京の暦は、あかねのなじんだ十二ヶ月と少しずれている。
ほぼ一ヵ月分くらい遅くて五月が長雨の季節というのが、どうにも
ピンと来ない。
それでも物忌みなどと同じで決まり事は真面目に守るべきものだと
思っていたのだ。
「友雅さん、雨だと来られない……ううん、来ちゃいけないんじゃ
なかったですか?」
「君にいらぬことを教えたのは誰だろう。つれないね。私に会いたく
なかったの?」
「そんなわけないですよ。ただ雨の日は身を慎まないといけないって
聞いたので、私のところに来たせいで友雅さんが悪く言われるんじゃ
ないかと思って」
「昨夜も、その前の夜も、雨の音ばかりきいて、すっかり滅入って
しまったのだよ。ただでさえ年寄りの私が、君恋しさに、はかなく
なってしまったら尚ひどい話だろう」
「……ちょっと、おおげさじゃないですか?」
「五月雨の夜空に、雨音よりも、ほととぎすの鳴く声ばかりが響いてね。
君が泣いているような気がしたのだけれど……」
「泣いてなんかいません」
「ああ、では、私の恋の嘆きが、あのほととぎすに伝わっていたのかな。
けれど今宵は、悲しみよりも喜びで鳴かずにはいられないようだよ」
「友雅さん!」
五月雨の夜も、やはり仲良く共に過ごすことになる二人だった。
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