今年の六月(2000年6月)にベアボーンキットを組み立て、弟に貸してあるマシンの CPU を AMD Duron 600MHz に換装してからも、私の無駄遣いは続いた。
私は無駄遣いをしない人間のはずなのだが、ここ最近ハードウェアに関しては鈍感になりつつある。特に決定的だったのは、今年の三月にメモリやらハードディスクやらを二個単位で同じものを買ったときであった。メモリの価格が落ちているという理由で一度に四枚・三万円分も購入し、ハードディスクに関しては割安だという理由で同じ製品を二万円出して二つも買った。さらに遡れば、去年の十二月にノートパソコン用のハードディスクを二度目の換装用に買ったときは、割安だという理由で 27,800円も出費して 5.4GB のハードディスクを 10GB のものにした。
その後の顛末は以下のとおりである。
メモリについてだが、SDRAM と呼ばれるメモリはあれから値上がりし、当時一万円だったものが現在では一万四千円くらいになっている。三月に買ったときは 64MB が二枚と 128MB を二枚買ったのだが、現在これと同じだけ買おうと思ったら四万二千円くらい掛かることになる。つまり、メモリに関してはあのとき沢山買っておいて良かったことになる…のかどうか。
そろそろ SDRAM よりも速い DDR SDRAM と呼ばれるメモリが出てきそうな気配が出てきた。噂によると、あと一ヶ月以内に DDR SDRAM が出回りそうなのである。どのくらいの値段で出てくるのか分からない。ただ、初物は高くなるのが当然である。DDR のものは普通の SDRAM の倍くらいの値段で出てくるのではないかとも言われる。その後、しばらくして DDR SDRAM が主流になると価格が逆転するらしい。メモリとは、主流となっているタイプの製品が急な値下がりを起こすものらしい。
現実問題として、私は SDRAM を買いすぎてはいないだろうか、という疑問が浮かぶ。私がメインマシンを買い換えるとすると、今度は DDR SDRAM のものになるだろう。そうすると、SDRAM は使えなくなる。すると、現在私の持っている総計 768MB の SDRAM のうち、無駄になる SDRAM は出てこないだろうか。弟が CG をやっているため、彼に貸してあるマシンのメモリを 256MB から 384MB にするのも良いだろう。しかし逆に言えば、このマシンを DDR SDRAM のマシンにすると 384MB 分の SDRAM が余ることになる。四台のマシンのうち、一台のマシンが DDR SDRAM 化すると、残り三台のマシンの平均メモリ容量が 256MB になってしまう。この中には、親がちょっとしたゲームをしたりネットサーフィンをしたりするだけのマシンと、私が会社で使っている事務用途のベアボーンマシンが含まれる。
とマイナス思考に陥るのはやめよう。私が買った SDRAM の量は、多少多めではあったが、多すぎるほどではないという結論にしておく。それに、DDR SDRAM に乗り換えるにはまだ間がありそうな気がする。いま余っているパーツを利用してもう一台マシンを作るときにも SDRAM が使えるのだから。
富士通製の 8.4GB のハードディスクを二台も買った馬鹿な私である。現在、同じ値段で 20GB のものが買えることを思えば、半年も経たないうちに最も値下がりしたパーツを買ってしまったと嘆くしかない。
現在この二台のハードディスクは、一台はあまり容量を必要としない親のマシンに、もう一台は仕事場で使っているベアボーンマシンに入っている。親のマシンに入っているのは非常に妥当であり無駄がないのであるが、会社で使っているベアボーンマシンはハードディスクが一つしか入らないので、もっと大きい容量のものを買えばよかったかなと後悔している。
このハードディスクは音が静かなので良い。ノートパソコン用のハードディスクよりも静かである。スピードもそんなに遅いわけではない。同じものを二台買ったということは RAID に使えることを意味するのだが、18MB/s 程度のハードディスクを二台組み合わせても高々 36MB/s であり、最新の IDE の高速なハードディスクが 30MB/s を超えそうなのと比べると知れている。私の持っているハードディスクで一番速いものが 25MB/s くらいである。
というわけで、このハードディスクに関しては、買い物に失敗したという結論になる。
あれからさらにいくつかの無駄遣いを繰り返した。一つ一つ検証していきたい。
