛られ床に転がされているウィアは、全く身動きを取ることが出来ない。少女にも何度も助けて欲しいと懇願したが、先程から少しも表情を変える事なく無視され続けていた。
 今も少女は少しも感情の見えない瞳で、犯されるシーグルの姿を見ている。

 完全に力を失くし、床に倒れ込んで荒い息を吐いているシーグルの傍で、男達が位置を交換する。
 今度は大男の方がシーグルの頭を掴み、自らの股間へとそれを押し付けた。既に2度放っているのに大きく充血した男のものは、その体格に相応しい大きさで、赤黒くぶるりと震えて白いシーグルの頬をひたひたと叩く。

「ほら、口開けな」

 シーグルは大人しく口を開いた。
 そこに、醜い肉塊が一気入り込み、大男は小さく唸り声を上げ、腰を揺らしだす。
 一方、後ろに回った神官の方は、その様を見ながらシーグルの腰を抱え上げ、指を入れて中をかき回せているのが水音で分かった。

「またたっぷりと出したものですね。まぁ、滑りが良くなっていいでしょう」

 言ってクーア神官の男も、シーグルの中に己の性器を突き込んだ。
 衝撃にシーグルが呻くが、男は構わず腰を動かし出す。

「あぁ確かに、こっちはいいですね。細いだけあってとても狭い……」

 声に愉悦の色を含ませて、神官は夢中でシーグルを突き上げる。
 それを大男は笑い、自分もまた腰を揺らして時折醜い唸り声を上げる。

「……まぁ、確かにこっちはへただな。でも、この綺麗な顔が苦しそうに俺のモン銜えてるのはすげーいいぞ」

 舌なめずりをしながら、男は益々腰の動きを早くする。
 ウィアの目の前で、醜い男二人の愉悦の唸り声が、水音や肉の当たる音と混ざり合う。シーグルの苦しげな呻き声は、その元気もないのか前よりも小さくなっていて、ウィアの耳には延々憎むべき男達の快楽に塗れた声だけが響いていた。

 大男が大きく唸る。
 鷲掴みにしたシーグルの頭を股間から離し、その顔に白濁とした汚らわしい体液をぶちまける。
 嫌そうに目を閉じるシーグルの繊細な顔が、醜い男の欲望でどろどろに汚れ、大男は満足そうに笑い声を張り上げた。
 それを制するように、クーア神官の男が言う。

「そろそろ、声が聞きたいですね」
「へいへい」

 神官の言葉の意図がわかったのか、大男はしぶしぶシーグルから離れる。
 腰だけを高く上げさせられた状態で、シーグルは神官の男の動きを受け止め、男はそれに覆い被さるように自分も倒れ込むと、抽送を止めないままシーグルの性器に指を絡めた。

「――っ」

 シーグルが息を飲んだのが気配でわかった。
 けれども彼は声を上げず、唇を引き結んで目を閉じている。
 神官は舌打ちをする。
 今度は腰の動きも手の動きも激しさを増して、より乱暴にシーグルを揺さぶった。

「う……くっ……」

 小さく呻くものの、シーグルの声に快楽の甘さは殆どない。男の手につつまれた彼の性器も反応が薄く、男は苛立ちに罵りながらも諦めて手を放した。
 苛立ち紛れにか、腰を動かすその動きは激しさを増し、もうあまり力が入らないだろうシーグルの体は、暴風に揺らされる草木のように好き勝手に揺さぶられていた。
 やがて、元から限界が近かったのか、男は間もなく達する。
 快楽の息を吐きながらも未だ罵りの言葉を呟き、シーグルの後孔から自分のものを引き抜いた。

「強情ですね、体の方は男を受け入れ慣れているようなのに」

 忌々しげに顔を顰めて男は呟く。
 どうにかしてシーグルを喘がそうとしているのか、乱暴に彼の性器に指を絡め、勃たせようとそれを撫ぜている。

「へた……くそめ、誰がお前なんかで、感じ、るか」

 荒い息の中、シーグルがそう呟いたのを、ウィアは確かに聞いた。
 僅かに開いた彼の瞳が、未だ強く輝くのをみて、ウィアは思わず神に祈った。

 どうか、シーグルがこのまま壊れないでくれますように、と。

 シーグルの言葉を聞いた途端、神官らしい、神経質な男の顔は真っ赤に染まる。

「そんな口はすぐに聞けなくなりますよ」

 男は立ち上がるとその場を離れる。視界の外に出て行ったクーア神官が、何処へいったのかはウィアには分からない。ただ、嫌な予感だけはして仕方なかった。

 その男に立ち代るように、喜んでシーグルの体を持ち上げる熊のような大男。

「やっぱ俺のがいいよなぁ、天国を見せてやんぜ、騎士様」

 男はシーグルの腰を抱えてすぐに自分の性器を押し付けると、ゆっくりとした抽送を始める。
 シーグルは時折苦しそうに呻くものの、喘ぎと呼べるような声は出さなかった。

「へへ、たっぷり俺のでかいのを味わわせてやるぜ」

 男が笑って、シーグルの上体を抱き上げるように持ち上げ、座りこむ。あぐらを掻いた男の上に座りこむような体勢になって、シーグルがきつく目を閉じて耐えているのが分かった。

