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誹風末摘花項目関連用語集

本用語集は「末摘花のひとくされ」に出てきた用語を拾って再掲したものです。ただし、未出語もあります(2017年7月6日版)。

 【あ】        
あおにょうぼう   青女房   青白い、顔色の悪い女房。
  お妾の青ひハ永井右馬の頭(一二九25) 下五に原ルビ(ウマのカミ)。殿様が長根
あかがい   赤貝   (多くは性交経験済みの)女性、また、女性器。
あきがわき   秋渇き   秋に食欲が増進するように性欲が高進すること。
  天の川秋のかハきのはじめ也(玉18) 七夕の日の織姫と彦星。旧暦で7月は秋
あざ     妊娠中に性交すると生まれる子の尻にあざができるとの俗説があった。いわゆる蒙古斑。
  尻へたのあさを聞かれて母こまり(六一39)
あさぎ・あさぎうら   浅黄(浅葱)・
浅黄裏 
  粋を解さない野暮な江戸勤番の田舎侍のこと。多くは裏地が浅黄色の羽織を着ていた。
あさつきなます   浅葱膾   あさつきとあさりのむき身などを酢味噌であえたなます。年中行事では3月3日のひな壇に添え、また、ひなをしまう翌4日に食する。
あさまら   朝摩羅   朝立ちした男性器。
  朝まらや小便までの命かな(出典未考)
あてがき       ある相手を思い浮かべての自慰。
あてこともない       途方もない、とんでもない。
あぶらつぼから
でてきたよう
  油壺から
出てきたよう
  髪や肌がつやつやしているさま。主に若者の形容。
  地紙うり油つぼから出てあるき(拾二6) やせてのっぺりした色男
あら・あらばち   新・新鉢   処女。
あらばちをわる   新鉢を割る   破瓜する。 
いけ       いけしゃあしゃあ、いけずうずうしい、いけすかないなど、ののしる語等を強調する接頭語。
いけ     江戸川柳では専ら上野不忍池のこと。
いけのちゃや   池の茶屋   上野不忍池の出合茶屋のこと。→であいちゃや
いせまら   伊勢摩羅   伊勢国出身者は男性器が最上という。理由不明。「まらはいせまらとて最上の名をえたれども」(『古今著門集』巻第16 興言利口)
いたねぶ
・いたねぶり
  板ねぶ
・板ねぶり
  湯屋で座ったときに床板をねぶる(なめる)ようなところから長い男性器。
いなのへそ   いなの臍   膣内、子壺口のうずらのゆで卵様の部分のこと。子宮頸管のあたり。いなはぼらの20〜30cmぐらいの若いときの呼称。いなの肛門から指を入れると、奥に丸く少しかたい胃袋があり、これから連想したらしい。
  何やらの手さわりに似たいなの臍(八七39)
  赤貝のくつと奥にハいなの臍(一三四6) くつと:ぐっと
いも       1)里芋。2)疱瘡によるあばた、いもづら。3)芋田楽。 
いもでんがく   芋田楽   親芋と子芋を1本の串で刺すことから母娘の両方と姦通すること。親子丼。
うしのつの   牛の角   (材質から)張形のこと。
  器に随て牛の角を買(六三3) 随て:したがって
うしのつのもじ   牛の角文字   徒然草62段、「延政門院幼くおはしましける時院へ參る人に御言づてとて申させ給ひける御歌。
  ふたつ文字牛の角文字直ぐな文字ゆがみもじとぞ君はおぼゆる
恋しく思ひ參らせ給ふとなり」による。
 「ふたつ」は「こ」、「牛の角」は「い」、「直ぐな」は「し」、「ゆがみ」は「く」の字。父の後嵯峨天皇に対して詠む。 歴史仮名遣いでは「こひしく」が正しい。
  二つ文字牛の角文字娘知り(四四19) 恋
  あれさモウ牛の角文字ゆがみ文字(八三47)
うす      女の尻。これを臼に見立てたところからの称。また、臼のような尻の年増。