高校のときからの友人であるN君がタワー型の VAIO を買った。彼の VAIO にはテレビチューナー付きのビデオキャプチャが付いていた。つまり、彼の VAIO はテレビを見ることが出来て、ビデオデッキのようにテレビ番組をハードディスクに録画することが出来る。
彼は MTV の番組を一旦ビデオで録画したのち、そのビデオから VAIO にビデオクリップの特定の部分だけをキャプチャつまり録画して、ビデオクリップ集みたいなものを作ってくれた。私のリクエストで、最近のガールポップスの中のいくつかのクリップを編集してくれたわけである。
そんな彼が羨ましかったので、私はビデオキャプチャカードを買うことにした。というか、たまたま店に格安のキャプチャカードがあったので買ってしまった。Leadtek の WinFast VC100 である。4,480円であった。
このカードは多分値段以上の性能を持っている。テレビチューナーがついていないので、残念ながらテレビを見ることは出来ないのだが、ビデオ入力を持っているので、テレビのモニタ出力とつなぐことで、テレビに映っている画像がそのままパソコンでリアルタイムで見れる。つまり、ビデオデッキからの画像の再生にも使えるということである。
キャプチャできるのは、320x240 かそれよりちょっとだけ大きい動画で、一秒間に最大で 30枚分の画像をとってきて動画ファイルにしてくれる。テレビは秒間 60回画像が書き換わるのであるが、実際は走査線の偶数奇数別に互い違いに画像を切り替えているため、実際には一秒間に 30枚分の画像が電波に乗ってやってくる。つまり、このキャプチャが撮れる動画はテレビそのものと言っても良い。…ただし解像度が 320x240 なので多少荒くなってしまう。デジタル放送は確か 752x480 くらいだった気がするので、それと比べるとドットの縦横が倍になるくらいである。文字は多少読みづらくなるが、普通に番組を見ていても自然に思える。
ただしこのカードにはいくつかの弱点がある。
まず、Windows 2000 では使えない。このカードの上位版でテレビチューナー付きのものもあり、このまえ店で見てみたところ値段は六千円代であった。この上位版にはちゃんと Windows 2000 用のドライバがあってホームページからダウンロードできるのであるが、私の持っている下位版の方は、ひょっとするとこれから Windows 2000 用のドライバが提供される可能性がなくもないのだが、しばらく待ってみても未だドライバが出てこないところからすると、割安のパッケージにわざわざ新しいドライバを開発してやる必要はないだろうと判断したのだろうか。とは言っても、上位版も現在割引価格の六千円台で売られているのでこれは悔しい。そもそも私が、格安のカードがどれくらい使えるものかを試したいという理由で低いレベルの製品を買ったのが良くなかったのだろう。
そもそもキャプチャカードは高いのである。最近になって、比較的高画質で録画できるカードが二万円くらいで提供されて話題になったくらいである。それまでは五万円以上したのだから、廉価版ながらも四千円台で買った私の判断は間違っていないと思う。しかし、一度そのキャプチャカードが実用になると分かってしまうと、なぜもう少し金を払ってもう少し程度の良いものを買わなかったのか、後悔してしまう。
もっとも、キャプチャ自体にどれだけの価値があるのかも疑問である。私はテレビを実時間では見ずにほとんどビデオに一旦撮ってから見ることが多いのだが、気に入ったシーンがあるとキャプチャしておいて CD-R に焼いて半永久的に保存することが出来る。しかし、現在のところそこまでしたいと思うようなシーンには出会っていない。大体、一時間で CD-R 一枚分くらいになってしまうので、一時間番組ならギリギリで全部一枚にして焼ける。映画なら、途中のどこかで切るか、それとも画質を落とすかしかない。にしても、わざわざ保存する必要はどのくらいあるのか。
というわけで、4,480円は私の中では、様子見少々、遊び半分、実用はオマケ、と考えて割り切っている。にしても数年前のことを思えば、たったこれだけの出費でこれだけ楽しませてくれるのだから、素直に喜んでおくべきなのだろう。
CPU クーラーとは、発熱する CPU を冷やすためのものである。
