エルハザード小説感想集

 エルハの小説が出た際はPC−VANの某所(途中で移動したけど)で感想をアップしていたのですが、ちょっと思うところがあって、そのログをまとめておきます。当時の読んだ直後の感想なので、今見ると見解が違うところもありますが、その辺は注釈を加えたりしておきます。

神秘の世界エルハザード(上・下)
 倉田秀明 著  林宏樹 原案  徳間AM文庫

 これはなかなか面白かったです。といっても面白かったのはほとんど下巻に入ってからですが。OVAともTVとも違うオリジナルな設定(基本的には同じですが)というのが当たりだったかもしれません。上下巻あるといってもやはり短いですから、アニメのストーリーに沿っていては細かいエピソードまで書けませんからね。まあアニメージュ文庫ということもあって文体がアレなのは我慢しましょう。
 さてこの小説版、主人公水原誠の恋愛相手がルーン王女となっている所はTV版に近くて私の趣味にも合っていて良いです。しかしこの小説版の最大の見どころは最終兵器である鬼神イフリータが3人出てくるところですね。イフリータ3姉妹であります。3人とも名前はイフリータなのですが、便宜上呼び名が付けられております。
 イフリータ(OVA版のイフリータ)
 イフリーテス(小説オリジナル)
 イフリーナ(TV版のイフリータ)
もう、読む時は頭の中では3人とも天野由梨さんの声になっております(笑)。これだけでこの小説は読む価値あり。OVAとTV両方のイフリータのおいしいところが詰まっています。

幻日の世界エルハザード[上巻]天泣編
 桑原忍 著  竹書房ガンマ文庫

 こちらは、まだ下巻が出ていないというのもありますが、どうもイマイチ。一応OVA版の世界での番外編(後日譚)ということになっているようです。しかし、書かれた時期の問題でOVA版の結末がまだ明かされていないという前提で書かれているため、イフリータが全然出てこないのです。ルーン王女もOVA版の設定なため、誠と変な関 係にはならないので、物足りないことおびただしい。出るのが今頃なんだから関係無いんですけどね。これは出版社の落ち度でしょう。それからOVA版の設定といいながら、誠達がエルハザードに来たきっかけがTV版(誠の作った機械の暴走)になってるのも甘いぞ(これもイフリータが出せないための落ち度)。
 本の値段がAM文庫版より高いくせに、本の厚みがその半分チョットしかないというのも読者をなめてますね。AM文庫版が先に出てなかったら、いくら最近エルハにハマってるといってもアニメのノベライズなんて絶対買わなかったのに……番外の1エピソードにした時点で既に物語作りを投げてますね。続編を書くんだ、というくらいの意 気込みが欲しかったところです。

幻日の世界エルハザード[下巻]地啼編
 桑原忍 著  竹書房ガンマ文庫

 上巻のことはボロクソに言った私ですが、下巻を読んでみるとけっこう面白いです。この手の番外編のお約束ですが、普段の敵味方が一致協力して共通の敵に立ち向かう、ってのが(少しだけ)見られます。
 舞台はほとんどエルハザードではなく、さらに異世界である《光の民》の世界で繰り広げられます。こういうのは好きですね。エルハの世界にむやみに新しい設定を付け加えずに済みますし。
(注:↑このへんは異次元の出来がアレだった今見ると違うかも)
 しかし、帰ってきてからの最後が期待外れかもしれません。せっかくミカエラというキャラを作っておきながら、あれっぽっちということはないだろう、と思います。奈々美も活躍しなかったくせに最後に誠と……だし。
 新キャラとしてはリーラの方が良いですね。ミーズとの掛け合いが良い味だしてます。

神秘の世界エルハザード[幻書伝]紅の書
 建部伸明+桑原忍 著 竹書房ガンマ文庫

 7月25日頃に出るはずだったのが、結局8月9日まで遅れましたねぇ。

 今回もOVA終了後の1エピソードですが、以前の「幻日の…」よりは続編っぽくなっていますね。でも、やっぱり最後まで読んでみれば1エピソードに過ぎませんでした。
 地球に行ったはずのイフリータが出てくるわけですが、この正体というのが、なんだかなぁ、っちゅうものなんで。あの正体にしてはイフリータの言動がおかしいぞ。

