運命と決断の岐路
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【14】



「おい、早く脱がせちまえ」

 リーダーらしい目の前の男が言うと、押さえつけていた手達が鎧を外しに掛かる。欲に塗れた男達の顔は醜く歪んで、その目には諦めた者特有の絶望と狂気が見えた。傭兵として戦場に来ているならそれなりの腕はあるだろうに、あっさり自分の命を諦めて目先の欲に走る馬鹿者。鎧を外されて、その手が肌をまさぐってくるに至っても、彼らを見るシーグルの瞳には嫌悪感よりも侮蔑の色が浮かんでいた。
 欲に焦った男達の手は、ともかく逃げられないように力づくで押さえつけてシーグルの装備や服を剥ぎ、体を開かせようとする。醜い欲望を隠そうともせずに、涎をたらさん勢いでシーグルの肌をべたべたと触れて、撫ぜてくる。

 罪人の神ヴィンサンロアの術は、闇の中に隠したり隠れたりと逃げる事に便利なモノが多い。但しその術全ては使うのに『痛み』というペナルティが必要となるのが特徴だった。だからシーグルを捕まえる為に彼らが使った術にはそれ相応の『痛み』があった筈で、それをこんなくだらない欲の為に使うくらいならどうしてここから逃げる為に使わないのかとシーグルは思う。敵が攻めてきてもその術を使って逃げてやると思った方がずっと建設的だ。どうして自分の出来る限りの力を使って、生き残るために足掻こうとしないのだろう。

 掴んでくる手は興奮と不安に余計に力が入り、離されればそこは赤い跡となる。焦った男達はあるものはシーグルの顔を上げさせて自分の性器を顔に押し付け、ある者は腕をひっぱってその白い胸に下肢を擦り付けてくる。絶望の狂気と、高貴な人間の体を弄べるという状況に、異常な程興奮した男達のそれらからは既に液体が溢れ出てシーグルの肌を汚していく。

「おらお前ら落ち着け、まずは一発俺がぶっこんでやるからよ、さっさ押さえつけてケツ上げさせろや」

 その声で男達の腕がぐいぐいとシーグルの体をひっぱってひっくり返し、無理矢理に四つん這いにさせる。頭は地面に擦り付けるように押さえられ、尻だけは高く上げられて、おまけに尻朶を両側から掴まれて開かれた。

「貴族様がいーい格好だなぁ。これからここに俺ら下々の汚ねぇモンをたっぷり味あわせてやるからよぉ。俺らへの償いと思って立派な肉穴になんだぜぇ」

 後孔の辺りを指で押して撫ぜながら男は笑う。
 それからひやりと何か液体が掛けられたから、恐らく潤滑液として油のようなものが掛けられたのだろうとシーグルは思った。やるならやるで楽しもうというのだろうが、そういう部分には頭が回るあたりに苦笑を禁じ得ない。まだ怒りに任せて無理矢理つっこむ方が悲壮感が増して同情も出来るだろうにと思うくらいだった。
 液体の滑りを借りて、指がいきなり奥まで入ってくる。入ったのを確認して、すぐに指は増やされ、中の様子を探るようにただ滅茶苦茶に動かされる。当然ながら水音がくちゃくちゃと鳴り、そこに男達の視線が集中しているのが分かる。

「おいおい、穴ぁひくついてんぞ。中も柔らけぇのにぎゅうぎゅう欲しがって締め付けてきやがる。やっぱあのセイネリアの穴やってたってのは本当みたいだなぁ」

 背の上に、ぼたり、ぽたりと何か液体が落ちてくる。大方押さえている男の涎か、晒した性器から先走りがこぼれて落ちたのだろう。彼らがどれだけ醜い顔で自分の後孔を見ているのかが想像出来て、シーグルの口元は嫌悪と侮蔑に歪んだ。
 指が離される、焦るようにべたべたと手達が尻を掴み、数人がかりでそこを思い切り広げられる。金属具がカチャカチャと音を鳴らし、息を飲む男達の荒い呼吸音が聞こえる。生暖かい肉の感触がそこへぺたりと押し付けられ、指が入り口のすぐ傍を押さえて更に広げられる。そうしてとうとう、他人の体温が体の中へ入ってくる。

「う……」

 その感触と共に嫌悪感にぶるりと体を震わせ、呻いた後にシーグルは歯を食いしばった。
 自分の中に他人が入ってくるその感触に鳥肌が立つ、ぐぅっと喉の奥が鳴って吐き気が競りあがってくる。がちがちと震えそうになる歯をそれでも噛みしめて、競りあがる体の拒絶反応を無理矢理に抑えつけた。

