「第2話 小学校の途中 〜 中学の途中まで 『未知』」  小学5年.....TVを見た、本を読んだ、一人で寝た。  小学6年.....TVを見た、本を読んだ、一人で寝た。  中学1年.....TVを見た、本を読んだ、一人で寝た。  TVは面白い、色が洪水のように押し寄せるから。   時間があっという間に過ぎるから。  本は面白い、文字が洪水のように押し寄せるから。  時間があっという間に過ぎるから。  一人で寝るのはつまらない、ヒトの温かさが好きだから。  早く昼間になれば良いのに。  そして、中学2年。  道をあるいていた。  学区外の道。  さしたる用事も無く。  なぜあの道を歩いていたのだろう。  思い出せない。  目の前を一人の少女が歩いていた。 犬と一緒に。  犬は大きかった。 そしてヒトに慣れていた。  犬は知り合いを見つけたらしい。 そちらへ走っていった。  少女は他の事に気を取られていたらしい。 犬に引っ張られた。  犬は道路を横切った。  少女は後を追いかけた。  軽トラが走ってきていた。 危なそうだった。   体が動いていた。  目の前の人間を横に突き飛ばした瞬間、急停止しかけた車に跳ねられた。  軽トラは急ブレーキを踏んでいた、だけどスピードは0では無かった。  鉄の塊に重い体当たりを食らった感じがした。  体が飛んだ。     左の背中がひしゃげたような気がした。  標識の柱にぶつかったらしい。  記憶は途切れた。  途切れた記憶が復活したのは目の前に医者が座っている状況。  横には親がいた。 少女もいた。 知らないヒトもいた。    起きようとしたが、動けなかった。  痛みに顔をしかめた。  腕に注射を打たれた。  記憶が途切れた。  起きたのは夜。  横に親がいた。  声をかけてみた。  泣かれた。  叱られた。    痛みをこらえながら、顔を触ってみると、口の周りに血を拭いたような後が有った。  倒れてから今までの間に、何回か吐血したのだろうか....。  また、眠りについた。  次の日の昼。 医者と2人で話をした。  医者は世間話から入ろうとした。  自分:「そんなのは別にどうでもかまわない。 体の状態は?」  医者:「左背中に強度の打撲、衝撃による内臓へのダメージ。      もう少し衝撃が強かったら内臓破裂を起こして、命に危険があった所です。」  なんだ、あの痛みよりもう少し痛いのを我慢すれば死ねるのか....。  『死』は、そんなに遠いものでは無いと思った  問診らしきことが始まった。  詳しいことは覚えていない。  医者:「左腕の痛覚はほぼ完全に麻痺状態です      力も満足にはかけられないでしょう...」  自分:「痛みは感じるけど...」  医者は爪楊枝を持ってきて左手を軽く刺し始めた。  .......感じない。       医者:「...と言うことです。 表層部の痛覚神経が麻痺しています。      簡単な擦り傷切り傷では痛みを感じないと思いますので、気をつけてください。」  自分:「.....」  医者:「内臓の状態ですが、この内臓が元の状態になるには...15年はかかります。      今、あなたは15歳、ということは30歳で直るということです。      しかし、30歳になるまでにもう一度血を吐いた時には...」  自分:「時には?」  医者:「その時は.....諦めてください」     『死』は、隣に居た。          **************     その日の夕方、一人の少女がやってきた。  少女:「あの...お体大丈夫ですか?」  自分:「誰?」  少女:「ありがとうございます、あなたに命を助けてもらった者です。」  自分:「名前は?」  少女:「命を助けてもらったのにこんな事になってしまって...      なんてお詫びをしたらいいのか。」     その少女は質問に答えもせず自分のペースで自分のことをしゃべり始めた。     もう一度質問を繰り返した。  自分:「名前は?」   少女:「あ、す、すいません。 私、霧下未知。 『きりした みち』 と言います。」  次回「第3話 中学生活 『未知』Part2」