 今回良かったなぁと思うのは、菜々美ちゃんや藤沢先生が今後の自分の行く末について考えているところですね。エルハザードに居続けたいのか地球に戻りたいのかっていうあたり。また、誠自身のこれに対する考えが、この小説のテーマにもなっているわけです。このあたりは他のエルハザードでもはっきりと描かれなかった部分なので、興 味深いところです。

 さて、この「幻書伝」は後2冊出て3部作になる模様です。著者は桑原忍プラス毎回変わる人のようです。次の「翠の書」はディーバがメイン(温泉に行く話か?)で、「橙の書」は…誰だろう? カットからだと新キャラでしょうか。和風のファトラに見えなくもないけど。

・もうちょっと遺跡の調査してこいよ、ストレルバウ博士
・巻末の4コマ、つまんないぞ!

神秘の世界エルハザード 外伝I 炎を継ぐもの
 倉田英之 著  林宏樹 原案  徳間AM文庫

 シェーラ・シェーラの少女時代、彼女が神官を志すきっかけを物語った外伝です。
 TV版で語られたものとは異なっており、OVAもしくは同著者による小説版の外伝と取るべきでしょう(明確にはされていない)。
 いや、13歳のシェーラがなかなか「らしい」少女に描かれていて、良い出来だと思います。ただ、アフラ・マーンの描き方はちょっとキツイような気もするので、アフラファンは読まない方が良いかもしれません(笑)。ミーズも出てきますが、この当時から既に大神官なので、あらためてシェーラ達との年齢の差を感じますね。

 しかし、何といってもラグーナ兄ちゃんが面白くて良し!

神秘の世界エルハザード [幻書伝]翠の書
 行雲斎流水+桑原忍 著  竹書房ガンマ文庫

 前作の「紅の書」がそこそこだっただけに、多少は期待していたんですが、ダメでしたね。やっぱりガンマ文庫の方のシリーズは何か外しています。アニメージュ文庫の方は上手いとは言えないまでもそれなりに面白いと感じさせる部分がきちんとあるのにね。

 それでも、終盤までのストーリーについてはまだ何とか読めるのだけれど、事件解決後のラストがいけません。あ、言ってることの中身じゃなくて、ストーリーに語らせずにあんな直接的な説教しか出来ない稚拙さに対してですが(エヴァ最終回と同じね)。大体、肝心の事件解決にあたってほとんど何もしなかったルーンの成長みたいなことを描いたって、何の説得力もありません。

 作者自身もエルハのファンなのでありましょうが、自分の見てみたい(描いてみたい)シーンをパッチワーク的に寄せ集めているだけなので、出来の悪いファンジン小説レベルに終わってます。キャラ描写なんかは部分部分ではそれっぽくなっているものの、その場面限りで作品全体に貢献していない。そんな感じです。

 しかしなぁ、ギャンブルったって、あの世界にはシェーラも身を持ち崩した(笑)というペッタン(メンコ勝負)だってあるんだが(TVだけど)。

神秘の世界エルハザード[幻書伝]橙の書
 植田浩二+桑原忍 著  竹書房ガンマ文庫

 このシリーズはあいかわらずですね。キャラ紹介で「よーくご存じの…」などとやられた時点で、読んでる方としては醒めてしまうのですよ。短編ならともかく、一冊の本にまとまった小説としては、小説としての体裁をなしてすらいない。
 もともとこのガンマ文庫版の方はキャラに魅力に寄りかかりすぎでストーリーの方は×でしたが、そのキャラの描き方の方も全然描き込みがなされていません。菜々美への入れ込みは激しいようですが、その他のキャラでは、例えばファトラ一人とってもAM文庫版の方が魅力的でしょう。せっかくルーン様に面白いシチュエーションを付け加 えたのに、それを生かしていないし。
 登場人物をもっと絞る。主人公をちゃんと決めてその視点で話を進める。このぐらいのことをするだけでも、もっと読み易くなるだろうし、小説としての独自の味も出てくると思うんですけどねぇ。外伝というのなら、例えば菜々美がエルハに行ってから誠達に会うまでの一人での放浪中の苦労話なんてのがあったら、面白いと思うんですが。
 このノリで新シリーズも作られるのだろうか。頼むからこの桑原忍は外して欲しい・・・

