「・・・『バイオ(生体)コンピュータを利用する上でのメリットは、状況に直面する際に生物的な反応を示すことである』・・・んで、生物的な反応ってなんのことか分からないってことね。なんでこの程度のことが分かんないのよ!」

レイは強い口調で話してくるアスカ少し脅えた表情を浮かべた。
今も自分からレイに教えてやると声をかけたにも関わらず、このような口調になってしまう。
この子は何も悪くないのに。
悪いのは自分なのに・・・














アスカ
かめであ












「・・・生物的反応ってのはね、ちょっとそこに立って」

立ちあがったレイをいきなりドンと押す。

「!」

後ろに自分のバッグがあったために足を出せず、床に手をつく。

「どう?アンタまず最初に何をした?」

「こ、転びそうになって手をついた」

立ちあがって少し考えてからアスカの質問に答える。

「その前は?」

「・・・?」

「いい?今の一連の行動をまとめると、アンタはまず急に押されたから慌てたのよ!そして後ろに荷物があって足を出せないから手をつこうって判断したのよ!」

周囲で聞いている生徒たちまでもがしきりにアスカの抽象的だが、分かりやすい講義をメモしている。
何を勉強してたんだか・・・メモしている連中に少し悪態をつく。

「つまり足を出して踏み止まるくらいなら機械とセンサーだけでもできるわ。でも後ろに踏んでもいいか悪いかは判断できないでしょ。だからバイオコンピュータってのが必要になるわけよ!・・・で、バイオコンピュータには二種類あるけどそれは何か分かる?」

「・・・せ、生体と疑似生体」

レイにとってアスカは恐怖の対象となることが多かった。
高校受験の時も大学受験の時もそうだった。
いつもアスカの方から教えるといってきては、教えたことが理解できないと長い栗色の髪を振り乱して怒りを露にする姿は何よりも恐ろしかった。
今はその髪こそ首の辺りまでしかないものの、その迫力は健在だった。
しかしレイやシンジがこうして大学に進学できたのもアスカの力に因るものが大きいのも事実だ。

「そ。まあ疑似生体のものの性能なんてたかが知れるわ。だから選別されたラットとかの実験動物から脳髄と神経を取り出すわけ」

「使われた動物は死んでしまうの?」

「CPUの一部と化すから死んだも同然だわ・・・必要な犠牲よ。これからは類人猿やイルカ、ナガスクジラを使用する場合も増えてくるからバイオコンピュータの可能性は無限に・・・」

「・・・かわいそう・・・」

最新鋭のバイオ技術もレイにとってはこの一言に尽きてしまう。

「そ、そういうこっちゃないでしょ!・・・あ!ちょっとシンジ!なんとかいってやりなさいよ!」

「へ?なにを?・・・綾波ごめん。待たせちゃったね」

シンジの姿を見て微笑みを浮かべるレイは、アスカの心に暗雲をもたらす。
自分の心の中に立ち込める暗雲の理由をアスカは自らを偽って理解できないものとしていた。

「・・・気にしないで。アスカ、ありがとう」

「べ、別にいいわよ・・・アタシもうさっきの授業でアガりだから帰るわ、じゃあね!」

「え、それじゃあ一緒に帰ろうよ」

「これからデートだからいいわ。アンタ達のの邪魔なんてしないから安心してどこでもいけば?」

鼻につくいい方をしてしまった自分がたまらなく恥ずかしくなり、アスカは逃げるように学食を後にした。





















「・・・ここでいいわ」

「ええ?ウチで少し話でも・・・」

「ここでいいって言ってんの!アンタみたいにシフトレバー見ながらのろのろ運転してんのなんて耐えらんないわ!」

赤信号で止まっている車からアスカは強引に降りた。
さっきから駅が近くにある場所を見計らっていたのだ。
名前の知らない駅でも情報端末の路線図を見るなりすれば自分の家の近くまでなどすぐに分かる。
誰もいない駅の手前にあった小さな公園のベンチで小型の携帯端末に音声入力モードに切り替え、端末に向かって駅名を言う。
空しく響く自分の声が、嫌でも独りだということを認識させた。
何故か先程見たレイの微笑みが頭を過る。

「電車賃くらいふんだくるんだったなあ・・・」

努めて無視しようと違うことを考えるが、そのレイの微笑みが向いている方向に、レイと同じ様に微笑んでいるシンジがいることに気付くと、無視できないものだと悟った。
この少年の笑顔は決して自分の方を向くことはないのだ、決して。
その微笑みが向けられている少女から奪ってしまいたいと思ったのも一度や二度ではない。

そんなこと・・・できるわけないじゃない・・・そんなこと・・・

溢れ出す涙。
どうしてこのアタシがバカシンジなんか気にしなきゃいけないのよ!

・・・どうして・・・どう・・して・・・

まるでアスカの心を察するかのように、最終電車は大幅に遅れていた。












どうも、恋歌姉様の弟(笑)のかめであと申します。
二十歳の絆を読んでてふと思いついて書いたのはいいんですけど暗いっすねえ・・・(^^;
因みに本編とは一切関係ありませんわ、念のため。
彼女についてはねえちゃに任してアタクシめはさっさと逃げます。<おい
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