  臼曰我もむかしハ姫小枩(一六六2) 松の若木のようにきゃしゃだったと
  聟ゑらみする内柳臼になり(拾二23) 柳腰の美人がいまやでっぷり
うば   乳母   川柳では、好色、(あやす子がいるので)交合は短時間、陰毛多、陰部(出産して間もないので)広いなどとする。
  五人組丸のミにして乳母よがり(神田艸初24) フィストファック
うま   午・馬   女の生理。
  はつ牛に乗と娘に風味か出(最破礼40) 牛:午の誤り。初潮を迎えると
うめわか   梅若   吉田少将惟房の子の梅若丸。京でさらわれ、東国に下る途中の天延4(貞元元:976年)3月15日、武蔵野国隅田川あたりで病死したとされる。これを題材に謡曲「隅田川」などがつくられた。梅若忌はこの忌日。梅若塚のある隅田川畔の木母寺で法要が行われる(現在は4月15日)。
うらもん   裏門   人家の裏口(勝手口)、また、肛門のこと。
  裏門の菊を和尚大事かり(一三一6) 大事かり:大事がり
  おやこのさとに裏門はありんせん(出典未考) さと:吉原。おいらんの弁
えちぜん   越前   包茎の異称。
  和尚のへのこ越前で殊勝なり(神田艸初14)
えんこう   猿候   生理の隠語。猿の尻が赤いことからの称か。
  ゑんこうへ手をだしていしゆ叱られる(四五35) 猿候へ手を出し亭主叱られる
おえる   生える   男性器が勃起すること。
おえん       猿候の擬人化。おえんとおこうとも。→えんこう
  なぜでもと鳥居の外におゑん待(二三2) 生理時の神社参詣は禁忌だった
  おゑんとおこう鳥居ぎわに立てる(二二8) 同
おおいちざ   大一座   多人数の集団。
  下女が部屋大一座とハむこい事(二六28) 店の男どもが輪姦
おきゃく   お客   生理の女言葉。
  お客とは女の枕言葉なり(二九16)
  はじめてのお客娘はまご/\し(七三7)
おくさま   奥様   川柳では大名や家禄の高い旗本・御家人の正室を指すことが多い。
おくにどし   御国年   参勤交代で大名が国へ戻っている年のこと。
  御國年御局そつと貸申(神田艸初12) 張形を奥様に
おくま   お熊   (人名)→しろこやおくま
おご   海髪   刺し身にそえて、つまなどに用いる海草のこと。湯通しすると緑色になるが、その前は濃いえび茶色、転じて女の陰毛。
おさん   お三   下女の通称。
  おさん泣せに馬こやす肥後ずいき(一二二23) 「一筆啓上火の用心おせん泣かすな馬肥やせ」
おしな       信濃者(男)の擬人化。→しなのもの
おたけ   お竹   大日如来の化身と俗信された下女。武江年表「寛永の頃、大伝馬町の豪家、佐久間某が家の婢女たけ……しかるに武州比企郡に住める何がし行者、湯殿山に参詣し、生身の大日如来を拝せん事を願ひしに、わが形容を看んとならば江戸に趣て、佐久間某が婢女たけを拝すべしといふ。霊夢の告げを蒙り、彼の家に至り、竹女を拝す。其後竹女は念仏三昧にして大往生を遂げたりといふ。其の後佐久間の親ぞく馬込某より大日如来の像を造らしめて、湯殿山黄金堂に納む。これを世にお竹大日如来と云ふ」。
  おたけどのとうだとぼんぶ尻をぶち(一五26) とうだ:どうだ。大日如来と知らぬがゆえに凡夫
おだわらちょうちん   小田原提灯   1)胴が蛇腹でたためる携帯用提灯。2)飲酒のしすぎや老人などの勃起しない男性器。単に提灯とも。
おつぼね   御局   武家屋敷で若い奥女中を監視する年増女。
おつりき       おつ(乙)なこと。「りき」は接尾語。
おどりこ   踊り子   女芸者。芸妓。表芸代だけなら1分、ころび代は別に1分で計2分。橘町から薬研堀北河岸辺までに多く住んでいた。客先へ母親が付き添うことが多い。
おにせんびき   鬼千匹   小姑のこと。諺「小姑一人は鬼千匹にむかう(=匹敵する)」から。