神秘の世界エルハザード 王立エルハザード大学
 建部伸明+桑原忍 著  竹書房ガンマ文庫

 とっくに読み終わっておりましたが、感想書く暇が無くて・・・
 で、感想は結局「相変わらず」の一言に尽きるのです・・・
 ルーンを主役にするならするで、もっと書き込めば面白くなるのに、その他大勢の代わり映えのしない描写を繰り返すばかりで、何も進展しない。ファトラも途中でちょっと良いかなという描写もあったのに、その直後でつまらないギャグにして台なしにしてしまうし。
 読み終わると「馬鹿ばっか…」と思わずルリちゃんになってしまうのであった(笑)。
 誠の尻尾も、結局何の伏線にもなってなかったしなぁ・・・

神秘の世界エルハザード 王立大学課外授業編
 桑原忍 著  建部伸明 監修  竹書房ガンマ文庫

 ま、相も変わらずドタバタ「だけ」の話ですな。ストーリー的にはそつが無くなって来ているとも言えますが、どこがクライマックスなのか、誰が《今回の主役》なのかといったポイントがありません。今回は比較的にキャラを整理してる方ですね。シェーラやアフラはほとんど出番が無い。毎回大したエピソードでもないのにオールスターな 方が無理なだけです。リーラはちょっと邪魔になってきたかも。今までスパイスとしては意味があったんだけど、リーラのいる限り「藤沢とミーズの良い雰囲気の話」というのが不可能っぽいです。

 このシリーズに感動とか教訓とかは期待しなくなっているのでいいですけど。キャラしかない内容なんだけど、その表現レベルがそれこそ、「断片のみをつなぎ合わせた」、「都合のよすぎる」、「ただの映像(文章)」なのですよね。実はそれを意識した奥の深い内容だったのか!?(笑)
 巻末で取り上げている投書も実際に「良かった」というものは、キャラもしくはギャグ系のシーンに関する物ばかりで、ストーリー的な物は「…も見てみたい」ばかりだし。

 しかし陣内、ホントにあれだけが目的だったのか!? 「卑怯」はいいけど「せこい」は哀しいぞ・・・

 P.153〜4のファトラのシーン。ポカにしては大きすぎる。あそこはルーンとファトラは扉に入らないことに意味があるのに、あんなシーンが見過ごされてるとは。誰も校正してないんだろうか。
 まともな作家が育たないのは、まともな編集者がいないからなのだろうなというのがよく分かります。

神秘の世界エルハザード2 〜破壊神カーリア〜
 健部伸明 著  ソニー・マガジンズ文庫

 竹書房ガンマ文庫からアニメ雑誌AXなどもたちあげたソニー・マガジンズへと出版元を移しての小説第1弾です。
 著者がガンマの方でもエルハを書いていた健部伸明ということで、はっきりいって期待していませんでした。それに題材があのOVA2ですしね。ところがどっこい、これがかなりいい線いっていたのです。

 表紙はカーリア。それなりに良い表情してはいるものの、しょせんはキャラだけのシンプルなイラスト。カラー口絵はOVA2のイラストの使い回し。このあたりは面白味が無いですな。

 プレリュード・・・カーリアの詩のようなモノローグ。おどろおどろしい雰囲気で導入部としてはなかなか。

 第1章・・・なんと本編がファトラの視点で始まっています。ただ、完全な一人称ではなく、多少距離をおいた感じの書き方です。これは、視点がコロコロと変わるまとまりの無い小説になるのかと不安になりましたが、この章は結局ファトラの視点のまま終わります。
 例の結婚式のシーンもこの章でさっさと片付きます。アニメの展開とは部分部分で微妙に変えてあり、アニメと小説のメディアの違いにきちんと配慮したノベライズらしいと一安心(これが分かっていずに目で見ないと面白くもないシーンの描写に延々とページを使うダメ・ノベライズの多いこと)。

