カシミール3D

2003-07-30

自転車用に GARMIN eTrex Vista を購入して、週末に自転車で出歩く時に持っていって遊んでいる。 勝手に電源が落ちてしまうトラブルなんかもあるが、概ね快適に使えている。 走行中はそれ自体が楽しいものだが、eTrex を使うと帰宅後も楽しめるのがよい。

eTrex+PC

eTrex は、PC と連携することでかなり便利に使えるようになる。 US版や AP版1の事情は知らないけど、eTrex Vista日本版には純正の PC接続用ケーブルを標準添付し、「さぁ PC と連携させて使ってくれ」と言わんばかりの状態で売っている。 ただし、接続I/F はシリアル(RS-232C)だ。 自分の場合はデスクトップ機に接続するので問題ないが、最近増えているレガシーな I/F を持たないノートPCなんかでは、ひと工夫必要かも知れない。

ひとくちに PC と連携と言っても色々あるわけで。
ざっと挙げると、次のような感じだろうか。

  1. PCでウェイポイントの表示/作成

  2. PCでルートの表示/作成

  3. PCでトラックログの表示

  4. PCに現在位置をリアルタイム表示

  5. PCでカーナビ

1〜3.については、要するに、eTrex 単体でも出来る事を PC でやれば便利だよね、という内容。 特に 3. については、PCに転送する事で「記録を残す」事が可能になる。 何しろ PC には無尽蔵とも言える記憶容量があるから、一生分の走行記録を残すのも不可能ではなかろう。 広いディスプレイで広範囲かつ詳細な地図表示が可能なため、閲覧性においても圧倒的に有利だろう事は容易に想像できる。

4.は、NMEA2 のリアルタイム入力が可能なソフトであれば実現できるようだ。 PCを動かしながら自転車で走るシーンは想像できないが、クルマなら不可能ではない。 ちょっと検索すれば色々情報が得られる。 先人の知恵やノウハウ提供には頭が下がりますな。 とりあえず @nifty パソコンGPSフォーラム 辺りを取っかかりにするのが良さげか? 4.の発展として 5.が挙げられ、例えば Navin'You を使った事例などもある。

けど、全体として、カーナビ使いたいならカーナビ買った方がいいんじゃないか、と言う印象。 こういった情報を提供してくれている人達は、「こう言う事」その物が好きだから、知恵を出して、手を動かして、金も出して、試して、検証して、改良して…を繰り返せるのである。 わざわざ「PCでカーナビ」してるわけで、「PCでカーナビ代用」とは志が違うのである。 普通の人は、素直にカーナビを買った方がよろしい。

閑話休題。
自分の場合は上記で言えば 1〜3. であって、一番「普通」で珍しくも何ともない使い方あろう。

定番、カシミール3D

"GPS" やら "地図" といったキーワードで検索すると、様々な情報を得ることができる。 色々見ていると、やはり定番と言った物の存在に気付く。 とりわけ eTrex+カシミール3D の組み合わせは定番中の定番と言った雰囲気である。 GARMIN日本版独占販売の いいよねっとでも、お薦めフリーソフトとして紹介されている。 もう「コレと連携して使ってね」と言っているようにしか見えない。

更に(ヌルいユーザにとって)有難いのは、解説本が市販されていると言う点だ。 『カシミール3D入門』,『カシミール3D GPS応用編』の2冊3で、付録の CD-ROM には 20万分の1地形図,5万分の1地形図が収録されている。 つまり、この本を買ってきて、説明に従ってインストールすれば、すぐに カシミール3D を使える状態になる、と。 で、2冊とも購入。 単純。

素直に本の説明を見ながらカシミール3D をインストール,地図もインストール。 最大の表示で起動するようで、画面いっぱいに地図が出た時はちょっと驚いた。 18inch、1280x1024 の2枚構成なんだけど、いきなり視界を覆うように地図が開いた感じで。

初めて、Dual monitor を有効に使った気がした。 これまでは、単にデスクトップが広いだけで、優雅に無駄遣いしていただけな気がするけど、地図を広げると、広けりゃ広いほどいいって感じですな。 ちょっと PC が非力で、さらに普通の環境より描画面積が多いもんだから、スクロールや再描画はかなり待たされる感じがするのが残念。 そろそろ、速いCPU+速いHDD が欲しいなぁ。

件の本に収録されている地図だが、国土地理院4発行の地図を、許可を得て複製したものだった。 20万分の1地図は全国、5万分の1地図は西日本/東日本を網羅,50mメッシュの標高データも収録されている。 ラスタデータ故の不都合もあるが、書籍代だけでこれだけの地図が使えるってのも有難い話である。

