嫌われ子供の子守歌
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【10】



「ホントつまんない。部下に向かってやめてくれっていいながら喘ぐ貴方がみたかったのにさ。あの大男ならアレも大きそうだしさ、貴方滅茶苦茶にされちゃったよ」

 うっとりと笑みを浮かべるその表情はどこか狂気じみていて、今ならシーグルでも彼を異常だと判断出来た。

「ネイクス……君は、俺が憎いのか?」

 だが、シーグルがそう聞けば、少年はさも意外だという顔をして、少し拗ねたように眉を曲げた。

「違うよ、僕シーグル様大好きって言ったじゃない」

 先ほどまでの狂気を宿した瞳ではなく、子供が必死になって訴えているその真剣な瞳は、嘘ではない、とシーグルは思いたかった。

「なら何故、そんな事をしたんだ」
「だって、部下にやられちゃったら、貴方は部下も信用出来なくなるでしょ。誰も信用出来なくて、絶望した貴方なら、簡単に僕のモノに出来るって……」

 それでシーグルは確信する。
 やはり、誰かがネイクスを利用しようとしている。

「ネイクス、俺は、そんな事じゃ絶望しない。例え、彼らが全員敵になったとしても絶望はしない。それ以前に、犯された程度で簡単に彼らへの信頼を失ったりはしない」
「嘘だ、だって……」

 ネイクスはシーグルを嬲ることも忘れて、その体から手を離すと、不安そうに瞳をさまよわせる。まるで、誰かを探すように。
 彼の意志が途切れた所為か、体の中で蠢いていた水達も、急激に意志を無くして動かなくなる。ただの液体になったそれらが、纏まる力を失ってそこから零れおちていく。とろりと体温で温められた生温い液体が溢れていく感触に、シーグルは顔を歪ませたが、少年の顔から視線は外さなかった。
 シーグルはネイクスの顔をじっと見つめたまま、強い声で彼に呼びかけた。

「ネイクス聞くんだ、誰が、君にそんな事を吹き込んだ?」

 そうすれば、寝室のしきりの向こうから、やっと待っていた人物が姿を現した。
 予想通り、長いローブに大きな杖と、いかにも魔法使いといった格好をした青年は、中性的ともいえる整った顔をしていたが、シーグルはどこかその顔に違和感を覚えた。その違和感の正体は何だと思って――瞳が映す狂気と表情のバランスがおかしい事だと気づく。
 まるで、借り物の顔に目だけが本人のもののような、整った容貌に見合わない、醜く濁った瞳。一目見ただけで、シーグルは彼がロクでもない人物だと言うことが確信出来た。
 魔法使いの青年は、勿体ぶるように優雅に歩いてくると、半裸のシーグルの体に舐めるようなねばついた視線を這わせる。その欲にまみれた瞳を感じただけで、シーグルの体を犯していた熱が一瞬で覚めるほど、それはぞっとする瞳だった。
 ネイクスは彼の姿を見てほっとしたのか、明らかに安堵の表情で、彼に向かって抱きついていく。
 無邪気な少年を抱きしめ、魔法使いは瞳の狂気はそのままで、表情だけには優しげな笑みを浮かべて少年の髪を撫でた。それから、その感触にうっとりする少年の顔の位置まで自らもしゃがみ、息が掛かる程顔を近づける。

「ネイクス、言ったろ、彼は淫乱なんだよ。本当は部下達に犯されたいから、そんな事を言っているだけさ」

 言いながら魔法使いは、顔を更に近づけると、そのまま少年と唇をあわせた。
 それは慣れた行為なのか、少年はすぐに口を開いて魔法使いの舌を受け入れると、更に深くを強請るように魔法使いの首に手を回してすがりついた。
 ぴちゃ、と唾液の絡まる音が、ベッドに拘束されているシーグルにも聞こえる。その先の関係さえ既に彼らの間にあるのか、含み切れない唾液をこぼしながらうっとりと舌を絡ませる少年の顔は、その子供らしい顔から考えられない程淫らだった。