 第2章・・・ここで視点はいきなりディーバになります。ここにいたって、どうやら章ごとに語り手を変えるつもりらしいと見えてきます。ディーバなんか、最初の方でしか出番無いですからね。また、視点をディーバのものにしただけのことはある表現があちこち工夫されており、だんだん先が楽しみになってきます。

 このあたりから、どんどんアニメとは違う展開が入ってきます。もちろん大筋は変わっていないのですが、藤沢先生が先に着いていたり、カーリアが正体を現すタイミングが遅くて陣内がちゃんと計略らしいことをしていたりと、独特の面白さがあります。
 特に、アニメではクライマックスの後になってしまったためにイマイチ盛り上がりに欠けた藤沢のプロポーズシーンが中盤あたりに移されています。これは非常に良い事だと思います。OVA2のストーリーにおいては重要な位置づけのキャラとはいえ、この二人はエルハという作品においては主役にもテーマにもなり得ませんから、このあたり でさっさと片を付けてしまうことで、作品のもっと重要な内容に専念できます。
 また、このシーンの視点はミーズのものであり、その揺れ動く気持ちの描写には引き込まれます。それに、このシーンが先にあるからこそ、『破滅のひきがね』にとりこまれたミーズを藤沢が助けようとするシーンが生きてきます(そして、アニメと違ってちゃんと役に立ちますしね、藤沢先生)。

 クライマックスからラストにかけて、あの物足りなかったアニメの描写への不満が全部解消されるかのような見事な展開。「そうだよ、ここをちゃんと描いて欲しかったんだよ」と唸ってしまいました。
 さらに拾い物だったのはファトラの描写。あとがきにもある通り、アニメージュ文庫の(とはさすがに明言していないが笑)倉田版小説のファトラを参考にしているだけあって、締めるところでキチッと締めてくれて嬉しいです。ガンマ文庫版での出番が多い割に深みの無いキャラだったファトラには不満大きかったですから。

 健部氏にこれだけの構成力があったとはまさに予想外(文章力はまだまだ発展途上ですね、不満を感じる程では無かったですが)。ガンマ文庫の小説とは別人のような出来です。とすると、ガンマ版の不出来の元凶はやはりあの桑原忍ですか。
 異次元のノベライズはそちららしいので、今からとても心配です・・・

異次元の世界エルハザード 〜またひとつ、君は扉を見つけた〜 【上巻】
 桑原忍 著  ソニーマガジンズ文庫

 表紙は一応描き下ろしのイラストのようですが、誠ちゃんとクァウールの表情が中途半端でイマイチ。カラー口絵の菜々美ちゃんの笑顔は良いんですけれど。

 アルージャの扱い方は面白いですね。ただ、太古の水の神官という扱いになってしまっているのが気になります。TV版と設定変わってるわけですから。おそらくクァウールの力と何らかの関わりを持たせるつもりなのでしょう。
 設定変えてあるといえば、誠ちゃんの作った次元移動装置と神の眼の制御装置が、それぞれ、神の眼の部品と遺跡で発見したアイテム、という風に変えられています。わざわざ変えるだけの理由があったのなら良いのですが。

 相変わらず桑原氏の悪い癖というか、キャラが時々作者と会話始めてしまいます。読んでてせっかく作品の中に入り込んでいるのに、これがある度にフッと現実に引き戻されてしまうんですよね。この手法ってのも使い方次第で、うまく使ってる作品なら良いんですが、桑原氏ははっきり言って「下手」です。

