みんなのいえ  2
 
先人に学べ
01/01/22

ぼちぼちと素材が上がってきたよ。
でもね、まだまだ一日に上がる素材の量が、「え?こんだけ!?」ってぐらい。
だから、まだまだ先が読めません。まあ、それでも撮りこぼしもなく撮影は寒い中、順調に進んでいる模様。

今回、オールスタッフの時に三谷さんから、「参考」にと言われてた作品が3つあるんよ。

『セプテンバー』『重罪と軽罪』『アマデウス』

ぼかぁ、ウディ・アレン作品っていわゆるニューヨーク系のインテリ映画なんだろうなぁ、って食わず嫌いしてたんだけど、まあ、そんなわけで、今回が初対面だったんよ。
『重罪と軽罪』はね、お世辞にも面白いとはいえないし、これのどこが『みんなのいえ』とリンクするのか掴みかねるところがあるんだけど、『セプテンバー』はなかなか面白かった。
内容が、というんではなくて、撮り方、手法がね、おもしろかったよ、うん。
カットバックとかもチビッとやってるんだけど、ほっとんどが長回し。長回しごはんにカットバックふりかけ、ってなもんです。でも、その混ざり具合がとっても自然なんよね。普通に観てたら気づかんのんじゃないかなぁ、カットの変わり目。執拗なまでにカット割らないぞ、カット割らないぞ!ってコダワリが前面に出てた『マグノリア』の後半なんかとは、また違った印象だったよ。あれはあれでよかったけど。
で、『みんなのいえ』も長回しなんですよ。
三谷さん曰く、「カットを変えることによって観客に見せるものを限定させることを避けたい」
舞台で生きる人ならではの発想だね。
舞台では、主役にスポットがあたっていても、他の共演者も同じ舞台に立っていて、何かしらのリアクションをしているからね。

そんで残すは『アマデウス』。
この作品で、モーツァルトがサリエリに、自分の言うメロディを譜面に書かせるクダリがあるんだけど、そこの撮影は、実際に役者にセッションをやってもらい、それをモーツァルト側ショットと、サリエリ側ショットの2キャメラで同時撮影され、あとでカットバック編集したらしいのね。
で、『みんなのいえ』でも、とあるクダリをそれで行きたい、とうことらしいんだ。
実際観たけど、まあ、見事なカットバックだったよ。
というより、のっけからミロシュ・フォアマンの演出力に圧倒されちゃって、それどころじゃなかったけどね。

今日の直助(田中直樹)
「火星人の方向でいいですか?」
初戦あいまみえる
01/02/28

ほどなく撮影を終えた三谷監督は、打ち上げの翌日、朝10時に編集室に出向いた僕を待っていた。(待たすなよ)
キッチリとしたスーツ姿で姿勢もよく、落ち着き払った様子でこちらの出方を伺っている。
正月3日の、ジョージ・クルーニーの後ろで披露していた挙動不審な振る舞いは、どこふく風だ。
「何から始めましょうか?」
彼はそう切り出した。
まるで家庭教師と初対面したかのような雰囲気に飲み込まれそうになった僕は、負けじと「今日は天気もいいですし、外でお弁当としゃれこみましょうか」と心の中でだけ切り返した。
「まずはザックリと頭から観ていきましょう」
代わりに出た極めて社交的な返礼に彼は、
「そういえば」
と、スルリとかわし、おもむろにカバンからヴィデオテープを取り出した。

『おいしい結婚』

1989年の森田芳光監督作品だ。
「これをそのまま再生してください」
彼はそう言い放ち僕にテープを渡した。
ブラウン管に現れた映像はなんと、邦衛さんと唐沢さんであった。
Barのカウンターにふたりきり。背中で語る大人の男の雰囲気を醸し出している。
『みんなのいえ』のご両人からは想像もつかない映像だ。
いや、待てよ、これは彼のメッセージなのか?
この映像の中に、彼がこれからやらんとするエッセンスの全てが凝縮されているのか?なるほど、そういわれてみれば頑固で老練な大工と血気盛んな若手デザイナーがお互い歩み寄ろうとしてる風に見えなくもない。僕は全てを理解した。

「三谷さん、今回はこれでいくんですね!」

「え?あ、なんでしょう」

彼はそこでサインを書いていた。
8枚、9枚とサインを書いていた。
ハッキリと読み取れる字で「三谷幸喜」と書いていた。


「いや、あの、このヴィデオは?」

「ああ、おふたりとも若いでしょう」

「え? ええ・・・」

「貴重な映像だと思いまして」

「それだけ?」

「それだけです」

今日の監督
「なんか、こう、小人たちが踊っているような・・・」
長回し
01/03/02

今回は『ラヂオの時間』と違ってカット数が極端に少ない。基本的にワンシーン・ワンカット。今のところ、総カット数300ありません。
「カット数が少ないから繋ぐのなんて簡単だ」と、タカをくくってたんだけどこれが意外に難しい。
カットでたたみかけて抑揚をつけることができないし、カットを割って逃げる、ということが出来んのんよ。
舞台の幕と幕を繋ぐ感覚に近いんかな。
『みんなのいえ』は161の幕場がある。
これを台本どおりに並べれば、ひとまず全容は見えるんだけど、人物関係を明確にしつつ、笑いをふりまきながら、いろいろとトラブルが勃発して渦中の人間はオオワラワの最中にも物創りのコダワリを垣間見せ、最後にはホロリとしてHAPPY!という、あの独特の三谷ワールドを最大限発揮させるのは果たしてどの並びなのか、というパズルのような作業と取っ組み合いの真っ最中。

時間の許す限り三谷さんと頑張るからみんな楽しみに待っててね。

今日の民子(八木亜希子)
「海の家じゃないんだから!」


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