ライスシャワー

’95 6月に「服喪2日」という題で寄稿したものです 

 春の天皇賞でライスシャワーが勝った。

G2クラスの馬が居並ぶ中、ライスシャワーに無印の予想紙もあった。

「所詮、格が違うんだよ」

前日私は友人の電話で豪語し、単勝を厚めに買い、ライスシャワーから3頭に流した。

 ライスが4コーナーを先頭で回ったとき、テレビに向かって叫び続けた。

「来いっ!来いよぉーっ!」

二番手に付けていた馬がなんだったかなんてわからない。

とにかく、誰も抜かしてくれるなっ!

結果は鼻差だった。

多分一人で見ていたら泣いていたと思う。

オグリキャップの有馬記念、大泣きだったもの。

 単勝も馬連もガッチリ儲かった。

これで何回歌舞伎に行けるだろう。

2年前にライスシャワーに買ってもらったカバンがもうボロボロだから、

新しいの買ってもらおうかな。

ウィナーズサークルのライスは、汗で馬体が黒光りしていた。

そうだ、大きいぬいぐるみも買おう!

「第111回 天皇賞」ってタスキをしょっているやつ。

 

 初めて観たのは中山競馬場のこれといって盛り上がらないレースだった。

それなに、ダービー2着に突っ込んでくるんだもん、買えば良かったわよっ!

ミホノブルボンとで万馬券だなんて・・・。

 その後のライスは本当に私をスカッとさせてくれた。

ミホノブルボンの三冠を阻んで菊花賞馬になってくれたし、

武豊&メジロマックイーンの天皇賞連勝記録を阻止してくれた。

2回とも単勝で大きくもうけさせてもらった。

「ライスシャワーは私のために走ってくれているような馬だからさ〜♪」

 

 大好きなライスシャワーがここ1年以上勝っていなかった。

でも私は知っているんだよ、ライスは長距離レースを待っている。

2000や2500は足慣らしなんだ。

だから春の天皇賞3200m、勝つに決まっていた。

限界だの、気力がないだの言っていたやつら、思い知ったか!

 人気投票1位で出走した宝塚記念。

2200mはライスには短い。私は単勝だけを買った。

天皇賞のご祝儀、ご祝儀。

 勝たなくても良かった。

無事に走ってくれれば良かった。

京都で活躍したライスシャワーは、京都でその生涯を終えた。

 私は2日間黒いリボンで髪を縛って、肉食を断ったんだよライスシャワー。

 私はもう宝塚記念は買わない。

ライスシャワーの単勝を最後にします。

 

あのときの誓いを守って、今年も宝塚は買いませんでした