  きつい聟鬼千疋もわる氣なり(四〇29) 小姑にも手を出す
おののこまち   小野小町   平安時代初期の歌人。六歌仙の一人。美人として知られるが、江戸川柳では男を相手にしなかったことから不具者として扱われることが多い。いわゆる小町の穴なしの類い。待針(小町針)の称はこれから起こったとか。
  穴なしを五人で嬲六歌仙(九六36) 嬲:(原ルビ)ナブル
おはり   お針   吉原で裁縫をする女の呼称。→おものし しんみょう
おまつり   お祭り   交合のこと。
  お祭りが済んでしずまる山の神(出典未考)
おものし   御物師   武家方で裁縫をする女の呼称。→おはり しんみょう
  御物師をひよつとお針と妾いひ(筥二5) 殿様の妾は元吉原女郎
おやす   生やす   男性器を勃起させる、性的に興奮する。多くは男の場合だが、女にも使う。
おりん       悋気女の擬人化。
         
 【か】        
かい   貝・開   二枚貝の閉じた形が似ていることから転じて女性器だが、巻き貝も同じ意に使われることがある。また、女一般を指す場合もある。具体的な貝名としては、蜆(児女)、蛤(娘)、赤貝、栄螺(さざえ)、ほら貝など。
  赤貝にだん/\化る小蛤 (七九17)
かいしょ   会所   (吉原)四郎兵衛会所の略。→しろべえかいしょ
かげま   陰間   男色の若い男娼で僧侶が主な相手。歳がいくと女客の相手もした。
かこい ・かこわれ   囲い・囲われ   特に僧侶の寺外での隠し妾。 →大黒(だいこく)
かごのとり   籠の鳥   (廓から自由に出られないことから)吉原の女郎のこと。
かたはずし   片外し   御殿女中や武家の妻の髪型の一つ。下げ髪を束ね、水平にしたこうがいに絡めてて髪をとめ、最後に先端を垂らして結う。
  張形て夢中枕も片はつし(一二三55) 長局
かつぐ       女をかどわかす、誘拐する。男女が合意して駆け落ちする場合にも使う。
かつする   渇する   のどが渇くこと、飢えること、ひもじくなること。
  かつしても當全ハ後家承知せす(六六22) 當全:当然
かどうのしょう   火動の症   腎虚が高じて勃起がおさまらなくなること。→じんきょ
かとくくじ   家督公事   家督をめぐる訴訟争い。
  かとく公事後家くどかれた事もいゝ(一六10)
かどぐち   門口   陰門のことを指す場合がある。
  門口に医者と親子が待てゐる(甲子夜話巻59[11]) 医者:薬指、親子:親指と小指、人差指と中指は仕事中
かみさま       一般的には店のおかみさん。奉公人による敬称。内儀。
かり     亀頭。「かり首」ともいう。
かわかぶり   皮かぶり   包茎。なまった「皮かむり」も同。
かわらけ   土器   1)素焼きの平たい皿で酒を飲む器。2)転じて陰毛のない女。ぱいぱん。
かんぞう   甘草    甘草まらの略。男性器の極上という。
がんづく   眼づく   気づく、察する。
きがいく
・きをやる
  気がいく
・気を遣る
  (性行為で)絶頂に達する、射精する。男女ともに使う。
きく・きくざ   菊・菊座   菊の花びらの形から肛門のこと。
  本尊ハ蓮華坐和尚菊座也(六七13)
きゃくぶん   客分   仮祝言が済んでから嫁ぎ先の家に住まわせ、その家の家風、作法などを習わせること、また、その娘。
  客ふんをやめねばならぬはらに成(一五37) 客分の娘が妊娠
  客ぶんといふ内むす子でかくする(末初30) 同
きょくどり   曲取り   本手(正常位)以外のすべての性行為体位の総称。
ぎょちょうどめ   魚鳥留め   喪中や忌中のときに、肉、魚などの生ぐさものを食べないこと、また、家に入れないこと。
  裏門の破損医者から魚鳥留(九二24)
くじ   公事   訴訟。
