旅立ちと別れの歌
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【15】



 それでもシーグルはじとりとこちらを睨んでくる。その顔もとんでもなく愛しくてたまらないが、触れたくて触れたくて仕方がないこちらの身体がそろそろ自分でも制御できなくなりそうで、セイネリアは苦笑して彼の頬にキスをして言った。

「すまなかった、お願いだ、ちゃんとお前を感じたい」

 それでやっとこちらに向き直ったシーグルは、見下ろしたままのこちらに向けて手を伸ばしてくる。頬に触れて来た手に上から手を重ねて、そのまま彼の手に軽く頬ずりすれば、彼の騎士らしい何度も豆をつぶして硬くなった掌の感触が分かる。

「前より更に男らしい手になったじゃないか」
「誰にも気兼ねなく思い切り鍛えることが出来たからな。毎日毎日……とにかく剣を振った」
「だろうな、強い男の手だ」

 セイネリアがその手を掴めば、彼は大人しく頬から手を離す。その手の甲に、指一つ一つに触れるだけのキスをして、最後に掌に唇を押し付ける。硬い感触が彼の努力の成果と思うと愛しくて、セイネリアは唇を押し付けたまま暫くその感触を楽しんだ。

「いつまでそうしているつもりだ」

 呆れたシーグルの声でやっと手を彼に返してやったものの、その感触が名残惜しくてそれを目で追ってしまう。そうすればシーグルは呆れたように苦笑して、もう片方の手を上げてそれでこちらの頭に置くとぽんぽん、と子供をあやすように叩いた。

「そういう時のお前の顔はちょっとガキっぽい」

 ふっと鼻で笑って彼が言う。

「そうか」
「あぁ」

 シーグルはそこで吹き出して、今度は声を上げて楽しそうに笑った。

「俺がいない間寂しかったか?」
「あぁ、死ぬほど」
「死ねないだろ、お前」
「お前がいなければ、心が死ぬ」

 それに一瞬笑みを消してから、彼は一言、そうか、と悲しそうに呟いた。

「もう俺はずっと離れず一緒にいるなんて約束してはやらない、先のことが分からないのに約束なんて出来ない。けど、今の俺がお前を愛してる事は真実で、お前の傍にいたいというのも……お前を欲しいというのも真実だ、それではだめか?」
「いや……」

 セイネリアは自嘲する――そうだ、彼が欲しいなら義務で縛って傍に置くのではなく、いなくなっても追いかけるくらいのつもりでいるべきだと。自分の意志を曲げない彼が欲しいというなら、縛ってはいけなかったのだと。

「十分だ、今、お前が俺を求めてくれるのが心からの真実なら」

 言って唇同士を合わせてから、舌を合わせずに離す。

「愛してる」

 また彼の耳に囁いて、それから舌を伸ばして彼の耳の下から首筋までを舐める。体に着いたら鎖骨のくぼみを舌で押して、それから少し戻って彼の喉を舐める。おそらく男らしい硬さが出来上がり切る前に成長が止まってしまった彼の喉はあまり出てはおらず、それでもくすぐるようにそのでっぱりを舌で軽く押してやる。そうすれば唾でも飲み込んだのかそれが上下に動いて、思わずセイネリアは舌でそれを追ってしまった。

「おいっ」

 喉の震えを舌に感じて、セイネリアは軽く笑う。

「お前もちゃんと男だと思ってな」
「当然だっ、というか今更いうな、どれだけ俺の裸を見てる」

 セイネリアは声を出して笑ってから、手で彼の胸の撫でて……赤い突起を意地悪くつまんでやった。シーグルの胸の筋肉が緊張に反応したのが分かる。

「それだけ、いくら見ても新鮮味があるということだ。というか、今日は尚更久しぶりだからな」

 言って今度は胸に舌を這わせる、筋肉の溝に沿って舌を動かし、そこから胸を横断して両方の乳首を舐めて行く。それから腹にすぐ下りて、今度はその腹筋の溝を舌でなぞる。くすぐったがってシーグルの腹が上下に揺れるが構わずへそに舌を入れて、更に舌を下にずらしていく。もう少しで彼の股間に届くところまで下りれば、彼が膝を曲げたことで太腿が上がる。だからそのまま足を開かせて、そうして既に硬くなりつつある彼の性器を根元まで銜え込んでやる。

