アイデン&ティティ  
だから全ての愛を与えてくれる人がいたら、
心して受け取り逃してはならない
03/04/05

原作:みうらじゅん
脚本:宮藤官九郎
監督:田口トモロヲ

取り逃がしませんよ、こんな布陣。
まあ、無事クランク・インされたらの話だけどな。
くわしくは、これを見れ。
S#3 練習スタジオ「高円寺第一スタジオ」
03/05/11

「峯田君がいいんですよ!」
目をキラキラさせながら、この作品にかける意気込みを田口監督が語って聞かせてくれた。

『アイデン&ティティ』は、バンドブームという時代の流れの中で、その名のとうり自分探しをする若者たちの物語だ。
不器用だけどまっすぐな主人公、中島。
その中島を演じるのが、峯田君というわけだ。
(原作は、角川文庫から発売中)

峯田君は、ゴーイングステディという実在のバンドのヴォーカルだ。
いや、正確には、実在したバンドで、今はもうない。
インディーズでありながら一躍ヒットチャートを駆け上がり、はずみをつけるはずの全国ツアーを目前にして電撃解散してしまったのだ。
かなりの腕白くんだ。

腕白くんながら、彼が演じる中島はとても魅力的だ。
これがほんとに初演技なのか、と我が目を疑うばかりだ。
5年もの長い期間、この作品を暖め続けた田口監督の目は確かだった。
爆発力を秘めた危うさが滲み出ている。
それでいて、先日行われたライブハウスでの撮影では、撮影終了後、エキストラのみなさんにお礼の言葉を述べ、「今日一番頑張ってくれたのはスタッフのみなさんです」と気配り満点の好青年ぶりも発揮する。
もう、峯田君にぞっこんだ!
悪魔とドライブさ、ベイベ〜
03/05/16

映画の撮影方法に、プレイバック(以下PB)というのがある。
音楽などを実際に演奏、またはそれにあわせての芝居があるクダリなんかで使われる方法なんだけど、編集するときに音にピッタリあってないといけないんで、現場でも実際にその音楽を流して撮影されるのだ。
もちろん、そのクダリがいくつかのカットにわかれてる場合は、カットごとに音楽を出さなきゃいけない。

で、『アイデン』は、バンドブームのお話ということで、PB満載の作品なのだ。
特に1発勝負のライブハウスなんかは、PB大会だ。
ふつうは1台のキャメラで撮影する『アイデン』も、ライブハウスともなると3台のキャメラがお出ましする。カット数も多めだ。え!? 一発勝負なんじゃあ・・・・・
とにかく、一つの曲を演奏し終えるまでに、そのシーンのカット数×3倍の素材が上がってくる。アングルや、ねらい所が違う素材が盛りだくさんだ。

で、カットごとにおいしい箇所を抜き出してそれを紡いでいくんだけど、それが同じ時間軸でぶつかったりすると、どう成立させようか思っきし悩んでしまうのだ。
こういうのは、プロモの編集してる人はお手のもんだろうね。
もちろん、プロモではなくスクリーンで見るドラマなんで、それ用にはつなぐけど、MTV世代のオレにとっては、どうしても曲のタッチの強いところでアクションを合わせたい衝動にかられてしまう。
ああでもない、こうでもないと悩んでいると、いつしか歌番組のようなOLをしていたり・・・・・ 結局、全篇通して観ると、ライブんとこだけ浮いてるという顛末。

うああっ、悩む!

ほんでもって、カットが変わると台詞や芝居が変わってたりするのだ。ライブだから、段取りどうりにやられるより、ノリにまかせて勢いでやってもらったほうが全然イイんだけど、音のつながりを考えるとブツ切りにはできない。あちらを立てればこちらが立たず。いやいや、つながりなんかは無視して勢い任せに・・・・・
いかんいかん、こうゆうパズルのような組み立ては、『突入せよ!』でイヤというほど原田さんに教えてもらったはず。あれに比べれば『アイデン』はまだまだ易しいほう・・・・・

うあああっ、それでも悩む!
キミは君のやりたいことをすればいいのよ、
キミにふさわしいと思うことをさ。
03/06/28

ダビングが終わった。
まだ、いくらか残務処理が残ってるけど、ひとまずは一休み。
とても幸せな2ヶ月だった。
これほどの幸せは『式日』以来だ。

『アイデン&ティティ』はストレートな作品だ。
いつもなら、「これは、ちょっと・・・ハズいかな。もすこし抑えよーっと」と制御するところも、するするする〜っとベタに繋ぎたくならせる不思議な魅力をもった作品だった。
これも、主演の峯田君が発するオーラのなせる技なのかもしれない。
『アイデン』の主人公、中島と主演の峯田君は、出会うべくして出会った運命だったのだろう。
ダサくて、メガネで、不器用だけど、まっすぐな青年。
そんな中島=峯田君をもっともっと見ていたかった。

今、オレは34歳だ。
今のオレに時代劇や、文芸作品を繋ぐには荷が重過ぎる。
でも、『アイデン』のような青春映画は、やるべきことがハッキリとわかる。
34歳のオレは、34歳のオレにしか繋げないものがあって、やがて歳をとって時代劇や文芸作品を繋げるようなベテランに成りえたとしても、そのときすでに今の繋ぎはできないわけで、今しか出来得なかった時に『アイデン』と出会えたことは、幸せだった。
別に凝った編集をしているわけではない。
いたってオーソドックスな編集をした。
作品の良さに逆らわない編集をした。
でも、今しか出来ない編集をした。
すべての人に感謝する。

公開は年末の予定。
もし、街で公開中の文字を見かけるようなことがあったなら、だまされたと思って劇場に足を踏み入れてみてほしい。
 
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