けいまの
つりふんどし
  桂馬の
釣り褌
  (将棋で王手飛車取りのように)両得を狙うこと。「桂馬のふんどし」ともいう。
けどる   気取る   察すること、気づくこと。
  けとる事女房神のことく也(六四7)
こうか   後架   トイレ。
こつぼ   子壺   子宮。
ごずめず   牛頭馬頭   頭が牛や馬でからだが人間の地獄の牢屋番。亡者を火の車に乗せるために迎えにくるという。
  血の池て牛頭馬頭休長局(六六12) 生理になって張形を休む
ごぼう   牛蒡   男性器の細いもの。
ごりょう   五両   間男の内済料。7両2分だったのが後に5両になったという。
ころぶ   転ぶ   女芸者(踊り子)が体を売ること。後に「ころび芸者」という。
  專らにはやる藝者ハ車へん(九一13) 轉:転
ごんすけ   権助   飯炊き男などの下男の通称。
こんみり       こってり、しんみりとたさま。味や情などが深く、濃厚であるさま。
  こんみりとしたこともなく下女はらみ(八27)
         
 【さ】        
ざいご   在五   在原氏の五男の意で在五中将(ざいごのちゅうじょう)の略。色男で知られる在原業平(ありわらのなりひら)の異称。
さがみ
・さがみげじょ
  相模
・相模下女
  相模国(現神奈川県)出身の下女。川柳で相模下女は好色女。
  上をさがみとしなのそしり合い(末初21)
  晝信濃夜るハ相模か大くらひ(三三12) 晝:昼
さくぞう   作蔵   男性器の擬人化名。
さくやひめ   咲屋姫   富士山の異称。山頂の浅間神社(奥社)に木花咲屋姫が祭られていることによる。
  かハらけのおかしらさまハさくや姫(五七33) 山頂に草木がない筆頭は
さね       「女性の尿道出口の前方にある小突起」(広辞苑)。陰核、クリット。
  さね長の下女ばかを買おもへらく(五八28) ばか:ばか貝
さんじゅうふりそで   三十振袖   振袖は10代の娘が着るものなのに、30歳になっても着るという主に踊り子の称。
じおとこ   地男   素人の男。
  高まんな後家地男はきらいなり(二一18)
じおんな   地女   玄人の女郎に対して素人女。地者。
  天人もはたかにされて地もの也(初3) 天の羽衣伝説
  地女に毛むし二ツで化られず(二16) 吉原の女郎は眉をそらない
しか   四火   灸穴の位置の一つで、背中に四角の紙を貼り、四隅に灸をすえる法。陰虚、労咳、労熱、骨蒸の四つの病気に効果があるとされる。
じがみうり   地紙売り   扇の地紙を売り歩いた男。陰間上がりやぼんぼん息子のなれの果てのやさ男が多く、伊達を気取って冬でも薄着だった。寛政のころにすたれる。
しじ   指似   小児男性器の異称。
ししきがんこう   紫色雁高   男性器の極上のものという。
しじゅうしまだ   四十島田   島田は未婚の女が結う島田髷。それを40歳になっても結うという主に夜鷹に対する形容。
しなのもの   信濃者   信州出身の下男。農閑期の秋から春にかけて江戸へ出稼ぎにくることが多かった。川柳では大飯食らいとする。
じもの   地者   →じおんな
じゃがかを
のんだよう
  蛇が蚊を
呑んだよう
  あまりにも少く腹ごたえしないさま。蛇は呑む(女)、蚊は刺す(男)。
  じやが蚊をのんでる所へゆげが出る(末三4) 称徳天皇と弓削道鏡
じゅうさにち   十三日   1)王子権現の祭日。7月13日。参詣者が槍をおさめたので槍祭りともいう。2)江戸で煤払い(大掃除)の日。12月13日。店では祝儀に主人以下全員を胴上げし、鯨の味噌汁を食す習慣があった。
  かはらけだアハヽ/\と十三日(末四24) 煤払いの胴上げのどさくさにまぎれて
じゅうににち   十二日   十三日の前日。→じゅうさにち
