謀略と絶たれた未来
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【10】



「……セイネリア?」

 呟く声は、酷く頼りなく、先程までの彼からは考えられないものだった。

「そうだ。……愛しているぞ」

 厭らし気に笑いながらリーズガンの手がシーグルの頬の撫ぜれば、シーグルの瞳からは涙が零れ落ちてくる。

「あぁ、俺も愛している、セイネリア。だから……すまない」

 そうして彼は、リーズガンの口づけを自ら唇を開いて受け入れる。
 ガチガチと枷を鳴らして動く腕は、おそらく目の前の男の背に行きたがっているのだろう。涙を流してうっとりと深い口付けを受ける顔は、彼が眠っている時のような幼ささえあって、あの誇り高い青年がセイネリア・クロッセスに対してどれだけ心を許し……愛しているのかが分かってしまう。

「どのような術なのだ?」

 そこで王が聞いてきた事で、キスに夢中になっているリーズガンの代わりにキールが答えた。

「幻術の一つですが、対象の人間の意識をほぼ眠らせる事で、現実をあやふやにさせています。いうなれば今、シルバスピナ卿は夢の中にいる状態なのです。夢の中で、最も会いたい相手に出会ったというのが今のシルバスピナ卿の状態です。本人にとっては夢の中ですから、嘘も遠慮もなく、本心からの行動をするのです」

 キールが言えば、王は鼻で笑う。
 リーズガンと嬉しそうに唇を合わせるシーグルを見て、馬鹿にするように口元を歪める。

「なるほど。それでアルスオード・シルバスピナがセイネリア・クロッセスの情人だというのは証明されたという訳か」

 飽きることなくキスを求めるシーグルの唇を犯しながら、リーズガンは手でシーグルの胸を撫ぜていた。掌全体で撫ぜてから、指先で乳首を潰して、その度にびくんと反応する体の反応を楽しみながら、もう片方の手でシーグルの脇から腰までを撫ぜている。

「もうこんなになって……そんなに抱かれたいのか?」

 腰を撫ぜていた手でリーズガンがシーグルの雄に触れると、あ、と高い声で喘いで、シーグルはそれに答えた。

「あぁ……お前が、欲しい」

 リーズガンは笑う。喉を震わせて笑いながら、片手でシーグルの片足を上げて奥の窄まりにもう片方の手を伸ばす。

「あ……あぁっ」
「本当に、ここも欲しがっているな」

 リーズガンの手がその位置で小刻みに揺れて、彼が指でシーグルの中を犯しているというのが分かる。シーグルは切なげな声で喘ぎながら、もどかしげに腰を揺らし、虚ろな瞳はうっとりと夢見るように目の前の男を見ていた。

「ここに男が欲しいのか?」

 リーズガンがいえば、目の前の男を愛する男だと信じて疑わない青い瞳が、嬉しそうに細められていく。赤く上気した顔に僅かの羞恥と色欲を乗せて、普段なら誰よりも騎士らしく凛々しい青年は女のように男を欲しがる。

「……お前が欲しいんだ、セイネリア」

 彼の腕がリーズガンに向かおうとして、枷に阻まれてがちゃんと音を鳴らす。
 胸を突き出して、腰を揺らして男を誘う。
 リーズガンは両手でシーグルの足を掴むと大きく広げ、そこに自分の股間を押し付けていった。

「あ、はぁっ……あぁぁっ」

 美しい青年の眉間が寄せられて、開いた唇が悲鳴にも似た声で喘ぐ。がちゃがちゃと腕の枷が音を鳴らし、リーズガンの背中からはみ出すように飛び出した白い足が、暴れて何もない空間を蹴る。
 そうして、リーズガンの体が動き出す。最初は、押し付けるように、押し上げるように乱暴に。それから中が解れてきたのか、ゆっくりと船を漕ぐようなリズムをとって、リーズガンの体がシーグルに覆い被さって上下に揺れる。

「あぁ……、あぅ、ん……ふ、あ……ん、あ、ぁ、ん」

 シーグルの口は閉じられることなく、リーズガンの動きに合わせてくんっと顎を上げ、甘い声を漏らす。背中から波打つように揺れる腰が男の動きを受け止め、大きく開かされた足が挟むように自分を犯す男の腰に絡んでいく。

「騎士の中の騎士の家と言われたシルバスピナ家の当主が……完全に雌だな。下賎の男に喜んで腰を振るなど落ちぶれたものだ」

 王が呟いて、クククと喉を震わせる下卑た笑い声を上げた。
 暗鬱とした気持ちでリーズガンとシーグルを見ていたキールは、それで大きく溜め息を付いた。

「あ、あ、あ、あん、あぅ、ふ、ぁ」

 シーグルの上のリーズガンの動きは、前よりも小刻みで速くなってきていた。
 それにあわせて上がるシーグルの声も、より高く、切なく、半ば鳴き声のようになっていた。波打つと言うより振動するように揺さぶられて、ガチャガチャとシーグルの腕にある枷が激しく音を鳴らす。シーグルの喘ぎ声に、リーズガンの唸り声と荒々しい息遣いの音が重なり、肉と肉がぶつかる音も高さを増していく。

