「友雅さん! どうしましょう。ほら見てください! すごい雪……
これじゃ、帰るのも、内裏に参内するのも無理ですよ。京の都で雪山
みたいにつもるなんて、びっくりです」
「ああ、どうやら私の心が天に届いたようだね」
「この大雪が友雅さんの心なんですか?」
「いつもどんなに大切に君を思っていても、帝に仕えるこの身を二つ
に分けられない悲しさをご存知ないのかな。普段はどれほど我慢して
君の元から離れていることか。だから君への思いは、この雪の様に
どんどんつもり積もってしまっているんだよ」
「……本当?」
「信じられないかい? こうして目も離せぬくらい激しく降りしきる
雪が積もってどこへも行けなくなってしまったことこそ、君の側に
とどまるのに誰にも責められない口実になったじゃないか。それこそ
私の本心の望むところだ」
「友雅さんは、いつも何かにつけて居座るからって藤姫が……」
「さすがの藤姫だって、この雪の中、私を追い出しはしないでくれる
と信じているよ。だから私はこうして私の白雪に埋まっていたいな」
「ちょっと、友雅さん!?」
「ほら、雪が溶けるまで、こうしていよう。あたたかい君の隣でね」
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