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2.文明の行き交う国−イラン


年表 : アジア主要国年表   古代西アジア年表
地図 : ルートマップ  詳細   西アジア(古代)

◇ イランという国

ザグロス山脈を離れテヘランに近づくと、今度は北側にアルボルズ山脈が見えてくる。ザグロスとアルボルズの大山脈、その間の高原、沙漠、その外側の二つの海、カスピ海とペルシア湾。イランを形作るものはこの変化に富んだ地形だ。変化に富んだ地形は変化に富んだ気候を作り、風土を作っている。

全くかけ離れた国であるように思われるイランと日本にも共通点はある。それがこの変化に富んだ気候だ。イランにも四季がある。移り変わる季節は厳しい土地にも恵みをもたらす。あるいはその移り変わる季節の恵みがイランの人々に優しさをもたらすのだろうか。イランの人々は私が思っていたような気性の荒いプライドの高い人々ではなかった。日本人にも通じるような気の優しさと情の厚さもろさを持っている。

そして文化の交錯する複雑な土地柄はどんなものでも受け入れる柔軟性をもたらす。それも様々な文化を受け入れてきた日本と相通じるものがある。

しかし一方で彼らはとても自己主張が強く、あいまいなものを許さず、とことん厳格なのだ。季節の恵みはあっても厳しい自然であることには変わりなく、文化の交わりは弱肉強食の侵略征服の上に成り立っている。そこが日本とは違うところだ。イランという国の二面性、厳しさと優しさを合わせ持つ国民性は実際に接してみないとわからないものだった。

ミネラル・ウォーター自己主張も強いし厳格だけど、でも気が優しくて気さくで親切で、とてもきれい好きでとても繊細で、とても情に厚く情にもろい、そんなイランの人々を私はちっとも嫌いにならなかった。気に入らないことがあれば道ばたでも平気で口げんかしてるし、そういう時は誰も一歩も引かない人たちだが、私に花をくれた墓守のおじさん、小学生、わかろうとわかるまいとペルシア語で話しかけてくるおばさんたち、目を輝かせてコミュニケートしようと一生懸命な女学生たち、彼らはみんな優しかった。

ホスピタリティにもあふれていて、英語がわかる学生に会うと「Welcome to Iran!」と笑顔で言ってくれる。おそらく、開放政策のおかげで始まった英語教育などでも、外国人を見たら歓迎の意を表しなさいと教えられているのだろうが、その気さくな歓迎の気持ちがとてもうれしかった。

バスがアクシデントで遅れた時、私たちのために奔走してくれたスルーガイドのバザーズさん、スピード違反までして一生懸命走ってくれたドライバーのホセインさんも優しく情に厚いイラン人だった。ツアーを支えてくれた彼らには本当に感謝している。

テヘランから飛び立った飛行機は、イランの最高峰ダマーバンド山に見送られていく。ダマーバンド山はイランの伝説に彩られた山、イランの象徴たる山、ちょうど日本人にとっての富士山のようなものだ。形も富士山そっくりのきれいな円錐形をしている。イランと日本にはこんな共通点もあるのだ。ダマーバンド山の方が2000m近くも高いんだけどね。

移ろう人々、繰り返される歴史、それらをつなぐ道、そういったものに直に触れ、古今東西、風土、文化、民族の複雑な交わり、ダイナミックな変化さえ肌で感じることができ、イランの旅はとても面白かった。これほどいろんな意味で複雑で動的な国も珍しい。るつぼの中のダイナミズムを持つ国・イラン。もしまたこの国を訪れることがあるなら、その時はどんな表情を見せてくれるのだろう。

ダマーバンド山(2.文明の行き交う国−イラン・・・おしまい)


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