「適齢期LOVE STORY?」第四話・素直な気持ち



「浩之さん…私…あなたとやっていく自信がありません…実家に帰らしてもらいます…」
 ひぇぇぇっっっ!!
 そんなー、オレのどこがまずかったんだい、マルチ!
 悪いところがあるなら、そこは直すっ!
 だから、マルチ…頼むから…行かないで…!
 だいたい、実家、って、どこなんだよーっ!
「…もう、ダメなんです…私たち…お互い…ダメになっちゃう…」
 そ、そんな…。
「わ、訳を話してくれよ…じゃないと…納得行かないよ…」
「浩之さん…」
「…な、マルチ。一緒にこうして暮らして…お互いイヤなところ、分かっちゃうよな…。でもさ、そんなイヤなところをふたりで乗り越えていく…、オレは、マルチとならそれが出来ると思ったんだ…な?だからさ…教えてくれよ…オレのどこが…だめなんだ…?」
 オレが、顔を伏せながら、声を振り絞るようにいう。
 In Heartじゃあるまいし、なんだっていきなりこんなにハードな展開なんだ!
 …明らかに、作者の嫉妬…。
 そんな気がした。
「…浩之さん…あなた…」
 マルチが声を振り絞る…。
 ごくり。
 息をのむ。
 オレは、続く言葉を待った。
 すると、マルチは目を伏せて、切なそうに、かつ重々しく、こういった。
「…ゲーセンで、変なくまのぬいぐるみ、取ってきましたよね…。私、あれ、ダメなんです…、なんか、怖い…」
 目を伏せた顔も、かぁーいぃーっな…。
 じゃねーだろ、オレ。
 そんなこと言ってる場合じゃねー!
 オレとマルチの愛の崩壊の危機!
 ん?
 …。
 ……。
 へ?
「…あんなの好きな人のところには、私…いれません……あれ、なんかよくわかんないんですけど…私の事、いじめるんです…。頭から、毒電波出しながら…」
 ……。
 なんだそれ。
 オレは、テレビの上に置いてある、問題のくまをみた。
 ふごごごごっっっっっっ!
 そんな声が聞こえた。
 様な気がした。



 と、
 ぷるるるるるるる。
 ぷるるるるるるる。
 うっせー目覚ましの音。
 …じりりりりり、じゃないんだな。
 …そんなとこまで、作品に忠実にする必要ないのに…こだわりか…。
 って、
 ぷち。
 音を止める。
 …ゆ、夢か…。
 今更…夢オチで来るか…作者…。
 ……。
 イヤなヤツ。
 …それは置いて置いて。
 …なーんで、マルチが起こしに来ないんだ?
 疑問に思った。
 毎朝、マルチはうれしそーな顔を押しながら、オレを起こしに来るはずなのだ。
 そして、オレは、オレはぁぁっっ、そのもーかわいくって愛らしくってたれたれぷにぷにの顔を見ることにより、今日もマルチのためにがんばるぞぅ、うひー、やっぱかーわぁいいっ、という気分になる、はずなのだ。
 そして、挨拶変わりに、優しくほっぺをつねったりして。
 にへへ。
 ぷにっーっとな。
 すると、マルチは、照れながら、よくわかんないですーといった顔をして
「ひ、浩之さんっ?ど、どうしたんですかーっ!?」
 とかあわてるんだよな。
 両手、ぶんぶんさせたりして。
 それが、めっちゃかわいんだよ、分かるかね、読者諸君!。
 マルチが、照れながらあわてるんだよ。
 ひー、考えただけでも、オイラ、失神〜、みたいな。
 うらやましいか、そーかそーか、そうであろう!
 だが!
 でも、来ない、今日は。
 なぜに?
 …夢の中のセリフが頭をよぎる。
 …ひょっとして、あの「ぷにっーーーっ」に愛想尽かして、出てっちまったのかっ!
 そ、そんなーーーー!
 マ、マルチィィィィ!
 オレを見捨てないでくれぇぇぇぇ!
 びえぇぇぇぇぇんっっっ!
 涙出てきた…。
 ぐすん…。
 今日から…また…一人か…。
 一人って…寂しいモンだな…。
 ぐすん…。
 と、とりあえず…朝飯、食お。
 …マルチィ…。

