強くなるための日々
シーグルがセイネリアから離れて修行中の時の話
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【12】



 部屋の中は静かで、シーグルの少し荒い呼吸の音だけが聞こえている。
 アウドは彼のモノから口を離したが、それでもまだ体を起こしはしない。ちょっと悪戯じみた顔をして、まだ彼の中に埋まったままの指を僅かに動かした。

「う……」

 声は小さく、体は力が抜けたまま動かなかったが、指を包むそこの肉はひくひくと動いている。まるで奥へと飲み込もうとするかのようにぎゅ、ぎゅ、と呼吸に合わせるように指を締め付けてくる。その感触にごくりと喉を鳴らしてしまってから、アウドは本当に入れたいものの代わりに指でそこを突き上げた。

「は……ばか……やめ……ン……ふぅ」

 奥を突けば肉がうねる。吸いつくように絡まってくる。この中に思いきり自分の雄を突き立てたい衝動を抑える代わりに指の動きが激しくなる。
 指の抜き差しを早めていけばぐち、ぐち、といやらしい音が鳴って、シーグルの足がベッドを蹴る。抽挿に合わせるように、吐息のように小さく切ない喘ぎ声が聞こえてくる。

「や、ぁ、ぁあ、あ、んっ、ぁ」

 そこでまた彼の雄が辛そうになっていたから、アウドは再びそれを口の中に引き入れた、その直後。

「っ、ぁ――――っ」

 シーグルがまた吐き出したから、それを受け止めてやる。シーグルはぐったりとまたベッドに背をつけたが、流石に今度は怒られた。

「流石に今のは余分だろ」

 とはいえ脱力しきった声は小さい。

「……すみません、あんまりにも欲しそうに締め付けていたのでつい」
「黙れ、次は言って許可を取ってからにしろ」
「はい、すみませんでした」

 大人しく謝れば、彼もそこで黙る。こちらの顔を見ずに横を向いたままだったが。
 彼としては怒りが収まってはいないものの、もう怒るような気力もないというところなのだろう。
 暫くは先程より更に荒い、彼の呼吸の音が部屋を満たす。
 それを心地よく聞きながら、その音を邪魔しないようにアウドは静かに顔をあげると、ぐったりとしてベッドに体を預けている彼の体をじっくりとまた見つめた。
 コトの後であるから息を荒げている彼の腹が呼吸の音に合わせて上下している。顔をほんのり紅潮させて横を向く彼の横顔もやはり綺麗で、ぼうっとしたどこかおぼつかない瞳はいつもの彼らしくないのもあってなんだか余計にこちらの下半身にクル。

――ヤベェ。

 まさに目の毒だ、と思って気付いてすぐ目を逸らしたが、ここで部屋から出て外でヌいてくる訳にもいかない。かといってシーグルにさっさと服をきせて部屋に帰って貰うなんてのは論外だ。
 しかたなくそうっと背を向けて出来るだけ音を立てないように気を付けて自分の股間に手を伸ばせば……。

「アウド」

 呼ばれてまさにアウドは体ごと飛び上がりそうになった。

「え、うぁ、はいっ」

 焦って振り向いて笑顔を顔に張り付かせれば、基本はきつい濃い青の瞳がじっと睨むようにアウドを見てきた。

「……お前は、どうするんだ?」
「……え?」

 聞き返せば暫くじっとこちらを睨んでいたシーグルが気まずそうに視線を逸らす。

「だから、俺だけにして……お前もきついんだろう」

 アウドはそこでどう返事すればいいのか迷って固まった。いやそりゃ本音を吐き出して、キツイですヤラせて下さい貴方に突っ込みたいです、と言えれば苦労はないがそんなの言える訳がない。かといって全然問題ないですなんてなんでもないフリも出来る訳がない、というかバレバレのこの状態で誤魔化せる訳がない。

「えー……まぁそりゃぁそうですが……。良ければ貴方にはちょっと見ないふりをして頂けると嬉しいな、とか」

 だからもう別の方向で正直にアウドは今しようとしていた事を暗にシーグルに伝える事にした。

――そりゃもう本音は貴方の上にこのまま乗っかって襲いたいですよ!

 心だけで本音を叫んで愛しい人の顔を見て訴える。
 その視界の中、シーグルが気まずそう、というよりなんだかすごく思いつめたような表情で小さく呟いた。

「一方的にしてもらうだけは……嫌だ。だから、お返しに俺が……して、やる」

 アウドはまた固まった。
 今の言葉は気のせいかこちらの妄想が生み出した幻聴か――アウドとしてはシーグルは『主』な訳で一方的な奉仕はある意味当然なのだが、確かにこの人の性格上それを嫌がるのも分かるが……と混乱しつつ考えていたら、シーグルが起き上がってアウドの股間に向けて顔を下ろそうとした。