ところで国土地理院のサイトに行ってみたら、地形図閲覧サービス(試験公開)で 2万5千分の1地図が閲覧できたりした。 便利かどうかは知らないが、ふと地図が見たくなった時に使えるかも。

面白いところ

では、eTrex 本体の機能拡張として便利な所を軽く紹介。

eTrex との通信

カシミール3D〜eTrex 間のインターフェースはよく出来ていて、面倒な設定などは不要だった。 単に接続して通信ポートを選べばいいってなレベル。 ことさら「通信」を意識する必要はなかった。 ホントにフリーソフトですか? GARMIN の専用ツールじゃないの? みたいに、違和感無く繋がる。 スゴイなー。

ウェイポイント,ルート,トラックログは、各々独立して自由に eTrex との間でやり取りできる。 これのおかげで、カシミール3D を巨大 eTrex として使うことができる様になる。 具体例は以下で。

ウェイポイント,ルートの作成

eTrex のナビ機能を使おうと思ったら、ウェイポイント(行き先,経由点など)を設定する必要がある。 ルートナビを使うのなら、ウェイポイントを順に繋いだルートも必要だ。 これらは eTrex 本体でも設定できたりするが、作業効率を考えると「不可能ではない」といった感じである。 単体でここまで出来るのは大したものだが、少なくとも、頻繁にやりたい作業でない。

同じ作業をカシミール3D上で行うと、一転してラクチンだ。 地図上で右クリックしてウェイポイントを新規作成、経緯度,高度は自動で入る5し、名前は普通に日本語入力すればよい。 ルートにしても、地図上に表示されている物を順にクリックして繋いで行くだけ。 改良の余地はあるにしても、eTrex だけで作業するのに比べるとずっと楽だし、何より楽しい。

そして、カシミール3D 上で GARMIN のアイコンが使える。 eTrex へアップロードしても,逆に eTrex からダウンロードしても、全く手間いらず。 素晴らしい。 気をつけるべきは、eTrex の制限を越えた長いルートを作ってしまう事くらいだろうか。

トラックログの表示

一日走り回ったら、トラックログをカシミール3D にダウンロードする。 そうすれば、軌跡の管理はカシミール3D 側で行える。 何月何日に、どんなルートで何処へ行ったかなんてのは、いつでも参照できるわけだ。 トラックログのサイズは、80kmくらいを 20km/h くらいで走った場合(記録条件は eTrex の自動)で 130KB程度でしかない。 eTrex で見ると大きなデータだが、PC上ではどーって事ない。

複数の軌跡を重ねて表示することも出来るので、似たような記録を比べたりするのにも便利。 或いは、往路と復路を別の色で同時表示とか。

GPSは案外精度が高いようで、10m程度移動した記録ならちゃんと残っているようだ。 例えば、太い通りの右側を走っていたのを左側に渡ったとか。 角を曲がったけどすぐ戻ったとか。 帰宅後に軌跡を見ると、あぁココではあんな事があったなぁ、などと思い出したりするわけだ。 言ってしまうと軌跡を地図上に表示しているだけなんだが、これが重要なのだと思う。

グラフ表示

カシミール3D に送った軌跡データは地図上に表示するだけでなく、幾つかの視点でグラフ化する事ができる。 速度の推移なんてのは分かり易い例じゃないだろうか。 市街地では頻繁に信号待ちが非常に多いのだが、こう言うグラフを見れば一目瞭然だな。

eTrex 側では、軌跡を「保存」する機能がある。 初めはこれを使って保存してからカシミール3D に送っていたのだが、どうやらコレは避けた方が面白いようだ。

通常、eTrex 内部では ACTIVE LOG と言うのを記録している。 ACTIVE LOG には時刻情報が含まれるのだが、「保存」するとこれが失われ、位置情報だけになるようだ。 また、同じような位置のデータを省いている感じで、軌跡が多少粗くなる感じだ。 元々、軌跡を分けて整理したり、情報を小さくするのが目的の機能なのだろう。

電源を切ったり、勝手に切れたり(←(/_;))する度に新しい ACTIVE LOG が作られるのだが、カシミール3D ではコレもしっかりダウンロードできる。 と言うことは、ACTIVE LOG の形でダウンロードするとカシミール3D側で位置を時刻を使った処理…、つまり速度を得ることができる。 また、位置情報その物も(間引かれていないため)滑らかに繋がる。 eTrex のメモリに入り切らないでも無ければ、こっちの方が面白いな。