「お前……いきなり、は」

 たっぷり口に含んでいた唾液をそれに絡め、一度口から出すと、焦って肩を上げてこちらをみてくるシーグルを見上げてセイネリアは笑った。

「今日は大人しく舐めさせろ」

 シーグルの顔がまたカァっと赤くなる。セイネリアは喉で笑って再び彼のソレを口の中に引き入れた。

「ん……」

 反射的にか、彼の手が頭を掴む。けれど引き離そうとするほど力は入っていないから、セイネリアは構わず口の中の彼のモノに愛撫してやる。舌全体でくるんで、擦って、それから吸い込んでやる。びくびくと押さえている彼の太腿が震えて、彼の腰が逃げようとするようにベッドを押す。それから先端を更に吸ってやれば、彼は簡単に限界を迎えた。

「う、あ……だ……」

 それを最後まで飲み込んで、ついでにまた吸い取って、それで口から開放する。一度萎えたそれを手で弄ってやれば、それはまたすぐにうっすらと反応し出してセイネリアは自然と笑う。
 それからこっそり、口から彼のものの残りを手に吐き出して、セイネリアは体を起こした。

「随分早かったな」

 シーグルは赤い顔のまま横を向いた。

「当たり前だっ……久しぶり、だったし」

 最後は恥ずかしそうに小声になって口を閉じる。
 その姿がまた嬉しくてセイネリアは彼のその髪にキスをする。それから彼の片足を腰毎持ち上げながら囁いた。

「なら少し辛いかもしれないな」

 彼の顔がちょっと強張る。それを確認してから足を持っていない方の手をそっと彼の尻にまで伸ばす。触れただけできゅっと力の入った尻肉を割り、まだ硬い窪みに指を入れる。

「っ……」

 シーグルが歯を噛みしめて、それから体に力を入れた。

「あぁ、確かにきついな」

 のんびりと言いながら、セイネリアは指で彼の中を探った。手には先ほど口から出した彼のがあったから十分ぬめりをもって入れられた筈なのに、指一本でもかなりきつい。拒絶を返してくる肉壁の感触には困ってしまって、ほぐすのに時間が掛かるかもしれないかと思えば少し辛いなと思ってしまう。

「あ、ぅ……ぁ」

 シーグルの表情もきつそうで、それでもやめろと言い出さない辺りは彼も分かっているのだろう。それでも今日は……彼にちゃんと感じて欲しいと思うからこそ、セイネリアは指でそこを解しながらも言ってやった。

「シーグル、すまないな」
「え?」

 言って彼の体を持ち上げ、そうしてひっくり返す。仰向けからうつぶせになった彼の腰を持ち上げる。

「セイネ、リア、これは……」
「この体勢の方がお前が楽だろ」

 そういえばシーグルは嫌だとは言わない。彼もいつも通り前からやれば相当きつい事は分かっている。初めて彼を抱いた時のように……無理にやれば、きっとまた傷つける。
 尻だけをあげさせた恰好は普段の彼なら嫌がるだろうが、彼は覚悟を決めてシーツを握り絞めた。セイネリアは指で抜き差しをしながら二本目の指も入れていく。

「は……ぐ」

 シーツを握った彼の手に力が入って震える。
 二本目が入ると中と指の間に隙間が出来て、くちゅ、くちゅ、と水音がより大きく聞こえだす。それが卑猥で、セイネリアも我知らず唾を飲み込んだ。

「ん……」

 その興奮は彼もなのか、シーグルの前が先ほどより更に反応していた。だからそちらもそろっと撫でるように触ってやれば、中の肉もびくびくと蠢いて指をぐっと締め付けてくる。

