知らなくていい事
将軍と側近での二人。二人のいちゃいちゃ+セイネリアが裏でちょっと動きます。
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。



  【8】



 サボるなんて言葉とは無縁過ぎた真面目人間のシーグルだが、それでも多少は慣れたらしい――と、眠るシーグルの顔を眺めてセイネリアは考える。
 シルバスピナを名乗っていた時は通常、素晴らしいくらいの早寝早起きを実践していた彼だから、夜セイネリアに付き合うようになって寝る時間が遅くなった分、実は彼がいつも少々寝不足気味な事は分かっていた。
 だから彼の様子を見つつ、無理矢理ベッドから出さないようにして適度に睡眠をとらせていたのもあるのだが……勿論、いつまでも彼を抱きしめて寝ていたかったというのも本心だ。
 こうして無理矢理昼寝に付き合わせるのも何度かやっていたせいか、彼も逃げられないと観念するとその内寝るようになっていた。

――寝ている時くらいしか大人しくしがみついてこないからな、こいつは。

 自分から体温を求めてくっついてくるシーグルを見て、セイネリアはたまらずその顔にそっと触れるだけのキスをした。本当は顔どころか体中にキスをしたい気分だったが、さすがにそこまでやると彼が起きてしまって強制中断になるのは分かっている。そういうのは事後とかの、彼が疲れきって半分気絶するように眠った時くらいしか出来ない。

 それでも今日は、こうして彼を抱きしめていられるだけで十分だった。

 なにせシーグルに隠し事があって動いている時は、セイネリアは彼とのやりとりに気を付けるためどうにも思いきり彼との時間を満喫出来ない。
 だからこうしてそれが解決した後は、必要以上に無性に彼を感じたくなる。彼の寝顔ならいくらでもじっと見ていられるが、さすがに外が暗くなってきたせいで見えにくくなってきたのもあって、セイネリアはまた彼を抱きしめて彼の頭に顔を埋めた。
 そうすれば……予想出来てはいたが、どうやら彼は起きたらしい。腕の中で身じろぎして……動けないのを悟って暫くじっとしてから、唐突に乱暴に暴れて逃げようとする。その反応がいつも通り過ぎて、セイネリアは笑ってしまう訳だが。

「くそ、いい加減放せ、もうこんなに暗くなってるじゃないか」

 それから、どうせ起きてるんだろ、と言いながら彼が頭上に顔を向けてこちらを見ようとする。セイネリアはやっとそこで腕の力を緩めた。

「まったく……」

 前ならここでいきなり起き上がったところだろうが、最近はセイネリアがちゃんと解放すればシーグルも即逃げはしなくなった。それにきっと今回は、彼も気付いていたのだろう。

「それで、お前が一人で動いていたのは例の神官の件か?」
「あぁ」

 セイネリアはそこで正直に肯定した。元からシーグルに対して完全に秘密にする気はなかったし、彼も気づいていて当然だろうと思っていたから迷うところはない。

「……なら、分かったのか?」
「あぁ」

 シーグルがじっとこちらを見てくる、さぁ言え、という顔だ。睨んでいると言ってもいいかもしれない。

「あの神官は、大神殿でウォールト王子の世話役をしていたらしい」

 言うのはそれだけでいい。そこまで言えば彼は全部あとは察する。もしシルバスピナ卿が王に反旗を翻していたなら――なんて仮定はわざわざ言わなくても彼が勝手にそこまで考えて自責の念に駆られるのは分かっている。
 シーグルに秘密で彼に関する事をセイネリアが勝手にどうにかしてしまう事はしないと約束している。だが今回は事情を聞いてきただけであるから、それを秘密のままにしなければ彼的には許してくれる範囲だろう。だからセイネリアも最初から、今回の件は全部終わってから彼に話すつもりだった。

 ただ何も知らない他人の口から彼を非難する言葉を直接聞かせたくはなかった。そして彼が落ち込んだり傷ついた時には、自分が傍にいて彼を抱きしめてやれる状態でいたかった。だからこうして腕の中にいる彼に、自分の口から告げたかったのだ。

 黙って俯くシーグルを抱きしめ、彼の顔に触れるだけのキスを何度も落とす。辛い時に甘える事が苦手な彼のため、こうしてこちらから甘えられる状況を作ってやらないとならない。

「大丈夫だ……今更、悔いても終った事が覆る訳じゃないのは分かっている」
「そうだ、忘れてはだめだが、悔いて反省するのは一度でいい」

 ただ正直なところ、セイネリアとしてはシーグルに対しては忘れろといいたいところではある。勿論それは、絶対彼自身が許さない。
 言いながらセイネリアは腕の中の彼にまたキスを落す。暫くすれば彼が苦笑と共に顔を上げたから、今度はその唇に自分の唇を重ねた。







 いつもよりキスを早めに終わらせても、シーグルは大人しくこちらに身を任せていた。まず彼に長いキスをするのは、彼を大人しくさせるためと、自分の感情を彼にぶつけるためがあったから、今の方がキスは軽い事が多い。ただし回数はずっと増えた。満足感も。
 シーグルもまた、一度行為を許した後は無駄な抵抗はしなくなったから、押さえつける必要も、意識を飛ばしてやる必要も最近はほぼなくなった。
 ただ彼を丸め込んだ時や我が儘を通した時は抗議して本気で抵抗されるから、強引に彼を大人しくさせる事がなくなった訳ではない。勿論、その場合は後で謝ったり、彼の機嫌を取る事になる。
 実のところセイネリアとしては、大人しく身を任せてくれても、文句を言って徹底的に抵抗してくれても、どちらでも楽しいからいいのだが。

