呼ぶ声と応える声と
※後半にレザ×シーグルなHシーンがあります。




  【4】



 秋も深くなり、もう少しで冬へと切り替わるその直前、クリュースの首都セニエティでは年に一度のリパの聖夜祭が行われる時期となる。
 リパの日――つまり満月の日を指すその日は世界的に魔法が強まる事もあり、その中でも聖夜祭周辺は一年で一番魔力が増大する時でもあった。だからこそ魔法使い達がトラブルを起こさないように監視するため、彼らもまた祭で賑わう首都に集まる事になっていた。

「ご不満そうですね」
「何がだ?」

 無表情そのもののセイネリアにカリンがそう声を掛けて、彼女は主に触れられる程傍に近づいた。

「ドクター達も、他の魔法使いから何か情報が手に入らないかと思っているんです」

 言いながらしゃがみこんでカリンがセイネリアの腕に触れると、彼はそれを払う事もせずに苦笑の息だけを漏らした。

 首都に聖夜祭が近づいて、例年よりも早く団の魔法使い達は首都へ行く事になった。その為、何かあった時にアリエラが迎えに行く事が出来ないからと、蛮族の調査をしていたセイネリア達はその間だけはアッシセグに帰っている事になった。
 だから、セイネリアの機嫌が悪くても仕方ない。
 おまけに、首都からの調査ではボウ族の位置が掴めなくて、結局セイネリアが他の部族達からそれを付き止めようとしていたところだから尚更だ。

「無力なものだと思っていただけだ」

 自嘲気味に呟いた彼の声には、らしくない疲れが出ていた。
 カリンは触れていた彼の腕に、目を瞑って頭を寄り掛からせる。

「いい機会です、ボスもお休み下さい」

 言えば、セイネリアは自嘲に唇を歪めたまま喉を軽く鳴らした。

「俺に休息は必要ない」

 その言葉の本当の意味を分かっているカリンは、苦しそうに眉を寄せる。

「お休みください。例え体には必要なかったとしても、心が必要としている筈です」
「それなら尚更だ、起きている方がまだマシだからな」

 それに泣きそうな顔で主の顔を上げたカリンを見て、セイネリアは自嘲の笑みを苦笑に変えた。

「大丈夫だ、少しは寝ている。どちらにしろ俺が本当に休めるのは――あいつがいる時だけだ。情けない話だが……まったく、最強が聞いて呆れる」

 言って頭に手を置いてくれる主を見上げたまま、カリンは顔を彼にと近づけていった。








 クリュースよりも北に位置するアウグの冬は、当然ながらクリュースよりも早くやってくる。まだ首都は秋の頃かと思ったシーグルは、その日の夜に窓から見える月を見て、もうすぐ満月がくる事を知った。

「今度の満月は……そうか、聖夜祭か……」

 ぽつりと呟けば、このところ基本はこの部屋で眠るようになった部屋の主である男が聞き返してくる。

「あぁ、クリュースの神様の祭か、相当派手にやるらしいな」
「国で一番大きな祭だからな」
「そら見てみたいものだな、あの国なら相当盛大なンだろう」
「そうだな、たくさんの露店が並んで街に入り切れない程人がやってきて、貴族達のパレードや、月の勇者を決める競技会がある」

 月を見ながらシーグルが男を見返す事なく答えれば、酒を飲んでいたレザが椅子から立ち上がって近づいてくる。

「競技会か。俺はその手のモノではいまだに負けた事がなくてな。俺が出れるなら、クリュースの腰抜け共相手じゃ楽に優勝出来る自信があるぞ」

 後ろに立ったレザは言いながらシーグルの体を抱き寄せて、首筋に唇を押し付けてくる。

「かもしれないな。……だが、このところ連続優勝しているチュリアン卿との槍試合なら勝敗は分からないと思うぞ」

 言えば、前に回していた手でシーグルの体を撫でていたその手が止まる。

「その名は知ってる、バージステ砦の指揮官だな。あいつには今回やられたからな」

 声にも戦士らしい凄みを乗せて、レザが耳元で呟いた。シーグルはその彼を押し退けて一歩分の距離を取ると、彼に向き直って服の乱れを直した。

「あぁ、彼は強いぞ。槍でしか相手した事はないが、俺は勝てなかった」
「ほう……」

 そういう話の時のレザは、獣じみた、強い戦士特有の迫力がある。
 それでもシーグルは恐れる事もなく、真っ直ぐ彼の瞳を見返して背筋を伸ばした。
 そうすれば唐突に、レザはシーグルの予想もしなかった事を言い出した。