 経験があるウィアにも、あの体勢が自重で深くまで男を受け入れて、かなり苦しいという事が分かる。思わず顔を顰めてシーグルの名を猿轡のまま呟いたウィアを、傍の少女が不思議そうにちらと見た。

「う……ぐっ……うぅっ……」

 体を男の上に落とされる度、シーグルの噛み締めた口から唸りが漏れる。
 ぎゅっと瞑った目は苦しそうで、瞼がぴくぴくと痙攣するように震えていた。
 男は、シーグルの体を持ち上げては落とす事を繰り返しながら、その耳元や首筋に舌を這わせている。それに嫌そうに顔を背けて、シーグルは只管声を耐えている。
 まだシーグルは喘ぎ声を上げてはいない。
 けれども、吐息の震えと、息を飲む音はほんの少しだけ熱が混じってきているとウィアは思った。
 だがそれ以上に、耐えられなくなっているのは大男の方で、獣のように唸ると激しくシーグルの体を揺らしだす。それでもすぐに、この体勢だと自分から突き上げ難いという事に気づいた男は、再びシーグルをうつぶせにさせるとその腰を掴んで上げさせ、自分の獣じみた腰を滅茶苦茶に叩き付けた。

「ふ……うぅっ…くっ」

 床を叩くように硬く握り締められたシーグルの手が、ぶるぶると震えている。体は男の動きに成すがままに揺さぶられ、細かい呻き声が深く突き上げられる度に上がっていた。
 やがて、大男はまた聞くに堪えない声を上げ、シーグルの中に汚らしい体液を注ぎ込んだ。
 シーグルと男、二人の荒い息遣いだけが部屋の中を満たす。
 暫くはその体勢のままだった大男は、ふいにシーグルの頭を掴むと、無理矢理顔を自分に向かせた。

「……感じてやがんだろ、大人しく鳴けよ。お前も楽しめばいい」

 息がまだ整わないシーグルは、それでも瞳を開いて、その鋭い濃い青の瞳で男を睨みつけた。

「誰が……お前達、などに」

 男は舌打ちすると、シーグルの頭から手を離す。
 そうして直後にまだ男のモノが穿たれた場所を、尻肉を掴んで手で広げようにした。
 シーグルが目を見開く。

「あんま素直になれないと、使いモンにならないようにしてやんぞ」

 ウィアが思わず喉だけで悲鳴をあげる。
 男は、広げるだけでなく、その太い指を既に男のものでぎちぎちになっているシーグルの孔へと無理矢理捻じ込む。
 シーグルは悲鳴さえ上げはしないが、床に置いた拳は小刻みに震え、相当の痛みに耐えているのか噛み締めた白い歯がウィアにも見えた。

「待ちなさい。すぐに力ずくなんですから、貴方は」

 いつのまにか帰ってきた神官の男は、手に何か瓶を持っていた。

 ウィアは、自分の悪い予感が当たった事を理解する。

「騎士なら、痛みへの耐性はそれなりにあるでしょう。だったら、力に訴えかけるのはあまり意味がありませんよ。なにより壊したら我々がもう楽しめない。全く脳みそが足りない筋肉馬鹿はこれだから困る」
「確かにそうだが……こういう気位高い奴は少し壊したくらいが扱い易いだろ……って、あぁ成る程」

 不満げな声を上げながらも、だが大男の方も神官の持つ瓶に気がついたのか、すぐににたりと嫌な笑みを浮かべてシーグルの体から身を離した。
 シーグルも顔を上げて、今度は神官を睨みつける。
 神官の顔が、最早狂気というよりも完全な狂人の醜い笑みに歪んで、シーグルのその顔を見返した。
 ウィアは体が震えるのが分かった。
 ウィアには、これから何が起こるのかが分かってしまった。

「大丈夫ですよ騎士様、貴方もちゃんと楽しませて差し上げます」

 大男がシーグルの頭を押さえて、その口を開かせたまま固定する。
 その中へ神官は、瓶の蓋をきゅっと音をさせてあけると、中身をシーグルの口の中に数滴垂らした。

「吐かないで、飲み込みたまえ」

 大男は今度はシーグルの口を閉じた状態で押さえる。
 ウィアは見ていられなくて、思わず顔を逸らした。
 その所為で、首に冷たい刃の感覚をひやりと感じたものの、そんなことに構う気にはなれなかった。