「あ、あぅ、ん、セイネリアっ」

 悦びに満ちた声で喘ぎながら、何度も愛しい男の名を呼び、抱きつきたがる腕が枷を鳴らす。台の上の白い体は激しく揺さぶられ、銀の髪が乱れて美しい青年の顔に張り付く。

「ふん、欲しいのだろう、もっと腰を振れ、淫乱め」

 リーズガンが言いながら、大きい動きで乱暴にシーグルを数度突き上げる。
 それからすぐ、リーズガンの体の動きが止まれば、その腰に絡ませていたシーグルの足の指先がぴんと伸びて、一際高い喘ぎ声が部屋を満たす。
 リーズガンは大きく息を吐き、ぶるりと震えてから、今度は余韻を愉しむかのようにゆっくりとまた動き出した。

「あ、ふぁ……ん」

 ぐったりと力が抜けたシーグルの体が、深くを突かれる度にびくんと痙攣のように震えて、鼻に掛かった声が小さく呟いた。

「あ……セイネリア……セイネリア」

 満足そうに、幸せそうに、愛する男の名を呟く青年の声に、リーズガンの笑い声と王の笑い声が重なる。
 その笑い声も分かっていないシーグルは、微笑みに涙を浮かべて幻の愛する男を見つめる。

「愛している……セイネリア」
「あぁ、愛しているぞ」

 嘲笑と共にリーズガンが返して、そうして彼はまたシーグルに口付ける。
 なぶるようにねっとりと、正気であれば嫌悪に吐き気さえする男の唇を、今のシーグルは自ら喜んで受け入れ、舌を絡ませる。
 ちゅくちゅくと音をさせて唾液を溢れさせ、それを飲み込み、舐めながら、美しい青年は欲に醜く歪む男の唇を自ら求める。

「もういい。今はそれくらいにしておけ。確かにこれでこの者の存在がセイネリア・クロッセスに対して有効だというのは分かった」

 王の声に、再び律動を開始しようとしていたリーズガンは動きを止め、名残惜しそうにゆっくりと体を起こしてシーグルの体から離れる。

「あ……や、セイ、ネリア……」

 強請るように甘く響く声に、王は声を上げて笑った。
 リーズガンも、それに続けて笑う。

「ふん、もっと欲しいのか……まったくどれだけ淫乱なんだ。いや、そこまであの男に仕込まれたというところか」

 未だぎらぎらとした欲の目でシーグルを見つめていたリーズガンは、台から下りて自分の服を直すと、王に向かってシーグルの片足を持ち上げて見せた。

「どうです、この反応は相当に抱かれ慣れた者ではないとありえません」

 見せつけるように今まで男を銜えていた部分を指を添えて広げて見せれば、そこはヒクついて中に出された白濁の液体をとぷりとあふれさせる。指を中に入れれば周囲の肉が蠢いて、まるで飲み込もうとしているように激しく収縮する。

「まったくな、確かに相当飼いならされた雌のようだ。……王国の騎士が嘆かわしい、とでも言えばよいのか。確かにそういう用途で使うなら、相当具合の良い体のようだな」
「はい陛下、よろしければ陛下も試してみてはいかがでしょうか?」
「ふん、私は男を抱く趣味はないと言ったであろう。だがこの者の鳴く姿はなかなかに良い。見世物としてはかなり楽しめる」

 王とリーズガンの、身分に対して品位の欠片もない下卑た会話を聞きながら、キールは表情を変える事無く台の上に残されたシーグルの姿を見ていた。

「では次はぜひ、正気の時に兵士共に犯させるのはどうでしょう? 嫌だと泣き叫んで半狂乱になりながら喘ぐ姿は、それはそれは楽しめるかと存じます」
「そうだな、確かにそれは楽しめそうだ、見世物としてはな」

 だがその会話が聞こえるに至って、キールは王の前に出てその場で跪く。

「陛下、おそれおおくも申し上げますが、シルバスピナ卿はあの男に対しての切り札でございます。使い物にならなくなるほど壊しては、そもそもの意味がございません」
「……確かにそうであったな。まぁ良い、見世物として楽しむのはこの者の全ての役目を終わらせてからだ」

 王には見えないよう舌打ちをしているリーズガンを横目に見て、キールは内心僅かに安堵した。
 ちらと後ろを振り返れば、虚ろな深い青の瞳を天井に向けたまま、未だ涙を流し続けているシーグルの声が聞こえる。

「あ……セイネリア……セイネリア……すまない……愛している」

 耳を塞ぎたくなる衝動に襲われながら、キールは杖を握り締める手に震える程力を入れた。




 END.
 >>>> 次のエピソードへ。

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 久しぶりのエロの割に短めですみません。そんな感じでこのエピソードは終了です。
 次エピソードは、セイネリアは勿論、いろいろな人達が動いてのシーグル救出編、となりますが……。



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