黒い騎士と黒の剣
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【3】




 唇が触れ、すぐに互いに口を開いて、口腔内のぬるりとした感触が触れあう。
 舌を擦りあわせ、唾液を交換して、深くなっていく交わりと共に、ラスハルカは伸ばした手でセイネリアの背を抱いてくる。それと同時に身体さえもをセイネリアに押しつけ、自分が欲情している様を知らせてくる。背に回された手は絶妙な力加減で背筋をゆったりと撫で、激しく求めてくる口腔内の交わりとは逆に、じらすようなもったいぶった印象をこちらに与える。
 成る程、娼婦の手管だ、とセイネリアは思う。
 唇が離れれば、はぁと声さえ漏れるくらい、ラスハルカは熟れきったため息を吐く。それをセイネリアは皮肉げな目で見下ろした。

「身体まで差し出して俺に取り入るのか」

 冷ややかとも言える声に、それでもすっかり熱に潤んだ濡れた瞳でラスハルカは笑う。

「えぇ、使えるものは何でも使う主義ですので。だめですか?」

 それでセイネリアも、鼻で軽く笑って瞳を細めた。

「いや、俺は楽しめるからいいがな」

 息が触れる程近い位置だった二人は、そうして再び唇をあわせる。
 今度は、ラスハルカが一方的に行為を求めるのではなく、セイネリアの手がラスハルカの身体を引き寄せる。
 口づけを交わしながら、まだ黒い騎士装備に包まれた手が、ラスハルカの服を開きながら、その素肌を撫ぜていく。

「ん……」

 口では尚激しく舌を絡め、唇をあわせなおしながら、セイネリアの装備ごしの無機質な手が、ラスハルカの曝された肌を愛撫する。
 胸の飾りを弄り、背すじを撫ぜ、腹を撫ぜ、腰を掴んで引き寄せて、そうしながらもセイネリアはラスハルカの上半身の服を完全に脱がせた。

「あ……んっ」

 セイネリアの手がするりとラスハルカの下肢の服を剥いで、未だ無機質な冷たいその手で彼の欲望に触れる。

「や……ち、ちょっと……ま、て」

 苦しげに喘ぎながら、ラスハルカは唇を離し、手でセイネリアの胸を押して体も離そうとする。
 じっと見つめてくる彼の目は、恥ずかしそうにしながらも、はっきりと抗議の目だった。

「いい加減……その、私ばかり脱がされるのは不公平だと思うんですが」

 それに返すセイネリアの声は抑揚がなく、冷たいと感じる程に冷静だった。

「見張りとして、いざという時俺まですぐ動けないようじゃ困るだろ」

 だから脱ぐ気はないと目で知らせれば、ラスハルカは顔を赤くした後に嫌そうに顰め、大きくため息をついて顔をセイネリアの肩に押しつけてくる。

「ひどいですね、貴方は」
「嫌なら止めてもいいぞ」
「……いえ、貴方という人物がよく分かりました」

 それに喉を震わせて笑みを返してやれば、彼はまたため息を返す。
 それでも思い直したのか、彼は顔をあげると、少し拗ねるような目でセイネリアをじっと見つめてくる。濡れた唇と濡れた瞳は計算された懇願の表情を作っていて、彼の経てきた経験が想像出来た。

「でもせめて……片手だけでもいいですから手の装備だけは外してもらえませんか? ……そのままで後ろを慣らされるとか、さすがに冗談じゃありません」

 セイネリアは笑う。
 娼館育ちのセイネリアにとって、彼の所作は分かり易くて、そして慣れた分面倒がなくて気楽ではある。ただ楽しむだけなら悪くない相手だとは思う。

「そうだな、それくらいは妥協してやってもいいだろう」

 言いながら右手の篭手を外していけば、ラスハルカはセイネリアの首に完全に縋りつくように抱きついて体重を預けてくる。こちらの耳元に届くように熱い息を吐き、擦り寄せてくる体のやりすぎない程度の密着ぶりは、男を煽る方法を知っている者ならばだ。
 外した装備を落とすと、セイネリアはまだ篭手をつけたままの左手で彼の腰を抱き、装備を外した右手を彼の秘所へと持っていく。