「馬鹿、そっち……触るな」

 消え入りそうな声で彼がそんな事を言ってくるから、セイネリアも流石に限界になって彼に言った。

「入れるぞ」
「あ、あぁ……」

 返事を聞くと同時に、膨れすぎて痛いくらいにも感じる自分の雄を彼の尻に乗せる。それから、手でそこを広げて指で押し込みながら入れて行く。

「うぁ……ぐ、く……」

 苦しいのは仕方ないと思っても、出来るだけ彼を傷つけたくないから逸(はや)る自分の身体を抑えてセイネリアは慎重に彼の中に入っていく。包んでくる彼の肉の感触を感じただけで思い切り押し込みたくなるのを抑えて、ゆっくりと深くへ入って行きながら、また手を前に回して彼の雄を掴む。

「やぁっ」

 今度は悲鳴に近い高い声をシーグルが上げた。それと同時に中に力が入って緩んだから、セイネリアはそこで一気に奥まで進む。ずる、と滑る感覚があって、根元までびっちり彼の中に包み込まれた事を感じる。
 とはいえここで、やっと入ったと安堵する余裕などある筈がない。奥まで入ればセイネリアでさえ、そのきつく締めあげられる感触だけでイキそうになる。どこの童貞だと自分を笑ってしまうが、焦がれた彼の中にいるのだと思えば精神(こころ)も身体(からだ)も高ぶり過ぎてはちきれそうだった。
 だから、落ち着かせるためにすこしその体勢のままじっとして。それから緩く、大きく引き出さずに慣らすような動きで奥に入ったまま浅い抽挿をする。

「う……ん……ぅ」

 シーグルの声からすればまだ苦しいだけのようで、なだめるようにそのうなじにキスをして、そうして彼の胸を両手で撫でながら背にもキスをする。

「愛してる」

 呟けば、彼の吐息が甘く上がる。
 だから胸を弄って、片手を彼の雄にまた絡めて、緩く、緩く、刺激を与えながら少しづつ動きを大きくしていく。

「愛してる、シーグル」

 言う度に、彼の声が高くなってこちらを誘う。

「あ……は……あっ……ぁ」

 次第にシーグルもこちらに合わせるように腰を揺らし始め、ぬめりが行き届いたのか滑りが良くなって動きやすくなってくる。彼の声も苦しさが薄れて、より甘く、高くなっていく。鼻から抜ける吐息のような切ない声は特に不味くて、ついついたまに彼の奥を強く突いてしまうのはどうにもならない。その度にまた彼がイイ声を上げてくれるものだから、抑えるのがきつすぎてセイネリアでさえ歯を食いしばった。

「あ……あ……はぁ、うぁ」

 それでも少しづつ、けれど確実に腰の動きが速くなっていくのは止められない。きつい彼の中を思い切り味わって、そこへ吐き出す欲を抑えきれない。

「あ、あ、あ、あ、あ」

 セイネリアは手の中の彼を扱きながら本格的に腰を動かす。さすがにもう限界だから、思い切り彼の中を突いてその感触を味わい尽くす。ぐしゅ、ぐしゅ、と彼の押し込めたぬめりか自分からこぼれているものか分からない液体が音を鳴らす。

「はぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ」

 シーグルの声はどんどん高くなって、彼は顔を枕に押し付けると両手でつかんだシーツを引き寄せた。

「ぁ、ぁ、あぁ――」

 抑え込んだ小さな悲鳴のような声を上げて、手の中の彼がまた吐き出した。そこでセイネリアも吐き出す。そうすれば彼の身体はびくびくと震えて、セイネリアは後ろから彼に覆いかぶさると、そのまま彼の身体を抱きしめて腰を強く押し付けながら彼の肩に顔を埋めた。彼の匂い、彼の熱、彼の吐息……全てが今腕に抱いているのが彼だと実感させてくれて心が歓喜に震える。だから、囁いた。

「愛してる」



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 愛してる言い過ぎ! というのはわかってます、えぇ、でもセイネリアが止まらなくてですね。
 



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