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リアル・ストーリーの光と影

STAGE 2 「仲間、と呼ばれて」 SCENE#6
 いつもは早く感じるリフトのスピードがもどかしかった。

“早く、自分の気持ちを先輩に伝えて、きちんと謝罪したい”

 そう思うと、居ても立ってもいられない気分だった。翔は、普段嫌になる程優柔不断な癖に、思い立つと待てないと言う、本当に厄介な性格をしていた。まぁ、おっとりとした見かけとは裏腹に、短気な性格が災いしているのだが。
 リフトが学部棟の13階に到着すると、翔は足早にリフトを降りて葵の教室に向かった。胸がどきどきする。話の帰趨(きすう)によっては、謝罪を受け入れて貰えないかもしれない。それだけ、愚かなことをしてしまったという自覚はあった。

“今、結果を気にしても仕方がないじゃないか”

 自分を励ますように言い聞かせる。そうこうしている内に、葵の教室に着いていた。丁度、教室から出てきた女生徒に、翔は話しかけてみた。

「失礼します。神和姫先輩いらっしゃいますか?」
「神和姫さん? さっき、一年生に呼び出にきて、出てったけど?」
「あの・・・、どちらに行かれたか、わかりますか?」
「ごめん、そこまでは判らないわ。でも、ついさっきだったわよ」
「そうですか・・・」

 丁寧にお礼を言うと、落胆したような翔を不思議そうに見ながら、女生徒は立ち去っていった。

“拍子抜けしたなぁ”

 溜息をつきながら、翔は思った。先程の高揚感の反動で、どうしても気持ちが暗くなる。先輩は何処に行ったんだろう──そう考えている内に、一カ所頭にひらめいた。

“屋上に行ってみよう”

 翔は脱兎とばかりに走り始めると、屋上への階段を駆け上った。はやる心を抑えながら、屋上へ出る重い鉄扉を開ける。

「居た・・・えっ!?」

 金網に背を預ける、いつもの葵の姿を見つけてほっとした直後──翔は、葵の隣で同様に金網に凭れている人物を見て吃驚した。だが、その驚きはそれだけに留まらなかった。その人物が葵に話しかけると、葵が笑みを浮かべたのだ。自分には向けられたこともない笑み──驚きのあまり、翔は扉を開けたまま固まっていた。

「彰・・・? どうして、ここにいるんだよ・・・?」
☆☆ SCENE#7に続く ☆☆

★天査からのメッセージ
 だんだん、中三日の更新が普通となりつつあります。これも、順調に(けれども、予定とは違った)行動を、翔達が取ってくれているが為ですが(笑)。
 さて、葵に謝ろうとした翔にまたも障害が現れました。誤解をたっぷりと招きそうな、厄介な状況が待っています。翔が、これまで覚えた事を冷静に、理性的に行動に移せば良し──そうでなければ、新たな難問を背負い込むことになりそうです。ここが踏ん張り時ですが、果たして翔はどうするでしょうか? それは次回に、また(笑)。

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