 そうして、階段をおりる。
 重い足取りで、キッチンにはいると…マルチがいた!
 目が合う。
「あっ、浩之さんっ、おはようございますぅー」
 マルチ!
 なんだ、いるんじゃねーかっ!
 このっ、心配かけやがってっっーーーーーっ!
 オレは、マルチに駆け寄ると、
「うひょー、起こしに来てくれないから、心配したんだぜっ?マルチィィ!」
 と抱きつき、頬をすりすりしたっ!
 マルチが、あっ、と声をあげる。
 あーっっ、可愛い声やっ。
 マルチぃぃぃぃ!
 すりすり。
 だきだき。
 あー、しあわせやわぁっ!
「ひ、ひろゆきさぁんっ、く、くるしいですぅ」
 マルチの声が聞こえた。
「あっ、ごめんごめん。ついうれしくってさっ…」
 抱き締めた腕をゆるめ、にこっと笑う。
 マルチは、そんなオレの笑顔に、ぽへーっとなりながら
「ひろゆきさぁぁんっ…」
 とだけ言った。
 ふたりの空間。
 ふたりだけに許された空間。
 これだっ!
 オレは、オレはっ、これを待っていたんだっ!
 エリザベス女王様、ありがとーっ。
 ♪ごっどせいぶあわーぐれいしゃすくいーん〜、おんりーあ…
 オレの中で、イギリス国歌が流れだす。
 香港返還にあわせた時事ネタだろうか、作者よ。
 …そ、それはいい。
 オレがいて、マルチがいる。
 それだけで、じゅーぶんなんだぁぁぁぁ!
 と、そのとき
「…朝から、お熱いですねぇ…(怒)」
 声がした、隣から。
 振り向くっ!
 だ、だれだっっ!
 来たな…プレッシャー!
 プレッシャーの主=声の主は…あかりだった。

 な、なんであかりがこんなところにっ!?
 訳わからん女のコが家の中=座敷わらし(なんでやねん)。
 おまえ…座敷わらし…?
 いや…座敷わらしは、幸福を呼ぶはずだ…結論にはまだ速い…。
 幸運を呼んだら、それはそれでオッケー。
 違ったら…ぬーべーでも呼ぶか?
 鬼の手。
 エルクゥの…手?
 そんなことが、頭をよぎる…。
 複雑な顔をしながら、
「あ、あかり…おまえ…」
 と言うオレに、あかりは
「…マルチちゃんに…」
 といい、それを引き継ぐかのように、マルチが
「あかりさんに、お料理教わっていたんですっ!」
 と、手を胸の前で合わせながらいった。
 そーかー。
 あかり、いいとこあるじゃん。
 オレは、あかりに向かって
「いいとこあるなー、あかり」
 と言った。
 あかりが、嬉しそうな顔をする。
 なんだか、最近性格が変わった(変えられた)様な気がするが、こういうトコロは変わってないなー。
 そして、マルチは、相変わらずニコニコだ。
 それを見ると、オレもニコニコ。
 うひー。
「…じゃ、オレ、顔、洗ってくるから…。あかり、マルチのこと、よろしくな」
 とオレはたのんだ。
 あかりは、こくこくうなずいて、そして
「じゃ、続けようか、マルチちゃん」
 とマルチに呼びかけた。
 おー、なんだ、ふたり、仲良しなんじゃん。
 おそらく険悪な仲になるだろうなーと予測していたオレは、ちょっと安心して、キッチンを出た。