 それにしても第2夜、クァウールの就任式で次元移動するところまでで上巻を使いきっちゃってますよ。大丈夫でしょうか。おまけにあとがきを読むとシェーラの描写にまで文章を割きたいようなことを言っています。限られた文章の中でテーマを絞れないままだらだらと書いてしまっているせいで、今までのこの人の絡んだ小説は完成度が低かったですから、下巻の展開は心配です。

 その辺りのことは置いておいて、各シーンの描写はオリジナルな要素も含めて、そこそこよく出来ていると思います。
 しかし、「裏設定」と「ボツ設定」は違うと思うぞ(笑)。

異次元の世界エルハザード 〜またひとつ、君は扉を見つけた〜 【下巻】
 桑原忍 著  ソニー・マガジンズ文庫

 読んでみればやはりアレな出来でしたね。
 ストーリー展開の変え方の大胆さなどにはそれなりに見るべきところもありますし、個々の場面での描写もまぁ良いところはあります。しかし、全体を通してみると、設定がフラフラと揺れていたり、場面場面のつながりで矛盾があったりと、読んでいて気にかかるところが多すぎて、作品としてはヒドイとしか言い様がありません。
 作者にしろ編集者にしろ、読み返してチェックするって事をしないんでしょうか。(校正漏れの誤字脱字とかいうレベルではない)

(あ、ネタバレいっぱいします)

 相変わらず、これだけカラーページをつけながら、すべてアニメから持って来た絵だけ。こんなの付けるくらいなら価格下げてくれた方がうれしいですね。カバーは描き下ろしでしょうが、なんだか設定資料から引き写してきたんじゃないかと思う程、味気のない構図・ポーズですし。
 さらに編集的なことを言えば、目次が無い!!

 第1夜のアルージャの過去。上巻の第1夜(章番号振り直しか)とまるっきり違うんですけど。合ってるのは他の2人の神官の名前くらいか(年齢設定は違ってる)。

 第2夜。ギルダの部下の兵士たちが女性になってます。あまり意味がありそうにもありません。アニメならそれなりに絵になったんでしょうが。誠を疑うギルダも頭悪げ。他国のスパイならもっとうまい嘘をつくって。
 クレタリアを浮遊大陸そのものに移しているのは良いと思います。あんな極寒の地に住むくらいなら、気候の良さそうな浮遊大陸に住みますよね、特に支配階層は。
 クレタリアの状況が既にダルに謀反を起こした後らしいってのは面白いです。でもここではダルを「国王」と表記。後の方ではちゃんと「皇帝」になっているのに。44〜45ページにかけてのダルの行動の描写は、アニメでの設定を思うと面白いのですが、後でのギルダとの過去の描写(世継ぎ作成の風習の設定)とはちぐはぐ。

 第4夜、チャービルは名前ももらえない青年になってしまいました。ルーンと出会って1日も経たない割にはルーンとのラブラブ度が高いのがどうも。かといってこの部分を突っ込んで描くわけでもなく、すぐに別れてそれっきりだし。

 113ページの空中農場の地区番号。ギリシャ文字(?)付けるのはいいけど、ルビくらいふった方が良いと思うぞ>編集

 あとがきにもあるように、シェーラと陣内の描写にはオリジナルがけっこう入ってます。これはこれで試みとしてはアリかなとは思いますが、話の重要な部分を占めるには至ってませんね。中途半端。

 神の眼を止めようとする3神官。暴走止めるのに、封印を施すんじゃなくて、攻撃しかけて(というようにしか見えない)しまってどうする。

 163ページのギルダへのダルのセリフ。アニメなら命の泉が止まってもクレタリアだけの話だけど、星が滅びようって時に自由になれだの脱出しろだの言って、意味無いぞ。
 この二人やクレタリアの結末は救いが無いですねぇ。ドラマチックではありますが、あまりエルハには似合わないかも(って、カーリアもそうだったかも)。

