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木造3階建ての西洋館

 暖かい日差しに誘われるように、蜜蜂のように羽を広げて街に出かけてみる事にしました。なんとなく心もうきうきする気持ちを抑えながら目的地へ向かいました。たどり着いた所は、四谷と信濃町の中間の位置で、木造3階建ての西洋館です。

 閑静な住宅街の一角に、木立に囲まれてひっそりとその佇まいを見せていました。古さは隠し切れず、時代を思わせます。7080年は経つのではないかと思い、建て主に訪ねてみる事にして建物の中に入ってみると、そこは養蜂の一家の住居でした。

 そもそもこの建物の持ち主は、ドイツ人のデラレンデールという建築家で、神戸の風見鶏の館などで知られる設計者の住まいとして、明治40年代前半に建てられたとの事。

 外部は、漆喰・石盤等の壁で、内部の壁天井は、これまた漆喰で塗られており、梁型も同じ漆喰で造られていました。

 現在では漆喰壁を塗る家もなく、まして梁型等も漆喰で塗る事はないと思います。貴重な建物で、一年でも永く残して欲しいものです。

 今は、養蜂家一家が昭和30年頃から蜜蜂から蜂蜜を取りながら住んでおられます。

1994年)

 

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