「い……いやいやいやいやいやっ、だめですっ、貴方にそんな事させられませんっ」

 ずささっと音がするほど勢いよく後ずさって逃げてから、アウドは両手を開いて前に出して左右に振る。

「だが……そのままは、きついだろ」

――えぇそりゃきついですが、きついですけどっ。ついでにいえば、本音はすっごい嬉しいですけどっ。喜んでお願いしたいところですけどっっっっ。

「……貴方にそんな事させたなんてバレたら将軍様に何されるか分かりません」

 そう返せばシーグルも顔を上げて黙る。

「なら、どうすれば……」

――ですから、ちょっと他所向いててくれれば自分でどうにかしますから。その時にベッドに寝ている貴方を見るのを許してくれれば十分、いやちょっと吐息なんか聞こえればもっといいですが、少し触らせていただければ……あぁ、口はさすがに恐れ多すぎても手なら頼んでしまってもいいも……いやそれならいっそ……。

 心の中では本音が駄々洩れになるが、流石にそれをそのまま口に出せる訳もなく。アウドは大きくため息をついて考えた。勿論、シーグルの姿からは目を逸らして。少し冷静に考えてから……聞いてみた。

「貴方に何かをさせる、というのはその……僕(しもべ)としてだめです。というか、そもそも匂いや気配でだめなら口は無理なんじゃないですか?」
「それくらいなら、我慢すれば……」
「ですからっ、我慢してまではされなくていいですからっ。それでですね……その、もし、お許しいただけるのでしたら、基本的に自分で処理はしますが……その……貴方のと一緒に擦ってもよろしいでしょう、か」

 アウドが考えた結果出した答えは……入れるのがだめで、だきついたりもだめで、キスもだめで自分で処理するとしても……出来たら彼の声を聞ければ、彼に触れられればと考えたら、一緒にソレ同士を擦り合わせるのが一番ではないか、だった。

「俺は……もう十分、だが」
「まぁでもまた当分こういう事態を避けたいなら、この際今日は徹底的にその気がなくなるくらい解消してしまってはどうでしょう?」
「う……」
「俺は貴方の僕として貴方に何かをさせる訳にはいきません。ただ出来れば貴方と共に気持ちよくなりたいです」

 シーグルは暫く考えた上に悩んで悩んで……分かった、と呟いた。

 それにアウドは喜びつつも――いやシーグル様人が良すぎでしょう、大丈夫ですか? ――と心配にもなったが。







「貴方はそのまま寝ていてください。俺がやりますので」
「あ……あぁ」

 それで大人しくまたベッドに寝転がったシーグルだったが、結局これでは一方的に彼にさせるだけじゃないかと思いもする。ただこれで彼も処理が出来るなら結果として問題はないからいいのか……とも思ったりもするので、なんだか微妙に引っかかるものはあってもいいことにした。

 足を掴まれて腰を上げられる。そのまま片足だけが持ち上げられて引っ張られれば、互いの股間同士が当たる。

「う……」

 感触にぞわりとしたところで、アウドが体を屈める。けれど彼は完全にこちらの上に乗り上げてくることはしない。こちらが彼の気配を意識し過ぎない距離を保ってくれているのだろう。そう考えれば申し訳なさがこみ上げてきて、あとは彼に任せようとシーグルは覚悟を決めた。

「っ、ぁ、ぐ……」

 アウドのものと合わせられて、手で扱かれると感触で思わず顔に力が入る。歯を食いしばって最初の感覚をやりすごせば、ゆっくりとまたじんわりと熱があがってきてシーグルは今度は別の意味で歯を食いしばった、けれども……。

「シーグル様」

 悲しそうに名を呼ばれて思い出す。

『もし……貴方が、俺に一方的にさせるのが悪いと少しでも思って下さるのでしたら……声くらい聞かせてくださいませんか?』

――くそっ。

 悪態は心の中だけで呟いて、反射的に耐えて声を抑えようとしていたのを止める。意識して体を浸食してくる熱を感じてそれに身を任せた。

「ふ……ん、ぁ……」

 そうすれば自然と鼻から声が漏れる。熱を追って、ただ感覚に酔う。耳からは水音、くちくちとだんだん大きくなっていくその音と、アウドの荒い息遣いの音に自分の鼻から抜ける声が混じる。恥ずかしすぎてぎゅっと目を閉じれば、いつも嬉しそうに自分に圧し掛かってきていた男の事を思い出して――感覚が急に上がった。

「や、あ、……ぁ、ぁ」

 喘ぐと同時に頭に浮かんだ黒い男の顔に悪態をつく。

――あの馬鹿。

 俺がこんな状態なのはお前のせいだ、お前が悪いんだ、ふざけるなとひたすら文句を頭で喚き散らしてそれでも競りあがってくる熱に身を任せる。

 幸いな事に、アウドもかなり限界に近かったらしく、それはさほど長くかからずに終わってくれた。
 勿論、その後は脱力し過ぎて動く気力もなく、シーグルは自分の部屋までアウドに運ばれて帰る事になったが。




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 いやさすがに最後のは長々書く気力がなかったです。
 ってことであまりエロくありませんでしたがエロはこれで終わりです。



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