誰かの為の独奏(ソロ)
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【3】



 さて、そんな訳でその夜。
 自分の部屋のベッドの中で、シーグルは難しい顔をして考えていた。
 いや、考えている、というよりは悩んでいたのだが、ともかくシーグルは考えて考えて……それから唐突に起き上がると、ベッドの上に座って、薄暗い部屋の中を睨み付けた。
 人の気配はない……当然だが。
 気になって、一度立ち上がって、ドアを開けて廊下に誰もいない事を確認してみる。
 窓の傍にいって、ちゃんと外窓も閉まっている事も確認してみる。
 それからまたベッドの上に座って、思いつめたように考え込んでから、思い切って自分の下腹部へと手を伸ばし、そうして、そうっと自分のソレを手で触ってみた。
 さすがに、やり方が分からない事はない。
 けれど、こうして正気の状態で、自分で『そういうつもり』でソレを触るなんて事はなかったから、どうにも恥ずかしくて顔が赤くなるのは仕様がない。
 ソレは触れると自分でも驚くくらいに反応し、手の中でカタチを主張し始める。
 一度やると決めたのだからと、シーグルは思い切ってそれをゆるく握りしめ、そうして手を動かしていく。
 段々と熱が溜まっていく下肢を意識しだすと、顔も更に火照ってきて、息も荒くなってくる。感覚ははっきりと快感で、しかも誰かに強制されて感じさせられている訳ではないから、その分素直に受け入れる事が出来る。ただ、どうにもまだ迷いがある自分の手の動きはぎこちなくて、その所為か、上がってくる熱は緩やかで……緩やかすぎて、そのまま結局上りつめるまではいかなかった。
 だからシーグルはまた少し考える。

 例えば……『あいつ』はどんな風に触れてきたろう、とか。

 目を瞑って、思い出す。シーグルにとって、一番体が素直に受け取る『快感』を与えてくれる男の事を。
 彼はいつも、まず最初はしつこいくらいにキスをしてきて――シーグルの指が、自分の唇に触れる。
 こちらの息が苦しくなってくるまで口づけて、それから離すと耳元に唇を滑らせて、耳たぶを舐めてくる――感覚を思い出した途端、耳の傍に想像の気配を感じて、背がぞくりと震えた。
 シーグルは思い出しながら、指で自分の体をなぞる。
 彼の唇が肌の上をなぞるように、唇から髪の生え際へ、そこから喉へ、そして胸へ。
 彼はいつも焦らすように胸の筋肉にそって舌を滑らし、それから胸の頂きを外してその周囲に唾液の冷たい跡をつけて、それからやっと胸の尖りを口に含む。

「……ぅ」

 想像しながら、指が夜着の上から胸の突起を弾いて、思わずシーグルは布越しのその感覚に声を漏らしてしまった。
 それからもう片方の手が、その続きを辿るように、横腹に下りて、足の付け根にそって滑り、再びすっかり膨らみ切った性器にたどり着く。
 静かにそれをまた握れば、今度は先ほどよりも強く背筋に快感が走り、思わずシーグルは目をぎゅっと瞑って、足のつま先にまで力を入れた。

「ん……」

 慎重に、静かにそれを扱いていく。目を瞑った分、頭の中ではその手は自分の手ではなく、彼の手の感触を思い出してその感覚を重ねていく。そうすれば、彼の息遣いや、その匂い、肌の感触、そうして、あの誰よりも強い琥珀の瞳が自分を愛し気に見下ろすのさえ思い出して、シーグルは我知らず手の動きを速めていた。

「あ……だめ、だ……」

 手の中で、自分の欲が水音になって聞こえてくると、いたたまれなくて、逃げ出したくて、自然と口はそんなことを呟いてしまう。
 それでも手は止まらずに感覚を更に強くしていって、シーグルはベッドに背を倒して、より感覚に身を任せようとした。

「ぁ……ぅ……」

 息が荒くなって、薄く開いた唇からは、時折熱い息が漏れる。
 頭の中では、あの強い男の体が自分に覆いかぶさり、そしてとうとう足を広げられて――想像しながら、じりじりとシーグルは自分の足を開いていく――そこに、彼のものが押し付けられて、彼が体の中に入ってくる。

「――――ッ」

 想像と同時に、先端を指で強く擦れば、極まった感覚はそこで解放される。
 ぐったりと体の力を抜いてベッドの上で息を整えるシーグルだったが、だがそれだけで体が満足した訳ではない事もまた、自覚してしまっていた。
 体が求めている、その先。
 終わった筈なのに、ひくりと蠢いて、欲しいと言っている箇所がある。
 一杯に広げられて、隙間無く埋められて、中を擦り上げて欲しいのだと、そう言っている場所が体の中にある。満たされる事を強請って蠢く淫らなそこを意識すれば、また身体が熱くなってきて、去った筈の熱が急激に戻ってくる。
 シーグルはベッドに寝そべったまま、膝を立てて、足を更に開いていく。
 それから自分の吐き出したモノで濡れた手を、そっと更に奥まった場所へと伸ばしていった。
 彼が欲しいと、確かな質量で埋めて欲しいと強請る場所に、指を伸ばして、そこに触れて――――。

 そこでシーグルは、正気に戻った。

「……何やってるんだ、俺は」

 急いで手を離して、起き上がる。
 そのまま水瓶のあるところまで急いで歩いて、とにかく強く擦りながら手を洗った。
 洗った手の匂いを思わず嗅いで、とりあえず大丈夫だと思ったところでほっと息をつき、今度はのろのろとベッドまで戻ってその上に倒れ込んだ。

――何をしていたんだろう。いや、何を想像していたんだろう。

 思い出せば、顔が赤くなると同時に、すさまじい自己嫌悪が襲ってくる。
 やっぱり自分は体がそちら側に慣れてしまっているのだと自覚するのは、相当にシーグルにとっては落ち込む事ではあった。
 そしてまた、想像したのがあの男であった事も、シーグルの頭を更に混乱させていた。

「仕方ないじゃないか、俺の体がこんなになったのはあいつの所為なんだ。……体があいつに慣れてるだけなんだ、俺は……」

 誰にいうともなく言い訳をしてから、自分で言ったその言葉の内容にもまた落ち込んでしまって、シーグルはベッドの上で転がってうつ伏せになると、顔を枕に押し付けた。

「何やってるんだ、俺は……」

 結局はやはり最終的に出てくる言葉はそれで、シーグルは大きく息を吐いた。





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エロでした。童○くさいシーグルさん(==。体の慣れように頭がおいついてないぽいです。



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