メッセンジャー  
 
neverending story
99/07/27

撮影ロールが100を超えた時のロールトップカットです。
これは、撮影ロールの巻頭にいつも撮影されるアドレスのようなものです。
いつもだと、中央に見えるロールナンバーを書いたカチンコだけが映されているんですが、キリのよい数字に気を良くしたのか監督、カメラの前でピースサイン。このアドレスは編集部か現像所くらいしか目にすることはないんですが、これも馬場さんのサービス精神からくるものなんでしょう。

通常の映画製作に使われるロール数は130前後です。
ですから、ロール100という数字から判断するとクランク・アップ間近といった感じなんですが、この日の撮影日は5/17。
そう、まだまだ折り返し地点にも到達してない時です。
思えば、過酷な仕上げ作業は、この時から容易に想像がついたんですよね。

やってしまいました。ロール200です。
6年近くにもなる僕のキャリアの中でも初の試みです。
できればチャレンジしたくなかっ・・・いや、素材が多いことは、それだけ選択肢が広がるということ。嬉しい限りです。ここでも馬場さん、笑顔を絶やしませんね。
「まだまだやれるよー!」といったところでしょうか。
「おーい、笑ってる場合じゃないんですよー」と一生懸命Avidの素材をバラしながらモニターに向かって訴えていたんですが、結局、ロールナンバーは230までいってしまいました。
BACK TO THE FUTURE?
99/07/29

6/6に日活撮影所のセット撮影があるというので、見学に行きました。

この日は多忙なメインキャストが一同に介する貴重な日でもあり、多くのマスコミ関係者もセット内に詰めかけていました。
多忙とはいえ、その日の出番が全て終わるまでは現場を離れるわけにはいきません。
与えられた役を演じるのが役者の務めならば「待つ」ことも立派な務めなのです。
自分の出番が来るまでは各自思い思いの行動を取ります。
仲間内で談笑したり、「待ち」の合間をぬってのインタビューに応えたり、役になりきる為コンセントレーションを高めたり、様々です。
中でも加山さんの取った行動は、さすが若大将といった具合のものでした。
ちょいと外の空気を吸いに撮影所内を散歩していたときのこと、何やら高らかなエンジン音が聞こえてきます。
「何事?」と思い後ろを振り返ると、なんと!
派手なメッセンジャーファッションに身を包んだ加山さんが小型エンジン付きのスケートボードにサッソウとまたがり、所内を駆け回っていました。なんとも涼しげです。年をとっても若大将は若大将でした。
ぱぱっぱ、ぱっぱっぱ、じゃまじゃま
99/08/03

なんでしょう、この物体は?

どうみてもトランシーバーのようですがその他が微妙に変ですね。
そう、これは劇中に使われたデジタル合成の素材なのです。

以前は合成と言えばブルーバックというのがお決まりでしたが、現在では状況に応じて背景の色が選択されてるようです。
今回使われた合成カットは9カットで、そのうちの8カットがP’sダイナ(主要キャラ御用達のバー)で使われています。上の画は、そのP’sダイナのクダリで使われたCG素材のひとつなんですが、他にもメインキャストの芝居部分など、30テイク程の素材が撮影されました。

デジタル合成は、昔の怪獣映画のように、重ね合わせた輪郭部分がチラつくということもなく、とても自然に素材を重ね合わせる事が出来ますが、1コマ1コマデータスキャンする必要がある為、とかく時間がかかります。
その事を考慮してか、『メッセンジャー』では、なんとクランク・イン初日に合成素材が撮影されました。
まだカラミ慣れもしていない役者同士が、グリーン・バックを背にして、合成されるであろう光景を思い浮かべながら芝居をするというのは、イキナリの難敵だったことでしょう。
今回、合成を担当されたのは、IMAGICAの灰原さんを代表とする合成チームです。
P’sダイナで使われる合成は、リアルとは別方向の、コミックテイストたっぷりのものだったので、その完成形がなかなか想像できなかったんですが、灰原さんが持ってきた合成カットはかなりの出来で、馬場さんもいたく喜んでいました。しかも、その背景画にはちゃっかりIMAGICAもフューチャーされているという遊び心のオマケ付きです。うー、にくい、にくい!

さて、『メッセンジャー』で使われた合成カットが9カットというのは先にも述べましたよね?
P’sダイナで使われたのが8カットですから・・・
残り1つの合成カットはいったいどこで使われたのでしょうか?
カチンコ
99/08/11

監督の「よーい、スタート」の掛け声とともにカチン!と打たれるカチンコ。
みなさん、よくご存知の光景ですが、このカチンコに書かれたナンバーが、上がってきた素材確認の道標となり、打たれたカチンコの音が、画と音を同期させる手掛かりとなっているのです。
カチンコは、おおよそ、キャメラの回り始め、つまり芝居の頭に打たれることが多いのですが、動き回る素材を追いかけながら撮るようなカットの時は芝居尻に打たれることもあります。
これは「尻ボールド」と呼ばれるもので、監督の「カット」がかかると同時に助監督さんがキャメラまで走ってきてカチンコを打つ、というシロモノです。

『メッセンジャー』はとかく公道での自転車撮影が多かったので助監督さんはひたすら走りました。
特に自転車に追走しながらの撮影の時なんかは、「カット」がかかったからといって撮影車は急に止まれません。
そんな時!
どこに隠れていたのか、助監督さんがヌバッと現れ、キャメラ前に向かってタッタッタッと走り、カチンコを打ってくれるのです。
「それなら私も!」とばかりに、タクシー内での撮影時、飯島さんと別所さんは、芝居が終わると互いの手でもって「パチン」と叩いてくれました。そう、簡易カチンコです。「役者ボールド」とでも言うんでしょうか。
車内などの人数制限の厳しい撮影では、このように役者にカチンコの代わりをやってもらうこともシバシバあるのです。
なかでもおかしかったのが、京野さんをアップで抑えたレースカットです。
芝居が終わり、「カット」がかかったにもかかわらず、なかなかカチンコが現れません。カチンコが来るまでキャメラは回りつづけるので、その間、京野さんの「ん?どうすればいいの?」といった表情が映りっぱなしです。
「おいっ、ボールドはどうした!」
「早くしろ!」
と怒号の飛び交う中、京野さんが「ひらめいた!」という顔をした瞬間、キャメラ前で両の手をパチン!と叩いてくれました。
ナイス・ジャッジ!
 


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