憬文堂
遙の書棚 Fullkissの書棚 いろいろ書庫 憬の書棚 刊行物ご案内 お食事日記掲示板 web拍手 メールフォーム

● ライナーノート ●

罪 作 り

初出 : 2003年3月5日 『憬文堂』




  もし、本編を読む前にこちらを読もうとされている方がいらしたら、引き返して先に
 本編をお読みになられることをお薦めします。
  カップリングの表示は無いし、読み始めてすぐに不穏(?)な発言はあるしで、ギョッ
 とされるかもしれませんが、所詮、仲秋憬の書く話ですから、先は知れています。
  いえ、むしろ私自身、困惑しているのです。『遙か』の話を書き始めた頃、少し落ち
 着いたら、他のカップリングの話も色々書こうと思っていたのですが、3年が経とうと
 している今も、さっぱりそんな気配がありません。
  何を書こうとしても、結局、友雅×あかねばかり書いてしまい、『いつどこ劇場』で
 一度オールキャラを書いたり、闇でこっそり友雅を含む3人の話を書いたくらいで、こ
 うしてサイトの書棚に並べているのは見事なほどに友雅×あかねばかり。
  お待たせしているリクエストの別カップリングの話や『遙か2』の本命、翡翠×花梨
 すら、未だに仕上げられないのですから、己の病に気が遠くなりそうです。

  正直に白状しますと、LaLa2003年4月号に掲載された『遙か』のコミックを
 読んで、もうほとんどあきらめてはいたけれど、やっぱり友雅さんが本気になる話はマ
 ンガにならないのねと、友雅×あかね者としては少々ふてくされたことが、この話を書
 いた直接のきっかけです。
  藤姫はかわいくて好きなのですが、友雅さんとカップルにはどうしても思えませんし、
 恋愛対象とするのは、とても苦手です。
  とは言え、マンガは幼い彼女の片思いの夢話だし、本筋を考えればこうなるでしょう
 と、コミックと同じ頃に当てはまるように書いたのが、この話なのです。登場人物も、
 状況も、わざと合わせて同じにしました。
  これを読んで不快になられた方がいらしたら、本当に申し訳ありません。たまたま趣
 味が合わなかったということで流してくださればと思います。
  私は、原作の設定から展開すれば、遊びはともかく、友雅さんがあかねちゃん以外に
 本気になるのはあり得ないということを確かめたくて書いています。
  文句を言うより、自分で一作でも納得のいく話を書いた方が楽しいですものね。その
 話を面白い、やっぱりそうよねと、感じていただけたらいいなと思っています。
  それで世に友雅×あかねファンが増えれば、もう言うことなし!

  そんなわけで、今回はいつもと趣向を変えて、まだ八葉側の片道通行で、その気のな
 いあかねちゃんを書きましたが、これが思いの外、楽しかったです。
  私自身には、あかねちゃんの様な天然要素が無きに等しいので、彼女の反応は新鮮で
 目が離せません。ああ、これだから私は友雅さんにシンクロしてしまうのですねぇ。
  詩紋くんは、いつも気の毒な傍観者の位置をまかせてしまい、心の中で両手を合わせ
 て拝むのですが、あらゆる意味で、とてもいい性格の彼なので、強く育ってねと願うば
 かりです。
  ゲーム後半の地シナリオで、友雅さんと詩紋が会話するシチュエーションの時の彼ら
 のやり取りが、かなり興味深く、とても好きなので、意識してよく取り込みます。
  まだゲームでご覧になっていない方は、ぜひ一度、地シナリオで白虎と戦う時のもう
 一人に詩紋くんを選んで連れて行ってみてください。あの会話が私の書く詩紋くんを決
 定づけたと言っても過言ではありません。
  友雅さんに関しては……とにかく、あの通り自分の武器をよくわかっている頭の良す
 ぎる大人ですから、彼が本気になれば、ああいった誘導会話は朝飯前かなということで。
 彼のしゃべりを書くのが、いつもめちゃくちゃ楽しい私です。

  さて今回は『源氏物語』の話題もちょこっと出てきまして、それに合わせたわけでも
 ないのですが、友雅さんが最後に詠む歌は源氏からの引用です。

  ──八百よろづ神もあはれと思ふらむ犯せる罪のそれとなければ──

 (八百万の神々もあわれと思し召しくださるだろう。
                 これという犯した罪もないのだから)

 『須磨』の巻の最後で源氏の君が詠んでいる歌です。
  罪作りなのは、たぶんお互い様なのですけれど、友雅さん的には、自分のたくらみは
 恋ゆえのことですから罪のうちには入らないのですね。このあたりは、平安貴族の感覚
 を強く感じます。悪い男だなぁ。でもそこがたまらなくカッコイイ。
  こういう友雅さんが、とても好きなのですが、読んでくださった方が私と同じように
 お気に召してくだされば嬉しいです。








遙の書棚 Fullkissの書棚 いろいろ書庫 憬の書棚 刊行物ご案内 お食事日記掲示板 web拍手 メールフォーム
憬文堂