電気を通すものは、使っているとなにかしら発熱するものである。電気が流れると、電子の流れが必ず何かしらの抵抗を受け、その結果として摩擦熱のようなものが発生するとでも考えて欲しい。ニクロム線などの高い抵抗を持った針金に電気を通すと、赤熱してマッチに火をつけることさえ出来る。普通の乾電池二本くらいの電気でも発泡スチロールを溶かしたり出来るので、人間が触ればやけどする。
というわけで CPU も発熱する。特に最近の CPU はかなり熱を出すので、逃がしてやらなければ熱で暴走したり破損したりしてしまう。そこで、普通に CPU を買ってくると CPU クーラーも付属してくる。ところが、付属してくる CPU クーラーは、普通に使う分には十分なのであるが、CPU に余計な電圧を掛けて性能を上げようとするとき、CPU の熱を逃がしきれなくなってしまうことが多い。そこで、性能の良い CPU クーラーが出てきて、よく売れているらしい。
私は基本的に、わざわざ特別な CPU クーラーを買うほどのことはないなと思ってきたので、性能の良いクーラーに手を出すことはしてこなかった。これらのクーラーは、値段が張るのである。CPU に付属してくる CPU クーラーよりも性能の良いものとなると、少なくとも二千円以上はする。最高クラスの性能のものならば、最低でも五千円弱、最高だと二万円近くするものさえある。
つまり、マニアは金を掛けるのである。私はこの領域には努めて入らないようにしてきたのだが、ついに「入門」してしまった。高性能な CPU クーラーの中で最も有名な Alpha と呼ばれるメーカー製の製品の中で通常クラスの PAL6030 系のものと、CoolerMaster と呼ばれる有名なメーカーの DRACO-Thunderbird を買った。それぞれ、4,380円と 3,580円掛かった。
なぜ二つ買ったかというと、私の持っている中で最も高性能なマシンが、Dual Celeron マシンだからである。このマシンには、CPU に付属してくる CPU クーラーがついていたのだが、単品クーラーに交換することでどれだけ CPU が冷やされ、どれだけ性能がアップするのかを試したかったのである。
結論から言うと、500MHz 近辺で安定していたマシンが、533MHz くらいまでは大丈夫なようになった。ゲームなどの重い処理さえ行わなければ、550MHz で Super π というベンチマークソフトでπを数百万桁計算しても安定している。結局、わずか 33MHz だけ上げるために四千円近く消費したことになる。ついでに言えば、同時にチップセットを冷やすために別のファンを取り付けたことが、今回の性能アップの理由かもしれないので、実のところほとんど効果が無かったのかもしれない。
私がこれらの CPU クーラーを買った理由の多くは、いわゆる先行投資である。このあとに、Celeron 以上に冷やしがいのある CPU を買うつもりで、あらかじめ高性能な CPU クーラーを買ったつもりなのである。しかしいまのところ、新しい CPU を買う欲求を押さえ込んでいるので、これらの CPU クーラーが活躍するのはあとのことになりそうである。
のちのちまた安くて高性能な CPU クーラーが出ないことを願う。
つまり、いまのところこれらの買い物は無駄と考えてよい。
先の CPU クーラーと同時に、新しくハードディスクも買った。Maxtor というメーカーの 53073U6 という型番のものである。型番だけだとマニアにしか分からないので簡単に紹介すると、このハードディスクは 30GB の容量を持ち 7200rpm の回転数で 2MB キャッシュを備えた 3.5inch のハードディスクである。プラッタ当たりの容量は確か 10GB である。
私がこのハードディスクを買った頃、ハードディスク全体がかなり値下がりしていた。私が今年の一月に買った Seagate Barracuda ATA 20GB のハードディスクは、私が買った当初は 18,000円くらいであった。ところが、八月に入ってこいつの在庫は 11,300円くらいの値しかつかなくなった。私はこの 20GB のハードディスクが、若干うるさい上に容量が不足気味だったので、新しいハードディスクを買うことにした。いま買っておけばしばらく値段が落ち着くだろうから得だと考えたのである。