「ちょっ」

 驚いたラスハルカの様子には笑ってやって、セイネリアはまだ指を入れたりはせずに、その周りをじらすように殊更ゆっくりと指の腹で揉むように撫でる。

「ちょっと待ってください……」

 呟くような小さな声に、セイネリアはまた笑う。

「なんだ、素手ならいいんじゃないのか?」
「……貴方、分かっててやってるでしょう……」

 嫌そうに言いながらも、彼は地面に落とされた自分のベルトに手を伸ばすと、ごそごそと手探りで何かを探し、それからセイネリアの手に瓶のようなものを渡した。

「用意がいいな」
「えぇまぁ、こういう事も珍しくないですから」
「成る程、慣れてるなら楽だな」
「慣れててもちゃんと慣らしてくれないと厳しいですからね」
「まぁ、男の場合はそうだな」

 揶揄えば彼は、また大きくため息をつく。
 それでも、けだるそうに髪を軽くかきあげて、上目遣いで見てくる動作を自然に入れているあたり、口で言われるよりもよっぽど彼の本性が分かる。
 
「とりあえず、こういう時の貴方は相当に意地が悪いという事は分かりました」

 目元を僅かに染めて、つんと唇を尖らし拗ねる様は、セイネリアにはよく見た覚えがある。女達が駆け引き時によくする表情だ。
 だからセイネリアはマントを外し、それをばさりと地面に広げる。

「何、そうでもないぞ」

 言って彼の体を押し、その上に寝かせる。
 それからすぐにキスをして、ラスハルカの片足を左手で持ち上げ、右手で瓶の中身でぬらした指を彼の中へと埋め込んでいく。

「ん……あ」

 離れた唇の隙間で彼が喘ぐ。
 それを許さないようにセイネリアはまた唇に覆い被さり、舌を絡めて唾液を彼の口腔内に注ぐ。そうすれば濡れた音が唇から響き、溢れた唾液が彼の唇から落ちて髪の生え際に吸い込まれていく。
 受け入れる事に慣れた青年は、入れた舌に擦り合わせるように舌を重ね、こくりと喉を揺らして、溢れずに残った口の中のものを飲み干す。頭を掻き抱いてくるようなラスハルカの手は、動きは激しいものの力はあまり入っていなくて、相手が不快に思わない程度に早く男が欲しい事を伝えてくる。
 本当に、よく仕込まれた娼婦だ、とセイネリアはそう思いながら、更に唇同士を深く密着させて、彼の口での呼吸を奪う。
 下では指を彼の中深くまで埋め込み、そこを揉んで解すように、指で中に小さく円を描いて回す。解れてくれば、ぴっちりと指を包み込んでいた肉壁との間に時折隙間が生まれて、指に絡めたぬめりのせいで、ぐちゃ、と卑猥な音が鳴った。

「は、ぁあん」

 指を増やせば、尻を持ち上げてラスハルカは喘ぎ、自ら足を開いて腰をくねらせる。
 セイネリアは唇を完全に解放してやると、舌で彼の耳たぶを嘗め、殊更大きく水音を彼に聞かせる。そうしながらも2本の指で、今度は中を突き上げるように出し入れを繰り返し、その動きに合わせて切ない声で喘ぐ彼の声を聞く。

「あ、あ、あ、あん、はぁっ、あ、あ……」

 くち、くちと、指は彼の中でぬめりを絡ませ、肉と水の音を響かせる。
 この手の快感に慣れたラスハルカの体は、腰を指の動きに合わせて自ら動かし、片足を上げてセイネリアの体に絡ませ、もっと欲しいと淫らに懇願する。
 指の動きを更に速め、ラスハルカの声が更に高くなるのを見計らって、セイネリアは左手のその冷たい感触で、彼の立ち上がって既に蜜をこぼしているその先端を軽く撫でた。

「あ、はあぁぁああん」

 今まで、とろとろとこぼす程度だったそれから、勢いよく彼の欲望が吐き出される。
 セイネリアはそのタイミングで体を軽く離し、指で彼のそれを押さえて吐き出したそれらが彼自身の腹に飛び散る様を見届ける。
 達した脱力感に、しばらく荒い息を吐くだけだったラスハルカは、少し息が整ってきた後にセイネリアの行動の意図を察し、自分の腹をちらと見て、嫌そうに見上げてきた。

「……全く、本当に意地が悪い」
「馬鹿言え、こっちの腹にぶちまけられてたまるか。こんなモノ洗いにいくのはごめんだな」
「……えぇ、貴方って人がよく分かった気がします」

 文句を言うラスハルカを腕で軽く持ち上げ、起きあがるように促すと、彼の体をひっくり返して四つん這いにさせる。
 そうしてセイネリアは、自らのものを曝すと、後ろから彼に覆い被さっていく。

