ある日の夜の物語
将軍と側近での二人。単に夜のいちゃいちゃ話。
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。



  【2】



「おい馬鹿っ、やめろっ」

 声を上げたらやたらにやにやした顔の男がいたから、やっぱりこいつこっちが寝たふりをしていたと気付いていたんだなとシーグルは思った。……まぁ、セイネリア相手に騙し通せるとは思っていなかったが。

「重いっ、早くどけっ」

 言って暴れたら今度は笑い声が返ってくる。完全に遊ばれてると分かっているが、実際このデカイ図体で圧し掛かられてシーグルは苦しいのだ。

「こんな時間まで仕事をしてきた主に対して随分冷たいな。少しくらい労ってくれてもいいんじゃないか?」

 笑いながらそう言ってきて、彼はこちらの顔のあちこちに唇を押し当ててくる。体だけではなく腕も足もがっちり動けないように抑えられているからシーグルの抵抗はベッドを叩く程度にしかならない。

「だからっ、お前の冷たい体が入ってきても文句をいわなかったぞ俺はっ。それでベタベタ触られても脱がされて直接肌に冷たい体をくっつけられても仕方ないと我慢したっ。だが何故上に乗る? 乗る必要はないだろっ」

 シーグルだってセイネリアだけに仕事をさせて先に寝ている罪悪感があるのだ。
 外から来たばかりのセイネリアが冷たいのは仕方ない。だからこちらにくっついてきて温まろうとするくらいはまぁ、許してやってもいい。だが上に乗っかってきたのはただの嫌がらせ以外の何物でもないだろう。
 だがそこでセイネリアはしれっと答えてくれる。

「乗る理由は俺が楽しいからだ」

 それにはちょっとシーグルはすぐ言葉が返せなかった。狸寝入りをしていたからその報復だ的な事を言われると思っていたの呆れて声が出なくて……だが暫くすると怒りがこみあげてきた。

「俺はまったく楽しくない、お前は重いんだ、苦しいし身動きできないしどうしたいんだお前はっ」

 するとセイネリアはなんだかやたら嬉しそうに笑った後、顔をこちらの頭の上の埋めて言った。

「俺の体重でお前と肌がぴったり合うだろ。この密着感がいいんだ。お前を強く感じられる」

 本気で嬉しそうにそういわれて髪を撫でられたら……文句が言い難くなる。シーグルは黙ったままどう返すべきかを考えた。だが考えてみてもうまい言葉が思いつかない。これが嫌味だったというならいくらでも文句の言葉を浴びせてやるつもりだったのに、この男は本気でこうして体を密着させるのが目的なのだ。

 誰よりも強い男のくせに常にシーグルがいるのを感じていないと不安になる。というか、この男が不安になるのはシーグルに対しての事だけなのだ。

 それを分かっているからなんだかそれ以上怒れなくなってしまって、シーグルは長い溜息を吐いた。

「お前がくっつきたいのは分かったがいい加減どいてくれ、俺は苦しいんだ。……代わりに、ちゃんと付き合ってやるから」

 そうすればセイネリアはこちらの頭にキスをして起き上がる。彼の重みがなくなってほっとしたシーグルだったが、肌が外気に晒されて思わず腕を押さえて震えてしまう。だから体を丸めて彼を睨めば、結局なんでも思った通りにしてしまう男は嬉しそうに笑って顔を下ろしてくる。

「何、すぐに温かくしてやる」

 そうして合わせられた唇を、シーグルは仕方なく受け入れて彼の背に手をまわした。







 ふ、と唇を離した合間に息が漏れる。それは意識したものではなく無意識に出てしまったもので、そこでセイネリアが満足そうに笑うのが分かるから直後にシーグルは正気に戻って恥ずかしくなるのがいつもの事だ。

「ン……」

 それでもそこで文句を返す間もなく再び唇を塞がれてしまうから、シーグルとしてはそこで強制中断に成功した試しがない。この男はムカつくくらいにキスが上手いから唇が合わさって舌を絡ませられるといつの間にか意識が薄くなっていって後は流される。最近ではぼうっとしている間に唇が離されて頬や鼻を舐められて気付く事も多く、向うの余裕ぶりが本当にムカつく。

 ただムカついて睨めば、向うは本当にうれしそうな満たされた顔をしているから、シーグルは毒気を抜かれて何も言えなくなる。『あの』セイネリア・クロッセスのあまりにもらしくない顔に怒る気がなくなってしまう。

 それでバツが悪い顔をして黙っていれば、鼻を擦り合わせられたり頬ずりをされたりあるいはここでまたしつこく長いキスが始まったりしてキリがない。おそらく彼はわざとこちらをたまに正気に戻して楽しんでいるのだろうなと思う。それが嫌がらせではなく、単に彼がこちらの顔を見たいからだというのも分かっているからやはり文句は言えない訳だが。
 そうしていつも通り、やっと満足したのか唇を離した後額にキスして、彼は上体を浮かすとこちらの片足を持ち上げた。それからすぐに指で挿れるべき場所を撫でてきたから、シーグルはぎゅっと目を閉じて反射的に顔を背けた。
 ……ただ、それで覚悟して待っていても指は中へは入ってこない。ただ周囲を撫でているだけでいつものように中へと来ない。

