あかねと友雅が龍神の神子と八葉だった頃、彼と会うのは明るい昼の間。
しかし役目を終えた今、すっかり事情は変わってしまった。
友雅があかねを訪ねてくるのは、いつだって夜になってからだ。
「友雅さん、やっぱりお仕事が忙しいんですね」
「いや、そういうわけでもないよ」
「本当に? いつも暗くなってから来て明け方に帰るから、てっきり……」
「それは私も本意ではないけれど……暁ばかりは憎いものだね」
「どうしてですか?」
理由がわからなくて、あかねが首を傾げると友雅はくすくすと笑った。
「私も、いっそ面倒なしがらみなど捨ててしまってもよいと思うが、恋人の
私のせいで神子姫に悪い噂がたっては困ると、きついお達しがあるのだよ。
神子に仕える八葉ではなく、恋人だから夜に逢える……それは嬉しいことだ
けれどね」
友雅は今宵もあかねをかき抱く。
「夜が明けると心が騒ぐよ。まるで春の夜の夢のように、君を見られるのは
夜だけだもの」
「それでも逢えるなら嬉しいです」
「かわいいことを言ってくれる」
何気ない言葉ひとつで友雅の機嫌が良くなることに、最近あかねは気が
ついた。こうして相手のことを知っていくのが、とても楽しい。
「ならば逢瀬が短夜の夢とならぬよう、しっかり確かめさせてもらおうか」
夜だけではとても足りない季節も、ずっと共に過ごすと誓う二人だった。
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