私は DOS/V パラダイスという店で、先に紹介した Maxtor 製のドライブが、ちょうど規格落ちのために値崩れしているのを確認した。規格落ちというのは、UltraATA の最新規格が従来の 66 から 100 に変わったのである。ところが新しい規格に従ったハードディスクというのは、規格だけは最新のものになったのだが、実際のところ性能は全く同じだった。にも関わらず、秋葉原という場所は恐ろしいもので、ユーザーは多少の値段の差は無視して新しい規格の製品に群がるのである。私はそこを突いて、古い規格だが同じ性能のドライブを買うことにした。ウェブの広告を見てみると 16,800円になっており、当時の同クラス同容量のドライブが当時未だ二万円台をやっと割るくらいにしかなっていなかったので、割安感があったのである。
ところが DOS/V パラダイスに行ってみると売り切れていた。仕方がないので何日か様子見をしたあとに、T-ZONE という店で 17,800円で売っていたのでそこで購入した。すると、そのさらに数日後、新しい規格の方のハードディスクが値下がりしてきたのである。そしてしまいには、Maxtor のライバルである IBM 製のハードディスクの最新版が値下がりを始め、ついには価格帯で並んでしまったのである。IBM 製の最新版のものはプラッタ当たりの容量が 15GB なので、Maxtor の当時最新のものよりも一回り性能が良かったのである。ほどなく Maxtor は IBM と同じプラッタ当たり 15GB の製品を市場に送り、私の買った 10GB の製品は性能的にも片落ちになってしまった。この間、約二週間である。
とはいえ、私の買ったハードディスクは性能的には満足できるものである。ただ、私が秋葉原に頻繁に足を運ぶから悪いのだ。秋葉原では新製品が続々と続き、それに押されて古い製品が次々と値崩れを起こし、店頭から消えていくのである。
弟が一ヶ月前くらいに買った CG 専門雑誌をふと読むと、そこには私の買ったハードディスクと同じ型番のものが「現在最高の」製品として載っていた。私はそれを読んで自分を納得させることにした。
*
片落ちはともかく、私がメインのハードディスクを 20GB から 30GB にしたのは結構無駄だったかもしれない。ハードディスクの容量が 10GB 追加されても、いくつかのパーティションを多めに取っているうちに、大した容量だと感じられなくなってしまった。いっそ 40GB 以上のハードディスクを買えば良かったかもしれないと思ったが、これ以上必要ならば増設するべきだとの結論に達した。
ちなみに、旧メインの Seagate の 20GB のハードディスクは、結局未だ元のマシンイ付いている。こいつはビデオキャプチャ用に使うことにした。こいつのお陰で、ビデオキャプチャを一時間以上も無圧縮で記録できるのである。ただし、二時間は無理なので、無圧縮にこだわるならば 30GB 以上の容量が必要である。どうせここまでやっても CD-R 一枚には焼けないので我慢することにする。というか、遊びで買ったビデオキャプチャにここまでしてやる必要はないので、いずれ余っているマザーと CPU でマシンを組んだ時にこのハードディスクを使うことに決めている。
私は既に CD-R ドライブを持っているのであるが、これまで聞いた情報を元にすると、私の持っている CD-R ドライブではバックアップを取れない CD-ROM でも、最近の一部の CD-R ドライブではきっちりとバックアップできるらしい。バックアップというと体裁がいいが、実のところこれは違法コピーが可能だということにもなる。
私はちなみに違法コピーはしてしまうことがあるので、違法コピーが簡単に出来る CD-R ドライブは手に入れたかった。しかし、わざわざドライブを買ってまでやることではないので、これまでは無視してきた。しかし、会社で仕事に使ったデータを記念にバックアップしたり、メールや会社でダウンロードしたデータを家に持って帰るときに、CD-R があると便利だなと思ったので買うことにした。
そこで店に行ってみると、CD-ROM を完全にコピーできるドライブがいくつかあり、その中でもお買い得だった TEAC CD-W54E を、あきばお〜三號店にて 14,999円で購入した。この手のドライブで有名なのは MITSUMI 製のもので、その例のドライブもあったのだが、私は既にそのドライブの旧世代版を持っていたので、今回はメーカーを変えることにした。その旧世代ドライブでは CD-ROM の完全コピーは出来ない。
