「おはよう、神子殿。君に会える朝が来るのが、どんなに待ち遠しかったことか。
夜が明ける頃には髪も白くなってしまうかと思ったほどだよ」
「友雅さん、あんまり大げさに言われると、かえって信じられないんですけど」
「それは困ったな。けっして偽りを口にしているわけではないのに」
「だからどうして……」
「信じてくれなくても構わないよ。君は龍神の神子で、私は神子をお守りする
八葉だもの。私のこれまでの振る舞いを思えば、君が疑うのも無理はない。
でもね、神子殿。人が人を恋う心をとどめることなどできはしない。……私も
最近それを思い知ったのだけれどね」
「私、よくわからないです」
「そう……この頃では夜昼もわからぬほど想いは募るばかりだ。もしや夢で
見えたりしなかったかい?」
「は? 何をですか?」
「おかしいな。まだ想い足りないのだろうか。私の方は夜ごと神子殿の夢を
見ているのにねえ」
「えええーっ! 嘘ですよね、友雅さん。私をからかってるんでしょ?」
「では近いうちに夢と現を違えぬように、確かめにうかがうとしよう。
そっと忍んでいくから、必ず返事をしておくれ。ね?」
友雅の艶やかな声で、耳元にそっとささやかれては、もう逃げられない。
きっと今夜の夢に見てしまうだろうとあかねは思った。
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