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● ライナーノート ●

祝 う 日

初出 : 2000年6月11日 『月影夢想』




  一目瞭然、友雅さんのお誕生日に合わせて書きました。
  この話を書く前に書いていたのが『残月』でしたから、そりゃもう反動のように甘々
 になるのが必定だったようです。
  誕生日なんだから友雅さんにいい思いをさせてあげなきゃと思い、だいぶサービスし
 てしまいました(笑)。

  そろそろワンパターンの罠にはまりそうだと感じた私は、何か違う形で書かなければ
 と思い、今回はあかねちゃんの一人称で書いてみようと考えました。
  友雅さんのお祝いで本人が一番うれしいのは、あかねちゃんのお祝いだろうと思った
 からです。友雅×あかねドリーム驀進中ですね。もう笑うしかないです。

  6月11日というのはゲームの最終決戦の翌日に当たります。
  これはどうやっても変わらない事実ですから、素直にあかねちゃんが京に残ると決め
 た、その翌日として、その日のことを想像して書きました。

  11日に内裏である、年に二度の月次(つきなみ)の祭り、『神今食』(じんごんじき)
 の儀式というのは、本当に年中行事として行われていたことです。
  だとしたら近衛の少将である友雅さんには、お勤めがあるはず。
  その辺り、リアリティのある雰囲気を出したかったので、色々と織り込んでみました。
  得てして荒唐無稽な話であればあるほど、ちょっとした何気ないリアリティ、それら
 しさが話を面白くすると思います。
  このへんのバランスにいつも苦心するのですが、私の場合どうしても知識と理詰めに
 走る傾向があるので、理屈っぽくならないように注意しないと!
  そういう意味で、あかねちゃん一人称というのは、話をわかりやすくするのには、非
 常に有効な手段ではなかったかと思います。

  氷遊びのくだりは、『源氏物語』の蜻蛉の巻で、薫が女一の宮をかいま見した時の、
 女房たちが氷を割って戯れている場面を意識しました。あの時代でも権力者なら、そん
 なこともできたんですね。左大臣家だったら当然ですよね。

  で、あかねちゃんのシースルー・ルックですが、これも実際にしていた格好です。単
 袴(ひとえばかま)という姿ですね。
  女房みたいに仕える立場の人たちは、なかなかそうもいきませんが、楽できる主人サ
 イドは、プライベート生活では、そんな格好もありだったのです。
  絽や紗みたいなスケスケの衣じゃ、ほんっと裸同然……。これはかなり刺激的でない
 かと思います。

  醍醐(だいご)というのは、ヨーグルトだという説がまかり通っていたりしますが、
 実際のはっきりした製法は伝わっておらず、本当のところ、どのようなものだったかは、
 わかっていません。
  でも、どうもヨーグルトそのものでないことは確かのようで、バターミルクのような
 ものだという説もあります。でもバターミルクってそんなに美味ってわけでもないです
 よね。うーん。
  平安時代の漢和辞典である『和妙抄』に「こは蘇の精液なり」とありまして、大量の
 蘇からほんの少しの醍醐がとれると書いてあります。『蘇』(そ)というのは牛乳を加
 熱濃縮していって作るものなので、それを冷やすとか保存とかすると出来たんではない
 か……とも考えられているようです。

  ま、とにかく珍しいおいしい飲み物なのよ!ってことで、ここはひとつ想像してみて
 ください。なんだか官能的だなと私などは思うんですが。
  この醍醐をですね、トップレス状態のあかねちゃんから口移しって……。しかも友雅
 さんってば、手ずから竹筒を持たせて飲ませたりしてるんですよ。
  ひー、めちゃめちゃHじゃん! と私は自分で書いていて大興奮していたのですが、
 バカですね。なんだか我が身が哀れになってまいりました。
  食欲と性欲の官能って、どこかでつながってるかなあと思うんですけれど、いかがで
 しょう。本当は、こういう話の方が裏棚なんじゃないかとまで思ってみたり。

  え? 全然そんなことない? 物足りないですか?
  実は、この話、あまり反応を聞くことができなかった話なので、自分でも、ちょっと
 自信がないんです。
  いやー、やはり、あかねちゃん一人称は、私には無理だったかな〜。
  でも、いい経験になりました。書いた本人は楽しんで仕上げた一作です。







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