  こわがつて十二日の晩下女させ(筥初8)
しょうとうじ   正燈寺   台東区竜泉一丁目に現存する臨済宗の寺。紅葉の名所として知られ、吉原のすぐ裏手にあることから、 紅葉狩りにかこつけて吉原に繰り込む客も多かった。
しょくすぎる   職過ぎる   分不相応なこと。
  夜たかでもしよく過やすとむこいハれ(末二11) 入り婿が嫁から
しりめ   尻目   目だけ動かして横を見ること、また、流し目。「尻目を遣う」と使う。
しりめにかける   尻目にかける   さげすむ、見下す。
しろくみせ   四六見世   安永ごろから天保ごろまで吉原の河岸や岡場所にあった女郎屋。昼400文、夜600文の料金だったからの称。
  四六から鞍がえ二十四文也(六五29) 24文は夜鷹の代金
しろこやおくま   白子屋お熊   江戸新材木町白子屋庄三郎の娘。養子・又四郎を迎えるも手代・忠八と密通を重ね、共謀して又四郎を殺害したため、享保12年11月7日、忠八とも市中引き回しの上、獄門。お熊はこのとき、黄八丈を着ていたので、当時、黄八丈は不義の縞だとして婦女子から大層嫌われたという(関係者名は『武江年表』による)。
しろべえかいしょ   四郎兵衛
会所
  吉原の大門を入ってすぐ右側にあった見張りのための会所のこと。最初に三浦屋が設置し、 若い衆の四郎兵衛が見張りの任に当たったので会所名に使われたが、以後、 各見世の若い衆が持ち回りで詰め、これも四郎兵衛と通称で呼ばれた。特に女郎の逃亡に警戒した。
じんきょ   腎虚   性行為のやりすぎで性欲や精力が減退すること。腎虚火動の症ともいう。→かどうのしょう
じんすい   腎水   精液。
じんべえ   甚兵衛   腎虚の擬人化。
  甚兵衛ハ懐手にて蠅を追ひ(傍三29) 手を出せないほど衰弱
しんまく   慎莫   後始末。
しんみょう   針妙   江戸の町方で裁縫をする女の呼称。→おはり おものし
すえばん   末番   川柳の順位づけに、高番、中番、末番があり、末番は糞尿句や恋句(破礼句)。
すけどの   佐殿   右兵衛佐(うひょうえのすけ)だった源頼朝のこと。巷説では頼朝はすこぶる頭が大きかったという。
  佐殿はあたま道鏡へのこ也(神田艸初12)
すずめがた   雀形   屏風のこと。裏に雀の模様が描かれることが多かったことからの称。
  夜軍の陳ハ衝建雀かた(七五36) 陳:陣、衝建:ついたて。宿場で同部屋の男二人が飯盛を揚げるときは間に屏風を立てた
せんげ   遷化   高僧が入滅(死去)すること。
せんずり     男の自慰。挊と表記することもある。
せんだつ   先達   その道の先生・先輩、先陣を切った人。
そうこうか   総後架   長屋などの共同トイレ。
ぞうのはな   象の鼻   下反り先細の男性器の形容。
そりはし   反り橋   中央が高く反った橋。亀戸天神の太鼓橋が有名。
  そり橋へ來ると禿は對に成(二4) 勾配が急なので互いをつかんで支え合う
         
 【た】    
だいがく   大学   「論語」「孟子」「中庸」と並ぶ四経の一つ。また、それを学ぶ人。主にぼんぼん息子。
だいこく   大黒   僧侶の寺内での隠し妾。 →囲い(かこい)
たいこばし   太鼓橋   半円に反った橋。反り橋の一つ。
たけ     (人名)→おたけ
たけり       強精剤として使用した鯨やオットセイなどの陰茎のこと。
たこ     1)たこ坊主の略で僧侶の蔑称。2)吸い込むような、また、吸盤が吸いつくような女性器の極上のものという。蛸壺、蛸つび。
  桐壺もあるに蛸壺御寵愛(二七2) 桐壺:内裏北東の淑景舎:正室(北の政所)。妾の蛸壺を
たこつぼ   蛸壺   →たこ
ちゃうす   茶臼   性行為の体位で女性上位。これで孕むと逆さ子になるとの俗説があった。