ウェイポイント,ルートの管理

ウェイポイントやルートは、放っておけばどんどん増える。 今のところ問題ないが、遠からず全てを eTrex に置いておく事はできなくなるだろう。 そうなった場合、eTrex に外部記憶装置は無いから、結局はカシミール3D のようなツールで管理する事になる。 管理はカシミール3D に任せて、出かける前に必要なデータだけを eTrex に転送しようと言うわけだ。

eTrex にはこれらを整理するフォルダの概念はないが、カシミールにはある。 現在の住居は鶴見川近辺だが、出掛ける方面は大きく分けて「鶴見川・多摩川流域」,「関内・横浜」,そして「都心」。 そして、複数の方面を渡り歩く事はほとんどない。 例えば、秋葉原・押上をうろついて帰る予定なら、横浜や府中のウェイポイントは必要ないのである。

良くないところ

概ね満足して使えているのだが、不満がない事もない。

カシミールと言うよりは、国土地理院の地図を使うが故の問題ですな。

最後のアップダウンは、丘みたいなモンでも自転車だとツライのよってな感じ。 山や渓谷を想像していると「分かるじゃん」てな事になるかも知れず。 要は等高線がよく見えないって事で、解説本に収録の地図じゃなくて、国土地理院の地図を購入すれば解決するような気もする。

後はまぁ「動作が重い」といった程度で、今のところカシミール3Dが原因の問題は無いな。

市販ソフトと比べて

eTrex との連携については最強じゃないかと思うカシミール3D だが、普通に「電子地図」としても便利。 紙媒体と違って、物理的な境界がないので、気の向くままにスクロールさせて地図が見られるのが非常によい。 まぁ、この辺は市販の地図ソフトに共通する利点だろう。

地図の閲覧を主目的にするなら、市販の地図ソフトの方がもっと便利で美しい地図が閲覧できる様な気がする。 自分の場合は VAIO ノートPC を使っているので Navin'You を使う機会はあるのだが、やはり検索や地図の表示などの自由度でカシミール3Dは少々見劣りする。 カシミールじゃなくて、地図データ側の制限の様な気もするが。

店頭でよく見るのはこんな感じ?

一般人に分かり易いカシミール3D のアドバンテージとして「無償で利用できる」点が挙げられると思うが、必ずしもコスト面で有利とも言えない。 どんな地図を買うかによって左右されるが、国土地理院の CD-ROM を利用する(購入する)のなら、それなりの出費になる。 むしろ、市販の地図ソフトの方が地図データの更新を(国土地理院よりは)マメに行なうなど、現状への追従という意味でも良いかも知れない。

今の所、カシミール3D ほど eTrex との親和性が高いソフトには出会えていない。 だからカシミール3Dを使う。 前述のとおり地図データのせいで不便に思うところもあるから、ハンディGPS との親和性をウリにしたソフトがあれば乗り換えも有るんだがなぁ。 いいの出ないかなぁ?

そして使い続ける

カシミール3D 自体は非常に強力で色んな事ができるし、工夫次第で更に便利に楽しく使うことができるだろう。 実際、精力的に使い倒しているユーザも多いようだ。 自分の場合は、eTrex にしろ カシミール3D にしろ非常に基本的な部分しか使っていないのは少々勿体ない。

けど、極く基本的な使い方ではあっても、使い始めると止められない。
いまさらながら、PC上で地図が見られるってのはいいなぁ、とか思ったりした。

  1. US版,AP版
    US版は、世界共通の英語仕様の eTrex。
    AP版は、US版に Asia-Pasific 地方の地図を搭載したもの。
    日本版は、漢字ROMを積むなど H/Wの仕様からして違う日本限定の eTrex。

  2. NMEAデータ
    国海洋電子機器協会(National Marine Electronics Association)が定めた、GPS受信機とナビゲーション機器の通信に使われるプロトコル。 ここではシリアル通信の NMEA-0183 のこと。 印刷可能な文字で構成された「センテンス」で情報が伝達される。 レコードデリミタは CR+LF であり、ファイルに保存するとテキスト形式になる。 NMEA を含む諸情報は、京都大学 GPSの森 が分かり易くまとまっているので参照されたし。

  3. カシミール解説本
    第3弾『カシミール3D パーフェクトマスター編』も発売になった。

  4. 国土地理院
    2003/07/15 からは「電子国土」なる物も始めた模様。

  5. 自動で入る
    カシミール解説本の地図データを使った場合。 経緯度はともかく、標高については 50mメッシュのデータが入っているので、これを使っているのではないかと。 逆に、このデータが無ければ標高は入らないかも。

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