「…行って来るよ」
「びぇぇぇんんっっ、すいませんっっーーーーーーーーー!」
「マ、マルチ、き、気にするなって、な?」
「そんなぁぁぁーーーー、す、すいませーーーーーーーーんっ!」
 泣きながら謝るマルチ。
 そんなマルチに、オレはなだめてすかしてビスコをあげて。
 隣のあかりは、ただ突っ立っていて。
 ……。
 …はぁ。
 あの後、結局、オレは朝飯にはありつけなかった…。
 なぜか。
 それは…、なぜなんだ…ろ?
 顔を洗ってキッチンに帰ると、マルチとあかりは、みそ汁を作っていた。
 みそ汁!
 日本の味!
 そして、単純ながら奥が深く、作る人の愛情が一番現れる料理だっ!
 オレは、後ろから、どんなみそ汁つくってんのかなー、マルチの俺への愛は、どんな味〜、なんて首を伸ばすと、そのとき、あかりの
「だめ。濃すぎ、しょっぱい」
 という声が聞こえた。
 続けて、マルチの
「す、すいませーんっ」
 との声。
 …。
 ?
 なにが起こってるんだ。
 続けて、マルチが
「あかりさんっ、これでどうですかっ!」
 と。
 数秒後、
「だめ、だし、甘い」
 あかりの声。
「そ、そうですか…」
 切なげなマルチの声。
 …。
 …これって…。
 …嫁いびり…?
 ちょ、ちょっと待て!
 おい、なんて事してんだ、あかりっ!
 やって良いことと、だめなことがあるだろっ!
 オレは、ふたりに割って入り、
「おいっ、なにやってんだっ!」
 と声を上げた。
 すると…マルチとあかりはオレをキッとにらみ
「…なにって、マルチちゃんにお料理教えてるのよ」
 と、まずあかりが口をひらいた。
「教えてるって…おまえ…」
 と、オレが言葉を続けようとしたとき、マルチがそれを遮り
「浩之さんっ、私はお料理を教わっているだけですっ。あかりさん、続けましょうっ!」
 といった。
 強い口調だった。
 …。
 …嫁と姑…。
 意地のぶつかり合い…?
 …渡る世間は鬼ばかり…?
 そんな言葉が頭に浮かぶ。
 …突っ込みたかったが、ふたりは、それを許さなかった…。
 …それは…まさしく…女の戦いだった…。
 …マルチには、あんまりそう言う気は無いのかもしれんが…確かにそうだった…。
 そして、再びみそ汁合戦が始まった。
「あかりさんっ、これっ」
「だめ」
「ひーん、すいませーんっ」
「マルチちゃん、次は?」
「こ、これでどうですかっ!?」
「…これもちょっとね」
「そ、…そうですかー」
 Repeat×?。
 で。
 オレは、朝飯にありつけなかったわけだ。
 …。
 はぁ。
「じゃ、行って来るよ…」
「ぐすっ、いってらっしゃいませっ…、ぐすっ…」
 まだ泣いているマルチ。
 あかりは、わたしのせいじゃないもーん、って感じ。
 …作者…あかりファンに刺されるぞ…。
 そんなことを思いつつ、最後にマルチの頭を一回だけ撫でて、家を出た。
 オレは、あかりと学校に向かった。
 あいかわらず、オレと一緒だと、あかりは嬉しそうだ…。
 変わったな…こいつ…。
 …はぁ…。



(作者注:ボクは、あかりが好きです。それだけは…分かってください…)



 今日は、運がいいことに、志保に会わないな。
 遅刻でもしてんだろうが。
 あー、靴下だけじゃなくて、生活までもルーズだったけな、アイツ?
 結構、そこら辺しっかりしてると思ってたんだけど。
「あれ、志保、来ないね」
「…あぁ」
 とあかりとオレ。
「案外、そこの電信柱あたりに隠れて、俺たちの事観察してたりしてな」
「え?」
「だって、ヤツ、オレとお前がつきあってると勘違いしてるだろ、だからさ」
「…え?勘違い?いやだなー浩之ちゃん。私たちつきあってるんじゃなーい」
 オイオイ。
 それはねぇ。
「…あかり…あのな…」
 と、声を掛けようとしたとき、電信柱に半分ほど隠れている、でっかいタマネギが見えた。
 ♪ペンフレンドの〜ふたりの恋は〜募るほどに〜悲しくなるのが〜運命〜
 BGMがかかる!
 これは…「大きなタマネギの下で」!
 …だから…って事は、
 志保!
 おまえ…お約束すぎ!
 オレは、いつもなら無視する志保だが、なんかお約束すぎることやってる可哀想なヤツにツッコミいれたくなり、声をかけた。
「おい、志保」
 するとどうだろう!
 いきなり、はっ、っとした顔をした。
 …なんか、始めてみる志保だった。
 …明るい志保のかけらが、全くなかった。
 …ドキ。
 なんて思っていると、志保はニヤリとわらい、ダッシュ!
 学校に向かって、坂をかけのぼっていってしまった。
 ……。
 なんだってんだ?