今回買ったドライブも、既に一世代以上前のドライブと化している。というのは、私の買った CD-W54E は CD-R を焼くのに 4倍速しか出ないのだが、最新のものは 12倍速まで出るのである。まあそこまで高速なものとなると三万円以上してしまうので、たかだかバックアップにそこまで出費するのもなんだと思ってやめた。バックアップというものは基本的に、あまり頻繁にやらないものである。だから、そんなもののために時間を短縮してやろうという考えは私にはない。
ただし、CD レンタルの店で大量に CD を借りてきて、それらの音楽 CD を片っ端からコピーしたい、というユーザーからすれば、少しでも速いドライブがあった方が効率が良くていいだろう。
私が今回買ったドライブは、会社で私が私物で使っているベアボーンマシンに組み込まれた。このマシンはなんと IDE が primary しかないので、ハードディスクと共有することになり、CD-R ドライブにとってはあまり良い環境とはいえない。しかし、これまでに何枚か焼いた限りでは、いまのところ一切失敗がなく、安心できるのではないかと思う。
*
ただ、私には別にこの CD-R がなくても問題はないのだ。私にはポータブル・ハードディスクがあり、そいつにバックアップしたいファイルをまとめて放り込んで、家にある CD-R ドライブで焼いてしまえばいいのだ。このポータブル・ハードディスクは USB 接続なので転送速度が遅いのが難点なのだが、それ以外は Windows 98 だけでなく 2000 でも使えるようになったので特に不便はない。
利点といえば、私の持っている大容量データを、会社で手早く他人に配布できることぐらいである。つい最近の話だが、Age of Kings II というゲームの体験版を同期の人間に渡した。このときは、彼がたまたま家に MO を持っており、会社にもネットワークに接続された MO があるので、彼は私のマシンから MO に書き込んで 30MB くらいある体験版を持ち帰った。彼が MO を持っていなかったり、たまたま MO のメディアの持ち合わせがなかったりしたら、私の CD-R で焼けばよかったのである。
が、はっきり言って 14,999円の価値が私にとってあったのかというと、否と答えざるをえないだろう。あとは、SafeDisk というプロテクトに守られた CD-ROM を複製するという目的がどれだけの価値を持つかに掛かっている。
以前私が会社でマシンを組み立てて使っていたときは、キーボードとマウスだけでなくモニタまで買い、会社のマシンと私物のマシンのキーボードとマウスとモニタがそれぞれ一組あったので、机の上は非常に狭かった。それに、普段は会社のマシンのキーボードが私の前にあり、私物のマシンを操作するときは椅子をずらさなければならなかった。
時は流れ、そのマシンは今は親がゲームやインターネットをするために家にある。今のベアボーンキットのマシンを組み立てたときは、たまたま私の隣の机が空いていており、しかもその机には誰も使っていないモニタが二台も置いてあったので、そのモニタと机上のスペースを利用してマシンをセッティングした。キーボードとマウスはベアボーンキットに付属していたものを使用した。しかしいつまでもそのままでいられるわけはなく、その机がいつまでも空いているとは限らない。かといって以前のようにモニタまで用意して、自分の机にもう一組のパソコンを、省スペース型とはいえ会社マシンとで二台置くのもやぼったい話である。
そこでパソコン切り替え器なるものを買うことにした。キーボードとマウスとモニタを二台のパソコンで共有するための切り替え器である。この切り替え器、私は色々探したのだが、一番安いもので一万三千円台であった。私は悩んだ挙句、国内メーカーのものよりも世界的に有名ながらやや程度が低そうで廉価なメーカー製のものを選んだ。私は基本的に国内メーカーのものを信頼しているのであるが、三千円ぐらい差があったのに加え、外見が気に入らなかったり既に先輩が持っているのを見たりしていたのでやめた。
なぜたかだか切り替え器がここまで高いのか。モニタ切り替えの部分は、はモニタで信号の劣化を最小限に押さえなければならない。キーボードとマウスの切り替えは、最低限の信号を二台のマシンにそれぞれ送っておかなければならなかったり、キーボードが二台のマシンに対して独立して状態を記憶しておかなければならなかったりするために、信号計算をするための IC が搭載されているかららしい。
