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● ライナーノート ●

夢の浮橋

初出 : 2000年5月6日 『月影夢想』


  正真正銘、初めて書いた『遙か』の話です。

  いまだかつて、マンガにハマっても、ゲームにハマっても、これほど、自分でも話を
 書いて、趣味を同じくする誰かに読んでほしい、と思ったことはなかったです。

 『遙か』は、ゲーム発売日に買って(グッズに興味はあまりないのでプレミアムBOX
 じゃなかったけど)、すぐに夢中になりました。
  本当にシナリオが秀逸なゲームですよね。
 『遙か』は、あくまでパラレルな『遙か』的平安風異世界が舞台なんですけれど、それ
 でも、ここしばらく忘れかけていた私の『平安オタク』の血が一気に沸騰してしまい、
 大変でした。

  攻略を求めてネットの海をさまよって、それで出会ったのが、織名水由さんの『桜香
 夢想』です。あー、趣味を同じくする方はいるんだなあと、うれしくなりました。
  織名さんが書いてらしたコメディ風のお話が、また面白くて、その続きを、友雅×あ
 かねを推進する会に入会したら読めますよ、ということになったので、そうでなくても、
 友雅×あかね一押しの私は、速攻で入会したのでした。

  普段、あちこちのサイトを見せてもらっていて、どんなに楽しく拝見していても、ま
 ず、掲示板に書き込んだりということは、ほとんどせず、まして、こういうファンクラ
 ブ会員などになることも、書いたものを送ることも、まったくしたことがない私が、会
 員になって、あまつさえ投稿までしてしまうのですから、世の中わからないものです。
  何か波長があったというか、呼び合ったというか……これが縁というものなのかな。

  で、会員になったからには、ひとつ私も、友あか創作を書いて、読んでもらいたいと
 思い、ゲームの流れに自然に乗って書いたのが、この話です。
  友雅さんの話で、京に残った、その先を書きたい、と思いました。

  そして、もうひとつ、どうしても、書いてみたいネタがありました。
  あかねちゃんは、一体、文をどうやって書いていたのか? ということです。

  ゲームをしていて、ずっと突っ込みたかった、物忌みの時、八葉に出すお誘いの文!
  あれ、どうにも無理があるような気がしていたんですねえ。
  友雅、鷹通、永泉あたりには、まあいいとしても、なぜ、一緒に現代からやってきた
 天真や詩紋にまで書くかな(笑)。
  お習字やっていたのか、あかねちゃん。
  もちろん、ゲームとしては、そういった要素は、八葉平等になっていなければ困るし、
 とても面白い仕掛けなのは、わかっているんですけれどね。
  で、本当はどうしていたのかな〜と、いろいろ妄想していたのが、きっかけです。

  友雅さんと恋愛するなら、恋文は避けて通れないだろう。
  だったら、どんな風に進展するかな〜というところから、こんな話になりました。

  あかねちゃんの歌は、本文にあるように百人一首で、友雅さんの歌にも、半分元歌が
 あります。
 『夢の浮橋』というのは、ご存知の方も多いと思いますが、あの『源氏物語』の宇治十
 帖の最後の巻の名ですね。
  内容はまったく関係ありませんが、友雅さんが詠いそうな月やら夢やら夜……といっ
 た言葉を、あれこれ頭の中でひっくり返していたら、ぱっと浮かんで使いたくなったの
 で、歌の中心に据えてタイトルにもしようと思いました。

  たいてい、古今、新古今和歌集とか、古語辞典とか、そのあたりを見ながら、似合い
 そうな歌探しをします。
  この時は、確か、新古今の鑑賞本か何かを読み返していて、源三位頼政の歌のところ
 で、この頼政の平家物語に出てくる鵺(ぬえ)のエピソードで、ちょっと気になるいい
 感じの歌があるのがわかりました。

  弓を射て鵺退治に成功した頼政が、左大臣から「ほととぎす名をも雲居にあぐるかな」
 と歌いかけられ、「弓張月の入るにまかせて」と月を見ながら返すのです。
  かっこいい〜!
  これは、「月の入る」と「弓を射る」をかけて歌っていて、この部分、なんだか意味
 深に使えるなあと思ったのでした。
  どことなく、友雅さんっぽいような感じがしたし。
  源の姓や鵺というと、頼久さんを思い出さないでもないのですけれど、その頃は、ま
 だ、あのコミック版の『鵺』番外編は、影も形もない4月頃ですから。

  で、あとは、夢の浮橋につなげて、苦し紛れにつぎはぎ短歌にしちゃったというのが
 正直なところです。情けないですねえ。
  ちゃんと自分で歌を詠まれる方が見たら怒り心頭に達するいいかげんさでしょう。