――また、じらしてるつもりか。

 もしくはこちらの反応を見ているのか。仕方なく薄目を開けてそっとセイネリアの顔を見てみれば、彼はじっとこちらの顔をまた嬉しそうに見ているだけでシーグルは心の中だけで盛大な溜息を吐いた。

――本当に、嫌がらせとか遊んでいるとかなら文句が言えるんだが。

 勿論こういう時にセイネリアがこちらを揶揄っているだけ、ということもよくあってそういう時は遠慮なく文句を言う。けれど今日のように、彼が自分の心を満たすためにこちらをじっくり見たがっている場合は文句が言いにくい。多分、おそらく、彼にとっては必要な事なのだろうから。
 とはいえ、いつまでもこんな事をされていたらシーグルだって困る。

「セイネリア……何、してるんだ、お前」

 だから少し待った後にそう声を掛ける。声を掛けないとこの男はいつまでもこちらの顔を眺めてくる事があるからだ。するとやはり彼は気付いたように口角を更に上げてこちらの頬にキスをしてきた。

「悪いな。いつまでもお前は慣れてないんだなと思ったら……そのまま見ていたくなった」
「慣れても最初はいろいろ覚悟がいるんだ、仕方ないだろ」
「俺のために耐えてるのかと思ったら楽しくてな」
「お前が楽しくても俺はツライんだっ、あまり止めないでくれ」
「分かった」

 彼の笑い声が聞こえる。本当に楽しそうで、やはりそれにもシーグルは毒気を抜かれてしまう。
 そうして、一度指が離れたと思うと今度は何かで濡らされた指が入ってきた。

「くっ……」

 中を探られる感触はやはり最初はなんというか……苦しいというか、気持ち悪いというか嫌な感じでそうそう慣れてどうでもよくなるものではない。そのタイミングで彼は上体を下ろしてくるから、シーグルは少しだけムカつきながらも彼の体に手を置いた。

 実はこういう時にいつもシーツを掴んでいたら俺に掴まればいいだろうと言われた事があって、以後はそういう時にセイネリアはこちらが彼を掴める位置に体を持ってくる。

 面倒な奴だと思っても、無視してシーツを掴むと軽く嫌がらせをしてくるのでシーグルも折れる事にした。彼はとにかく頼ったり掴まるなら自分にしてほしいようで、自分以外――それが人間は当然としてモノにでも――に頼ると不機嫌そうに拗ねる。

 ただ、そういうガキっぽいセイネリアの態度を実はシーグルは嫌いではない。

 誰からも恐れられ、この国では恐怖の権化であるように噂されるセイネリア・クロッセスが、自分だけにはガキっぽく拗ねて見せるのはシーグルにとって嬉しくもあった。強すぎて頭が良すぎて人間味が薄い彼が自分の前では実に人間臭いところを見せるのが……嬉しいというか安心する。彼が化け物ではないのだとそれがシーグルは嬉しかった。

「ウ……」

 くちくちと自分の下肢から聞こえてくる音に合わせて、セイネリアの指が奥を突く。内壁を押して、広げて、解すようにそこを指で探るように動かしてくる。ただそれは最初のうちで、ある程度慣れてくると指を出し入れさせて内壁を擦ってくる。そうなるとそこが熱を持って下肢全体に甘い疼きが生まれるから、シーグルはそれを耐えるように目の前の彼にしがみつく。指が増えて圧迫感が増す、更に強く擦られて熱があがってくる。歯をきつく噛んで掴む手に力を入れて……けれどそこで唐突に指は中から去っていく。

「もう少し待ってろ」

 楽しそうなそんな声をぼうっと聞いていれば、顔にキスされて腰が持ち上げられる。体勢が変えられるだけでさっきまで彼の指を飲み込んでいた場所がひくついているのが自分でも分かって、シーグルはいたたまれなさになんだか泣きたい気分になった。
 内心、早く入れろと思うが口には出したくない。
 そうしたら自分の雄が彼の手に握られて、シーグルは驚いて目を見開いた。

「おいっ」
「少しだけだ」

 だから何が少しなんだと思っていたら、自分の雄に彼の雄が押し付けられた。彼のモノの熱をそこで感じてしまってシーグルとしては恥ずかしくてたまらないのだが、次の文句が出るより早く、セイネリアは両方のそれを手で擦り合わせるようにして擦りだした。

「う、わ……」

 水音が先ほどよりもクリアに聞こえる。彼の熱とその大きさや硬さもはっきり意識してしまう。敏感過ぎる場所で彼を感じてしまえば熱の上がり方が急激すぎて、シーグルは我知らず体に力が入って身を縮こませる。

「やめ……い、あ……だって」

 とにかくやめてもらいたいのだが上手く言葉が出せない。ハッキリ言おうとしたら高い声が上がってしまいそうでシーグルは彼の肩を掴んで顔も押し付けた。そうすればセイネリアの手の動きは強くなって、彼は体ごとゆすってそれをこちらにすり合わせてくる。

「う、あ……ん」

 そこでシーグルに一度限界が来た。
 けれどほっとする暇などある筈がない。そこですかさずセイネリアがこちらの腰を持ち上げて足を大きく広げさせてきたと思ったら、離したそれを今度は入れてきたからだ。




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 中途半端なところで終わってすみません。次回は続けて二人のH。
 



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