あかねが京の友雅のもとに残って一冬を越し初めて二人で春を迎えた。
朝の冷え込みもゆるむ頃、あかねはふと思い立ったように言った。
「友雅さん、もしかして最近よく眠れてないんじゃありませんか?」
「おや……どうしてそんなことを?」
「わかりますよ……それくらい。一緒に横になってるんですから」
「それは失礼。いや大したことではないのだよ」
「朝が早いんですから、ちゃんと休まなきゃ」
「もともと眠りは浅い方でね。君と一緒だと安心してしまうのか不思議と
よく眠れるようになったけれどね」
「でも、この頃は、そうじゃないでしょう?」
「……春のせいかな」
「春? 暖かくなったから? だったらもっと眠くなりませんか?」
「花が散る夢ばかりくり返し見てね……とても安らかに眠れなくなって
しまったのだよ」
「あんまり綺麗でドキドキするみたいな感じ?」
「日ごと夜ごと飽きもせず君という花を散らす夢だよ」
今宵もまた──。
春は二人の出会った季節である。
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