 こめかみにキスして、目元にキスして、そうして耳朶を軽く噛んで甞めてから、首筋、鎖骨へと舌を滑らせる。
 それくらいの軽い刺激でも彼の肌は時折震えて、そっと彼の顔を見てみればぎゅっと目を閉じた彼の瞼がピクピクとやはりこちらも震えている。きつく閉じた唇から噛み締めている歯さえ見えれば呆れて思わずこちらの唇が笑みにゆがむ。
 何度やっても彼はこうしてまずは感覚を耐えようとするから、その反応が楽しい。セイネリアとしては、耐えようとしている彼が耐えられなくなるようにしてやるのが楽しくて仕方がないのだ。だから意地が悪いのを承知で、彼の胸の尖りを唇でついばむように挟む。

「うぁ……」

 たまらず出た声を聞いて笑みを深くしてから、もう片方の尖りを指でくるくると回すように捏ねて、唇でついばんでいる方の先端を舐めてやる。そうすれば声は抑えたものの彼が身じろぎするから、つい上げてしまった彼の足の膝から腿までを手を撫で上げて、そのまま彼の股間を握った。

「ちょっ……ぉい」

 明らかに焦った彼の声はこんな時くらいしかそうそうに聞けない。
 彼は更に膝を上げて腰を捩って手から逃れようとするが、当然それくらいで逃げられる訳がない。まだ少ししか反応していない彼のそれを撫で上げて先端を擦り、握って扱いてやれば、シーグルの手がこちらの肩を掴んで抗議してくる、これも割といつもの事だ。

「おい、セイネリア、そっちはいい……から」

 思わず喉を震わせてから、セイネリアはそこから手を離して濡れた指を彼の後ろの孔へと持っていく。

「なら、こっちか?」
「馬鹿っ……っうぁ」

 指が入っていくと、彼の引き締まった腹筋がびくんと大きく跳ねる。
 彼の顔は真っ赤で、こちらを見る目は涙目になっている。けれどこっちが彼の顔を見ていると分かると彼は横を向いて目を閉じた。まったく、意地っ張りだからとセイネリアが更に喉を鳴らす事になる。
 彼が他所を向いているならとその隙にセイネリアは顔を下におろしていく。そうして今度は口で彼の雄を咥えてやれば、シーグルが悲鳴と怒声の中間のような声を上げた。

「おいっ、やめっ」

 あまり怒鳴られても面倒なため、そこでセイネリアは口の中のモノを舌でくるみながら少し強めに吸ってやる。シーグルの手が頭を掴むがそれに力は入っておらず、ただ足や腹周辺の筋肉には力が入ってびくびくと反応しているのは分かった。そのまま、彼には文句をいう暇を与えないように口の中のものに刺激を与えてやる。同時に、彼の中に入れた指を動かしてやれば、頭の上からは耐えられずに出した彼の高い、吐息のような小さな声が聞こえてきて、セイネリアは益々楽しくなる。
 いつまでも慣れない反応を示す彼だが、彼の体は慣れている。指を包む肉は嬉し気に蠢いて、柔らかく開いては締め付けて奥まで欲しがる。指を増やして少し奥を突いてやればもっと高い声が上から聞こえて、セイネリアは彼の足を持ち上げて本格的に彼の足の間に体を入れていく。
 シーグルは強く目を瞑って横を向いたままで、シーツをぎゅっと握りしめている。その顔を見てまた笑ってしまってから、セイネリアは彼の腰を持ち上げて一旦こちらの腹で押さえると、掌全体で彼の胸からウエスト、尻までをゆっくり撫で上げるようになぞってから尻肉を広げて自分のものを押し付けた。

「本当は、もっとじっくり楽しむつもりだったんだが」

 彼も自分も限界だからな、とそこまでは言わずに彼の中に入れていく。

「うあ……ぁ、ぁ、うぐっ」

 入口を広げて、押し込んで、引っかけて。ある程度入ったら腰全体を掴んで一気に埋める。見ればシーグルは尚もシーツを掴んで顔を横に向けたまま歯を食いしばっていて、そろそろその我慢も終わりにさせてやるかとセイネリアは体を倒し、彼の喉に噛みつく勢いでキスをしてそこを吸った。

「あ、あぅっ、く」

 体制が変わって更に深くへ入った事でシーグルが悲鳴のような声を上げる。
 セイネリアは腰をゆっくり動かして彼の中を突き上げながら、彼の喉や首、鎖骨、胸、肩にキスをしてはその肌を吸った。そうしながらも徐々に突き上げる速度を上げてやれば、シーグルもいつまでも横を向いて耐えてなんていられなくなる。上を向いて、喉を逸らして、大きく開けた口から声が漏れた。

「あ、あ、あ、あっ」

 奥を突く度、押し出されるように上がる声は動きが速くなればなるほど高く、大きくなっていく。彼の耳たぶを吸って目じりの涙を舐めてやれば、やっと彼の手がシーツではなくこちらの肩を掴んでくる。さっさと抱き着いてくれればいいのにとは思っても、まぁ今回はこれでいいかとそのまま彼の片足を腰ごと持ち上げて強く深く穿ち、彼の中を楽しむ。

「あ、や、や、だ、あ、あぅ、はぅ」

 そうしてぎゅっとこちらの肩を掴む手に力が入って彼の中が大きく蠢く。その締め付けに逆らって奥だけを数度突き上げてからセイネリアも動きを止めた。そうしてびくびくと締め付ける彼の中を存分に味わった。




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 はい、あんまりエロくないエロでした。おそらく次回で終わりかと。
 



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