リアル・ストーリーの光と影
◆STAGE_03 「開かれた、扉」 SCENE#9
「腹が減ったな。」
このリュオンの一言が、翔達三人の最初の作戦行動(?)となった。言われてみると、翔も葵も空腹を覚えたからだ。腹が減っては調査は出来ぬ、と真顔でのたまわるリュオンに苦笑しながらも、翔は部屋を出て行こうとする葵に声を掛けた。
「先輩、お手伝いしますよ」
「・・・経験は?」
「実家は小料理屋です。多少は出来ますよ」
葵は、少し驚いた表情を浮かべて翔を見た。
「そう・・・心強いわ」
実は、余りお料理は・・・と口籠もる葵に、翔は柔らかく笑いかけた。
★ ★ ★
「おっ? 出来たか!」
翔と葵が料理をお盆に載せて居間に戻ってくると、それまでだらしなくソファにめり込んでいたリュオンが、待ってましたとばかりに立ち上がった。
「あちらで、食べましょう」
居間の半分はダイニングとなっていた。どっしりとした深いマホガニー色のテーブルに、椅子が六脚置かれている。葵が手早くテーブルを整えると、翔がその上に運んできた料理を置いた。買い置きが余り無かったせいか、献立は和洋折衷の有り合わせのものとなった。余り得意ではないと言った割には、葵の料理の腕はそれほど悪くもなかった。
「旨そうじゃないか!」
「リュオンさんが普段食べてるものと違うと思いますが・・・」
「何でも大丈夫さ。胃腸の丈夫さは自慢なんだ」
「食べるだけにしては、随分な褒め言葉ですね、それって」
「気にすんなよ、ショウ」
にやりと笑って言うリュオンに、ちょっとむくれたように翔が返した。
「大半を、翔くんが作ってくれたわ」
「へぇ〜。ショウは料理が得意なのか?」
「全部って・・・先輩、それは大袈裟ですよ」
慌てて訂正する翔に、葵は笑みを浮かべて頷いた。
「いいえ。本当に手際が良くて・・・わたしも見習わなくてはね」
「いや・・・先輩にそう言われると、恐縮しちゃいますよ・・・」
「ま、特技があるってのはいいじゃないか。さぁ、冷めない内に食べようぜ」
「全く・・・」
マイペースなリュオンに、翔と葵は顔を見合わせて笑ってしまった。そして、先に食べ始めたリュオンに倣って箸を取った。
★ ★ ★
「さぁて。腹が膨れたら・・・」
「たら?」
「ゆっくりと睡眠を取る。こいつが大事さ」
「・・・状況の検討はしないんですか?」
「あ? そういえばそうだったな」
緊張感が微塵もないリュオンの言葉に脱力しながら、翔は助けを求める様に葵に視線を振った。
「・・・暫く、こちらに泊まると言うことね」
その葵も、なんだか惚けたような反応を返してくる。だが、表情をみると、二人とも至極真面目だった。
「頼むぜ。まぁ、人目にはなるべく触れない様にするからよ。家主に迷惑は掛けられないからな」
「そうして貰えると、助かるわ」
「先輩っ!」
「他に、選択肢は無いと思うの」
驚いた様に言う翔に対して、葵は冷静だった。
「幸い、部屋は余っているわ」
「でも、先輩! おうちの人が何て言うか!」
「誰もいないから・・・」
「え?」
聞いてはいけないことだったのだろうか? 翔の言葉が途中で途切れる中、以外に淡々と葵は先を続けた。
「両親は忙しい人たちだから。ここには、殆ど帰ってこないわ」
「・・・そう、なんですか・・・」
「だから、問題なし。」
話を打ち切る様に、葵は幾分強い口調で言い切った。
「悪いな、アオイ。暫く厄介になるぜ。・・・そうだ、ショウ。心配だったら、お前も泊めて貰えばいいじゃないか?」
「な、なんてことを・・・」
にやりと笑って、リュオンが必殺の一撃を放った。思わず絶句する翔に、葵が追い打ちを掛ける。
「何が心配なの、翔くん?」
「何がって・・・」
「オレが愛しのアオイに不埒なことをしないか、心配なんだろ。素直にそういえよ、ショウ」
「!!!」
にやにや笑うリュオンに、完全にフリーズする様な一撃を喰らった翔だった。
「そ、そ、そんなことは・・・」
「そんなことは何だ?」
追求の手を緩めないリュオン。黙って見つめてくる葵。進退窮まった、と翔が脂汗を流す中、静かに夜が更けていく・・・。
☆☆ SCENE_10に続く ☆☆
★天査からのメッセージ
お待たせしました。二週間の帰日出張明け最初の更新です。とは言っても、ゲーム的内容が皆無な、インターバル的な話になってしまいましたが(苦笑)。まぁ、日常的なシーンもリアストでは重要なので、そう言う物だと思ってご容赦を。
次回は、STAGE3の最終回です。話には、多少動きが出てくるでしょうか。それは、キャラクターたち次第なのですが・・・。
御意見・御感想・御要望は 天査 まで!