この切り替え器を買う意義というのは、そのまま「会社に私物マシンを持ち込む意義」に直結する。私が最初に私物マシンを会社に持ち込んだのは、先輩の何人かが同様のことをやっていたからである。しかし冷静に考えると、私物マシンを会社に持ち込むのは、よほど会社に根を張っていないと気が引けるものである。私はその前に、自分の私物のノートパソコンを出先で使ってくれと一度だけ頼まれたことがあったので、そういう頼まれ方がありならば仕事に関係がないときでも私物マシンを持ってきても良いだろうと判断したのである。しかしその後しばらくして上司から、これからなるべく私物に頼らず、私物を持ち込むのもやめさせよう、という方針を聞いた。そこで今回の私はあまり私物を広げたくなかったのである。
「会社に私物マシンを持ち込む意義」とはなんだろうか。それは、多分以下の点だろうと思う。
私は本当はもっと面白いマシンを組んで会社で使いたいのであるが、面白いマシンを組むには大きなケースが必要になり、私物が目立ってしまうので仕方なくベアボーンキットから組んだマシンを使っている。このマシンならば週末に家に持って帰ることも簡単なので便利である。
私からすれば、会社は社員一人一人に既成のパソコンをあてがうのではなく、仕事道具の手当てとして給料に上乗せしてくれるほうが嬉しい。その手当てで各自好きなマシンを買ってきたり組み立てたりすれば良いのである。あるいは、最低限の性能のマシンを買ってきたり組んだりして、余った手当てを自分の好きなことに使うのも良い。もっとも、むやみに節約してしまうと仕事に差し支えるので、マシンパワーを使う仕事が来たときに自腹も切ってマシンを買い換えなければならなくなったりすることもあるだろう。
*
それから一年以上が過ぎた今、あれから職場は一向に状況が変わっていないどころか、新人に回すマシンが一時的に足りなくなったりして、彼らに私物のノートパソコンを持ってきてもらってしのぐという最低の状況も最近起きた。かわいそうかもしれないが、逆にいえば、自分が選んで自分で買ったマシンを仕事に使うことが出来るので、マニア的には良いのではないかと思う。それに、こんな事態が起きると、私も私物を持ってくるのに気が楽でよい。K先輩は、新人のマシンがないということで、自分に割り当てられていたマシンを彼に進んで割り当てたそうである。そしてその先輩の机には、彼の私物のノートパソコンが二台もあって、本来ならデスクトップパソコンが三台載る机を広々と使って仕事をしている。
ちなみに、私が無謀にも買った私物のモニタは、つい最近間違って某消費者金融会社に送られたらしい。私たちの仕事では、現地にマシンを送って仕事をすることも多いのである。そのモニタがつい最近返ってきたので、私の机はまた狭くなった。気は引けるが、やはりモニタが二台あると便利である。
前に、こだわりのキーボードを買ったのだが、ではマウスはどうなのかというと、私は仕事ではつい最近まで、ベアボーンキットについてきた三ボタンの安っぽいマウスを使っていた。
本来ならば職場では当然会社のマシンのマウスを使うべきところなのだが、ベアボーンマシンと会社のマシンで、モニタとキーボードとマウスを共有する切り替え器を買ったときに、その切り替え器が粗悪なマウスを拒否するのである。五年前くらいのマウスだから悪かったのだろう。その切り替え器は、マイクロソフトのマウスを推奨していた。しかし私は、マイクロソフトのマウスなんて高いだけでロクなものではないと思っていたので、当然買う気はなかった。そこで、先に述べたベアボーンキット付属の三ボタンの安っぽいマウスを使うことにしたのである。
しかし、よくよく考えてみると、こんな安っぽいマウスを一日八時間以上、一週間に四十時間も使うのは、逆に無駄ではないだろうか。コックが安い包丁を腕で補って使うものだろうか。経理をやっている人が、安っぽくて持ちにくい筆記用具で仕事をするだろうか。キーボードを良いものに買い換えた私が、マウスをそのままにしておくのはおかしいのではないだろうか。
E先輩が Microsoft IntelliMouse with IntelliEye を持っていた。これは、従来のマイクロソフトのマウスを光学式にしたバージョンで、従来の光学式マウスのように専用のマウスパッドが必要なわけでなく、ズボンの上とかでマウスを動かしても正確に反応するという優れたものである。これまでのマウスの弱点を克服した、新しい世代のマウスである。私はこのタイプのマウスが欲しくなった。
