別 世 界 通 信

SECOND TOPICS

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ADnDをマスタリングする際の情報ソースはこれだ!


Collum written by ぐゎるま


 情報ソースという言葉には幾つかの意味合いがあると思う。ホームページでの情報、雑誌、メーカーサイドの宣伝等々、いまやイメージソースは満ち溢れ、どれから探していいのか分からない状況と思う。

 ところで、私は自他ともに認める「アナログ派」だ。というわけで、便利なWEB用検索ソフトやiモードでの情報収集という今風のソースにはとんと縁がない。またゲーム雑誌等も最近全く読んでいないので、印刷物も弱い。故に、今回のお題では、私が一番書きづらい執筆者になっているような気がする。なにしろ私の場合、情報ソースは生活の中にあるからだ(電子の世界などは他のメンバーにお任せしよう)。あくまでも私の情報ソースには普通の生活以外必要ないからだ。

 抽象的過ぎて分からないだろう。というわけで、いつもながら分類から行こう。

 マスタリングという中では、一般的に下記の分類ではないか。

1:シナリオメイク時
2:セッションプレイング時
3:キャンペーンセッティング時

 まず1:。どんなシナリオにするかだ。この時のイメージとは大抵スタート段階、エンカウント段階、ラストステージ段階にさらに分化する。スタート、というのはもちろんどうやって話しを振るかである。よくあるのは酒場で飲んだくれているPCにNPCが接触する事。NPCが魅力的である様に十分にイメージを作っておかないと、プレイヤーサイドはなかなか乗ってこない。あるいはその場所のセッティングもイメージが大切だ。酒場の喧騒とは打って変わって神秘的な森の中でのスタート。こういった手法も私のプレイングでは多い。

 このようなスタート時でのイメージソースは実社会に幾らでも転がっている。自分の注意を惹いたもの。服装、会話、なんでもよい。メモしておくのが第一だ。ついで電車内など、暇な時にぼーっと想像してみる。幾つかのキーワードをつなげて想像する。慣れてくれば想像がそのまま創造になる。

 次いでエンカウントの創作。貴兄がデミヒューマン、アンデッド、大型モンスターと各種揃えてバラエティーに富んだエンターティメントを提供したい、というのなら話は別だが、通例はシナリオの本筋に沿ったエンカウントとなる。水棲系、山岳系等、住処で分けるのが一般的か。そういった当たり前のエンカウントの場合、遭遇地点の描写が大切な要素になる。
 池に着いたら蛙が襲ってくる。そんな単純な設定でも、その池まで着く前に、いかにも水源がありそうな描写はいくらでもできるし、レンジャーがいるなら、適当な所で足跡を見つけさせればよい。とにかくいきなり戦闘というのはいざ、という大事なポイントまで避けたほうが無難だと思う。スリルとサスペンスとよく言うが、エンカウント段階ではスリルが大切だ。さもないと予想外の所でPCが大打撃を被る結果にもなりやすい。というわけで、プレイヤーに、なにかあるぞ、と思わせる描写が必要なのだ。こういう時にソースとして便利なのは一般的な映画や小説、コミックなどの描写のつながりだろう。知識が豊富ならその分、作りやすいし、例があった方がP側に理解してもらいやすい解説ができるからだ。

 シナリオ段階で一番リキが入るのがラストステージ。地下の大広間で待ち受けるバンパイヤ。そんな単純な構成であったとしても、PCはどんな気持ちでその扉を開けるのか、ラスボスを目にして感じるのは恐怖なのか、戦闘の昂揚感なのか、やっとラスボスかという安堵感(?)なのか。あるいはラスボスへの哀れみなのか。そこまでのシナリオの展開で幾らでも調節できるはずだ。この辺に関してはシナリオメイキングに所属する問題なので今回は貴兄等の創造にお任せする。

 さて、イメージとなると、私の場合、突入した時と、戦闘終了時の状態をまず最初に考える。特に絵的にどういった状況なのかを3DCGさながらに360度視点をぐるっとめぐらせる様に、はっきりと自分の中に構成しておく。シナリオメイキング時にはつい天井からの視点、つまりダンジョンマップの視点で考えやすくなる。それを避けるためにもPCの視点、ラスボスの視点、ガーディアンの視点と、さまざまな角度と想いから立体的に構成するのだ。こういった説明には写真で言うところの広角系、望遠系といった手法が私の常套手段。広角は距離感と広がりを説明し、望遠では戦闘突破のキーポイントとなる部分を解説する。この連携で、P側に事態の認識と状況判断を促すのだ。この際のイメージソースはやはり建築物だろう。古代、中世の図版や再現図といった真面目なものもそうだし、映画やコミックでの建造物内部のイメージも非常に想像力を掻きたててくれる。

 戦闘終了後。戦い終わって日が暮れて、という段階。実のところ、私が一番時間をかけて考えるのはここだ。逆に言えば、そこに至るためのシナリオなのだから。

 「では以上で本日のシナリオを終了します。お疲れ様でした」

と、宣言する寸前の描写。その言葉にはいつも苦労させられる。強敵を倒した安堵。次のシナリオへの鍵を見つけた昂揚感。謎が残ったままの不安。そしてお宝鑑定を待つわくわく感(?)。プレイヤーによってこの時の感情はさまざまだ。そういったメンバーになしとげたという達成感を与え、シナリオそのものへの印象を植え付ける事のできる「エピローグ」。これが一番難しい。単なる経験値かせぎの冒険なのか、PCの成長の1ページを飾る逸話になるのか。それを分けるのはプレイヤーの心にその場の状況を克明に刻み込む事ができるかどうかだろう。偉人の残した言葉や四字熟語、短歌。そういったちょっと特殊なものを使用してでもプレイヤーの心にイメージを沸かせたいところだ。