 あかりと、靴を上履きに変えて、教室へと向かった。
 …なんか、教室が騒がしい。
 ど、どうかしたのか。
 オレは、少し駆け足になって、教室へと急いだ。
 がらっ。
 教室の扉を開けた。
 すると…。

 そこには、空間を無視した空間があった。
 「一人の少女」と、「それ以外」。
 「それ以外の空間」は、「一人の少女」に圧倒されていた…。
 騒がしかったのは、「それ以外の空間」の「一人の少女」に対する動揺が原因だった…。
 そして、その「一人の少女」とは…。
 保科智子、その人であった。
 がぁぁぁーーーーーーーーーっ。
 おまえ、本編でもクラスで浮いてたのに、今回はさらにエスカレートかいっ!
 エンディングで、約束したやんかー!
 ったく!
 って、ツッコミをいれようとし、顔を上げ、いんんちょをみて、オレはぶったまげた。
 あかりなんて、入り口で凍ってる…。
 なぜかと言うと…。
 いいんちょは…。
 真っ白いビギニの水着に、男物のシャツをはおり、麦わら帽子をかぶっていたからだ!
 おまけに…メガネを…かけてないっっ!
 ……。
 ぬわぁぁっんんんんっっっっってぇぇええカッコしてんのやぁぁぁぁぁぁっっ!
 オレは、いいんちょの元へダッシュすると、
「いいんちょ、おまえ、なんてカッコしてんだぁぁ!」
 と、とりあえず怒鳴った。
 それしか声が出なかった、のだ。
 すると、どうであろう。
 いいんちょは、オレの方を向き、にこっと笑うと、こともあろうに、こんな事を言った。
「今日は、素直になんねん!」
 ……。
 …素直…?
 ……はぁ…?
「ちょ、ちょっと待て、なにが素直なんだ?だいたい、そのカッコ、なんだ!」
 と気を取り直し、再び怒鳴った。
 いいんちょは、そんなオレに動じる風もなく、にっこりわらいながら、そりゃーもう、くらくらっ、おれのハートを鷲掴みぃっ!失神者続出!みたいな笑顔をみせて、
「いろいろなHPみて廻って、私に対する意識調査してみたら、こーいうカッコが一番そそるらしいんや!だから…藤田君の…ために…」
 語尾がだんだんと弱くなっていく。
 照れている…のか…。
 …そんなことに照れてないで、カッコに照れろぉぉーーーーーーーっっ!
 おまけに…そそる…だって?
 そそる。
 そそらない、そそります、そそる、そそる時、そそれば、そそれ、五段活用。
 …。
 いくらそそるからって、教室でそんなカッコするなーっ!
 お、おそるべし…いいんちょ。
 し、しかし…白い…水着…に…麦わら帽子っ!
 男の…ろま〜んっ!
 ローアングルから覗けば…そ、そりゃぁ、もうっ!
 あんなんでこんなんで、そんなんで、あっっーーーーーーーー、もうだめっ、私っ
 ひと夏の想い出を、いまこそふたりでっ!
 だめ、藤田君、私たち、まだ高校生よっ、いいじゃないか、もう高校生だよ!
 そ、そんなぁ…いいんちょ、な、な!
 あーれーっ!
 !
 ……
 はっ!オレは、一体何を!
 ……
 そんなオレの次の疑問は
「…いいんちょ、メガネ、は…?」
 だった。
「あっ、藤田君、お風呂場で、めがねとってもかわいーって言ってくれたから、コンタクトにしてみたんや!あっ、メガネッコも好きやろ!そー思って、ちゃんとダテ眼鏡も用意してあるんよ!これでばっちりや!」
 そんな事を言って、いいんちょは、ぐっと、オレに向かって親指を上向きにだした。
 なにがばっちりだ、なにが。
 第三話までの、ブチ切れいいんちょとは、正反対やんけ!
 なにがあった、いいんちょ?
 と、惚けるオレ。
 …………。
 遠くの方で、雅史が凍っているのが見えた。
 …。
 と、そのとき!
 どげしっ!
 はにゃーーーんっ!
 あかりが吹っ飛ぶ!
 入り口で凍っているあかりを吹っ飛ばして、ひとつの影が通り過ぎたっ!
 ガトーかっ!?
 ウラキっ!?
 じゃねーだろ、作者。
 柳川っ!?
 って誰やぁぁ!?
 いや、ちがうっ!
 耕一さんじゃない…と言うことは…。
 それじゃ、千鶴さんだよぅ。
 と、とにかく…。
 その答えは…志保!志保だった!