マイクロソフトの光学式マウスは、まず最初に二種類出た。そのうちの一つがE先輩の持っているもので、もう一つは先に出てきたK先輩の持っている上位バージョンの一万円近くするモデルである。私は休日に地元の LaOX に行ったときに、E先輩の持っているタイプのものが値下がりして五千円以下で買えるようになったのを知っていたので、このタイプのものを購入しようと思って秋葉原の LaOX に出かけたところ、さらに新しいタイプの製品が出ていた。その製品は、先の二タイプのものの中間に当たるラインナップの製品であった。K先輩の持っている上位のタイプのものは色が銀色で、露骨に私物っぽい上になにより高価であった。一方、一番新しい中間のマウスは、色が白を基調としている上に、底面は上位のものと同じ鮮やかなクリアレッドなのである。底面ならば普段は目立たないので良いだろう。そこで私は、何度も店頭で使い心地を試したあげく、最初に買おうと思っていた 4,800円の普通のマウスではなく、6,800円の一番新しいタイプの製品を買った。
Figure 1. 私の買った Microsoft IntelliMouse Optical |
マウスに 6,800円はどうだろう。いま秋葉原をうろつくと、ドラゴンクエスト7が税込みで 7,500円で売っている。6,800円のマウスに消費税を加えると 7,140円となり、ドラゴンクエスト7の値段とほとんど変わらない。ファイナルファンタジー9がいま若干値下がりして 6,980円で売られているのを見たので、それと比較するとほとんど変わりない。マウスを我慢してゲームソフトを買う、というのが普通なのではないだろうか。少なくとも私が学生ならそうしていただろう。というわけで、マウスはマウスの値段として考えるべきである。
職場で毎日握るマウスなのだから 6,800円でもかまわないだろう。この買い物は特に問題はなさそうである。
その後、上の写真を撮るために、一旦家へマウスを持ち帰った。撮影のためもあるが、CG をやっている弟にも見せたかったのである。弟はそれまでは、私の買ってきた 1,280円のマウスで CG に没頭していた。そのマウスも安いわりにはなかなか良いものなのであるが、少しでも良いものがあるのならば多少の金を惜しむのはもったいない。…という話を彼にする前に、彼は私のマウスを見て自分から良いマウスが欲しくなったようである。その日彼は、友達との約束で学校の施設で筋肉トレーニングに行った帰りに秋葉原に寄り、マイクロソフト製の値段の高めのものではなく、Elecom 製の VAIO カラーの光学式マウスを買って帰ってきた。3,980円だそうである。彼の買い物が一番バランスが良いとすると、私の払った 6,800円はそのうちの 2,820円が無駄なことになる。そう考えると、私のこの買い物にもケチがつくことになるのだが…まあこんなものだろう。
ついでに言うと、私はこれまでに格安のマウスやそのたぐいのものを無駄に買い込んでは仕舞いっぱなしにすることがある。下の写真はその一つで、光るトラックボールという変わったもので、しかも千円ちょっとという破格値なので買ってしまった。最初は職場で遊んでいたのだが、だんだんイライラしてきて、使うのをやめてしまった。
Figure 2. 格安の光るトラックボール。ただしシリアル接続なので、パソコン切り替え器で切り替えることが出来ない。 |
ハードウェア病とは、ハードウェアに対するコスト意識がグダグダになってしまう恐ろしい病気である。
ここ三ヶ月以内に買った買い物は、本当に得だったのか損だったのかをいま判断するのは難しい。そこでまた時間がたったあとで前半のように検証することにする。
ハードウェア病が重症になってくると、ソフトウェア病を併発する恐れがある。ソフトウェア病には何系統かあって、私の知っている先輩では、仕事が忙しすぎてロクに遊べないにも関わらずゲームや開発環境を買い集めるM先輩とか、いいなと思ったソフトなら二万円くらいまでなら手ごろな値段だと判断して買ってしまいあまり使わないE先輩とかがいる。私の場合は、有効に使えているにも関わらず無駄な出費だったのではないかと過剰に敏感になったり、最新の高くて面白いソフト一つよりも、多少古めで安いソフトを何本か買うのを好み、結果的に時間を浪費してしまうというやっかいな症状が現れている。いつまでも学生の気分なのだろう。やはり収入がある社会人には社会人なりの金の使い方があるので、徐々に感覚をつかんでいかなければなるまい。…この話も面白そうなので、また少ししたら「ソフトウェア病」という題で詳しく話すことにしよう。