「チュリアン卿というのは、お前の男か?」

 あまりにも予想外過ぎて理解出来なかった言葉を真顔で言われて、シーグルは一瞬呆けた後、分かった途端にその発想にガクリと肩を落とした。

「違う」
「そうか」

 それで今度はにかっと屈託なく笑い出すのだから、この男の考えている事がよくわからないとシーグルは思った。

「それならいいんだ。もしそうだったら、撤退する前にそのチュリアンて奴をぶっ殺して来なかったのを相当後悔する事になるからな」

 言いながら男はシーグルの体を抱き上げ、ベッドへと連れて行く。
 言っている言葉は物騒だが、最近やっとわかってきたこの男の行動理念を考慮すればシーグルも納得しつつ呆れるしかない。

『言っときますけど、あの人は貴方のことを捕虜として逃げ場がないのをいいことに好き勝手弄んでやる、なんてつもりは欠片もないですよ。気に入った青年を囲って抱いて口説いて自分のものにしようとしているだけです』

 そういう事であるなら、先ほどの話もチュリアン卿がシーグルの恋人だというなら奪ってやるというつもりなのだろう。……馬鹿馬鹿し過ぎて頭が痛くなるくらいだが、彼はそれくらい自分を気に入っているらしい。
 シーグルの体をそっとベッドに下し嬉しそうにその上に乗り上げてくる男を見て、シーグルはため息をついた。

 胸の方の怪我はほぼ完治し足も立つ程度は出来るようになったところで、レザは夜は大抵この部屋で寝て、当然その度にシーグルを抱くようになった。
 シーグルとしては未だに極力反応を抑えて、大人しく抱かれてはいても彼に拒絶を返していたのだが、レザの方は飽きもせずに毎回シーグルを抱きながら口説いてくる。しかもこれだけ抱かれていれば彼もこちらの体に大分慣れたようで、触れてくる場所が的確すぎて声を抑えるのも最近では難しくなってきていた。

――慣れたのは、自分の方かもしれない。

 そう思いながらも、シーグルは今日もレザに抱かれる覚悟をする。
 襲われる事が多かったシーグルにとっても、これだけ長い間、ほぼ毎日のように男に抱かれ続けた事はなかった。しかも頭が正常な状態で抵抗もせず大人しく受け入れているなんてあり得ない事で、体がそれに慣れていくのをはっきり自覚していくのが怖かった。
 レザがシーグルを抱きながら、何度も何度も言ってくる言葉がある。

『こんなに慣れてるなら、ここに欲しくて堪らなくなるんじゃないのか?』

 そして何度も中を突きあげながら、耳元で囁いてくるのだ。

『ここで俺を覚えるんだ。ここに俺が欲しくて堪らない体にしてやる』

 冗談じゃない、と思っても、実際今ではこうしてレザに圧し掛かってこられるだけで体の熱がすぐに上がってくる。下肢が疼いて、浅ましく後孔がひくつくのさえ自覚出来る。そこにレザが入ってくれば、悦んで締め付けて背筋まで快感が駆けあがってくるのが分かっていた。

「ったく、本当に頑固だなぁお前。だがな、その耐えてる顔も堪らなくソソルってのをお前分かってないんだろ」

 そうしてレザの手はシーグルの胸の尖りをきゅっと摘まむ。

「んっ……」

 シーグルは体をぶるりと震わせて、中で暴れているレザの雄を締め付けた。
 足が良くなってきたからか今日は背後から犯してきているレザの手は、抽送を止めないままシーグルの胸やら性器を触ってくる。その感覚に耐えながらも吐息を震わせて、それでもシーグルは思っていた――この体勢の方がまだマシだ、と。
 なにせ相手の顔が見えない。正面に比べて匂いも直ではないし、そしてこの体勢なら相手がキスしてくる事もない。それだけで、自分を抱いているのが誰かを実感しなくて済む。
 こうしてレザに抱かれるようになって、確かに体はもう彼を受け入れる事に慣れてしまったものの、心はそれに引きずられる事はなかった。それどころか、日々快感に慣れていく体に反して心は益々抵抗を強めていくようで、こうして抱かれている時の無意識から沸く嫌悪感というか拒絶感は酷くなる一方だった。
 考えてみれば、今まで自分がこうして抱かれ続けていた時は無理矢理か正気を無くしているかが殆どで、正気のまま自ら受け入れて抱かれていたことは少なかった。受け入れてはいても憎しみとか悔しさとか、そういう強い感情に支配されていたからなのか、こんな心で意識せずに自然と込みあがってくるような拒否感はなかった。
 レザ自身に嫌悪感がある訳じゃない。自分の状況を考えて、今は彼を受け入れるしかない、彼に抱かれるのならまだ我慢が出来るとそうシーグルは判断して彼に抱かれていた。
 なのに、すごく、嫌なのだ。
 嫌で嫌でたまらなくて、吐き気が競りあがってくる事も珍しくない。
 それくらいに、時折、相手がこの男であると実感したところで叫びだしたくなるほど心が拒絶を返す。それは多分、今自分を抱いているのがレザだからというのではなく……『彼』ではないと、そのことを心が拒絶しているのだとシーグルには分かっていた。『彼』ではない男に抱かれ、それに慣れていこうとする身体を心が拒絶しているのだ。