「……お前が、すべての元凶か」

 その光景を嫌悪感で見ていられなくなったシーグルが、魔法使いの青年に尋ねる。
 そうすれば青年は少年の顔を離し、唾液にまみれた唇を拭いながら答えた。

「元凶? 全て私のせいみたいな話はよしてくれないかな。私は単に、ネイクスに協力しているだけだよ」

 急に顔を離されたネイクスは、少し不満そうにしながらも、まだキスの余韻に浮かされたような目で青年に体を預けていた。
 そのネイクスの体を離して、青年は今度はシーグルのすぐ目の前まで近づいてくる。

「ねぇネイクス、見てごらん。彼が淫乱な証明はすぐに出来るよ」

 言うと青年は袖から何かを取り出す。
 シーグルにはそれが何か分からなかった。
 一見、表面に模様が彫られた棒状のそれは、銀細工の工芸品か何かに見えた。目を凝らしてそれを見るシーグルの様子に、青年は不気味な笑みをにたりと浮かべると、舌でそれを舐めて見せる。

「これが何が分からないのかい? なんだ、君の身体ならよぉく知ってると思っていたよ」

 いいながら魔法使いは、ベッドの傍の棚にある瓶を一つ手に取る。
 それから瓶の栓を抜き、中の液体をその細工物に掛けていく。

「これはね、いわゆる張型って奴でね、一人寝が寂しいご夫人方が自分を慰める為に使う道具さ。君のここのように、男を欲しがっている場所に挿れて気持ち良くなる為の道具だよ」

 くくく、とさも楽しそうに笑いながら、美しい顔を醜い笑みで歪ませて、青年は垂らした薄赤色の液体をそれに塗りつけるように手で撫でる。ぐちゃりといやらしい水音はまるで抽送時の音のようで、シーグルは嫌そうに顔を顰めた。
 微かに匂って来る香りは、おそらくその液体のものなのだろう。どこか甘ったるく、つんとした妙な刺激臭は不快なもので、ただ滑りを良くする為だけの油の類ではないのだろうという事はシーグルでも予想出来た。

「これくらいでいいかな。淫乱な騎士様には待たせちゃって申し訳なかったね。ほら、ネイクス見てごらん」

 シーツと上掛けの布に動きを封じ込まれているシーグルには、それから逃げる術はない。下肢に二人の視線が集中して、後孔にひやりと冷たいものを感じれば、後は異物が体の中に入ってくるそこを広げられる感覚だけになる。

「うぅっ」

 体の熱は既に冷めてはいたものの、そこは先程までのネイクスの指で解されている。塗り付けられた液体のヌメリの所為もあって、それはすんなりと体の奥にまで入ってくる。

「やっぱり淫乱だなぁ、あっさり奥まで銜えちゃって、嬉しそうにひくひくしてる」

 言いながら青年は、それをぐんと奥深くに突き入れた。

「う、くっ」

 シーグルは歯を噛み締める。
 まだ今は、異物感と苦しさの方が強くて、感じるよりも吐き気の方が強かった。
 ……それでも、いつまでもそれで済まない事はシーグル自身自覚していた。
 青年は、シーグルの中に埋めた張型を本格的に動かしだす。
 抜かれては奥を突かれ、また抜いては突いて、ぐちゅ、ぐちゅ、と水音を鳴らして、それがシーグルの体の中を行き来する。

「ほら、感じてるよ。ここが硬くなってきてる」

 魔法使いが嬉しそうに笑いながら、勃ちあがってきているシーグルの雄を手で撫でた。それにシーグルの背が撓る。
 言われなくて、シーグルも既に気付いていた。
 何よりも、吐き気が消え失せ、体の中を抉られるその感触に、下肢に甘い疼きを感じていたのだから。

「あ……は……うくっ……」

 それでも、今は快楽に流されてはいけなかった。
 ただ嬲られるだけなら、終るまで体を明け渡して相手の望むまま鳴いてやってもいい。……ひたすら意地を通そうとしてきた前とは違う、今は声くらいで、自分の心が折れたりはしないから。今のシーグルは、プライドを捨てても心を守る事が出来る。
 けれども、今、この少年には、まだシーグルは言う事がある。
 彼をこのまま堕ちさせてはいけなかった。