2:セッションプレイング時でもイメージソースは大事。NPCの服装や、小物をポケットから出すときの描写、抜刀の仕方など、ワンポイントでもよい、リアル感を出すのに便利なものだ。紐を解く様子、バックパックの降ろし方といったさり気ない部分の描写を加えることで、リアル感を増し、その印象をプレイヤー側に強く打ち出すことができる。特に伏線を張るときに、「あ、あいつは確かポケットに何か入ってたはずだ」とプレイヤーに気づかせるといった細かい点に力を発揮する。

 また、ルールにない行動をPCが行った際、DMが自己裁量(ジャッジメント)をする時にも、イメージは非常に重要だ。決定はスピーディーに行わないとシナリオのノリがそがれるし、なおかつプレイヤー側が納得できる説明を行わねばならない。その時に、その場の状況を頭の中に咄嗟にくみ上げることができるか否かは先ほど上げたシナリオメイキング時のイメージが成否を分かつ。明かりはどこまで照らしているのか、PCの行動はラスボスに見えているのか等、さまざまな要素をくみ上げて判断する必要があるからだ。まぁ、大抵の場合にはDMが必死で構成した場所をPCが呆気なく飛ばしてくれることが多いのだが、用心に越したことはないだろう。

 このように、時間の限られているセッションプレイング段階では、いかに素早く判断を行い、いかに短時間で描写をPCに認識させるかという点が重要だ。つまり「時間」との戦いである。これに負けないためにも、さまざまな状況を思い描ける想像力が必要だと思う。

 私の場合、そのソースは、実は他のDMのセッションであることが多い。私がPCとして参加しているゲーム中、DMが出してくるさまざまなキーワード。描写。それを自分のPCの視点だけでなく、仲間(NPC含む)の視点から考え、想像してみるのだ。狭い視点と広い視点。つまりPCとプレイヤーの視点。これをシナリオ中に混同しないようにするのは困難だ。しかし、これができないなら自分がDMする際にはもっと苦労することになるだろう。

 他人のセッションを参考にするDMも多いが、どうもシナリオ作りという部分のみに目が行き、ジャッジメントの仕方など、本当に参考になる所を見逃す人が多いようだ。私などは自分のPCが「?」と感じたであろう部分をDMに質問してみて、よどみなく返事が返ってくると、嬉しくなる。まぁ、キャラクターよりも世界観重視のシナリオが個人的に好きだからかもしれないが。

 最後に3:。一番大きなテーマである、キャンペーン創作時だ。ただ、私の場合、ひとつの世界を幾つものキャンペーンに使用することが多いので、わりとイメージソースは統一されている。フェアリーランド。ワールドの名称がそのままそれを表している。キャンペーンはそのメインDMによってその個性が分かれるのは当然だ。ハイファンタシィ、リアリティ、ハートウォーミング等々。私の場合、フォークロア(民族学)、特にケルト系の情報が根底にある。エルフ、ドワーフといった北欧系よりも、シー系なのだ。そのためもあり、イメージソースはケルト系に偏ってしまう。

 だが、それでは参加してくれるプレイヤーの要求に応えきれない部分が多いため、一般的なアニミズム感は存在しうる世界にしてある。以上の理由から、どうしても唯一神対悪魔という図式よりも、自然界、精霊、輪廻、常若の国といったアニミズム色が濃い。その結果、私が一番強くイメージを刺激されるのは異種婚姻や転生だ。また妖魔とか、山人、鬼と呼称される存在の世界観にも強く惹かれる。人あらざるもの。共にこの世界にいるもの。いわば「隣人」。絶対的なものは唯一「時」のみの世界で、さまざまな存在が接触する。これが私のテーマである。

 大きな事を書いた割には、実はそのイメージソースはどこにでもある。昔話、メルヘンも含め、精霊談、他種族への転生、「転生した再会」等、小説、コミック、映画など、幾らでもその要素を見出せる。なにしろ日本は八百万の神の国なのだから。別に図書館で探すまでもなく、どこにでもあるものだ。

 最後に一つだけ追記しておくと、私にとっては音楽も十分なイメージソースになっている。特にロマン派等のオーケストラが一番刺激になるが、歌謡曲(Jポップ)でもその要素が見出せる。

 結論を言おう。

 イメージソースはどこにでもあるのだ。暇だな、と思った時、MDを止めて周りを感じてみよう。見るもの、聞くものから想像した事を考えてみよう。DMとしてシナリオがまんねり化したな。そう思ったのならなおさらだ。「時間を無駄にしない」なんて考えない。あえて無駄な時間を作ろう。なにもせず、受け手でいること。この世界に所属していることを実感すること。そうすれば、普段見過ごしていたものに、別の価値観を見出すだろう。

 DMに一番必要なもの。それは想像力を喚起するキーワードを見出す力だと思っている。

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