「おぉ、さすがに女みたいにあっさりは入らねぇか」

 楽しそうに笑いながら男は言って、こちらの体に覆いかぶさってくる。
 腰を揺らし、浅く突き上げながら、男の肉は少しづつシーグルの中を広げて入り込んでくる。その感触に耐える為目を閉じて歯を噛みしめていたシーグルだが、ふいに男の手がシーグルの前、その性器を掴んできた事で驚いて目を見開いた。同時に口も開いて、思わず、あ、と声が漏れた。

「ほら、弄ってやるからちゃんと飲み込めよ」

 そうしてソレをゆるく擦りながら先ほどよりも強く突き上げられれば、ずんと一気に奥を叩いてくるように男の肉が深くまで届いた。

「ぉおっ、すげぇ」

 中で男が更に膨らむのを感じる。それを締め付けた自分の肉が、息遣いに合わせてびくびくと動いているのを実感する。

「いい反応じゃねぇか、さすがによく開発されてやがる」

 言いながら男は腰を引き、そうしてまたずんと奥を突く。
 最初は様子をうかがうように慎重にゆっくりと抜き差しを繰り返し、油の所為で十分な滑りがあると分かると動きは大胆になっていく。ゆっくりとしているうちは油が水音を立ててくちゃくちゃと卑猥に鳴っていたが、早くなってくればただ肉を肉で打ち付ける乾いた音がリズミカルに響いて水音を駆逐する。
 勢いが乗ってくれば、腰だけではなく体全体が揺れる。思い切り奥を叩かれれば、体が前に押されて、地面に押し付けられたシーグルの頬が地面を擦る。

「う……ぐ、ぅ、ぅ、ぅ」

 シーグルは歯を噛みしめていたが、それでも突き上げられたその時には息と共に声が漏れる。それらは懸命に抑えていても全てを抑えきるのは不可能だった。

「いいぞ、いい……そら、シルバスピナ卿様、下民の精液をどうぞってなぁっ」

 言うと同時に男の動きが止まり、中深くに熱い液体が注がれた。
 その衝撃にシーグルはの体はぶるりと震え、受け止めた肉壁がひくひくと男を締め付けて痙攣しているのを感じてしまう。

「すげぇすげぇ、美味そうにごくごく飲むみたくうねってやがる。相当の好きモンだろ、普段からどんだけここ使ってるんだよ」

 抜かないまま被さっている男が耳の近くでシーグルにそう囁き、手が体を撫ぜてくる。

「いいかぁ、自分の為に皆さんを危険に晒してすいませんってよ、償いだと思ってちゃんとご奉仕すんだぜ、どーせこんだけ好きモンの体なら問題ないだろーがよ」

 男の笑い声と、汚らわしい息使いの音が耳に入り込んでくる。吐き出す息の獣臭さに顔を背ける。

――何が、償いだ。

 これだけの事をする能力があるなら、それだけの気力があるのなら、逃げるなり上を脅すなりやれる事はまだある。死にたくないなら助かる方法を考えて、ぎりぎりまで足掻こうと何故思わない。

「馬鹿者どもが……」

 呟けば、男の手がシーグルの雄の先端に爪を立てた。
 シーグルがその痛みに僅かに呻く。

「あぁ? てめぇは自分の立場ってモンが分かってないらしいなぁ」

 言って男は体を起き上がらせると、その体勢から乱暴に腰をひいて思い切りたたきつけてきた。

「ぅ……がっ」

 終わったと思った所為で押さえつけていた男達の手が少し緩んでいた事もあって、シーグルの体が思い切り押されて頬が痛い程地面を大きく擦る。

「おらおら、てめぇの言う言葉は、すいません、許してくださいだろっ。それかどうぞ私の穴をお使い下さいだっ、ほらっ、優してしてもらいたきゃ泣いて許しを乞えよっ」

 慌てて他の男達がシーグルの体を押さえる手に力を入れるが、怒りに任せた男の突き上げは乱暴で、シーグルの頬は何度も地面を擦り、口の中に土が入ってくる。
 それはただ相手が愉しむだけの行為であり、シーグルの扱いは男の言葉通りただの『穴』だった。それでも笑える事に、犯され慣れた体はそんな状況でもそれを快感だと受け止めだし、中を男で満たされて擦られる事で甘い疼きを体中に広げて行く。揺れる動きに合わせて揺れる自分の性器さえ、それが快感なのだと浅ましく示している。それどころか、体に感じるすべての感覚が快感へと変わっていく。

