鳥カレー



「と」ということですが、ネタが沢山思い付く割に、
エッセイを書こうという決め手にかけるテーマばかりで…。
ということで最近食べた「鳥カレー」のことを書こうかと思う。

そのカレーを始めて食べたのは
1994年3月20日、正午過ぎのことだった。
社会人第一日目の昼食がそれだった。
新宿区新宿1丁目、新宿通り沿いのビルの地下1階、
サイゴン料理「ミュン」のランチメニュー。
会社の先輩たちは「うちに入社したからにはまずはカレーを食べなキ<ャ」と
声を揃えて言った。
「いったいどんなカレーなんだろう…」。
高校時代にカレー同好会の会員だった僕としては
いやが上にも期待がたかまる。

お店の前にはちょっとした行列ができていた。
僕らもそれに加わり順番をまつ。
この瞬間を「配給待ちの難民みたいでいやだ」といったのは、
デザイナーのsさんだった。

やがてテーブルにつく。
僕を誘ってくれた先輩たちみんなが、カレーを注文する。
僕もそれに習う。
混雑した店内を忙しく行き来する店員の半分以上がベトナム人である。
流れているBGMはベトナム語で歌われる日本のヒット曲のカバー。

カレーが現れた。
スープ状のカレーのなかに煮つまった鶏肉が2片。
じゃがいもとニンジン。
そして別の皿に盛られたライス。
先輩たちが僕のことをニヤニヤと見ている。
「まあまあ。…おいしいから食べてごらん」
おそるおそるカレーを口に運ぶ。

辛い!!!

めちゃくちゃ辛い!
僕は辛いカレーが嫌いだ。
激辛ブームなんてだいっ嫌いだった。
バーモントカレーのルーですら甘口をチョイスしていた。
それなのに僕の目の前には激辛チックなカレーが置いてありやがる。
どうしよう。
その日初めてあった先輩たちのお勧めのカレーに
ケチをつけることなどできようものか。
「結構辛いですね…ハハ」
なーんていいながら食べ勧める以外に術はなかった。
汗を拭きながら食べた。

しかし、食べ進めるうちに辛さの奥に潜む
複雑な味があることがわかってきたのだった。
「このカレー辛いのにうまいかも…どうなってるんだ?」
と思ったのはほとんど最後の一口に近かったと思う。
「何百種のスパイスを使った本場のカレー…」なんてことをよく言うが、
つまり、この複雑さこそがそれなのだろう。
味についてはかなり無神経な僕が味で感動した初めての出来事だった。

それ以来毎日のようにミュンの鳥カレーを食べた。
会社に行きたくない日でもカレー食べたさに出勤したこともあった。
「最近調子悪いんですよ」
「そういえば最近カレー食べてないもんなあ」
なんて会話を真剣に交したこともあった。

会社を辞めて2年以上たつ。
めっきりカレーを食べなくなったがときどきどうしても食べたくなる。
辞めてからは3回食べにいった。
一番最近はつい1週間前。
相変わらずのうまさだった。

そのとき気付いたことだがミュンは都内に3件あるのだそうだ。
一件は僕の通った新宿、もう一件は水道橋になるのだろうか本郷4丁目。
そして本店に当たるもう一件は西池袋にあるのだそうだ。
西池袋といえばsl000015&sl000017の住むタカハタケ邸のある場所じゃないか!
今度遊びに行く前には絶対にミュンを見つけようと思っている。
そして鳥カレーを食べるんだ!

Date : 10:18pm 10/29/96 Author: Navi02 (SAWAI)


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