「どうだ、最近じゃ俺が来ない日は体が疼いて仕方ないんじゃないか? 入れる前から触っただけで穴がヒクついてるようだしな」

 声がレザの存在を実感させ、シーグルは歯を噛み締める。
 レザは言いながら満足げな唸り声を耳の傍で吐き出だすと、その雄は激しい動きで中を擦ってくる。覚えてしまった男の肉の形が深くを突きながら的確に快感を生む場所を擦ってきて、シーグルの肉は更にそれを飲み込もうと蠢く。口はシーツを噛んで声を抑えているのに、男の抽送に引きずられるように腰が一緒に揺れる。

「ぅ……んんっ……あぁっ」

 耐えられなくてシーツが口から落ちると、レザの手が急激にシーグルの雄を掴んで激しく扱いてくる。それにシーグルが達すると更に乱暴に突きあげてきて、大きく喘いだシーグルの声を聞いた後に、レザも中に吐き出した。

「ふぅ、ったく抱く度によくなってんじゃないかお前」

 それにシーグルは何も返さない。ただ荒い息をついて、感覚が静まっていくのを待つ、中にいる男を感じないように努める。へたに反応してしまうと、レザが喜んで再び動き出すのをシーグルは知っていた。
 けれど、そうしてどうにか早く感覚を消そうとするシーグルの努力を嘲笑うかのように、レザは繋がったままの体をシーグル毎起き上がらせた。

「う、ぁぅっ」

 背後から受け入れた状態のまま、座ったレザの上で座らされた状態になって、しかもレザはシーグルの両足を大きく開かせた後、右足を掴んで胸に着く程高く持ち上げた。

「や、め、うぁ……」

 体を浮かされた事で少し男が抜けていくと、体は楽になるものの反射的に受け入れている肉がそれを離すまいと反応する。抜かれようとした質量を引き留めるように、ヒクヒクと肉が蠢いてレザの雄を締め付けているのを感じる。
 しかもそれに、レザが言う。

「ほら、目ぇ開けて見ろよ」

 言われて目を開けてしまったシーグルは、ベッドの前に立てかけられた大鏡にレザとシーグルが繋がっているその部分が丁度映っているのを見た。

「ほら、とんでもなくやらしいだろお前のココ、こんなに広がって俺のを飲み込んでるんだぞ」

 言いながらレザの指は、限界まで広がっているシーグルのその入口付近の肉を撫でる。そうすればきゅっとそこが収縮して銜え込んでいる肉に絡みつき、中へと出された白い液体が滲むように溢れ出てくるのが見えた。
 しかも見た事で意識してしまった所為か、そこはびくびくと更に蠢いて、レザの方もそれに唸って耐えられなくて抜けかけていたそれを深くまで押し込んだ。

「あっ……」

 ぐち、という感触と共に、視界の中でもそこへ肉が押し込まれていく。根本まで中に入ってしまえば、じわりと広がるように溢れた液体が相手の繁みを濡らして行く、自分の腰が自然と揺れてしまう。

「なぁどうだよ、お前の体がどんだけ淫乱か分かったろ? 分かったら大人しく感じてればいい。俺に全部委ねて気持ち良くなればいいんだ。意地張ってたって何も変わりはしない、どうせお前の体はもうこんなに快楽に慣れてる」

 耳元で囁かれる声で我に返って、シーグルは鏡から目を逸らした。
 それでも、今見た鏡の中の自分の姿が頭の中に蘇る。自分がレザと繋がっているその姿を現実として受け止めて、心が拒絶を繰り返して悲鳴を上げる。今にも暴れてこの男から逃れたいと心が叫ぶ。
 だから感情を押さえつけて、唇を噛みしめて、競りあがってくる不安と拒絶を振り払って、最後に快感に溺れたがる体の感覚を押さえ込む。そうして、シーグルは目を開ける。

「ここにいる以上、仕方なく体を好きにさせているだけだ。それ以上をお前に許す気はない、バウステン・デク・レザ」

 鏡に向かって彼の顔を見て睨めば、レザは目を大きく見開いた後に笑い出した。

「いやまいったな……だがな、なかなか落ちないモン程余計に欲しくて堪らなくなるってのも覚えておいた方がいいぞ」

 言うとレザはその体勢のまま、今度はシーグルの両足を掴むとその体を上下に揺さぶりだした。自重のまま深くを抉られ続けて、シーグルは再び男の精を受け止めながら自らも達した。



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 絶倫男レザ男爵。いや本当に、シーグルさんヤられ続けてます。



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