「あぐっ……うっ」

 男を包む肉が更に蠢く、擦られて、突き上げられて気持ち良いのだと、ひくひくとびくびくと男の肉を食む。嫌悪感に震えていた筈の体は快感に震え、肌を粟立たせていたぞっとする感覚は、ぞくぞくとした別のものになっている。
 一度中に出されたせいもあって男が奥を突く度に液体が溢れだし、それが足を伝って落ちていく。その感覚さえぶるりと背筋を甘く震わす程の快感となる。
 やがて再び中が熱い液体で満たされ、今度は男の肉が抜かれると同時にどっと溢れる。どろどろと尻から止めどなく垂れる熱い液体の感触に、質量を欲しがった後孔がひくつくのさえシーグルには自覚できた。
 その尻を男の手がパンと小気味いい音を立てて叩く。

「おら、お前らもどんどん突っこめ、休ませる事なく償わせてやれ」

 言うと同時に、押さえつけていた手の一つが離れて、直後に中が新しい肉で満たされる。

「あぅっ」

 抑えきれず漏れた声が思った以上に高くて、それが嫌でシーグルは反射的に目と口をぎゅっと閉じた。

「おぉう、こりゃすげえや。貴族様ってのは男娼並にやりなれてやがんのかぁ?」

 既に興奮の限界近くのそれは激しく滅茶苦茶に突き上げてきて、シーグルの首ががくがくと前後に振り回される。声は抑えていても吐息までは抑えきれず、突かれる度に鼻から音が抜けていく。だがそれも長くは続かず、すぐに体の中にまた男の精が吐き出される。それに息をつく間もなく、その男は突き飛ばされて中の肉が抜けていき、また次の男が入ってくる。

「早くしろよ、俺ァ耐えられなくて一回出しちまったよ」
「おいおい、入れる度に溢れてんぞ、だらしねぇ穴だなぁ」
「こいつこんなとこ触られて感じてやがる。とんだ淫乱騎士様だな」

 笑い声の中、ただ揺らされて、触られて、男達の肉が止む事なく体の中を出入りしている。
 今、シーグルの体は仰向けにひっくり返され、揺れる視界の中には見下ろしてくる男たちの欲に歪んだ顔が犇めいていた。その中で、今下肢を突きあげている男の顔が近づいて来てシーグルの唇に口づけてくる。だがシーグルは歯を噛みしめたままの為男は口の中へ侵入してくることまでは叶わず、歯茎を舐めて臭い息を吹きかけてくる事しか出来なかった。
 男が舌打ちをして顔を離していく。そうすれば別の男の顔が降りてきて、シーグルの胸の辺りに手を伸ばしてくる。それから乳首を軽く摘ままれて、反射的にシーグルの体はびくんと跳ねる。締め付けた中の感触を目を閉じて耐えると、今度は性器が掴まれる。突き上げられる動きに合わせて乱雑にそれを扱かれて、シーグルは背を逸らして口を開く。開けばそこに、今度は誰かの男性器がつっこまれる。

「ぐ……ぅ……あがっ」

 一瞬、噛んでやろうと思ったシーグルだったが、それをしかけて大人しくそのまま銜えた。腐っても自軍の兵と思えば、シーグルにはそこで男のものを噛み切ってやる事までは出来なかった。

――何故、こいつらは足掻こうとしない。どうすれば、彼らはまだ兵士たりえる事が出来るのだろうか。

 すぐに口で抽送を始められて、シーグルの顔に男の陰嚢がビタビタと当たる。口から鼻にむっとした雄の匂いが一杯に広がっては抜けていき、口腔内には苦い男の精がまき散らされていく。
 下肢ではまた中に注がれて、すぐ抜かれれば別の男が目の前に覆いかぶさってくる。足を広げて、腰を上げさせて、容赦なく最初から深くへと男が入り込んでくる。
 誰かの雄を銜えたままくぐもった声で喘いだシーグルの瞳は、どこか遠くをみているように虚ろだった。逃げようと暴れることもなく、体を投げ出してただ男達のされるがままになっていた。それで男達もいつの間にか押さえる事を止めて、思い思いにシーグルの体のいたるところに性器を擦りつけたり、手で撫ぜて反応を見て愉しんでいた。

「ぅ……ぅ、ぅぅ……ん……」

 苦い液体が口一杯に広がれば、やがて抜かれて次のものが入ってくる。後孔の方は更にそれは顕著で、少しの間も休ませるものかと吐き出せばすぐに次が入れ替わりに入ってくる。
 腰は常に突き上げられて揺れている。そうする間に、今度の男はシーグルの体、その上半身を持ち上げて体を起こそうとした。