「まぁ、マントの方は諦めてやるんだ、許せ」

 後ろから耳元にそう囁いて、彼の中に自分の肉欲を押しつける。慣らされた彼の中は十分解れていたものの、達した余韻でひくひくと蠢き、きつく、甘く締めあげてくる。それでもセイネリアは、彼の耳たぶを水音を鳴らして舐め、甘噛みし、それに反応する彼の体のタイミングを見計らって奥まで突き上げた。

「はんっ、くぅ……」

 入った途端、彼の体が緊張し、一際強くセイネリアを締め付けてくる。そこから強引に引き抜いて、また強く奥を穿つ。

「あぁっ」

 声は大声にならないように押さえているものの、ラスハルカは高い音を出して喘ぐ。
 セイネリアは彼の腰を押さえ、本格的に抽送を開始する。最初はゆっくりと、深くまで押しつけるように、それからだだんだんと速く、中を擦りあげるように。

「は、あぁ、あぁ、あん、あんっ、はぁっ……」

 奥を突く度に、彼の声があがる。
 下に敷いたセイネリアのマントをぎゅっと握りしめ、顔をその中に埋めて、腰だけを高くあげてセイネリアの動きを受け止め、快感に肩をあげる。
 彼の尻に、セイネリアのまだ装備と服が付いたままの体が当たる。だから肌と肌がぶつかって鳴る高い音はたたずに、セイネリアの装備が鳴らす金属が擦れあう音が動きに合わせて鳴る。

「は、や、あぁ、ぁあんっ」

 ラスハルカは耐えられないというように頭を上げ、大きく背をしならせて尻を揺らす。それと同時に、セイネリアのものを強く締め付ける。
 だが。
 ラスハルカが脱力して崩れ落ちようとすれば、セイネリアの左手がそれを支えた。

「……まだだ」

 耳元で囁いたセイネリアは、そのまま左手だけでラスハルカの体を持ち上げ起きあがらせた。座ったセイネリアの上につながったまま座る体勢にされたラスハルカは、自重で更に深くまで抉られた感触に、掠れた悲鳴をあげた。

「も……やぁ……」

 甘い声で、それでも苦しげにそういう彼に、セイネリアはまた耳たぶを水音を鳴らして舐めながら、すっかり萎えた彼のものに指を絡める。

「そういうな、俺がイクまではつき合わないと意味がないだろ?」

 彼のものがまた少し硬くなってきた事がわかると、セイネリアは手を離し、今度は両手で彼の足を持って開かせ、そのまま持ち上げ、突き上げると同時に落とす。

「は、ぁっ、やぁ、奥ぅっ」

 背を大きく反らし苦しげに言う彼の耳元や首筋を軽く吸い上げ、そうして彼の体を持ち上げては落とす。動きはさほど速くないものの、より深くを抉られる感触に、ラスハルカの体はより強くセイネリアの欲望を包み、締めあげてくる。

「はぁん、あぁ……ぁ」

 声を抑えている為、掠れて音にならない彼の悲鳴のような喘ぎ声を聞きながら、セイネリアは彼の深くをただ突き上げる。そのタイミングに合わせて、自由に動けない体をそれでも腰を捻って怪しく揺らし、ラスハルカは自分と男を愉しませる為に体全体で快感を貪る。
 十分に彼の肉が与えてくる感触を楽しみ、それからセイネリアは中に自分の欲の印を注ぎ込んだ。瞬間、更に深く締め付けた彼は、そこでまた達したらしく、その後は本気で死体のようにぐりゃりと体の力を無くした。
 マントの上に彼の体を寝かせてやれば、されるがままにされていた彼が、じろりと恨みがましい目をセイネリアに向ける。

「……これじゃ、見張り番としては全く役に立ちません。どうしてくれるんです?」

 セイネリアは涼しい顔で、自分の服を直して言ってやる。

「別にお前は寝てていいぞ。見張り役は俺だけで十分だ」

 パタリと突っ伏しながら、ラスハルカは呟く。

「えぇそうでしょうね、そうさせてもらいます」

 セイネリアは笑いながら、そのラスハルカに彼自身のマントを拾って来て上から掛けてやった。

「他の連中を起こす少し前に起こしてやる。服を着る時間は欲しいだろ?」

 そうして傍に座ったセイネリアをちらとだけ見ると、ラスハルカは自分のマントで体をくるみ、目を瞑って何度目かになるため息をついた。

「……えぇそうですね、お願いします」

 セイネリアは返事をせずに、気配で笑った。


---------------------------------------------

そんな感じで慣れてる同士Hでした。セイネリアさんその場限りの相手とのHが普通の生活してる人なんで……。


Back   Next


Menu   Top