「左近衛府少将の友雅さんは、物腰優雅で女の人にはやさしげだけど、
実はものすごく冷たい人だって女房さんたちに噂されているんですね。
知りませんでした」
「それはまた、どこの誰やらが耳の痛い話をしているようだね」
「んー、でも会ったばかりの頃は、私も時々そんな風に思ったこと
ありますよ」
「それは聞き捨てならないな。そう……不真面目な私は神子殿のお心
にとめてもらうまで、どんなに苦労したことか」
「また、すぐそういうこと言って! 友雅さんは余裕だったじゃない
ですか。私のこと異世界の変わった子が神子になったなーくらいしか
思ってなかったでしょ? 別に、私への態度が冷たいなんて思ってた
わけじゃありませんってば。すぐ、そんなことないってわかったし」
「それは君があたたかい春風のようなかわいい人だからね」
「ほめすぎですよ」
「とんでもない。どんなに言葉を尽くしても足りはしないよ。
そう……言ってみれば、私は氷った冬の川なのかもしれないな。
冬の川が氷の下で流れるように、私の表は冷たく取り繕っていても
心の中では涙が流れて、いつまでも君を恋い続けるようだからね」
「私を……ですか」
「ああ、だから覚えておいておくれ。私の心を覆う氷をとかせるのは
君だけだということを……ね」
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