「あぅ……」

 重力に従って自分の体重が繋がっている部分に掛かり、起こされるに従ってそこが更に深く開かれていくのを感じる。反射的にシーグルが男に抱き付くようにして体を支えようとすれば、男は両手で持っていたシーグルの足を更に足の付け根を持って開かせる。それから他の男の手が、最初の時のようにシーグルの尻を両側から掴んで開かせて、繋がっている部分をより広げようとした。

「え……あ……?」

 最初の内は、それが何をするつもりか分からなかったシーグルだったが、そこに別の体温を感じて理解する。理解すると同時に目を見開いて顔を強張らせる。

「あ……や……やめ、ろっ」

 男達が笑う、ごくりと喉を鳴らす音も聞こえる。ぎらぎらとした欲に塗れた目達が、再びシーグルと男の繋がる部分を凝視している。
 それから、孔の近くを押さえる指が痛みを感じる程広げようと引っ張ってきて、そうしてぎっちりと隙間なく男を銜え込んでいるそこへもう一本の雄がねじ込まれてくる。

「うがっ、あぁ……ぐ、ぁ……」

 前の男に縋る手をぶるぶると震わせ、それでもシーグルは悲鳴にならないように声を懸命に抑えた。限界を越えてそこを広げられ、尚も深くを広げられようとすれば、苦しくて苦しくて息さえできなくなる。それだけでなくぴりりとした痛みがどんどん酷くなっていくのを考えれば、そこが裂けているのだという事が自覚出来てしまった。

「ほら、言ってみな。許して下さい、やめてください、お願いしますってな。でねぇとお前のそこは確実に壊れるぜ」

 痛みと苦しさで涙が浮かぶ。勿論、シーグルは彼らに許しなど乞わなかった。息を飲んで歯を噛みしめて、目をきつく瞑る。瞑った途端、零れた涙が頬を伝う。

「けっ、まぁいいや、景気よく一気にいれちまえよ」

 その言葉と同時に、中が一気に広げられる。いや、感覚としては引き裂かれたという方が正しい。どう考えても限界を越えた質量が中を満たす。気が遠くなるほどの苦しさと痛みが入れられたそこから伝わってくる。

「あぁ、やっぱ血ィ出てんな。仕方ねぇか」

 それから男は笑いながら言う、動けよ、と。

「う、がぁぁっ」

 最初の痛みに上がった声を、シーグルは歯を食いしばって飲み込んだ。
 ぐちゅぐちゅと、男達の吐き出したものなのか自分の血なのか分からないが、ともかく液体の音と共に中が擦られている。二本の雄は別々の意志の元バラバラの動きで抽送を繰り返し、動く度に痛みがそこから頭のてっぺんまで突き抜けていく。
 痛みと苦しさで、シーグルの意識は半分飛び掛けていた。それでも歯を噛みしめて、無様に声を上げないようにひたすら耐えた。

「はははっ、入るモンだなオイっ。すげぇや、動くのさえきつくてやべぇ」

 いくら快楽を受け止める事に慣れてしまったシーグルの体でさえ、それを快感とする事は不可能だった。

「本当に入っちまった、おぉう、確かにこりゃきつすぎて動けねぇ」

 耳には笑い声だけが聞こえてくる。今のシーグルには彼らの言葉を聞いて理解しているような余裕などなかった。男達が動く度に痛みが走る、ごりごりと腹の中を暴れている異物の不気味な感覚にそこが弾けてしまいそうな恐怖が競りあがる。シーグルの頭に『死』という言葉が浮かぶくらいには、自分の体が壊れていこうとしている事が実感出来た。
 帰ってこれない向こう側に意識が飛んでいきそうになる中、声を抑えるよりももう叫んでも声が出なくて、シーグルの視界は次第に闇に閉ざされていく。

 それでも、ふと思い出す。
 自分は、こんな馬鹿馬鹿しいことで死ぬ訳にはいかない。
 生きて帰ると約束した人達がいる、自分を信じて命を掛けてくれる部下がいる。それに、まだ生きたいと願い、諦めきれない兵達もいる筈だった。

 拷問とも言える時間が過ぎて、やがて男たちもシーグルの中で果てた。ずるりと抜かれたソレらの感触に、やっと苦しさから解放された事をシーグルは知った。




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一応痛そうなエロでした。残り2話かな。



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