第8回

下町のマンサード

 マンサード、この言葉を聞かなくなってどの位になるだろうか。若い人には何の事だか分からないと思う。

 大正末期から昭和初期にかけて、築地、神田、上野、浅草など、下町に流行した建築様式の一種で、戦後は木造3階建ては建築基準法により、建てられなくなり、マンサードも3階建てなので、むろん建てられませんでした。

 今回のこの建物は、大正13年に建てられ、外部は大分傷んでいますが、まだ現役の建物として活躍しています。

 このマンサード、現存しているのは数軒。次々とビルに建て替えられており、その姿も今に見る事もなくなってしまうでしょう。

 上野、神田、築地など下町に残ってはいても、探すのもおおごとです。

 このマンサード、土地の狭い日本では恰好の建物として下町で流行したのだそうです。

 本格的な3階建てを建てるにしても、隣近所に隣接している所では、このマンサードは隣に軒先が出ない利点が良く、昭和のはじめにあちこちで建てられたのです。

 ビルにかわってマンサードの姿が消えるのも時間の問題でしょう。老兵は消え去るものなのでしょうか。木造建築の良い物はいつまでも残しておきたいものです。

1992年)

 

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