  茶臼禁物逆さ子を産んだ後(一四一20)
ちゅうじょう   中条   堕胎を専らにする医者。初期には「なかじょう」と呼んだ。
ちょうちん   提灯   →おだわらちょうちん
ちょうねん   重年・長年   奉公人が奉公先をあらためる出替りをせず、次の年も続けて同じところで働くこと。
つき     1)吉原の紋日で月に関係する8月の十五夜と9月の十三夜。2)月経のこと。
  母あんどむす子も娵も月を見ず(三二26) 吉原に入れ上げていた息子が嫁を迎えて
  信女の月をよどませる和尚也(筥二15甲) 後家の
つくしつび   筑紫つび   「筑紫のつび」とも。筑紫国出身者は女性器が最上という。理由不明。「つびはつくしのつびとて第一のものといふなり」(『古今著聞集』巻第16 興言利口)
つけぶみ   付け文   恋文を送ること、また、恋文そのもの。
つのもじ   角文字   牛の角に同じ。張形。→うしのつの
  角文字て一人行らん長局(五四39)
つび     女性器の異称。→かい
つめる       つねる。多くの場合、男が女にし、好意がある。
  大日如来の尻を水くミつめり(傍初11) 大日如来の化身とされる下女・お竹を水汲みの下男が
であい   出合   男女が密会すること。
であいちゃや   出合茶屋   連れ込み茶屋。江戸市中に点在していたが、特に上野不忍池の弁天島で、池を臨むように湖面に張り出し、島のへりを囲むように林立していたのが有名。ここは平屋、総後架。
でがわり   出替り   下男・下女が奉公先をかわること。3月5日と9月5日。奉公は原則1年単位。
てぬけ   手抜け   不注意による失策。手抜かり。
  姉むことよもやハ母の手ぬけ也(四13) 姉婿が義妹ともねんごろに
てをくわれる   手を食われる   だまされる、あざむかれる、飼い犬に手を噛(か)まれることで、その手は食わない(だまされない)の逆。
でんがく   田楽   芋田楽の略。→いもでんがく
てんこぞり   てんこ反り   上反りの男性器。 
どしゃ   土砂   土砂加持をした砂。→どしゃかじ
どしゃかじ   土砂加持   加持をした土砂。これを遺体や墓にかけると死後硬直がとけたり、死者が極楽浄土にいけるとされた。
どしゃをかける   土砂をかける   土砂加持した砂をかけること。
  獨ものよく/\こまり土砂を振(六九11) 獨もの:ひとりもの。勃起がおさまらない
とだて   戸立て   「子宮膣腔が閉鎖した状態」(広辞苑)。鎖陰。
  蛸も戸たても仕て見たと在五いゝ(末四21) 在五:在五中将
どて   土手   1)吉原への道である日本堤、土手八丁のこと。初代川柳評の句及び以降の句では日本堤のことだが、同時代の他評句ではこれ以外の場合もあるという。2)恥丘。
どら     怠惰、放蕩、道楽、極道、また、その者。どら息子、どら和尚など。
  お妾に出るは一どら打ツて後(六13) どら娘が
  音のせぬとらを此頃和尚うち(二四27甲) 銅鑼を掛ける
         
 【な】        
ながつぼね   長局   江戸城の大奥や武家屋敷の奥女中のこと。似た部屋割りの局部屋に一人一人が割り当てられていた。
なす・なすび   茄子   子宮脱のことという。
なみだあめ   涙雨   1)わずかに降る雨。2)旧暦3月15日の梅若忌前後に降る雨。天も梅若丸の死を悲しんでいるとして吉事とする。
  出かわりに日和のよいも恥の内(九17) 悲しむ人がいない
なめら       なめら蛇(一説にアオダイショウとも)の略。男性器の異称。
ぬきみ   抜き身   1)さやから抜いた刀。2)無ふんどし状態の男性器。
  よしともハぬき身をさげてうち死し(二33) 源義朝。平治の乱の敗戦後、入浴中を襲われた