「あんたー、なんてカッコしてんのよっ!この志保ちゃんさしおいて、そんなに目立っていいとおもってんの!?」
 現れたと思ったら、いきなりそんなことをほざいてくれた志保ちゃんだ。
 オレの方をむいて、うるるん紀行なお目目をしていたいいんちょは、対岡田用つり目にお目目を装換し、その目を志保に向けた。
「ん?なんや、長岡さんやないの、なんか用?用ないんやったら、どっかいって。ばいばい」
 と、いいんちょ。
 こ、こえー。
 …これも…「素直」な気持ち…なのか…。
 何となく…納得できる…かも…。
 と、感心していると、志保は反撃を開始していた!
「なにいってんのよ!だいたい、なんてかっこしてんのよ!おかしーんじゃないの?ヒロから離れなさいよ!ヒロは、あかりのモンなのよ!」
 オイオイ、それは違うぞ、志保。
 まだ、勘違いしてんのかい!
 …それに…オレ、別に離れなくても良いんだけど、志保?
 心の中でツッコミをいれる。
 ってのも、はっきり言って、口に出せる状態ではない。
 と、いいんちょはニヤリと笑うと
「藤田君は、神岸さんとはつきあってへん。藤田君は、メイドロボのマルチちゃんと同棲しとるんや!」
 お、おいっ、いいんちょ!
 そんなこと、でっかい声で言うなっ!
 し、志保、と志保を見ると、やっぱり…、凍ってた…。
 しかし、志保、さすがだ、一瞬で我を取り戻すと
「…マルチちゃん…?…ヒロ、あんた…」
 とオレをみる。
 オレはしりませーん。
 この手の話題で、お前が出ると、ろくなことがない。
 と、黙ったはずなのだが、その言葉を敏感に察知し、ツッコミをいれて来たヤツがいた。
 雅史である。
「ひ、浩之っ!そ、それってどういう…!」
 な、なんだ、雅史!
 おまえ、放心してたんじゃなかったのかっ!
「ちゃんと説明してよ!ひろゆきっ!」
 ちょっとまて、なぜにお前、そんなにムキになるっ!
 そんな雅史をうけて、志保がなにかオレに言おうとしたが、それを遮るかのように、いいんちょが、
「ところで、あんた、昨日からこそこそ、藤田君の後付けて、なにやってんの?」
 と志保に問うた。
 いいねー、いいんちょ、ナイスフォロー!
 で。
 その言葉と共に、志保の顔が、瞬時に真っ赤っか!
 ゆでだこかーっ、お前はっ!
 だいたい、なんで真っ赤になんねん!
 いいんちょは、ニヤニヤだ。
 だが、雅史は、まだオレに食い下がっていた。
「ねぇ、浩之ってばっ!どういうことなのか、ちゃんと言ってよ!」
 だーかーらー、雅史、どうしたんだよー。
 そんな雅史を無視して、いいんちょは、
「本編では、脚本家が違ったから、本格対決無かったけど、今回はちゃうで!」
 と、志保に対し宣言して見せた!
 いいんちょ、りりしいっ!
 って、言ってる場合かーっ!
 志保は、うっ、ってかんじで弱弱だ…、こいつ、こういうの苦手そうだもんな。
 相手のペースにはまると、ダメなタイプだもんな、志保。
 しかし、志保は
「う、うけて立つわっ!」
 と、弱弱ながら同じく宣言して見せた。
 ところで、対決って、なんの対決?
 でも、声にはだせん、むりだ。