  でもね、私は、雰囲気でいいと思ってるんですよ。
  正しい知識とか、正しい歴史だから、面白いってものでもないのは、『遙か』を見れ
 ば、わかることですもんね。
  ただ、あまりにも「らしさ」を損なうようなことだけはしないようにしたいと思って
 います。明らかな間違いや、知っている人が不快になるようなウソは、できるだけない
 方がいいですものね。そういう積み重ねが、話に厚みを持たせることになると思うし。
  ええ、私だって王朝物が、本当に好きなんですから。

  この話を最初に書いた時は、まだ陰暦の月の満ち欠けを、きちんと頭に入れていなく
 て、時期的に6月後半であるはずの弓張月を、上弦の月、とか書いてしまって!
  有明の月は、15日の満月より後でしか見られないのに!
  欠けている月なら上弦と下弦があるけど、下より上の方が響きがきれいだなとか思っ
 てさらっと書いてしまったんですね。
  6月後半なら、下弦の月に決まっています。
  気が付いた時は、そりゃもう慌てて織名さんに修正をお願いしたのでした。
  あああ、恥ずかしい。うろ覚えの知識で書くから、こんなことになるのです。

  知っててついてるウソやごまかしは、そりゃ、もう山ほどあります。
  調べても、わからなくて、想像で書いてしまっていることも山ほど。
  それをさりげなく本当らしく書き込むのがテクかな〜、なんちゃって!(偉そう!)
  なんだか、読んでくださって声をかけてくださるみなさんが、妙に感心してくださる
 ので、それはそれで、なかなか冷汗ものだったりしますね。
  あんまり本気にしないでくださいね〜。たはは。

  歌の意味や、平安の知識なんかわからなくても、友雅×あかねとして読んで面白い、
 そういう風に書いているもりなんです。本人は……。
  それで、後で何か、そういった文献を当たる機会があった時、あ、こんなとこにも、
 こだわってたのね、というそんな驚きがあったら、それは私としては、とても嬉しいこ
 とでして、あくまで、趣味のこだわりみたいなものです。
  こればかりは、まだまだ精進しないといけませんね。


  いきなり、お初の話を書いてしまったことが、実はかなり驚きを持って迎えられたら
 しいと気が付いたのは、投稿して、思いがけず「面白かったです」と何人かの方に、お
 声をかけていただいた、その後でした。
  私としては、本当にゲームの流れの延長として、何の迷いもなく書いたものですから、
 初夜がそんなに衝撃的だとは、全然思っていなかったんですね。うかつだな。
  数えで16歳なら、平安時代だし、何ら不自然ではないと思いますが、ネオロマンス
 的には、やばかったでしょうか。
  今頃言っても、すでに遅いのですけれどね。とほほ。
  何と言っても、ゲームで見られなかった、でも見たかった、そこのところを書きたい
 わけですから仕方ありませんね。笑って許していただくしかないようです。

  でも、織名さんをはじめとする月影の会員の皆さんに、本当に暖かい言葉をいただい
 たので、元来、見せたがりの私は、これ一発で、味をしめたのでした。

  自分が面白いなと思ったものを伝えて、それを誰かと共有するという楽しみは、何も
 のにも代え難いものがありますね。
  何より、自分の投げかけた物に反応がある。この喜びは大きかったです。

  私の場合、褒め言葉だけではなく、つまらないとか、わからない、とか、そういう反
 応も聞きたがる方です。
  いえ、お褒めの言葉は、それはそれは嬉しいものですけれどね。おだてに弱いし。
  でも、つまらないと言われても、それを引きずるかっていうと、そういうことは、な
 いんです。むしろ、どこが気に障ったとか、そういうことって聞きたいですね。
  私の意図して書いてることが、どういう風に受け取ってもらえるのかな〜と、いうこ
 とに、何より興味があります。

  人の感じ方って色々ですものね。
  同じ友雅ファンでも、好きになる部分は違っていたりするでしょう?
  そこが面白いところですよね。ふふふ。

  そして、たった一言だけでも、声をかけてもらえると、あ、読んでもらえたんだなと
 わかって、飛び上がるほど嬉しくなるものですね。

  いや、まあいくらタフな私でも「友雅×あかねはキライだから」なんてことを言われ
 たら、悲しいですけど!
  理想を言えば、私の書くものを読んで、それまで『遙か』なんて知らないとか、平安
 時代なんて興味ないとか、友雅×あかねは、そんなに好きじゃないとかいう方が、友雅
 ×あかねって、ちょっといいじゃないとか、『遙か』って面白そうなゲームだな、なん
 て風に関心を持ってくださるきっかけになれたら、それは最高に快感だろうと思います。

  だから、物を書くときは、そういう何かを伝えようということを目標に書きます。
  友雅×あかねって、いいでしょ? サイコーでしょ?
  自分が一番面白いと思う物を書きたいですよね、いつも。






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