にじっけん   二十軒   浅草寺境内、現・仲見世にあった20軒前後の茶店の総称、二十軒茶屋の略。時代により軒数は増減。誹風末摘花二編の編者、似實軒(ヨイ茶)の名は二十軒茶屋から。
にぶいっぽん   二分一本   男性器のこと。二分は一分金二つ。当時、一分金を小粒金、また、こつぶと呼んだ。
にょぼんにくじき   女犯肉食   僧侶が破戒して、女と交わり、また、肉食をすること。
  によぼんにくしき僧正のかいハなし(二〇11)
にょらい   如来   大日如来の略。川柳では主にお竹大日如来のこと。
ねぶる       (舌でするように)なめる、(手で)触れる。
ねめる   睨める   睨(にら)む。
  薄/\ハ娵の夜泣も知ッてねめ(一一四4) 姑が
のしこしやま   のしこし山   「のしこし山」の5文字を使って男性器を描く落書き遊び。「へへののもへじ」や「へまむし入道」の6文字で願人坊主の横顔を描くのと同趣向のもの。
  長局のしこし斗り山ハなし(五六33) 斗り:ばかり。張形
のっきった   乗っ切った   難局などを乗り切ること。乗り切った。転じて意を決して、思い切って。
         
 【は】        
はしりびと   走り人    出奔・逃亡・駆け落ちなどをした人。
  はしり大黒を和尚ハくやしがり(二四23) 給金をもらった大黒逐電
はす     川柳では多くの場合、蓮が名所だった上野不忍池の蓮のこと。
はすのちゃや   蓮の茶屋   上野不忍池の弁天島にあった出合茶屋のこと。池の周囲には一般の茶屋もあった。
はすは   蓮葉   尻軽女。はすっぱな女。
はすめし   蓮飯   もち米を蓮の葉で包んでふかした飯。上野不忍池の茶屋で出したのが名物。
  蓮飯ハ五ッ月立て腹かはり(五七16) 腹かはり:腹が張り。出合茶屋の密会で妊娠
はだかよめ   裸嫁   婚礼やその後の道具費用の一切を婿側が賄い、裸一貫で嫁ぐ美人な嫁のこと。
  二分一本持参ではいるはだか聟(出典未考)
はつはつ       ぎりぎり、かつかつ。ようやっと。
  来月を入てはつ/\ぐらい也(三16) 嫁入り日から数えても
はままつ   浜松   1)東海道の宿場の遠州浜松。2)雲助唄「遠州浜松広いよで狭い横に車が二挺立たぬ」から、広いようでいて、その実、狭いこと。
  濱松の生れて乳母ハせうびされ(七五35) せうび:賞美。実は窮屈
    月経の異称。「火がとまる」は妊娠。
  奥さまの十九めかけのひがとまり(五29) 正室厄年
びいどろ     オランダ語でガラスのこと。転じて美人の異称。
  硝子のやうだから母あぶなかり(六二12) 硝子の読みは「びいどろ」
ひけもの   引け物   傷や欠点がある粗悪品。
ひたもの       ひたすら。一途に。
ひぢりめん   緋縮緬   女郎や踊り子など水商売関係の女が着用した緋色の二布(腰巻き)。転じて玄人女。素人は着用しなかった。
  はで娘風にもへ出るひぢりめん(七二13)
  歸らぬも道理緋縮緬をほどく(一四37)
ひのえうま   丙午   丙は火の兄(=え)、午も火(午や火は月経の隠語)なので、この年は火事が多く、また、この年生まれの女は気性が荒く、俗説では男を食い殺すといわれ、縁談に難儀した。
  ひのへでも無のにころす美しさ(二二14) 腎虚
  丙午たね馬に來る聟かなし(最破礼16)
びり       (性的な)男女関係の事件。
びりいけん   びり意見   男女関係のもめごとへの意見。
びりでいり   びり出入り   男女関係のもめごと。
  びり出入さつぱり洗ふけつだん所(七九6) けつだん所:決断所
    麩まらの略。器に応じて大きさを変えられることから男性器の極上というが、下品(げぼん)説もあり。
ぶっかけ       ぶっかけそば、かけそば。