「で、だいたい長岡さん、あんたなんなんよ?藤田君につきまとって!なんや、結局あんたもそうなんやないかっ!」
 先制攻撃は、いいんちょ!
 志保はますます不利にっ!
 って、ちょっと待て、いいんちょ、それ、どういう意味だ?
 志保は、あわてて、
「ち、ち、ち、ちがうわよっ!」
 と、怒鳴る。
 しかし、いいんちょにペースを握られたら、もうだめ。
 志保の敗北は、明らか…に見えた…そのとき!
「うぉーい、授業、始めるぞー」
 と言う声と共に、山岡せんせの登場だっ!
 た、助かった…。
 クラスにそんな雰囲気が流れる…。
 いいんちょ、志保、雅史以外。
「…不潔だよっ!メイドロボットとつきあうなんてっ!ボクは認めないよっっ!」
 雅史が怒鳴っている。
 おーいっ。
 まさしぃ〜。
 とそんななか、先生は、いいんちょみて
「お、おい、保科、なんてかっこしてんだ、おまえっ!」
 と、動転したような声で叫んだ。
 そりゃー動転しますわ。
 あかりなんて、まだ倒れたまんまだし。
 しかし、暴走いいんちょにとって、究極の授業なんぞ、はっきり言ってどーでもよかった。
 みんなもどうでもいいんだけど。
 で、いいんちょは
「じゃかしーわっ!カッコが勉強に関係あるかいっ!」
 と、わめき散らしたっ!
 ひえぇー。
 確かに素直だけど…違うぞ、いいんちょっ!
 さらに、志保までが
「そーよ、先生、黙ってなさいよっ!」
 がーん、志保、いつのまに立ち直ってるんじゃーっ!
 そして、
「先生ッ、今は…そんなこと言ってる場合じゃ無いんだよっ!浩之っ!答えてよっ!」
 雅史までが、先生にかみついた。
 先生は…弱っていた…ひえー、かわいそー。
「お、おまえら…」
 なんて言ってみるけど、いいんちょと志保と雅史の視線に、SOSサインMAX!って感じ。
 とどめは、三人同時のこの言葉だった。
「なーにが究極の授業や(よ)(だ)!くだらないっ!」(ハミング)
 がーん。
 クラスが凍り付いた。
 先生も凍り付いた。
 三人は、まるで「帰れ!」と言う碇指令のごとく、宣言したのだ!
 究極の授業は、くだらない、と。
 先生の目に、涙が溢れる。
 先生の頬を、涙が伝う。
 まるで、In Heart第一話のあかり状態!
 そして…先生は…泣きながら
「…今日は、自習…」
 とだけ言って、とぼとぼと教室を出ていってしまった…。
 がーん。
 だが。
 いいんちょだけは喜んでいた。
「藤田君っ!自習やってっ!ほら、私のやったの、写させたるさかいっ!ほりほりぃ!」
 と、ノートをオレに突き出す。
 志保は、またも出遅れてしまった。
 志保、負け。
 オレは判定を出した。
 …だが、そんなモンは、どうでもよかった。
「なー、藤田くーん、はようつしーな、な?」
 そう、迫ってくるいいんちょ。
「黙りはないだろっ!浩之っ!いい加減にしてよっ!答えてよっ!ボクの気持ちはどうなるんだよっ!」
 さらに、オレにマルチとの関係についての説明を迫る雅史。
 …オレは、どういう行動をとればいいのか、全然わからなかった…。
 …。
 ……。
「なぁ、藤田君っ」
「ひろゆきっ!」
 …。
 …はぁ…。


第五話へ続く



バック ホーム 第五話