「友雅さん、寒いと思ったら雪ですよ! 雪!」
「また、そんな御簾を上げて……雪ごときで、かわいらしくはしゃいで
いる神子殿を見られるのは嬉しくても体をこわしたらどうするの」
「私そんなにやわじゃないですよ。それより、ほら、とてもきれいじゃ
ないですか。まるで空から花が降ってくるみたい」
「……確かにね。清らかで美しい白雪は私には少しまぶし過ぎるけれど」
「ほら、濃い色の衣に落ちた雪をよく見ると、結晶の形が見えるでしょ。
これって確かひとつも同じ形がないんですよね。人の顔と一緒で」
「ほう、物知りだね」
「本当に不思議……今夜つもるかな? 明日、晴れたら朝日でキラキラ
輝く真っ白なお庭が見られるかしら」
「とても嬉しそうだね」
「だって楽しみですもん」
「君を見ていると冬の寒さも忘れてしまいそうだ。もちろん私にとって
無上の喜びだよ」
「空から花が散るなら、雲の上はもう春かもしれませんね」
「春を待つ人には待ち遠しいたよりかな。でも今の私にはさして関心も
ないよ」
「え、なぜですか? 花好きの友雅さんなのに」
「どこであろうと君という私だけの花が隣で咲いていてくれたら、そこ
は常春の心地良さだもの。ねえ、あかね」
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