「ネイ……グス、考えろ、君が本当に望んでいるのは俺なんかじゃ……うぁっ……く」

 けれども、シーグルが懸命に少年に話し掛けようとするのを、魔法使いは許さない。激しく、乱暴に、手の中のものでシーグルの中を突き上げる。それだけでなく、もうはっきりと欲望に膨れ上がったシーグルの性器を手でゆるやかに撫で、びくびくと震える肌を舌で舐める。

「よく見るんだ、ネイクス。さっきからずっとこの体はね、君の指なんかじゃ足りないって、早く犯されたいって思ってたのさ。ほら、こんなに嬉しそうに飲み込んで、感じてしまっている彼のどこが淫乱じゃないって?」

 下肢はねばついた淫らな音が絶えず鳴り、それに魔法使いの笑い声が混じる。
 シーグルは歯を食いしばってどうにか声を殺しはしていたが、腰が持ち上がり、突き上げられる動きに合わせて体が揺れてしまうのはどうしようもなかった。

「ほら、気持ちよさそうだろ? 嬉しそうだろ?」

 体の中を鈍い音が鳴る。液体の中で空気が潰れるぐぼりという音が鳴って、そこの肉が蠢いているのが分かる。

「は……ぐぅ」

 強くなる感覚、疼き、震える身体。激しい抽送の動きに腰を揺らし、がくがくと開かれた足を強張らせるシーグルは、もう、声を言葉に出来ない。
 突きこまれている無機質なモノの感触を、それでも体の内なる肉は喜んで包み、締め付け、奥へと引き込む。自ら望んでいない身体の反応を悔しく思いながらも、熱に飲み込まれそうな頭に正気を必死で手繰り寄せようとする。

「ん……」

 それでも、唇は開いて甘い吐息を漏らす。
 顎がくんっと上がり、足のつま先までもに力が入って、ガクガクと身体が揺れる。ぐんっと感覚が山を迎え、そして解放される。
 後に残るのは、重い体と収束した熱がまた散っていく感覚。
 それでも、恐らく薬物を入れられた体はまだ熱を残していて、常なら達した後は消える疼きが、モノを食むその場所を中心にじんわりとまた広がろうとしていた。
 魔法使いの、耳障りな笑い声がすぐ傍で聞こえる。

「彼はちょっと前は男の情人がいてね、毎日のようにここにつっこまれて泣き善がっていたんだよ。さらにね、いろいろと捕まった時に何人にも犯されたりしてね、こうしてすっかり男を銜え込むのが大好きな体になったのさ」

 指先一つ動かすのが怠い中、それでもシーグルは自分を見ているだろう少年の姿に目をやる。
 少年は、明らかに欲に塗れた瞳でシーグルの身体を見て、口元に歪んだ笑みを浮かべていた。……それが、シーグルには悲しかった。
 魔法使いは場所を譲るように、自分は下がりながら少年をシーグルの目の前に押しやる。

「ネイクス、ほら、彼のここはモノじゃなくて男を欲しがっているよ。君が犯してあげるといい、それで彼は君のものに出来るよ」

 ごくりと、鳴らした喉の音がシーグルにも聞こえた。

「シーグル、様……」

 少年が近づいてくる。

「だめ、だ、ネイクス……」

 やっとのことでそう言っても、少年の瞳は欲に濁ったままだった。
 少年の手が、未だシーグルの中に埋められたモノに触れて、それを掴む。瞬間、ぐっと一度奥を突かれて、シーグルはびくんと背を反らせた。

「あぅっ」

 それから少年は、それをゆっくりとシーグルの身体から引き抜いていく。
 表面に凹凸の多いそれが、中の肉壁をごりごりと擦って去っていく感触に、シーグルは歯を噛み締めながらも腰を揺らめかしてしまう。

「シーグル様のここ、すごいひくひく動いてる。とってもいやらしいね」

 少年の息が荒い。
 完全に引き抜かれてすぐ、そこには、少年の熱い欲望が押し付けられた。



---------------------------------------------

えぇ、なんていうかまだ続くんですよこのシーン。
でも、次回は一転して、騎士団の部下さん達の様子に場面が変わります。
シーグルとネイクス達の続きは向こうの彼らの慌て様を見ていただいた後になります。



Back   Next


Menu   Top