 第9夜での菜々美やエピローグでのシェーラの描写。ノベライズという立場で、こういう後々アニメの続きが作られたときに矛盾しそうな設定を入れてしまうのは、ガンマ文庫時代からの桑原氏の悪い癖です。藤沢夫妻の子供が女の子になったらどうする気でしょう。
 第9夜。戻ってきたのがクァウールの任官式の前日ってのは、タイムパラドックスとか気にしていないんでしょうか。ホントに夢だったって事にしたいとか。
 ストレルバウの反応が呑気過ぎ。倒れてた中には王女たちや陣内&カツオはいないんでしょうか・・・

 よく考えれば、アルージャもギルダの精神を乗っ取れるくらいなら、他に色々出来たような気もしますね。

 エピローグ。結局、クァウールって大した役割果たしていないですね。というか、誠ちゃんたちも含めて、全員ストーリーに流されるので精いっぱいって感じもしますが。陣内も終盤悪事を働くわけでも無し、ディーバとどうなったかも描写無し。
 あ、ウーラがいない・・・

 全体的にはやはり、上巻と下巻のストーリー配分のバランスが悪かったという気がします。上巻はギャグっぽいのも含めて描写が細かい風ですが、下巻はストーリー進めるのに手いっぱいだったというところでしょうか。作風自体が別作品のようです。

 結局、サブタイトルの「…君は扉を…」って意味分かりませんし。

 そうそう、私の知り合いによるとカレーヨーグルトは激マズだそうです。というか、ヨーグルト入りカレーだと思った方が良いとか・・・

異次元の世界エルハザード 〜 after festival special 〜 (1)
 桑原忍/建部伸明 著  ソニー・マガジンズ文庫

 異次元の外伝っていうか後日譚です。普通、外伝っていうと徳間の「炎の外伝」みたいに過去の話か、本編と平行した時間帯の話だったりするんですが、桑原氏の場合はその後の話しか思い付かないんでしょうか。勝手に小説なんかで後日譚を作っても、アニメで正統な続編が作られてしまえばまるっきり無視されるだけだってのが分かってるは ずなのに。
 おまけにあのしょーもない「王立大学」の設定を引きずってるし。

 今回は4章構成+プロローグ&エピローグです。読んでて薄々分かりましたが、1章と3章が建部さんの担当です。いや、ほんっとうに読んでると明らかな出来の違いが分かるんですよ。

プロローグ(とエピローグ)
 おいおい、ウーラ以外に猫がいないって事は無いだろう。ルーン王女だって一匹連れてるぞ。こういう風に話作りの都合で適当な設定を勝手にでっち上げるから読んでで不快感を感じるんですよ。建部さんのあとがきを読んで欲しいぞ>桑原氏

1章
 陣内兄妹のちょっと良い話、ってところですか。捕まった陣内の扱いにかなり無理を感じますが、菜々美中心で読むと、外伝でこういう話も読んでみたかったな、と思わせるだけのけっこう良い話になっています。

2章
 オチが無いぞ。このあとアレーレとパルナスが苦労する話にならないところが中途半端なんですよね。
 問題の椅子ですが、てっきりスケベイスかと思ったらけっこうデカイ物のようです。王宮はともかく、一介の家具屋の風呂場がそんなにデカイものだろうか?

3章
 幻影族を出すってのはかなり冒険だと思ったのですが、誠ちゃんの説明まで読んで納得しました。
 パルナスの素直なキャラクターが生きてますね。私、この手の人種ネタにはけっこう弱いんです。

4章
 神の目の封印を「ジャイロ」と呼んでるところがノベライズ版ですね。TVでは向こうで封印使っちゃってきてますし。
 TVでもそうだったんですが、誠ちゃんが次元移動の秘密解明に近付く過程が描かれていないので、感動が無いんですよ。シリーズの展開に最も大切な装置なのに、ただの御都合主義的発明になってしまっている。
 だいたい、この本は外伝(1)となっているのに、ここまで進めちゃって良いんでしょうか。

あとがき
 あとがきにも出来の違いがはっきりと出ていますね。建部さんのは話作りの心構えみたいなものがうかがえて面白いんですが、桑原氏のは読んでも「今回の話になんか関係あるの?」って感じで・・・

(c)TAKARASHI YUTAKA. 1999