アイデン&ティティ  2
こぼれ話しやって、みたりして?
03/08/27

7月の中旬に『アイデン』の試写を行い、そこに原作者のみうらさんも現れた。
聞き耳を立てずとも、「いやあ、いいよ、いい!」と言ってくれる声が聞こえてきたので、社交辞令ではないと素直に思いたい。
原作者が喜んでくれるのは確かにありがたい。
ありがたいけど、乱暴な言い方をすれば、オレは特殊(原作から「ちょうだい」するような『ピンポン』とか)な場合を除いて、たとえ原作者が立腹しようとも映画が面白くなるなら、そうあるべきだと思っているので、今回も原作にとらわれず、素材が「こう繋げよ」と言ってる声を第一に繋いだ。それを原作者が「いい!」と言ってくれてるのだから、これは映画として作った甲斐があるというものだ。

そもそも原作は、あそこまで続くものとして出発しておらず、変体を繰り返して成長していった漫画だ。
しかしながら、峯田君をはじめ多くのバンドマンに刺激を与え、田口トモロヲの中に灯った映画化実現の灯を5年間、消すことを許さなかったパワーも持っている。
田口さんとみうらさんが飲み屋で交わしたささやかな約束は、『ガメラ』シリーズが3本もできあがってしまう程の長い長いスパンを経て、今ようやく完成した。

田口カントクは、オレの知る限りこの世で一番この作品を愛してる人だ。
にもかかわらず、愛して止まない素材の数々を編集で切り落とすことに同意してくれた。(家で泣いていたかもしれないけど)
海外の話をしても、「まずは日本のお客さん」という即答に頼もしさを感じた。
「オレが、オレが」ではない、「お客さんに観てもらうためには」というスタンスで臨めたことは、『アイデン』にとって幸せであったにちがいない。

止まない雨はない。
『アイデン』もじき、オールラッシュを向かえ、ダビング終了の日を迎えた。
キャストやスタッフも次第に次の作品に取り掛かってくる。
それと比例して、田口さんの笑顔にも哀愁が漂いはじめてきた。
「現実音下げで音楽立たせて、みたりして?」
「もっとベタな編集にして、みたりして?」
と「みたりして」節が炸裂する機会も増えたように思う。
よほど去りがたかったのだろう。
青春映画の傑作『青春でんでけでけでけ』で、早朝の観音寺をトボトボ歩くチッくんに姿がダブる。
かくいうオレも、去りがたい気持ちはあった。

作品にとって幸せなこと。
それは、関わる人間のどれだけが、同じ方向を向けるか?にあると思う。
どんなジャンルであろうと、どんな予算であろうと。
互いに別の方向を向いたまま、あるいは、相成れぬ者同士が中庸で折り合いつけた成れの果ては、それを受け取る者を悲しませることが多い。
また、たとえ受け手がソッポを向くことになろうとも、作り手の意思統一が図れていれば、その作品は幸せなのだと思う。

それを『アイデン』は教えてくれた。
 
やらなきゃならないことをやるだけさ、だからうまくいくんだよ

04/01/15

『アイデン』を観に行った。
場所は吉祥寺のバウスシアター。

なつかしかった。
時間をあけて観ると、やはり反省点が浮き彫りになってくる。
いろいろとネットでの感想を読むと、自分でも気づかなかったところも見えてくるし。
編集作業中、一番悩んだのは、実は、ライブシーンよりも、会話におけるカット構成。
高間さんのキャメラは機動力がよく、マスターショット以外に要となるヨリの画をほぼ、押さえてくれていた。
田口さんが現場に入り、「高間さん、ここの画はまずですね・・・」と言い終わらないうちにすでにレールを敷いていたほどだ。
普段からヨリの画に飢えていたオレは、何度かそのヨリ画を使いたい衝動にかられ、その度にカット構成に頭を悩ませていたんだけど・・・・・

以前、『みんなのいえ』で、何故今回は長回しにこだわるのか、の旨を三谷さんに聞いたことがある。
いわく、「映画を観ていてカットが変わると、まだ自分の気持ちがそっちにいってないのに、こっちを見ろ!と言われてるような気がしてイヤだったんです」とのこと。

なるほど、今ようやく、理解した。頭ではなく心で理解したぜ!(遅いよ!)
もっとキャラクターに優しい編集を心がけなくてはイケマセンネ。
あと、ネットで「たるい」「長い」等の意見があったので、どこが切れるかな?と思って見直してたんだけど、うーん、ううーん、まあ、10000歩譲って編集室から中島が出てきたクダリぐらい・・・かなぁ。でも切れないよ。編集マン失格かな。ごめんなさい、やっぱ、この作品大好きなんですよ。

今回は、ラストに流れる「LIKE A ROLLING STONE」を、また少し違った気持ちで聞いた。
常に『アイデン』を愛し、『アイデン』が『アイデン』たりうるためのことを模索し続けた田口さん。
作品に必要不可欠な、しかし一筋縄ではいかないディランの名曲を獲得するために東奔西走したプロデューサー。
スタッフ、キャスト、それぞれがやらなきゃならないことをやってできた作品なんだなぁ、とゆうことを改めて実感することができた。
エキストラのみなさん。
みなさんはほんとうにいい仕事をしてくれました。
とてもエキストラとは思えないほど、画の中に溶け込んでいました。
あまりに溶け込んでいたので、ふんだんに盛り込んでいたんだけど、最終的なバランスでカットを落とさざるを得なかったことをお許しください。
落としたのはあなたたちだけではありません。
中島が夜の町を徘徊するロケでは、近くに居合わせた佐藤浩一さんが撮影に参加してくれたんだけど、容赦なく切りました。
だって、波止場でポーズみたいな格好して映ってるんですよ?旅ガラスかっつーの!いいシーンなのに。使えるわけないじゃないですか。まったく、もう、お茶目さんですね。
でも、撮影に快く参加してくれた心意気には感謝です。
宣伝部のみなさん。みなさんの熱い宣伝活動を目にする度に、『アイデン』が愛されていることを感じ取れて嬉しいです。あまりの嬉しさにSPEEDWAY FANCLUBに入りました。でも、パンフちょっと高過ぎです!
中島を演じた峯田君。麻生さんと共演したことが羨ましい!じゃなくって、キミは本当に素晴らしいです。実際に劇場で観て再認識しました。
最初見たときは、どこのカリフラワーだ!って思っちゃいましたが、泣き崩れるキミの口からこぼれ落ちるヨダレを見たときにオレは魂を感じました。矢吹丈のようにキラキラ〜☆でしたよ!

『アイデン』からは、「やらなきゃならないことをやる」とゆうことを教わったけど、もうひとつ。もの作りにいかに愛が必要なのか、とゆうことを教えてもらった気がします。
愛、愛こそすべて、愛が世界を動かしている。
ありがとう、『アイデン&ティティ』
そして、ティティにヨロシク!



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