「なん……だ?」

 軽く咳込みながら、シーグルの苦しそうな呟きが聞こえる。きっと彼にはまだ事態が飲み込めていない。
 けれどもその声は、確かに不安を含んでいる。

「それでは、改めて楽しみましょう、騎士様」

 神官は嗤う。
 大男も嗤う。
 男達の嗤う声が、薄暗い部屋の中にこだまする。

 ――ごめん……ごめん、シーグル。

 ウィアは頭の中で謝るしかなかった。
 自分が傍にいなければ、シーグルはこんな奴らどうにか出来たろう。
 彼を救いたいと思っていたのに、彼をこんな目にあわせてしまった。人のいる場所なら大丈夫だなんて、甘く見ていた自分を責めても責めきれなかった。
 しかも、あんな姿の彼を見て、自分の体も確実に熱くなっている事も許せなかった。男達に彼が犯されるのは我慢ならないのに、そんな彼の姿からは目を離せない自分が嫌だった。

 ――俺は最低だ。

 ウィアの瞳からは涙が止まらない。
 何に対して謝ればいいのかさえ、訳がわからなくなってきた。

 ウィアが泣いている間に、絶望の足音は確実に傍へ近づいてきていた。

「う……ぁ」

 初めて、熱を含んだ吐息が、シーグルの唇から吐かれる。
 それに一番驚いたのはシーグル本人だった。
 彼は青ざめて自分の口を手で覆う。

「ん……ぅ……んんっ」

 にやにやと笑みを浮かべ、神官はシーグルの中に己の性器を埋めたまま、ゆっくりとした抽送を続ける。

「う……う……」

 断続的に手に押さえられながらも漏れる声は、甘い響きが混じっている。
 シーグルはぎゅっと目を閉じていた。
 神官の男は腰をいやらしく左右に揺らしながら、あくまでゆっくりとした抽送でシーグルを突き上げ、筋張った手でシーグルの体を撫でた。

「うぐ……ふ……っ」

 シーグルは目を閉じたまま、肩を上げ、懸命に自分の口を押さえる。
 けれども、既に相当に体力を削られた彼の手には力が入らず、たまに大きく突き上げられると、その口から手が外れそうになる。

「ふふ、こちらの方もそろそろ素直になってきましたね」

 シーグルの性器をゆるく擦って、神官は耳障りな声で嗤う。
 ゆっくりとした動きの所為か、くちゅ、と水音だけがやけに大きく聞こえた。

「エクスト、そろそろアレの準備を」

 シーグルの様子を見ながら荒い息を吐いていた大男は、神官に言われて我に返る。小さく舌打ちをしながら何かを傍に置いてあった皮袋から取り出し、手の中に持ってそれを確認するよう指で転がした。

「準備はいいぜ」
「では、騎士様には盛大に喘いでいただきましょう」

 言うとすぐに、先程までのゆるい抽送とは違って、神官は激しく腰を打ち付けだす。

「ぐ、うぅっ、っぁ……うううっ」

 まだかろうじて声は喘ぎにならないものの、もう手で押さえる事も出来ずに、シーグルは歯を食いしばる事しか出来ない。目は閉じたままではあるが眉が切なげに寄せられて、食いしばっている口も時折喘ぐように開かれる。白い肌もうっすらと赤みを帯び、男の手の中の彼の性器も段々と目に見えた変化を見せていく。
 肉が肉を叩く音、ぐちゃぐちゃとかき混ぜられる水音。その音達にかき消されそうになりながらも、シーグルの微かな声が混じりだした。

「ん……うぅ、くそっ……うんっ、くぁ」

 揺さぶられているシーグルが、這い出そうとするように地面へついた手を伸ばす。
 その手に当たった散乱した自分の服のそのマントの布の感触に気付いて、彼はそれをすがるようにぎゅっと掴むと引き寄せた。

「誰、が……うぐぁっ」

 自ら、口の中にマントの布を押し込めて、声を出すまいとするシーグル。
 大男は唸り、シーグルの口の中からその布を取り出そうとする。
 だが、必死に布を掴むシーグルは、くぐもった声を上げて歯を噛み締めながらも、男に取られまいと抵抗する。

「往生際が悪い……」

 突き上げる男が、更に抽送を早める。
 その激しさにシーグルのきつく閉じられていた瞼が開かれ、その目尻から涙が溢れた。

「が、ぐぅ……うぐぁっ」

 それでも彼は諦めない。
 意志を手放してはいない。
 涙を流したまま青い瞳を剥き出すように見開き、宙を睨む。
 男に取られまいと布を掴む手には血管が浮き、白い彼の腕全体が紅色に染まる。

 ウィアは涙でぼやけた視界の中、そんなシーグルを嗚咽と共に見ていた。



 だが、その陵辱劇は、唐突に終わりを告げる。




Back   Next


Menu   Top