ふどう   不動   不動明王、不動尊のこと。江戸では、目黒不動、目白不動、駒込赤目不動、成田不動、相州大山(現神奈川・伊勢原)の前不動が有名。相州大山の前不動は、そこから上が女人禁制だった。
  鉢巻と櫛巻の中不動尊(六16) 櫛巻:女の髪型の一種。大山の前不動
  きんたまとさねの間にふどう尊(末初6) 同
ふとん   布団   敷き布団のこと。→よぎ
ぶんぶくちゃがま   分福茶釜   命を助けられたたぬきが茶釜に化けて恩返しする伝説。火にかけられて最後に尻尾を出して逃げ出す。現館林市の茂林寺の話が有名。
  狸の遺言茶釜にハ化るなよ(六七17)
へこへこ       笹などが風でしなうさま、転じて腰を前後左右に動かす様子。色気めく、また、直接的に交合の気があること。
  おばゝへこ/\がおすきで聟困り(一〇三4) 芋田楽
へのこ       男性器のこと。まら。
べんけい   弁慶   平安時代末、源義経の家来の武蔵坊弁慶。生涯に一度だけ女と契ったという俗説がある。
  弁慶と小町は馬鹿だなァ嚊ァ(逸出典) 小町:小野小町 嚊ァ:かかあ
べんべん       のんびりしているさま。のんべんだらりと。
  べん/\とおやかして茶をのんで居る(末二32) やがて茶屋娘が気を引くのではないかと
ぺんぺん       (音から)三味線のこと。
  ころんたかしてへん/\の音かせす(六六14) 踊り子が転んで
ほうろく   焙烙   米や豆などを炒るのに用いるやや大型の平たい土鍋。船中では女の便器としても使われた。
ほていばら   布袋腹   布袋のようにでっぷりとした腹のこと。
  たいこくを和尚とを/\布袋にし(最破礼58) とを/\:とうとう。大黒を孕ませる
ほばしら   帆柱   勃起した男性器。
  帆柱がたつ度夜着に波が打(神田艸初13)
ぼぼ     女性器の異称。
ぼら   鯔・鰡   はく、おぼこ・すばしり、いな、ぼら、さらに成長して、とどなどと名前の変わる出世魚。からすみはこの卵の塩漬け。おぼこ、いななどは女の縁語。
         
 【ま】        
まつがおか   松ヶ岡   縁切寺として知られた相州鎌倉・松ヶ岡の東慶寺。 
まら   摩羅・魔羅   男性器。へのこ。国字で人偏に八「イ八」と表記することもある。
みず     腎水のこと。→じんすい
むす       「むすこ」または「むすめ」の省略形でどちらにも使われる。
  とく心のむすうふふんと笑ふ也(八12) 息子か
むみょうえん   無名円   打ち身や傷の薬。
めしもり   飯盛   宿場の旅籠屋などで春をひさぐ女のこと。代の相場は200文。飯盛を置いていない宿屋もあった。
もちにつく   餅につく   鳥もちにつくの略で、くっついた鳥もちをはがすのは厄介なことから、もてあますこと、始末に困ること。
もちをつく   餅を搗く   餅は臼(女)と杵(男)で搗くことから性交すること。
         
 【や】        
やすだいじ   安大事   たやすそうに見えて、実は相当難しいこと、一大事。
やっぺし       やたらに。
よいくさ   夜軍   野戦のことであるが、川柳では男女の夜の戦い=交合の場合がほとんど。主に狂句時代の語
よぎ   夜着   綿が入ったどてらやかいまき様の寝具。寝るときにこれをかけた。元禄のころ、上方で始まった掛け布団が江戸で一般的になるのはたしか幕末。
よや       感動詞。「ねえ」「ちょっと」など相手に強く呼びかける語。
  もふなきハせぬからよやと女房いひ(末初29) もう大声は出さないから、ねえ
         
 【ら】        
らせつ   羅切    摩羅を切ることの意で去勢。
         
 【わ】        
わる   割る   →あらばちをわる
われる   割れる   1)初潮を迎える。2)破瓜する。