リアル・ストーリーの光と影
◆STAGE 2 「仲間、と呼ばれて」 SCENE#3
「何が悪かったんだろう?」
思わず独り言を零していた。それが、いかに愚問であることかは、翔も重々判っていた。何が悪かったんじゃなくて、どうしてあんなことをよりにもよって葵に口走ったのか、という方が問題なのだ。けれども、その時の自分の心境を思い起こそうにも、もやもやしていてはっきり覚えていない。おまけに、今は葵に三行半を突きつけられてしまい、そのショックで旨く頭が回っていなかった。
「どうしたらいいんだろう」
これも愚問だろう。さっさと、葵に謝りに行けばいいのだから。だが、何をどう葵に謝ったら良いのか、混乱してる今の翔には判らなかった。
「あれ?」
いつの間にエントランス・ホールにまで降りてきたのだろう? 翔は、ぼんやりとホールに佇んでいた。折しも下校する生徒たちがちらほら、そんな翔を訝しそうに見ながら通り過ぎていく。生徒数が少ないところを見ると、下校締め切り時間も近いのだろう。だが、翔はまだ家に帰る気分ではなかった。
「セントラル・スクェアにでも、行こうかな」
何気なくそう言ってみて、翔は胸に痛みを感じた。駅前のショッピング・アミューズメントスペースである“セントラル・スクェア”には、一人で行ったことがない。いつも、章とつるんで遊びに行っているところ──それが一人で行こうかと思うだけで、こんなにもやるせない気持ちになるのだろうか。
「でも…こんな状態で、章と顔も会わせられないし…」
スパイラルを描いて下降する気持ちを持て余して、翔は今日何度目かの溜息をついた。そんな時──朗らかな声が背後から掛かった。
「少年、溜息をついてると幸せが逃げるよ?」
☆☆ SCENE#4に続く ☆☆
★天査からのメッセージ
新年のお年玉──って訳じゃありませんが、更新です。非常に短くて恐縮ですが、この回は中継ぎなのでご容赦を。その代わり、今週末には次の更新をアップします。この回は、ショック(自業自得ですが)を受けた翔が、内在的な思考で堂々巡りをしています。知性に感情が追いついていない、典型的な例と言えます。この状態のままで放置すると、自他共に傷が深くなっていくので、手早く、断固として行動する必要があります。なにはともあれ──後悔だけはしないようにね。
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